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ミステリの祭典

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E-BANKERさんの登録情報
平均点:6.00点 書評数:1868件

プロフィール| 書評

No.68 7点 硝子のハンマー
貴志祐介
(2009/09/13 17:38登録)
防犯コンサルタント・榎本を主役とするシリーズ第1弾。
ホラー小説の雄である作者が初めて書く「本格ミステリー」。
~見えない殺人者の底知れぬ悪意。日曜の昼下がり、株式上場を目前に、出社を余儀なくされた介護会社の役員たち。エレベーターには暗証番号、廊下には監視カメラ、有人のフロア。厳重なセキュリティ網を破り、自室で社長は撲殺された。凶器は。殺害方法は。すべてが不明のまま、逮捕されたのは、続き扉の向こうで仮眠をとっていた専務・久永だった。弁護士・青砥は久永の無実を信じ、防犯コンサルタント・榎本ももとを訪れるが・・・~

「よくできてる」ミステリー。
ここまで堅牢な「究極の密室」。それも、現代科学の粋を集めたセキュリティ技術で作られた「密室」。
これまでよく出てきた「準密室」といった中途半端なものではありません。
そこに、作者独自のアプローチを感じ取るわけです。

終盤、突然犯人側視点に切り替わるのがどうかというところですが、そんなに違和感なく読めるのでは?
防犯コンサルタントという探偵役の設定もいいトコロ突いてるでしょう。
まずは、作者の力量を十分に感じさせてくれる良作。


No.67 2点 新・寝台特急殺人事件
西村京太郎
(2009/09/12 23:41登録)
トラベルミステリーの元祖とでもいうべき、氏の「寝台特急殺人事件」刊行25周年を記念して発表された作品。(だから、「新」がついてます)
はっきり言って、読むだけ時間の無駄でしょう。旧作とは比べ物になりません。


No.66 6点 光る鶴
島田荘司
(2009/09/12 23:29登録)
短編集。何かしみじみした作品。
表題作は、これまで何度もあった「冤罪事件&吉敷刑事」の組み合わせですが、このペアの相性の良さを感じさせます。
「吉敷竹史の肖像」はミステリーというか、青春小説という趣き。吉敷ファンにとっては、若き日の彼の姿を知ることができて良いのではないでしょうか。
「電車最中」はおまけみたいな短編。


No.65 9点 斜め屋敷の犯罪
島田荘司
(2009/09/12 23:17登録)
御手洗潔シリーズ初期の名作中の名作。
今回、新装ノベルズの完全改訂版で再読。
オホーツク海を見下ろす宗谷岬に傾斜して建つ奇妙な館・・・通称「斜め屋敷」。雪の降る聖夜に開かれたパーティー、そして翌朝、堅牢無比な密室の中で発見された招待客の死体・・・
何て魅力的な設定でしょうか! ミステリー作家なら一度は書いてみたいプロットでしょうし、ミステリーファンならばこれこそ一番の「大好物」。
とにかく、初読のときの「衝撃度」がスゴかった。巻頭にある斜め屋敷の「図」・・・ここに作者の企みが凝縮されています。
加えて、なぜ「斜めに傾いているのか?」・・・ラスト、御手洗の解決編を読んだときに、すべてが腑に落ちていきます。
島田氏にしては珍しく、本筋に余計な薀蓄話やサイドストーリーを一切挟まず、たいへんシンプルな構成ですし、そこにも好感が持てます。
真相解明以降に明かされる「動機」については、C.ドイルの名作「緋色の研究」にオーバーラップしてきます。
というわけで、ミステリー中毒ならば是非一度は手にとって読まなければいけない一冊と断言します。
これを「バカミス」と否定的に見る方もいるかもしれませんが、まぁいいじゃありませんか、「バカミス」でも! こんな迫力のある作品を書ける作家は二人といないはずです。
(牛越刑事が戸惑うだけで、全く活躍できなかったのが唯一の不満。もう少し、渋い役どころを与えて欲しかったなぁ・・・)


No.64 6点 シャドウ
道尾秀介
(2009/09/12 22:58登録)
作者初期の長編作品。
ミスリードの技巧が冴えてます。
~「人は死んだらどうなるの。いなくなって、それだけなの?」。その会話から3年後、凰介の母親は病死した。父と2人だけの生活が始まって数日後、幼馴染の母親が自殺したのを皮切りに、つぎつぎと不幸が・・・父とのささやかな幸せを願う小学校5年生の少年が、苦悩の果てに辿りついた驚愕の真実とはなにか。いま最も注目される俊英がはなつ、巧緻に描かれた傑作~

