| 虫暮部さんの登録情報 | |
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| 平均点:6.20点 | 書評数:2209件 |
| No.2029 | 7点 | 緋色の囁き 綾辻行人 |
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(2025/08/02 13:08登録) もはや何かのパロディかと思わせるようなベタな展開の連続。しかし、そういう意地悪な視点を抜きにして読めば、滑らかで精緻な造形はやはり美しい。 何処にでもありそうだけど、実は此処にしかない物語。下手に独創性へのこだわりを感じさせず、サラッと読めてしまうところが偉大だ。 ところで、高取さん兄は大したことしてないよね。ただそこに居ただけで、ラストに美味しい(かどうか判らんが)ところを掻っ攫っている。 と揶揄する心算で書いたけど気持が変わった。これは寧ろ、何をせずとも “居る” と言う行為の大きさを語る決着なのである(かも知れない)。 |
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| No.2028 | 6点 | 狩人は都を駆ける 我孫子武丸 |
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(2025/08/02 13:08登録) 作風をコロコロ変える我孫子武丸の、謎解き風味も濃度も薄いが、素直に読めるライトでユーモラスな探偵物語。ハードボイルドとは呼べない。個人的にはミステリ度が低いと緩さも許容し易いので、これでもまぁ良いんじゃない。 なんだけど、アレの前日譚だと思うと、二つの世界を無理矢理くっつけたようで、この舞台の書かれていない部分に何が隠れているのか気が気でない。素直な読み方ではいけないような気にさせられてしまう。 |
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| No.2027 | 5点 | 三百年の謎匣 芦辺拓 |
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(2025/08/02 13:07登録) やりたいことはまぁ判るし個々のエピソードも悪くはないが、それを “謎匣” とか呼んで結び付けるのはこじつけがましい。もっと素直に物語性の発揮に集中しても良いのに。 それはそれとして、「新ヴェニス夜話」の “舞台が実は○○” と言う大ネタは面白いのだが、その手の仕掛けがこの一話だけなのでバランスが悪い、と言うか後続を期待しちゃったのでがっかり。 |
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| No.2026 | 5点 | 占い師はお昼寝中 倉知淳 |
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(2025/08/02 13:06登録) びっくりしたなぁ、もう。「占い師は外出中」の真相が衝撃的。こういうシリーズでやっちゃ駄目な奴だ。 何故なら、“最後まで書いていないだけで、全てのエピソードの真相が同じ構造である” との可能性を示してしまうから。 「写りたがりの幽霊」なんか如何にもソレっぽい。否、「壁抜け大入道」だけは違うね、警察沙汰だし現地調査に赴くし。 と考えると、収録順も意味ありげに見えて来る。何気ない顔で四編読ませた上でシレッとひっくり返し、最後にコレなら心配無いですよとソッと差し出す――後期クイーン問題を実践して読者をからかったのだろうか。 |
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| No.2025 | 4点 | 地獄の奇術師 二階堂黎人 |
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(2025/08/02 13:06登録) 限界が判っている懐古的なミステリをそのままリメイクしたんだなぁ。 例えば、「人か魔か」「悪霊降臨」と煽られても、つい読者は “超常現象は発生しない” 前提で読んでしまう。すると真相は明白。“不可解な状況” をやり過ぎなので、そのままヒントになってしまうのだ。 そういう “読者との距離感” の判ってなさが、悪い意味で作品の独自性に結び付いていると思う。 |
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| No.2024 | 6点 | 少女キネマ 一肇 |
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(2025/07/26 11:47登録) 成程ネーミングがヒントだったのね(×2)。 時代錯誤感を生かした設定は上手いところを射抜いているが、一連の騒ぎの中心に座す、傑作たるべき作中作映画が具体性に欠けるのは、まぁ止むを得ぬとは言えもどかしい。ベスパのエピソードの方が突出して印象に残っている。 |
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| No.2023 | 7点 | 桜子は帰ってきたか 麗羅 |
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(2025/07/26 11:46登録) 戦時下の悲劇を題材にしつつ、時代に責任転嫁せず個人の恨み辛みを中心に据えて書き切ったところが良い。 今更人を殺してまで守るべき秘密か? との疑問もあるが、そのへんのバランスが崩れちゃった人達なんだな、と思わせるゴリッとした説得力があった。 文庫版解説にも書かれているが、雰囲気作りとして “桜子” と言うネーミングは秀逸。 |
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| No.2022 | 6点 | 変な絵 雨穴 |
