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ミステリの祭典

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kanamoriさんの登録情報
平均点:5.88点 書評数:2516件

プロフィール| 書評

No.1516 7点 リンカーン弁護士
マイクル・コナリー
(2011/05/11 18:31登録)
高級車リンカーンの後部座席を事務所代わりにロサンジェルスを駆け巡る刑事弁護士ミッキー・ハラー登場。

コナリーの新シリーズはハードボイルド警察小説ではなくリーガル・サスペンスで、暴行事件の弁護を請け負ったハラーが邪悪なある人物によって窮地に陥るという巻き込まれ型のサスペンスでもある。
冒頭の引用文「無実の人間ほど恐ろしい依頼人はいない」というのは、同じ弁護士だったハラーの父親の言葉で、これが本書のテーマだろう。物語前半は、ハラーを中心とした人間関係や仕事ぶりに筆を費やしていてやや冗長と感じたが、法廷場面から俄然面白くなった。やはり、コナリーは何を書かしても巧い。

シリーズ第2作は、”異母兄弟”であるハリー・ボッシュ刑事との共演らしい。今年中に読めるのだろうか?これも楽しみだ。


No.1515 6点 眠たい奴ら
大沢在昌
(2011/05/10 19:06登録)
地方の温泉街を舞台にしたクライム小説。
組織から逃れてきた経済ヤクザとハグレ刑事が、その町の新興宗教団体が絡む利権争いに巻き込まれる、というストーリー。
どことなく「赤い収穫」を思わせる設定や、登場人物たちの思惑が入り乱れプロットが錯綜する中盤までは面白いのだが、着地点が途中で見えて来る予定調和的なところがあった。もっと弾けた展開を期待していたので、その点がちょっと残念。


No.1514 7点 サトリ
ドン・ウィンズロウ
(2011/05/08 18:02登録)
日本のシブミの精神を会得した凄腕の暗殺者、ニコライ・ヘル26歳の最初の暗殺任務を描いた冒険活劇小説。

「二代目トレヴェニアンになる気はあるか」という出版エージェントからのEメールが本書執筆の契機のようですが、「仏陀の鏡への道」を書き、仏教徒でもあるウィンズロウにとっては、「シブミ」の前日譚であるこの「サトリ」を書くことは宿命のようなものでしょう。

物語は「シブミ」の設定を忠実に活かしトレヴェニアンにオマージュを捧げながらも、単なる模倣小説になっておらず、160以上の章割りでアップテンポで疾走する物語はウィンズロウ節が全開。
上巻の北京潜入と暗殺実行へのプロセス、下巻の雲南省からインドシナに至る筏での急流下りやサイゴンのナイトクラブでのポーカーゲームのシーンなど、懐かしの正統派冒険小説のあらゆる要素が詰め込まれています。
「シブミ」がある事情でニコライの実行シーンをあえて描写しなかったのとは対照的に、本書上巻終盤の殺戮シーンは読み応えがある。結末の処理にやや不満がありますが、続編への含みを持たせたと思えばまあ納得です。

ウィンズロウの諸作のなかで飛び抜けた傑作とはいえないけれど、話題性を考慮したら年末のベストテン入りは確実でしょう。ニール・ケアリーの決め台詞風にいえば、ベストテン上位ランク・インは「決まり金玉!」(笑)。


No.1513 6点 龍の寺の晒し首
小島正樹
(2011/05/05 21:30登録)
”自称名探偵”海老原シリーズの最新作。
横溝の世界観に、島荘的奇想と物理トリックを幾つも詰め込んだ通称「やりすぎミステリ」ですが、今回も怪異な現象の真相が現実味に欠ける強引さで、トリックも乱歩が好んで使うような陳腐なものがあったり、読んでいてシラケる部分があった。

それでも、終盤の怒涛のどんでん返しの連続とエピローグの処理は面白いし、狂言回し役の若手刑事などの人物描写に進歩がみられるように感じたのでこの点数にした。


No.1512 7点 二流小説家
デイヴィッド・ゴードン
(2011/05/04 15:50登録)
冴えない中年作家の「ぼく」ことハリー・ブロックは、死刑囚として収監中の連続殺人鬼ダリアンから告白本の執筆依頼を受けるが、ダリアンの提示したある条件を履行するための取材中に、過去の連続殺人と同じ手口の惨殺死体に遭遇する----。