紹介文のとおり「うまい」作品。
普通に読んでると、作者のミスリードに嵌って、確実に騙されます。
精神性疾患や幼児虐待という「テーマ」を見せながら、読者が自然に「一方向の考え」に陥るように仕向ける・・・
いったい、誰が狂っているのか、誰が本当の悪人なのか?
個人的にはもう少し捻って予想していたため、ラストの種明かしについてのサプライズ感はやや中途半端でしたかねぇー
(ちょっときれいすぎる感じ)

まぁ、ハッピーエンドで終っていて読後感はいいですし、十分に楽しめるレベルの作品なのは確かでしょう。
(人間って、割と簡単に狂えるんですよね)


No.63 6点 鳴風荘事件
綾辻行人
(2009/09/09 22:36登録)
「殺人方程式」に続く、明日香井兄弟シリーズの第2作目。
「館」シリーズとは一味違った、純粋パズラー小説。
~奇天烈な洋館に集まった人々は目を疑った。6年前に殺された女流作家そっくりに、その妹が変貌していたのだ。そして、姉の事件と同じ月食の晩に悲劇が彼女を襲う。不思議な力を持っているという黒髪を切られるという手口も酷似して! 必要な手掛かりをすべて掲示して読者へ挑戦する新本格ミステリーの白眉~

やっぱり、前作よりは落ちるという印象。
「本格物らしい本格物を書くつもりで書いた」と作者あとがきでありますが、まずは提示される「謎」そのものが小粒な感があります。
特に、「なぜ被害者の黒髪が切られたのか」については、本作の中心的な仕掛けでありながら、ミステリーファンには「見え見え」ではないでしょうか?
その辺、もう少し捻りが欲しかったなぁ。

ロジックの積み重ねで、真相を暴いていくというスタイルは好ましいと思えますし、個人的に好きなシリーズですので、評点はこんなもんで・・・
(是非、新作が読みたいシリーズなんですけどねぇ。無理かな?)


No.62 6点 交渉人
五十嵐貴久
(2009/09/09 22:28登録)
途中までは、警視庁一の腕利き交渉人(ネゴシエーター)と病院立てこもりグループとの闘いを良いテンポで描いており、質のいい映画のような展開です。
後半に入ると話が一転、主役が入れ替わり、「実は・・・」という驚きのラストを迎えます。
なかなか練られていると思いますし、水準級の面白さは感じます。


No.61 5点 マレー鉄道の謎
有栖川有栖
(2009/09/09 22:15登録)
一連の火村助教授シリーズでは上位、作者全体としては中くらいの出来の作品。
目張りを施した部屋の密室についてはまあまあの出来ですが、真犯人の意外性のなさをはじめ、なにか全体的に物足りない印象が残る。まぁ、シリーズ全体でも言えることですが・・・
ちなみに、マレー鉄道に関する謎は特に出てきません。


No.60 6点 地獄の奇術師
二階堂黎人
(2009/09/07 22:28登録)
二階堂蘭子の探偵譚第1章。
作者の記念すべきデビュー作。
~十字架屋敷と呼ばれる実業家の邸宅に、ミイラのような男が出現した。顔中に包帯を巻いた、異様な格好である。自らを「地獄の奇術師」と名乗り、復讐のためにこの実業家一族を皆殺しにすると予告したのだ。「地獄の奇術師」の目的は何なのか? 女子高生で名探偵・二階堂蘭子の推理が冴え渡る~

「江戸川乱歩」の世界が甦った!というべき雰囲気。
時は昭和40年代。かろうじて、東京郊外であれば、まだ夜の闇に怖さが残っていた時代なのでしょう。
それ以上に、現代であれば当然行われる「DNA鑑定」などの先進的科学捜査が、まだ運用されていなかった時代、という方がより重要な時代設定なのでしょう。
しかし、前半のくだりはどうなんでしょうねぇ・・・
昔読んだ、怪人二十面相シリーズを彷彿させる、ゾクゾクさせるような展開。
あまりにも大時代的すぎて、ついていけなくなる読者も多いことでしょう。
2作目(「吸血の家」)以降は、大掛かりなトリックで、読者の度肝を抜くようなプロットが登場しますが、本作ではその辺りが弱くて、中途半端。
まぁ、意外な真犯人とその動機が本作の「肝」だとは思いますが、ちょっと荒唐無稽な感がどうしてもつきまといます。

