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ミステリの祭典

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メルカトルさんの登録情報
平均点:6.04点 書評数:1924件

プロフィール| 書評

No.224 6点 死なない生徒殺人事件 識別組子とさまよえる不死
野﨑まど
(2012/07/01 21:43登録)
永遠の命をもった生徒が存在する、という密かな噂がある名門私立藤凰学院(女子高)に新しく赴任した、生物教師の伊藤。
彼は後日、その「死なない生徒」だという女生徒に声を掛けられるが、彼女はその後しばらくして頭部を切断された死体となって発見される。
犯人はいったい誰なのか、なぜ頭部を切断されたのか?
といったストーリー展開で、この事件は連続殺人に発展する。
少しミステリを齧った読者なら、容易に犯人は予想できるはずだし、首を切った理由も想像がつくだろう。
しかし、問題は勿論それだけに留まらない。
つまり、死なないはずの生徒がなぜ殺されたのか、という究極の命題が残されている。
ライトノベルでありながら、新たなミステリの形を提唱しており、“不死”の定義付けという難しいテーマに挑戦する姿勢は立派だと思う。
ただし、最終的な解決は首肯できかねる部分もあり、若干不満が残るが、なかなか面白く読ませてもらったのも事実ではある。


No.223 7点 神様ゲーム
麻耶雄嵩
(2012/06/27 21:31登録)
これは少なくとも子供向けの読み物ではないね。
特に前半の連続野良猫殺害事件は、本件には殆ど関連性がなく、神様である鈴木君の存在を際立たせるために書かれたとしか思えない。
とは言え、これが全く必然性がないとも言い切れないところもある為、一連の流れとして捉えた場合、不自然さは感じさせない。
それにしても、この捻れたラストは一体何なのだろう。
さすがに麻耶雄嵩氏、一筋縄ではいかない。
もう一度最初から読み直しても、私には本当の真相を見抜く自信がない、誰かネタバレ覚悟で私にこの結末の意味を教えていただけないだろうか。


No.222 7点 小説家の作り方
野﨑まど
(2012/06/22 22:14登録)
この世で一番面白い小説のアイデアを閃いてしまったので、小説の書き方を教えてほしい、という旨のファンレターをもらった駆け出しの作家、物実。
彼はその後、ファンレターの相手と直接会い、彼女に小説の書き方を初歩からレクチャーする事になる。
ここまで読んで、ちょっぴり恋愛風味で味付けされたファンタジーなのかと思っていたが、突然現れる謎の女性が登場してからとんでもない展開に発展していく。
無論、ミステリ好きには願ってもない展開なのだが・・・
これ以上は、これから本作を読もうとする人の興を削ぐ事になるので書けないが、期待していた以上に面白い。
中盤まではまったりと進行していくが、後半は見違えるようにテンポが良くなり、一気に読み進められる。
いわゆるライト・ノベルだが、正直これはお薦めの一作なのは間違いないだろう。


No.221 6点 星を継ぐもの
ジェイムズ・P・ホーガン
(2012/06/17 21:44登録)
あまりの高評価につい読んでみたが、私の弱い頭ではストーリーに付いていくのがやっとで、楽しむ余裕はなかった。
だが、私の苦手な翻訳物ではあるが、読みづらいとは思わなかった。
ただ、専門用語が多すぎて、理解不能な部分が結構あり、本来のめり込めるはずの作中が右から左へ流れるように去っていくのを、ただただ目で追っていくのが精一杯であった。
しかしながら、終盤は俄然面白くなったのは事実であり、最後の種明かしもなるほどと思えたのは、僅かな収穫ではなかったろうか。
それにしても感心するのは、みなさんの鋭い読解力であり、本サイトのレベルの高さだ。
本作を順当に評価しての平均点の高さは、私には納得できるものではないが、現実を受け入れようと努力はしたいと思う。


No.220 6点 ぼくと、ぼくらの夏
樋口有介
(2012/06/07 22:06登録)
ミステリよりも青春小説の色が濃い。
何よりも素晴らしいのは、小粋な台詞回しにある。
高校生が主役なのだが、まるでハードボイルドそのものの雰囲気とセリフ、こうしたミステリもたまにはいいだろう。
ただ、プロット、ストーリーがいかにも平板で、起伏が足りないのはマイナス点だと思う。
せっかくこのタイトルなのだから、もっと夏を感じさせるような、強烈な描写ももう少し欲しかった気がする。
しかし、全体としてはまずまずの作品ではないだろうか。