このように粗筋を書くと通常のサイコ・サスペンスのようですが、本書は、真の殺人鬼の正体は誰かという謎解き以外にも読みどころが多く、むしろ軽妙な文体で語られるプラスアルファのエピソード部分が楽しめる。
なによりも主人公ハリーを始め登場人物の造形が秀逸。複数のペンネームを使って、ハードボイルド、SF、ホラーからポルノ小説までのジャンル小説を書いて食いつなぐハリーの悲哀や、副業の家庭教師の生徒だった女子高生がいつのまにかハリーのビジネスパートナーになり尻を叩く役回りになる展開など、読んでいて思わず笑ってしまう。

ミステリの骨格としては弱いところもありますが、”ポケミスの新時代を担う技巧派作家”という紹介文に偽りなし。久しぶりに次作を期待したい新人作家の登場だ。


No.1511 7点 宮原龍雄探偵小説選
宮原龍雄
(2011/05/02 20:47登録)
主に’50年代に「宝石」誌上でトリッキィな本格短編を発表していた作者の初の作品集。鮎川氏や山口雅也編集のアンソロジーで既読の「三つの樽」「新納の棺」など、三原検事&満城警部補シリーズが10編収録されています。

上記の傑作2作を含め、不可能興味に拘った作品群がそろっていて楽しめましたが、短い枚数のなかに複数のトリックのみならず衒学趣向などいろんな要素を詰め込みすぎるきらいがあって、プロットがスッキリしない点が気になった。とくに「不知火」は、三つの不可能トリックを盛り込んでいるが、どうしても解決編が駆け足になってしまうのが惜しい。長編に仕上げれば傑作になっていたかもしれない。
そういう意味では、物語性豊かな伝奇風本格の中編「ニッポン・海鷹」が一番完成度が高いと思う。

ハウダニット作品が並ぶなか、「南泉斬猫」が異色で、唯一のホワイダニット。ユニークな動機に説得力を持たせる伏線が鮮やかで、初読の作品の中ではこれがベストかな。


No.1510 7点 暗い夜の記憶
ロバート・バーナード
(2011/04/29 19:12登録)
戦時下の学童疎開の一団の中に紛れ込んでいたサイモンと名乗る身元不明の子供。彼は村で養父母に育てられるが、20年以上経って偶然ロンドンの街中で記憶に残る家を見つける....というのがあらすじです。

作者中期の単発作品である本書は、幼い頃の記憶の断片の謎と同時に、主人公の自分探し(誰の子供か)の物語でもあります。
下宿者として潜り込む自身の親族一家の面々誰もが好きになれない人物造形で、このあたりはバーナードの持ち味が出ていて面白いし、伏線を回収した結末は皮肉が効いている。浅羽莢子氏の翻訳も読みやすくて良。

英国戦時下の世相が描かれていますが、国粋主義的な親独ファシスト組織の存在というのがちょっと意外だった。


No.1509 5点 モップの精と二匹のアルマジロ
近藤史恵
(2011/04/28 17:54登録)
女性清掃員キリコ&大介シリーズの4作目で初の長編。
タイトルや表紙絵から、コージー系の軽ミステリと思われがちですが、毎回シリアスなテーマでけっこう重たいのがこのシリーズの特徴。
平凡な女性と結婚したイケメン男性の隠された秘密が謎の中核で、途中でなんとなく真相に近いものが見えてきた。こういった心の歪みのようなテーマは、同じ作者の整体師探偵シリーズと共通するものを感じる。


