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ミステリの祭典

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文生さんの登録情報
平均点:5.87点 書評数:510件

プロフィール| 書評

No.250 7点 黄色い部屋の謎
ガストン・ルルー
(2022/06/09 09:56登録)
中学に入ったばかりのころに読んで魅惑の謎のつるべ打ちにワクワクした作品。トリックが段々しょぼくなっていくのはあれですが、最初の密室トリックは発表当時としては考えに考え抜かれたもので十分に楽しめました。個人的には、密室好きになるきっかけを与えてくれた記念すべき作品でもあります。ただ、黄金期以降の本格ミステリと比べると随分と回りくどくて中盤がだるいのがマイナス点。


No.249 8点 爆弾
呉勝浩
(2022/05/04 19:55登録)
人を殴って警察に連行された男。
最初は単なる酔っ払いだと軽くみていた刑事たちだったが、彼の予言した時刻に秋葉原で爆弾が爆発したことで色めき立つ。男は、爆発はまだまだ続くと告げ...。

目的も本名もわからない犯人との取調室での駆け引きは手に汗握りますし、犯人がすでに逮捕されているにも関わらず、事態がどんどん悪化していく展開もサスペンス満点です。後半次々と明らかになっていく意外な事実に驚かされ、そのうえ、個性豊かな警察官たちの群像劇としても読みごたえがあります。なにより、和製ジョーカーというべき犯人の存在感が強烈。最初から最後までヒリヒリとした緊張感に満ちた警察小説+サスペンスミステリの傑作です。


No.248 6点 捜査線上の夕映え
有栖川有栖
(2022/04/06 12:02登録)
冒頭で、昨今流行りの特殊設定ミステリに対して自分はあくまでも王道を貫くというアリスの宣言が頼もしく、作中の事件も地味ながら二転三転する展開は読み応え満点です。特に、監視カメラと容疑者たちのアリバイを検証するくだりは本格ミステリの醍醐味をたっぷり味わうことができます。
ただ、実際に用いられたトリックはあまりにも無理があり、アリスも作中でツッコミを入れるほどです。その後、なんだか無理があるところに意味があるという流れになっていくのですが、いくら無理のあるトリックを使った理由を力説されても納得はし難く、その辺りが大きな減点対象となっています。話自体は楽しめたので総合的には6点ぐらいが妥当かなと。


No.247 4点 クラウドの城
大谷睦
(2022/04/05 07:29登録)
元傭兵の警備員が密室殺人に挑むという、ハードボイルドと本格ミステリを組み合わせた物語は興味深く、引き込まれました。
ただ、IT企業のハイテクセキュリティに守られた堅牢な密室という割りに、トリックが単純すぎるのがものたりません。また、犯人の動機にいまひとつ説得力がなく、さらにいうなら犯人のキャラクター自体もちぐはぐな印象で、その結果、クライマックスでの対決シーンが盛り上がりに欠けたのが残念です。


No.246 2点 密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック
鴨崎暖炉
(2022/03/15 10:40登録)
密室殺人が盛りだくさんなのはいいのですが、やたら複雑なものばかりで種明かしをされた時の驚きに欠けるのが難。しかも、事件が起きるやいなや探偵がトリックを解いてしまうのでだんだん密室殺人自体がどうでもよくなってしまいす。一番最後の密室トリックだけはシンプルで悪くないものの、そこに至るまでにすっかり食傷してしまいました。

何より冒頭で、
国内で初めての密室殺人が起こり、容疑者が逮捕されたものの、「どんなに怪しくても現場が密室である限り無罪」という判決が出て日本中に衝撃が走り、以後密室殺人が大流行した。
という説明があるのですが、これには納得しがたいものがあります。

犯行が不可能なのに容疑者を有罪にすればそれこそ大問題ですし、容疑者を有罪にしたければ密室のトリックを解明すればいいだけです。その点はアリバイ工作となんの違いもないわけで、ようするに裁判官は極めて常識的な判決を下したにすぎません。それに対して国民が衝撃を感じたり、ましてや密室殺人が大流行したりはしないでしょう。また、作中では行うことに何の価値もない密室殺人と蔑まれてきたとの記述がありますが、密室トリックは事故や自殺に見せかける方法としては大いに有効なはずです(ちなみに、2012年9月の岐阜県各務原市における事件など、現実世界でも密室殺人は発生しており、岐阜県の事件の場合は一時自殺説に傾きつつも、結局捜査員がトリックを解明して犯人を逮捕しています)。