ただ、本シリーズの作品中には、本作のエピソードがたびたび登場しますので、シリーズ作を読まれる方にとってはどうしても避けて通れない1冊とは言えるでしょう。
(しかし、「地獄の奇術師」なんてネーミング! 二階堂氏以外は付けないだろうなぁ・・・)


No.59 5点 暗黒館の殺人
綾辻行人
(2009/09/07 21:52登録)
「館」シリーズ第7作目にして、一応のラスト作品。(まだ続くようですが・・・)
ノベルズ版で上下分冊という、シリーズ最長のボリューム。
~九州の山深く、外界から隔絶された湖の小島に建つ異形の館・「暗黒館」。光沢のない黒一色に塗られたこの浦登家の屋敷を、当主の息子・玄児に招かれて訪れた学生・中也は、「ダリヤの日」の奇妙な宴に参加する。その席上、怪しげな料理を饗された中也の身には何が起こる? 続発する殺人事件の無意味の意味とはなにか? シリーズ最大・最深・最驚の「館」、ここに落成~

これは「長すぎ」でしょう。
「出るぞ、出るぞ」という前振りだけで、長いこと待たされた作品ですが、結果がこれでは・・・ツライところ。
何か、ミステリーというよりは、ファンタジー作品を読んでる気がしました。
ロジックやらトリックとは基本的に無縁な作品ですねぇ。
「館」シリーズの完結編がこれでいいんでしょうか?
もちろん、最後に明かされる「アレ」には一応驚かされましたし、そこにやっと「完結編」の意味を見出したわけですが・・・

まぁ、細かい部分がどうこうっていう作品じゃないですけど、作者のファン以外にはキツイ作品じゃないでしょうか。
高評価はちょっと無理かな。


No.58 3点 重力ピエロ
伊坂幸太郎
(2009/09/07 21:43登録)
すみません。どこが面白いのかよく分かりませんでした。
作者の作品は初めて読みましたが、続けて読んでいこうという気には今のところならない感じです。
何というか、読みながらのドキドキ感やワクワク感が全く味わえませんでした。


No.57 6点 そして名探偵は生まれた
歌野晶午
(2009/09/05 23:23登録)
一番面白かったのは「生存者一名」ですかねえ。最後のどんでん返しというか、オチは効いていると思います。
「館という名の楽園で」も水準級の作品です。「館」好きなら読んでみてもよいのではないでしょうか。
あとは、正直覚えていない・・・


No.56 7点 仇敵
池井戸潤
(2009/09/05 23:18登録)
大銀行を退職に追い込まれ、地方銀行の庶務係に左遷させられた一人の男を主人公にした連作短編集。
本作を含めて、作者はこういった連作短編集が得意ですね。本作では、銀行の1支店を舞台として、さまざま事件が起こりながら、それがラストにつながっていきます。
銀行の内幕なんかも書かれていますが、詳しくない方も十分楽しめます。


No.55 8点 毒猿 新宿鮫II
大沢在昌
(2009/09/05 23:10登録)
「新宿鮫シリーズ」の第2作目。
台湾から来た殺し屋、その名も「毒猿」。シリーズ屈指の感動作。
~歌舞伎町の女・奈美。孤独な彼女が心惹かれる外国人・楊は、謎の影を持つ男だった。一方、「新宿鮫」と恐れられる新宿署刑事・鮫島は、完璧な職業兇手(殺し屋)が台湾から潜入していることを知る。「毒猿」と呼ばれる男が動き始めた刹那、新宿を戦慄が襲う! 鮫島は恐るべき人間兇器の暴走を止めることができるのか?~

「名作」の名に恥じない作品。
とにかく、新宿御苑を舞台に描かれるラストが秀逸。
傷を負いながらも、まさに神がかりの強さでヤクザたちを次々に血祭りにあげていく「毒猿」。そんな相手に、1人で挑んでいく孤高の男・鮫島!
何とも言えない緊張感が読者の心を捕らえて離しません。
そして、ついに迎える悲しい終局には美しささえ感じてしまう・・・