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(2025/07/26 11:46登録) 色眼鏡を外して読むのは難しいな~。 実際に絵を掲載してしまう強みは確かにある。読者が本気を出せば、絵をスキャンして “3枚の絵の秘密” を自力で解くことも可能なのだ。そのへんは順当な工夫と言える。 しかし、予想以上に良く出来ているからこそ、この説明的な文章は如何なものか。ネタが面白けりゃそれでいいだろ、で押し通せる程に個性的なストーリーとまでは言えない。“絵” は幹ではなく枝葉の面白さなのである。出自がどうであれ、文章と言う別の枝葉にも相応に気を配るべきではないか。 あ、でも海外でも注目されているとか。翻訳には有利かも。 |
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| No.2021 | 6点 | やまのめの六人 原浩 |
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(2025/07/26 11:45登録) 色々と伏線を拾う面白さは結構ある。 但しそのせいで、物語を牽引する役目はクライム・ノヴェル的なスリルが担うことになり、ホラー的な怖さはあまり感じない。それでラストがああだと、何だかはぐらかされたような気分になった。 |
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| No.2020 | 9点 | 暗いところで待ち合わせ 乙一 |
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(2025/07/26 11:45登録) 非常に技巧的と言うか、小さな心の動きを注意深く積み重ねて奇妙な同棲状態を成立させた手際に驚かされる。 会話も無い、これと言った出来事も起こらないパートが少なくないのに、弛緩するどころか寧ろ緊張感でこちらも息を殺して読んでしまった。作者がとても深いところまで潜った、と言う感じ。まぁこの際リアリティは措いといて。 |
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| No.2019 | 8点 | タイタン 野﨑まど |
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(2025/07/18 12:00登録) この作者は、圧倒的な情報量を圧縮してストーリー展開と寄り添わせる優れた才を持っている。それは、頭いいなぁと思わせる反面、処理能力で器用に書いている印象も否めず、素直に熱中出来ずにいた。 しかし本作の成立にはそういうスマートな力業が必須で、野﨑まどだから書けたと言えるだろう。“仕事” に関する思索を深めつつ、要所要所での思い切ったSF的飛躍は、物語を “知的興奮” と “笑っちゃう” のハイブリッドに導いた。宮澤賢治の引用が意外な程に効いている。しかしこの時代でも下着はパンツなのか。 |
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| No.2018 | 7点 | ブレイクショットの軌跡 逢坂冬馬 |
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(2025/07/18 11:59登録) 良い意味でなかなか計算高い “次の一手” ではないだろうか。デビュー作の軛から逃れ、ジャンル作家脱却を図っている。 前二作のような冒険要素は少ないし、一直線にゴールを目指すあの潔さも無い。細切れにした物語が渾然一体となって語るのは、何が何と繫がっているのやら判らない世界の有様。しかしその雑味の多さこそが本作の味わい。多彩な価値観を器用に使い分け、どのエピソードもリーダビリティが破格。うっかり一気読みしてしまったよ。えっ、架空の車種なんだ……。 ところで無神経だと謗られる覚悟で言うが、プロローグに出て来るラップ、そんなにひどいか? 極論暴論を述べる歌詞なんて良くあるし、個人の表現でそこまで全方位に気を遣わなきゃ駄目かなぁ? 本作中最大の違和感である。 |
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| No.2017 | 5点 | 名探偵再び 潮谷験 |
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(2025/07/18 11:58登録) 第三章までの事件はポイントが摑みづらく、イマイチ気持が奮い立たなかった。読み返せば理屈としては納得出来るけれど。伝聞で語られるせいかな? と言う分析を裏付けるかのように、事件に直接遭遇する第四章で一気に面白くなり、最後のサプライズには脱帽。 前半もっと上手く書ければ、とは思うが、一人称記述も伝聞も、設定上の必然だろう。どうしたものか……。 |
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| No.2016 | 4点 | 黒き舞楽 泡坂妻夫 |
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(2025/07/18 11:57登録) 以前読んだ時は読後感がとても悪くて……読み返してみてもやっぱり、その性癖は許容しがたい。相手が合意しているか微妙なところだし。本性に殉じることが常に正義と言うわけではないのだ。文芸の力がうっかり変態を黒水晶に昇華してしまった、みたいな感じ。それなりに読ませるので悩ましい。 |
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| No.2015 | 6点 | 赤後家の殺人 カーター・ディクスン |
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(2025/07/18 11:56登録) 本格ミステリに於いて、鑑識や検死の結果は “読者に提供される推理の為のデータ” と言う側面があり、基本的に無謬である。秘密の抜け穴を見落としていました、では話にならない。 と考えると本作のトリックはビミョーなんだけど、これは責められないかな~と言う絶妙なポイントでもある。“ズルい” とは思ったものの、賞賛したくなるタイプのグレー・ゾーンだ。事件発生後すぐ、H・Mに大胆なヒントを言わせているのも偉い。 回りくどい動機はもう少し上手く設定して欲しかった。 |