No.1508 7点 ファイアフォックス
クレイグ・トーマス
(2011/04/27 18:17登録)
航空冒険小説の傑作。
ソ連の最新鋭ミグ戦闘機の強奪作戦というシンプルなプロットながら、スリル満点のシーンの連続で一気読みの面白さだった。
前半のミッチェル・ガントのモスクワ潜入とKGBの追跡、後半のソ連将軍との頭脳戦とミグ2号機との空中戦など、これぞ懐かしの正統派冒険小説という感じです。
名作の続編には失望させられることも多いが、本書の続編「ファイアフォックス・ダウン」は緊張感を持続しており共にお薦め。

ちなみに、航空冒険小説の私的ベスト5は、
本書と「シャドー81」「ちがった空」「双生の荒鷲」「超音速漂流」といったラインナップ。


No.1507 6点 七人の鬼ごっこ
三津田信三
(2011/04/26 18:01登録)
主人公であるホラーミステリ作家の幼馴染6人組が、30年前の小学生時代のある出来事の絡みで、次々と不審死していくというホラー風味の本格ミステリ。
ほとんど本筋に絡まない強烈キャラの大学教授を登場させ、その言動でギャグを連発させたり、主人公の終盤の謎解きが迷走し”一人多重解決”になっているのを揶揄されると、「刀城言耶先生の愛読者ですので」と言ってみたりで、ホラー一辺倒でないのはとっつきやすいかもしれません。
ネタバレになるけれど、引っかかるのは、7番目の電話の相手をあやふやなまま処理しているところ。ホラーならいいけど、本格ミステリとしてはアンフェアじゃないかな。


No.1506 5点 金色のでかい夢
チェスター・ハイムズ
(2011/04/25 12:59登録)
ハーレムの黒人刑事コンビ、棺桶エド&墓堀りジョーンズのシリーズ4作目。
黒人料理女がナンバーズ賭博で得た大金を巡って、元亭主、情夫、ユダヤ人故買屋らが争奪戦を繰り拡げるというストーリーで、以前読んだ「ロールスロイスに銀の銃」に似たプロットでした(本書のほうが先行作品ですが)。
警察小説ではなくクライム・ストーリーなのはいいですが、墓堀り&棺桶の出番がつけたしなのは物足りないですね。


No.1505 6点 縛り首の塔の館
加賀美雅之
(2011/04/24 20:37登録)
パリの予審判事ベルトランものの連作短編集で、不可能トリックが5連発。
中編なみの表題作が不可能興味抜群の力作で一番出来がいい。心霊術師の霊体による予告殺人の欺瞞を暴くという設定なので、奇術的トリックに不自然さを感じさせない。
2話目の「人狼の影」までは楽しめたが、徐々にトリックの必然性のなさと強引さが気になってきた。たしかに、なんでこんな面倒くさいことを...と思ったら、このタイプの探偵小説を楽しめないのでしょうが。


No.1504 4点 殺人にいたる病
アーナス・ボーデルセン
(2011/04/20 18:20登録)
名前から想像がつく通り、著者はデンマークの作家。作者の「轢き逃げ人生」という作品はどこかで聞いたような気もしますが、どういう作家かよく判りません。本書はタイトルに惹かれて読んでみました。
内容はちょっと難解。小説家である主人公が日記形式で、「デンマーク推理文壇№2の作家が殺人を犯す」という小説を執筆しているという入れ子構造のクライム小説ですが、作中作の場面と執筆中の現実の場面の境界線があやふやな描写がつづき、今どっちの小説家の話なのか、虚と実が分からなくなってくる。
解説にある”合わせ鏡の世界”という表現がピッタリな前衛的ミステリですが、最後まで読んでも、はたして真相を正しく理解できたのか判断がつかないのが困る。


No.1503 6点 放課後はミステリーとともに
東川篤哉
(2011/04/19 17:58登録)
ベストセラー作家どころか、いきおいで本屋大賞にまで登りつめてしまった東川センセーの最新作。先日たまたまテレビのインタビューで拝顔させてもらいましたが、戸惑い感まるだしで面白かった。

それはさておき、本書の高校生・霧ヶ峰涼君の事件簿は、2003年から昨年まで、比較的長いスパンで雑誌掲載されたもので、微妙に作風が変化しているように思える。第1話の広島カープ・ネタなどマニアックな(=一般受けしない)ギャグが、後半の作品になるほど抑えめになっているのはちょっと残念。