本シリーズでは、1作品ごとに魅力的なサブキャラクターが登場しますが、本作では、台湾から「毒猿」を追ってやって来た刑事・郭がいい味出してます。
銃撃戦で鮫島の身代わりになり命を落としてしまう郭、そして「毒猿」の逮捕を鮫島に託すシーン・・・まさに名場面です。
胸が震えるようなシーンの連続!
感動を覚えること必死の作品。


No.54 8点 新宿鮫
大沢在昌
(2009/09/05 23:00登録)
まさに記念すべき「新宿鮫」シリーズの第1作目。
この作品が、この後20年以上も続いていく超人気シリーズになるとは、このとき誰が想像したでしょう。
~ただ独りで音もなく犯罪者に食いつく・・・「新宿鮫」と恐れられる新宿署刑事・鮫島。歌舞伎町を中心に警官が連続して射殺された。犯人逮捕に躍起になる署員たちをよそに、鮫島は銃密造の天才・木津を執拗に追う。待ち受ける巧妙な罠。絶体絶命の鮫島。登場人物の圧倒的な個性と最後まで息をつかせぬ緊迫感~

もはや書評の必要もない作品でしょう。
大沢氏は本作発表まで、これといったヒット作にめぐまれず、不遇を囲っていた作家でしたが、それまでの鬱憤を全て晴らすが如く、才能を見事に開花。
いやぁ、とにかく登場人物がこれほど魅力的&個性的に書かれた作品(シリーズ)には、いまだにお目にかかれません。
そして、何とも言えない緊張感溢れる展開。
手に汗握りながら、終盤を迎え、感動のラストでは涙さえ流したくなる・・・
これぞ、エンターテイメントの到達点とさえ感じてしまいます。

本作では、改造銃の名手・木津に絶体絶命のピンチに追い込まれた鮫島を、普段は「昼行灯」と思われていた上司の桃井警部が救出するという、シリーズ通しての重要な場面が出てきます。(これだけでも必読)
孤独な闘いを強いられきた鮫島にわずかながらでも差してきた光明。
桃井や、藪、そして晶・・・今後のシリーズでも重要な人物たちもすべて登場。
本シリーズは、是非順番に読んでいただきたい!
中途半端な読書はして欲しくないとさえ言いたい!(それくらいの「思い」なのです)


No.53 7点 8の殺人
我孫子武丸
(2009/09/03 23:00登録)
速水3兄弟シリーズの第1弾にして、作者の処女長編作品。
速水警部補と木下刑事の迷(?)コンビぶりもかなり面白い! 新装版で再読。
~建物の内部にある中庭が渡り廊下で結ばれた通称「8の字屋敷」で起きたボウガンによる殺人事件。最初の被害者は鍵をかけ、人が寝ていた部屋から撃たれ、2人目は密室のドアの内側に磔になる。速水警部補が推理マニアの弟、妹ともにこの難解な謎に挑戦する!~

個人的に好きな作品。
もちろん、多くの方が指摘するようにアラの目立つ作品ではあります。
「8」という形状自体、すでにトリックのネタバレではないかというのはたいへん尤もなご指摘。
でも、いいではないですか。
時は、新本格の作家たちが次々と登場していた頃。
そもそも、デビュー作品から高い水準を求めようとするのが土台無茶な要求というものです。
大胆かつサプライズ感のあるトリック。意外な真犯人。そして、魅力的な登場人物・・・
十分に、期待には応えているように思うのですが・・・
(評価が甘すぎるのでしょうか?)


No.52 6点 十角館の殺人
綾辻行人
(2009/09/03 22:47登録)
「館」シリーズ第1作というよりも、「新本格」というミステリーの一大ムーブメントの端緒となった記念すべき作品。
現代日本のミステリー界にとっても、重要な作品という位置付けでしょう。
今回、新装版で久々に再読。
~十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島を大学ミステリー研究会の7人が訪れた。館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死したという。やがて、学生たちを襲う連続殺人の魔の手。ミステリー史上最大級の、驚愕の結末を読者が待ち受ける。1987年の刊行以来、多くの読者に衝撃を与え続けた名作~

本作の評価なんて「今さら」なのでしょうが・・・
個人的には、世間的な評判ほどの評価はしていないといういのが本音。(もちろん、歴史的な価値については別にして)
確かに、ラストの衝撃(例の人物のセリフですよね)については、「驚愕」という形容詞がピッタリかとは思うし、処女作とは思えないほど練られたプロットなのは間違いないところでしょう。
ただねぇ、「いかにも」という感じで呈示された「十角館」が、トリックに何の関係もなかったり、「動機」の件はいくらなんでも不自然。
(それだけの事件が過去に起こっていたなら、普通気付くだろ!)
「館」シリーズでいうなら、個人的には「時計館」の方が何倍も面白かったし、評価すべき作品だという気がします。

というわけで、あくまでも平均点というのが、本作に対する評価になってしまいますね。
(「エラリイ」や「ポオ」なんていうニックネーム、恥ずかしいだろ!)