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| No.2014 | 5点 | 戯作・誕生殺人事件 辻真先 |
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(2025/07/11 14:51登録) 創元推理文庫版の表紙、前巻でツッコまれてタチキリの位置を改めたんじゃない? ネタバレあり。 まず現実の事件について。出産話と平行するせいで進行が遅く感じられた。事件の渦中にいないとスーパーは魅力半減だなぁ。 入り組んでいる割に平凡な動機、だけど幾らの為なら殺すかは人それぞれだしまぁいい。 問題は作中作。これ、【前】・【中】だけで充分面白いミステリになっていて(江戸時代ならではのホワイ!)【後】は蛇足だよね。【後】の存在意義は、順番を間違えて読んだ時に騙しの一部品として機能する、と言うことだけだ。 作中の記述・説明が少々曖昧なんだけど、作中の作者がその意図を面白いと思うのは不自然だと思う。だからこそ入選に至らなかった、ってことなのかも知れないが、“作中の作者が新人賞の為に書いた作品” ではなく、あくまで “辻真先が我々読者を引っ掛ける為に、作中作として書いた作品” にしかなっていないのでは。 我々読者の視点で見ると、せっかくの面白い短編を、トリックのネタにする為に面白さを判りにくくしているので、勿体無い。 |
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| No.2013 | 5点 | 本格・結婚殺人事件 辻真先 |
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(2025/07/11 14:50登録) 創元推理文庫版の表紙、二人の身長はこれでいいの? キャラクター中心のシリーズものだから仕方ないけど、“スーパーとポテトの結婚” に引っ張られ過ぎて、ミステリ的な面白さが犠牲になっている気がする。殺す動機が二つ重なっているのも過剰だ。また、二つの殺意が北海道で鉢合わせする偶然が、もう少し必然になるような要素を追加出来なかったのだろうか。 アレみたい、と明記するとネタバレになりかねない、昔SFを書いていたあの作家の'79年作品みたい。 |
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| No.2012 | 3点 | 改訂・受験殺人事件 辻真先 |
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(2025/07/11 14:49登録) 思えばその昔、私が何故この三部作を手に取ったかと言えば、何かの本で “○○、△△、×××、が犯人” と三冊纏めて紹介されていたからだが、冷静に考えると、前二作がそれを予め明かして読者の気を引く設定であるのに対して、本作のネタバレは興を殺ぐんじゃない? 今になって腹が立って来たぞ。 事件の真相とメタ的な部分がキチンと有機的に繫がっていて、手の中の書籍が一体何処に位置するのかと不思議な気分に浸れる。こういう凝った本は再刊の時に困るけど、良いね。 と言いながら別の部分をネタバレしつつ突っ込んでしまおう。 校歌三番の見立てを行った理由について。 それは “前の事件が一、二番の見立てだ” との意見がそれなりに広まっていないと成立しない偽装工作である。しかし、私が読んだ感じではそういう状況には至っていない。それどころか、見立て説はポテトの脳内に浮かんでいるだけで、彼はそれを口に出して良いか決めかねているようだ。これは変だと思う。 記述が曖昧で、“その意見が広まっていない” とも書かれてはいない。また、ポテトの台詞に “見立て殺人かどうかって話をしているうちに” とあり、相手がそれを過大評価して偽装が有効だと判断したのかも知れない。なので決定的な矛盾ではない? でもまぁこうして読者が “好意的に解釈” しなきゃならない時点で作者のミスだよね。 更にこうも考えてしまう。実は一、二番は単なる偶然なわけだが、そこに見立ての幻影をポテトが見たからこそ “三番の見立てが偽装に成り得る” と言う発想が生まれた。つまり、ポテトが間違った推理を迂闊に口にしたことが、第三の事件を誘発してしまったのでは……!? |
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| No.2011 | 7点 | 盗作・高校殺人事件 辻真先 |
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(2025/07/11 14:48登録) 作中作がしっかり出来過ぎているので、その外枠 “作者=犯人” の部分がほんの付け足しみたいに感じられてしまう。と言うのはこの手の仕掛けに付きもののジレンマだろうか。 “プラスドライバー” についてわざわざ説明が付されているのが不思議な感じ。'76年でそんな認識だったの? |
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| No.2010 | 8点 | 仮題・中学殺人事件 辻真先 |
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(2025/07/11 14:48登録) かつてソノラマ文庫で読んだけど、これ(青春三部作)はどう評価するとかじゃなくてとにかく好き。“本格ミステリ” を判ったような気になっていた時期に、“そのルールの先” を実践した具体例が目の前に存在した事実は、私を更なる沼へ引き込む大きな引力となったものである。 今読み返して尚、“犯人” に関して文句は無い。理屈としてちゃんと成立しているのでOK。 成程、ペンネーム辻真先はそういう由来だったのか。 |
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