No.219 6点 6時間後に君は死ぬ
高野和明
(2012/06/02 23:49登録)
表題作の第一話とファンタジーっぽい第二話を読み終えた時点では7点か8点付けるつもりだったが、以降トーンダウンしてしまい、この点数に。
しかしまあ、全体として楽しめたのは確かだし、一読の価値はあると思う。
最終話で、なかなかのサスペンス振りを発揮しているのはいい感じで、ハッピーエンドにしたのは正解だったろう。
ただ、ミステリとして捉えるとやや弱いのは残念な気もする。


No.218 4点 スロウハイツの神様
辻村深月
(2012/05/05 21:31登録)
スロウハイツは、小説家と脚本家を中心に、漫画家や画家の卵などが集う、言わば現代のトキワ荘である。
特に目立った事件が起こるわけでもなく、物語は淡々と進んでいく。
一種の青春群像を描きたかったのだろうか、その意味では一応頷ける気もするが、お世辞にも読みやすいとは言えないし、無駄に長い。
一応、核となる過去の事件が存在するのだが、詳細は最後の最後まで明かされずに終わってしまっているのもいかがなものか。
最終章は多少心動かされるものがある。
どうせなら、最終章とその前の章のみで短編を書けばよかったのにと思うと返す返すも残念である。


No.217 6点 交渉人
五十嵐貴久
(2012/04/23 22:12登録)
これは・・・何を書いてもネタバレしそうだ。
取り敢えず、最終章までと最終章との落差にびっくり。
読者はよく注意して読まなければならない、もし中盤までに何らかの違和感を覚えたのならば、それが真相を暴くヒントになるだろう。
総合病院をジャックした犯人と、交渉人である警視正石田のやりとりはどことなくのんびりした雰囲気が漂っていて、緊迫感に欠ける。
勿論それには理由があるのだが・・・
これ以上は書けないな。


No.216 5点 幽談
京極夏彦
(2012/04/19 21:42登録)
ホラーテイストのもの、怪談っぽいもの、寓意小説的なもの、観念小説のようなものなど、様々な作風が収められた短編集。
どの作品にも共通しているのが、オチがないところ、これは読者によっては不満に感じるだろう。
かく言う私もそうだ。
どの作品を読んでも、最後に味わうのは宙ぶらりんの、取り残されたが如く寒々しい印象のみ。
そこになんとも言えない味を見出せるかどうかで、評価は大きく変わってくると思う。
怪談を好む読者にとっては好印象かもしれないが、ミステリファンには物足りないのではないだろうか。


No.215 6点 空飛ぶタイヤ
池井戸潤
(2012/04/14 21:33登録)
実際の事件をモチーフにした、直木賞候補の力作。
非常にリアリティに溢れ、切羽詰った男達の苦悩や熱い想いが直に伝わってくるエンターテインメント小説だ。
個性豊かな登場人物たちが、生き生きと熱気に包まれながら描かれており、まるでドキュメンタリーを読んでいるような錯覚さえ覚えるほどである。
ただ、前半はめまぐるしい展開に振り回されるような臨場感があるが、後半やや尻すぼみの感が否めない。
もう少し盛り上がりを期待したが、それほどでもなかったのがやや残念な点である。


No.214 6点 逃亡者
折原一
(2012/03/30 22:00登録)
ある理由から殺人を犯したごく普通の主婦の逃避行の物語。
前半から中盤にかけては、さながらトラベルミステリの様相を呈している。
全国各地を転々とし、整形手術を受け、顔を変えて逃げ続ける女の足跡を追う描写は、なかなかのサスペンス振りである。
ところが後半予想もしない展開が待ち受けていて、どんでん返しも鮮やかに決まっており、最近の折原氏の作品の中では出来は良い方ではないだろうか。
若干長いのが気になるが、決して退屈する事はない。
なかなか読ませてくれる。


No.213 6点 少女
湊かなえ
(2012/03/22 21:51登録)
流れるような文章ですらすら読める。
二人の少女が人が死ぬところを見たいという願望から、それぞれ行動を起こし、やがて交錯し一つの結末に帰結するのだが。
冷静に考えれば、こんな偶然あり得ないとしか言いようがない、しかし小説だからね、こんなのは普通かも。
私にとっては許容範囲内だが、読者によっては許しがたいかもしれず、その辺りも評価が別れるところだろう。
現役女子高生の実態は案外こんなものかもしれないと、妙に納得できる部分もあるが、二人の少女の個性が今ひとつキッチリ描き分けられていなかった気がするのがやや残念である。
とは言え、思いのほか面白かったのは事実で、もう少し点数を高くしてもよかったが、ギリギリこの点数で。