No.51 7点 殺人方程式
綾辻行人
(2009/09/03 22:37登録)
わずか2作品でしか書かれなかった明日香井兄弟シリーズの第1弾。
久々に再読。
~新興宗教団体の教祖が殺害された。儀式のために籠っていた神殿から姿を消し、頭部と左腕を切断された死体となって発見される。厳重な監視の目をかいくぐり、如何にして不可能犯罪は行われたのか。2か月前、前教祖が遂げた奇怪な死との関連は? 本格ミステリーの会心作!~

個人的に綾辻作品のなかで、気に入っている作品。
一言でいえば、「ミステリーの教科書」のような作品という気がします。
大掛かりなトリック、意外な真犯人など、本格ミステリーのギミックが満載で、特に作者には珍しい物理トリックが味わえる。
伏線は割りとあからさまに示されており、殺害方法が分かれば自ずから真犯人が判明するので、読者が真相に迫ることも十分可能でしょう。
難を言えば、やや型に嵌めすぎているところですかねぇー
まだまさ若き日の作品ですし、仕方ないかもしれませんが、双子の探偵などもう少しうまい具合に使えたんじゃないかなという感じ。
全体的には、「館」シリーズの凡作よりはこちらの方がよっぽどマシという評価です。
(新興宗教の教祖が頭部を切断されて殺害されるというのは、同じ頃に発表された法月氏の「誰彼」と同じプロット・・・偶然ですかね?)


No.50 8点 容疑者Xの献身
東野圭吾
(2009/08/30 18:29登録)
ガリレオシリーズ、初の長編。
映画も大ヒットした直木賞受賞作品。
~天才数学者でありながら不遇な日々をおくっていった高校教師の石神は、1人娘と暮らす隣人の靖子に密かな想いを寄せていた。彼女たちが前夫を殺害したことを知った彼は、2人を救うために完全犯罪を企てる。だが、皮肉にも石神のかつての親友である物理学者の湯川学がその謎に挑むことになる~

評判どおりの佳作。さすがです。
いまさら書評どうのこうのという作品ではないような気がします。
(直木賞&日本推理協会賞受賞、しかもこのミス1位ですから)
トリック云々はあまり気にせず、石神バーサス湯川の知恵比べというか、湯川の悲壮な謎解きを味わうべきでしょう。
しかし、男ってかわいいもんです。
今の世の中、女性からの「献身」や「純愛」なんて望むべくもないでしょうから・・・
有名になりすぎたので、逆に嫌う方もいるかもしれませんが、読まないと損する作品という評価でいいでしょう。
(東野圭吾と二階堂黎人の本格論争なんてありましたが、そんなこと読者が気にする必要はありません。何が「本格」かなんてどうでもいいことです)


No.49 6点 葉桜の季節に君を想うということ
歌野晶午
(2009/08/30 17:58登録)
「このミス」第1位にも輝いた作者の代表作。
素直に読めば、騙されること請け合い(!?)でしょう。
~「何でもやってやろう屋」を自称する元私立探偵・成瀬将虎は、同じフィットネスクラブに通う愛子から悪質な霊感商法の調査を依頼された。そんな折、自殺を図ろうとしているところを救った麻宮さくらと運命的な出会いを果たして・・・~

確かに「えーっ!!」と思わされる。
それは間違いないでしょう。
後から読み返すと、そこかしこに伏線は張られてますし、何となく「チクリ」とした違和感は感じてましたから・・・
ただ、それだけなんですよねぇ。
作者のこれまでのキャリアや積み上げたスキルが凝縮された作品なのだとは思いますが、あまり感じなかったなぁー
あらゆる賞を総なめし、ハードルを上げつつ読んだので、どうしても評価が辛くなってしまう。
(これからの時代、将虎のような人々が主役になっていく可能性は十分ありますよねぇ)

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