というわけで自分の密室観とはとことん合わず、読んでいてストレスが溜まる作品でした。


No.245 7点 自由研究には向かない殺人
ホリー・ジャクソン
(2021/11/08 12:51登録)
過去の事件を洗い直していくという警察小説によくあるパターンのプロットですが、それを女子高生の主人公が自由研究として行っていくという形式に新鮮味があります。
関係者へのインタビューと粘り強い調査によって意外な事実が少しずつ明らかになっていく物語は捜査小説として一級の面白さですし、二転三転する終盤の展開も読み応えありです。
主人公の ピップと相棒のラヴィの好感度も高く、青春ミステリとしては申し分ない出来だといえるでしょう。


No.244 6点 居酒屋「一服亭」の四季
東川篤哉
(2021/11/06 13:06登録)
初代に代わって2代目安楽椅子(あんらく・よりこ)が探偵役を務める『純喫茶「一服堂」の四季』の続編連作ミステリーです。代替わりしてもやってることは相変わらずで、接客業をしているのが不思議なレベルの人見知りからの毒舌推理は安定の面白さです。また、恒例の猟奇殺人トリックも現実性には乏しいものの、あの手この手で楽しませてくれます。そのなかにあって、個人的には地味な仕掛けながらも盲点を突いたロジックが光る「鯨岩の片脚死体」がベスト。


No.243 1点 月の落とし子
穂波了
(2021/11/06 12:27登録)
月面に降り立った宇宙飛行士が謎の死を遂げ、それが未知のウィルスによるものだと判明するまでは緊迫感に満ち、読み応えがあります。
しかし、面白いのはそこまで。
宇宙船のクルーたちが危険なウイルスに汚染された死体を回収して地球に持ち帰りたいと言い出したのには唖然としてしまいました。しかも、その理由が仲間を故郷の土で眠らせてやりたいからという超センチメンタルなもの。とても科学者の態度とは思えません。そのうえ、パンデミックの危険性があることを承知しながら、結局、死体の回収を許可してしまうNASAの判断の甘さも信じがたいものがあります。日本に舞台を移してからも、ヒューマニズムを取り違えた独善的な言動のオンパレードなので読んでいるあいだ常にイライラしていました。根本的に自分とは相容れない作品です。


No.242 5点 倒産続きの彼女
新川帆立
(2021/10/29 12:01登録)
ベストセラーを記録した『元彼の遺言状』の続編ですが、主人公は剣持麗子の後輩弁護士である美馬玉子にチェンジし、麗子自身は脇に回っています。とはいえ、玉子は麗子と比べると地味ではあるものの、ぶりっ子気質など十分個性的でキャラ立ちという点では申し分ありません。また、ある女が転職するたびに転職先の会社が倒産するという謎も魅力的ですし、作者が弁護士だけあって真相を究明していくプロセスにも説得力があります。
ただ、終盤に謎の組織の存在が明らかになり、しかも、その組織が今後宿敵となっていくような雰囲気になっていったのが個人的には残念でした。途中までは面白かったのですが、ジャンルが本格からスリラーへとシフトした点が好みではないので評価は低めです。


No.241 5点 元彼の遺言状
新川帆立
(2021/10/27 21:06登録)
語り手である女弁護士・剣持麗子の強烈な個性と「自分を殺した者に全財産を譲る」という奇妙な遺言状の謎で読者の興味を引きつける手管はかなりのものです。ただ、肝心の遺言状に関する真相は素晴らしいとは言い難いものがあります。「あれだけ強烈な謎を提示しておいて真相がそれ?」って感じで、例えるならクイーンの『チャイナ橙の謎』における逆さ殺人の真相を知った時に似たがっかり感です。


No.240 6点 野球が好きすぎて
東川篤哉
(2021/10/06 12:15登録)
本格ミステリとしては小粒ですが、野球ネタが満載で野球好きな人には堪らない作品です。また、登場人物も探偵・犯人・証人・被害者と、ヒロインの女刑事を除く登場人物のほとんどが野球狂なのでしゃべるたびにいちいち野球を引き合いに出してくるのが楽しい。特に、捜査そっちのけですぐに野球でマウントをとろうとするヒロインの父親&上司のキャラが秀逸です。


No.239 7点 密室は御手の中
犬飼ねこそぎ
(2021/10/06 11:25登録)
いまどき珍しく、特殊設定や叙述トリックに頼ることなく密室殺人に真正面から挑んだ作品です。2件の密室殺人と100年前の人間消失がありますが、白眉なのは第1の密室殺人でかなりユニークな密室トリックが用いられています。また、第2の密室殺人はトリックこそ小粒なものの、真相が暴かれるまでに二転三転して手に汗握ります。それ以外にも、全編を通していくつもの仮説が飛び交ってまるで推理合戦の様相を示しており、パズラー好きの人にとってはたまらない作りです。

