kanamoriさんの登録情報 | |
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平均点:5.89点 | 書評数:2426件 |
No.546 | 6点 | 青銅ランプの呪 カーター・ディクスン |
(2010/06/26 16:56登録) 人間消失がテーマのH・M卿もの。 エジプト青銅ランプのファラオの呪いという怪奇趣向は添えもの程度ですが、提示されたヘレンの消失という謎は結構強烈でした。ネタバレ気味ですが、これはチェスタトンの「見えない人」ネタという感じです。 単純な謎に対してボリュームのある分量で、中盤はちょっとダレましたが。 |
No.545 | 7点 | 貴婦人として死す カーター・ディクスン |
(2010/06/26 16:41登録) 関係者の医師の手記の形で、H・M卿が関わる偽装心中事件が描かれています。 断崖まで続く男女の足跡トリックは二重の真相を用意して、そちらに目が行きがちですが、中核のトリックはさらに別にあって、巧みなミスディレクションになっています。 怪奇趣向や派手な展開はありませんが、一人称で語られる物語は淡々とした静かな雰囲気で、カーの作品としては読み心地がいい中期の傑作と言えると思います。 |
No.544 | 6点 | 九人と死で十人だ カーター・ディクスン |
(2010/06/26 16:07登録) 戦時下の航海中の船上の殺人を扱ったH・M卿もの第11作。 乗客の誰のものでもない証拠の指紋という謎が提示されますが、この真相は少々陳腐ながら、タイトルがミスディレクションといえるもう一つのトリックの使い方はまずまずかな。 カーといえば、怪奇趣味と密室トリックですが、本書は元々フーダニットにも強いこだわりを持っている作者の一面が出た佳作だと思います。 |
No.543 | 8点 | ユダの窓 カーター・ディクスン |
(2010/06/26 15:46登録) H・M卿の探偵譚の中ではもっとも有名な作品で、これも密室トリックは読む前から知っていました。 よく考えてみると単純でたいしたトリックではないんですが、タイトルのネーミングが秀逸で、魅力的なものにしています。 H・M卿が弁護人になる法廷ミステリという点が異色で、肝のハウダニットを知っていてもスリリングな展開を楽しめた覚えがあります。怪奇趣向が全くないのは少々物足りないですが。 |
No.542 | 8点 | 海を見ないで陸を見よう 梶龍雄 |
(2010/06/25 22:07登録) 初期の終戦直後を時代背景とした青春恋愛ミステリの一冊で、「透明な季節」と登場人物が重なりますが、単独で読んでも支障ありません。 知多半島東舞子の海水浴場を舞台に、主人公の大学生が慕う女性の死の謎を中心に据えたミステリですが、ミステリ以前に青春恋愛ものとしてノスタルジックな物語で、非常に読み心地がよかった。 ミステリとしては派手なトリックはないものの、多数の伏線が物語と綺麗に融け合っているのが美しいと感じました。 |
No.541 | 5点 | 聖い夜の中で 仁木悦子 |
(2010/06/25 21:42登録) ミステリ短編集(光文社文庫版)。 著者逝去後に出版された最後の短編集で晩年の作品5編収録のほか、鮎川哲也などの追想風エッセイなども収められています。本格度は低いですが、「陰のアングル」とか「折から凍る二月の」など、昭和の清貧な市井の人々を描いていて、初期作の頃から変わらないテイストは心地いい。 |
No.540 | 5点 | 一角獣殺人事件 カーター・ディクスン |
(2010/06/25 21:09登録) H・M卿ものの第4作は、陸軍情報部とか怪盗が出てくるなど冒険スリラー風の幕開けで、これまでの作品とはテイストがちょっと異なります。 監視下の殺人という不可能トリックもありますが、その不可能状況が読んでイマイチ分かりずらいのと、小道具が特殊なので、スッキリしない出来です。 |
No.539 | 6点 | 赤後家の殺人 カーター・ディクスン |
(2010/06/25 20:56登録) 「人を殺す部屋」テーマを扱った、H・M卿もの第3作。 怪奇趣向はまずまずですが、密室内の毒殺という設定は不可能性を薄めているため、あまり効果的な手段でないように思います。 密室トリックの色々なヴァージョンを書きたかったのでしょうか。 |
No.538 | 7点 | 白い僧院の殺人 カーター・ディクスン |
(2010/06/25 20:46登録) 雪の密室殺人(足跡のない殺人)を扱ったH・M卿が探偵役を務める第2作です。 怪奇趣向がまったくというほどないのが少々不満ですが、この種のトリックは本書で初めて読んだので、盲点を突かれた感じでけっこう衝撃を受けました。 密室を構成する理由も非常に納得いくものです。 |
No.537 | 7点 | プレーグ・コートの殺人 カーター・ディクスン |
(2010/06/25 20:35登録) 怪奇趣向の降霊会という設定で石室内の密室殺人を扱っています。H・M卿の初登場作品ですが、登場前の物語前半は怪奇小説の様相です。 初読は講談社文庫の「黒死荘殺人事件」でしたが、読みずらい訳文のせいもあってあまりいい印象がありませんでした。再読してみて、因縁話として語られた黒死病流行時代の短剣のエピソードが、密室トリックをミスリードしている点など巧妙な構成は感心しました。人物に関するトリックは、無理があるように思います。 |