ミステリ的にも初期作品ほど出来がいい。とくに、第2話「霧ヶ峰涼の逆襲」は、物語の構図が次々と変転した末の真相が鮮やかで、編中のベストといえる傑作パズラー。
第1話の「~の屈辱」もパズルとして悪くはないが、あの叙述がフェアと読めるか微妙だと思う。「ミステリの仕掛けを堪能するために第1話からお読みください」という編集部の注記がヒントといえるかもしれないが。


No.1502 6点 ウォリス家の殺人
D・M・ディヴァイン
(2011/04/18 21:01登録)
ひとつ前に邦訳された「悪魔はすぐそこに」が非常によかっただけに、本作は個人的にはそれよりちょっと落ちる標準作かなと思います。
人物造形を丁寧に描きながら、相反するようにそれを逆手に取ったミスリードを得意とする著者の特徴は本作も出ています。ただ、館ミステリ風で多くの登場人物を最初からいやな感じに描いているのがディヴァインらしくないような気がします(これは好みの問題でしょうが)。真犯人を特定するクライマックス場面もあっさりしすぎで、盛り上がりに欠ける印象。


No.1501 6点 連続殺人鬼 カエル男
中山七里
(2011/04/17 17:49登録)
巷溢れるシリアル・キラーもので、既読感のある趣向が複数使われているうえに、表面的なプロットの骨格も某古典名作そのままですが、プラス・アルファの部分で面白いアイデアが取り入れられていて、ドンデンの連続のあとのラストの処理が秀逸でした。
難点は、精神治療の効果がいかにもご都合主義的なところで、肝となる”二重の意外な構図”に直接関係してくるだけにちょっと気になりました。
表紙絵とタイトル(応募時のタイトルのほうがマシ)でだいぶ損をしている気がする。


No.1500 4点 カーテンの陰の死
ポール・アルテ
(2011/04/16 17:10登録)
ツイスト博士シリーズの3作目。
本書は3名のミステリ作家に献辞されていますが、その一人、S・A・ステーマンの「殺人者は21番地に住む」の本歌取りのような、いわゆる”下宿もの”ミステリが趣向のようです。
作中の密室トリックを目当てに読むと、その真相に脱力すること必至で、不可能トリックよりもプロット重視の、終盤の暗転狙いといったところでしょうか。
いままで邦訳された作品のなかでは、一段出来が落ちるように思います。


No.1499 4点 終の希み
佐野洋
(2011/04/15 17:00登録)
文庫オリジナルの最新短編集。
作者紹介欄に1928年生まれとあるので、80歳前後に書いた作品をまとめたものということになる。意気盛んでなによりです。
連作の共通するテーマも「新しい老人たち」で、定年を迎えて悠々自適の生活をおくる老人を主人公にした日常の謎。頑固で理屈っぽい老人たちが何人か登場するのは、自然と作者自身を投影しているように思える。
ミステリ的には、軽いオチで終わるものが多いが、非常に薄味でちょっと物足りない内容でした。


No.1498 6点 目撃者を捜せ!
パット・マガー
(2011/04/14 16:42登録)
貨客船からの転落死が、状況からある人物による殺人とみなされるが、いるはずの目撃者がなぜか名乗り出ない。
次々と捻った設定の作品を書いたマガーの第4作は、船上というクローズド・サークル内の”目撃者捜し”。小品ながら、タイトルを始めとしてミスディレクションが効いた佳作でした。


No.1497 6点 ぼくの好色天使たち
梶龍雄
(2011/04/13 20:16登録)
戦争前後の学生を主人公にした初期青春ミステリ、「透明な季節」「海を見ないで陸を見よう」につづく三部作の3作目です。
娼婦連続殺人事件がメイン・プロットではあるものの、池袋の闇市など戦後間もない当時の風俗を描くことに力点が置かれ、ほろ苦い青春もので文芸色が強いのは前2作同様です。
ミステリ的には、動機やトリックにちょっと無理がある様に思いますが、適度にまかれた伏線の回収は相変わらず巧いと思います。

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