なお、動機に説得力がないというか、ほとんど意味不明だという問題がありますが、その辺は推理には関係ないのでスルーすることをおすすめします。


No.238 5点 愛国殺人
アガサ・クリスティー
(2021/10/06 09:50登録)
歯科医院を舞台にした殺人はなかなかユニークですし、複数の小粒なトリックを上手く活用した仕掛けもクリスティらしくて悪くないのだけど、なぜかのれない作品でした。やはり、クリスティのミステリーに政治的なテーマはそぐわないということでしょうか?機会があれば再読に挑戦してみたい作品です。


No.237 6点 運命の証人
D・M・ディヴァイン
(2021/09/29 08:21登録)
若手弁護士が2件の殺人容疑で逮捕された事件についての裁判の行方が描かれる一方で、過去に何があったのかをカットバック方式で挿入していく構成が秀逸です。読者にとっては2件の殺人があったことは理解できるものの、誰が殺されたかは不明なので緊迫感のある展開を楽しむことができます。また、さりげなく伏線を張り巡らせて最後に回収する手管も見事です。

ただ、これといったトリックや仕掛け、あるいはびっくりするようなどんでん返しといったものは皆無なので、本格としてはいささか小粒に感じます。それから、奥手のくせに間の悪いタイミングで女性に手を出しては窮地に追い込まれる主人公には若干イライラ。


No.236 4点 魔の山
ジェフリー・ディーヴァー
(2021/09/28 06:21登録)
懸賞金ハンターであるコルター・ショウの活躍を描いたシリーズ第2弾。
今回の話は、追いつめた犯人に目の前で投身自殺を図られ、しかも、彼にかけられていた容疑が冤罪だったことから責任を感じたショウが事件の背後にあるカルト教団に潜入し、その実態を暴いていくというもの。

大御所の筆力でそれなりに読ませるものの、中身はどこかで聞いたことのあるようなカルト教団暴露エピソードの寄せ集めといった感じで新鮮味はなし。
ミステリーとしても特にヒネリはなく、いささか期待外れ。



No.235 8点 読者よ欺かるるなかれ
カーター・ディクスン
(2021/09/27 21:34登録)
従来の不可能犯罪とは異なり、死因不明の殺人という設定が当時としては斬新。
そのうえ、挑戦的なタイトルも本格好きにとってはぐっとくるものがあります。
メインとなるトリックは単純なものですが、ミスディレクションの技巧によって読者をミスリードしていく手管が見事です。
おまけに、予言や念力といったガジェットが話を盛り上げてくれます。
同時期の有名作に隠れがちですが、個人的にはかなり好きな作品です。


No.234 3点 盲目の理髪師
ジョン・ディクスン・カー
(2021/09/27 21:17登録)
ドタバタ劇にまったく面白味を感じられず、読むのが苦痛に感じました。
そのうえ、真相もパッとしなくてがっかり。
個人的には30年代カーのワースト作品です。


No.233 5点 白と黒
横溝正史
(2021/09/27 20:58登録)
社会派ミステリ全盛の時代に発表された作品で、その影響か舞台は古い因習が残る田舎の農村でも大富豪の屋敷でもなく、集合団地という金田一シリーズとしてはかなり珍しい作品になっています。

そうした現代的な舞台でコールタール漬けの死体が発見されたり、どんぐりころころの歌詞になぞらえた童謡殺人が起きたりするのはそれはそれで目新しい感じがして悪くありません。

ただ、話が長い割に著者の代表作と比べると盛り上がりに欠け、ミステリーとしても特筆すべき点がないので満足度は低め。


No.232 7点 心理試験
江戸川乱歩
(2021/09/24 19:18登録)
いまとなっては少々単純すぎるきらいはあるものの、切れ味鋭い明智小五郎の分析にはやはり引き込まれます。同じ心理分析でもヴァン・ダインが2年後に発表する『カナリア殺人事件』とは説得力が段違いです。この手のジャンルの最高峰の一つだといえます。


No.231 8点 楽園とは探偵の不在なり
斜線堂有紀
(2021/09/23 18:00登録)
何をもって人を殺したと判断するかという定義が曖昧など、本格ミステリとしては粗いところはありますが、2人殺すと天使によって地獄に引きずり込まれるという終末感あふれる世界観には大いに引き込まれていきました。また、そうした特殊設定を利用したトリックもなかなかにユニークです。個人的には元ネタのSF小説『地獄とは神の不在なり』よりも面白かったです。ただ、癖が強い作品なので人によって好みが大きく分かれそうではあります。

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