No.536 | 7点 | 弁護側の証人 小泉喜美子 |
(2010/06/24 21:22登録) シンデレラ物語をモチーフにした騙し絵ミステリ。 新本格の洗礼を受けた現代の読者が読めば、ある程度プロット上の仕掛けは分かると思いますが、これが60年代に書かれていたという点がすごいことです。 騙しのテクニック面でいえば、プロローグの「・・・を死刑に処す」という叙述は却って逆効果ですが、ヒロインの独白に二重の意味(逆の意味)を持たせる手法など、スマートで非常に先駆的なミステリと言えると思います。 |
No.535 | 7点 | なめくじに聞いてみろ 都筑道夫 |
(2010/06/24 21:05登録) ユニークな長編アクション小説。「飢えた遺産」改題。 主人公の素人青年と12人の殺し屋とのバトルを描いているだけですが、この殺し屋たちが面白い。 亡き父親が通信教育で育成した殺し屋たちという設定で、主人公に残された血に飢えた負の遺産といったところ。彼らが使う殺しの道具が、トランプ、傘、マッチなど奇抜でバラエテイに富んでいるところは、山風の忍法帖を思わせました。 |
No.534 | 3点 | ヴードゥーの悪魔 ジョン・ディクスン・カー |
(2010/06/24 20:28登録) ニューオリンズを舞台にした歴史ミステリ3部作の第1作。 最後の未訳長編ではありますが、よほどのカーマニアでないと面白く読めないでしょう。 作者らしいミステリの趣向は馬車からの女性消失ぐらいですが、不可能性を強調するための「検め」不足で、真相はごく常識的なものでした。 |
No.533 | 6点 | アラビアンナイトの殺人 ジョン・ディクスン・カー |
(2010/06/24 19:21登録) フェル博士の安楽椅子探偵もの。 3人の警察関係者が夜を徹して不可解な事件の顛末をフェル博士に語り明かすというプロットがタイトルの由来です。 その事件は確かに奇妙な様相を呈していますが、怪奇性はあまり見られず、いったい何が起こっているのかという趣向は「帽子収集狂」の事件を連想しました。 同じ事件を別の角度から語る1部・2部の試みはちょっと面白いとは思いましたが、重複感も感じました。 |
No.532 | 4点 | 毒のたわむれ ジョン・ディクスン・カー |
(2010/06/24 18:56登録) これはパリ警視庁バンコランシリーズのスピンオフ作品と見るべきでしょうか、微妙な位置づけの作品です。 「蝋人形館の殺人」などで活躍したワトソン役のアメリカ人青年ジェフ・マールが登場しますが、探偵役はパット・ロシターという青年で、あまりぱっとしない魅力のない探偵でした。 ある判事邸での毒殺事件を描いていて、犯人は意外といえば意外ですが、その人物の造形は書き込み不足のように思えます。 |
No.531 | 5点 | 蠟人形館の殺人 ジョン・ディクスン・カー |
(2010/06/24 18:41登録) パリの予審判事アンリ・バンコランが探偵役を務めるシリーズ第4弾。 なぜか2、3作目はライン河の古城とかロンドンが舞台でしたが、今回は再びパリにもどり、蝋人形館での連続女性殺人事件に挑みます。 退廃的なパリの情景描写とか蝋人形館の雰囲気はよく出ていて、最後の大佐とのカード勝負の場面なども読ませはしますが、フーダニットとしては物足りなく思いました。翻訳が古いのも難点。 |
No.530 | 5点 | キング&クイーン 柳広司 |
(2010/06/23 21:18登録) ”米大統領からの刺客VS元女性SP”とか”チェス・ゲーム風の頭脳戦”などの先入観を持って読むと、薄っぺらでご都合主義的なサスペンスにがっかりさせられます。 |
No.529 | 5点 | 蒼林堂古書店へようこそ 乾くるみ |
(2010/06/23 21:09登録) ミステリ専門古書店の店主と常連客による日常の謎もの、連作ミステリ。 喫茶サービス付き古書店という設定や、各編とも古今のミステリの蘊蓄から入って自然と謎が提出されるというプロットは読んでいて心地よかった。 これで肝心のミステリ部分が充実していれば・・・・。 |
No.528 | 9点 | 三つの棺 ジョン・ディクスン・カー |
(2010/06/23 20:47登録) 密室講義である程度手の内を明かしておきながら、さらに高度な不可能トリックに挑んだということで、極度に複雑なプロット&トリックになっています。 カーの代表作であることに異論はありませんが、読者が最初に手を出す作品でもありません。「ユダの窓」や「かぎ煙草入れ」などと違って、仕掛けをひと言で表現できない複雑さが、この作品の長所であり短所でもあると思います。 |
No.527 | 9点 | 曲った蝶番 ジョン・ディクスン・カー |
(2010/06/23 20:31登録) 怪奇趣味が存分に発揮されたカーの個人的ベスト作品。 二人のジョン卿の真贋に関するスリリングな展開は最後まで物語に惹きつけられました。 トリックについては賛否が分かれるかもしれませんが、タイタニック遭難による後遺症がダイレクトに不可能トリックに結びつく趣向に感心しましたし、頭に浮かんでくるその状況から受ける衝撃は他の作品を圧倒していると思います。 |