No.212 6点 傍聞き(かたえぎき)
長岡弘樹
(2012/03/19 21:51登録)
うーむ、どの作品も無難にまとめているが、言い換えればどれもこれもインパクトに欠けるということだろうか。
読み方が悪いせいなのか、私の頭が弱いせいなのか、一度本を置いてブランクが空くと、それまでのストーリーがほとんど思い出せないという珍現象が頻繁に起こった。
もう自分にはミステリを語る資格がなくなったと言うことか。
悲しい現実を突きつけられた作品だが、決して面白くなかった訳ではなく、それなりに楽しめたと思う。
それぞれの短編に教訓のようなものが示唆されているのも、一つ良いポイントであろう。


No.211 6点 永遠の仔
天童荒太
(2012/03/16 21:38登録)
長い、さすがに文庫本5冊分は長い。
しかしながら最後まで飽きることなく読めたのは、やはり作者の力量が並ではないということなのだろう。
帯の「ミステリーの最高峰」の謳い文句は大袈裟だが、心に残り続ける、というのは決して間違ってはいないと思う。
要所要所に、問題提起やちょっとした感動を呼ぶサイドストーリーが散りばめられていて、いいアクセントになっている。
全体としてはさして複雑なストーリーではないが、丁寧に描かれているため、この長尺はやむを得ないのかも。
だが、個人的には誰にも感情移入できなかったのはマイナス点だろうか。


No.210 7点 昆虫探偵
鳥飼否宇
(2012/02/20 23:38登録)
単に昆虫の世界を舞台にしているだけではなく、昆虫の生態を生かしたトリックを仕掛けており、事件も一風変わったものばかりで最後まで興味を持って読むことが出来る。
作者は作家になる前は昆虫の研究をしており、とても素人では書けない本格的な昆虫界の知識を披露していて、ミステリ史上でも相当に異色の作品に仕上げていると思う。
こんな作品が脚光を浴びてもよいと思うのだが、いかんせんマニアックすぎるきらいもあり、一般受けするかどうかは未知数である。
しかし、一読の価値はあると言いたいと思う。


No.209 5点 Mystery Seller
アンソロジー(出版社編)
(2012/02/16 22:40登録)
島田荘司他8人の豪華執筆陣によるミステリ短編集。
竹本健治、麻耶雄嵩、有栖川有栖など、超有名な作家名が並ぶだけに、かなり期待していたのだが、見事に期待は外された。
どれもこれも凡作ばかりで、これといって特筆すべき作品が見当たらない。
唯一、我孫子武丸が面白かったかなという印象。
名前に惹かれて思わず買ってしまったが、あまり読むに値しないと思われるので、作家名で購入するのはお勧めできない。


No.208 6点 盗まれて
今邑彩
(2012/02/04 22:05登録)
手紙や電話が重要な役割を果たす、短編ミステリ8編からなる作品集。
良くも悪くも、読みやすく忘れやすいという今邑女史の二大特徴を踏襲した作品ばかり。
ストーリーを読むにつれて、その展開は読めてしまうケースが多いし、オチもおおよそ想像がつくが、その先に更に一捻り二捻り効かせているところはさすがである。
全体として、それなりに面白いし一読の価値はあるのではないだろうか。
今邑女史としてはまずまずの出来だと思う。


No.207 5点 踊るジョーカー
北山猛邦
(2012/01/27 21:47登録)
まあ言ってみれば、可もなく不可もなく、又はインパクトに欠けるという感じだろうか。
気弱で引きこもりの探偵という設定は悪くないが、その特異な探偵像が上手く機能しているとは言い難い。
トリックも取り立てて素晴らしいわけでもない、むしろ平凡な部類に入るのではないか。
これはバカミスすれすれで、きわどく本格ミステリとしての体裁を保った、軽めの短編集だ。
個人的な好みでいえば、『ゆきだるまが殺しにやってくる』が好み、トリックはちょっとバカバカしいが。


No.206 6点 ビブリア古書堂の事件手帖2
三上延
(2012/01/22 22:10登録)
前作同様、読み心地もよく、雰囲気もふんわりしていて、とても感じの良い仕上がりとなっている。
今回は、古書にまつわる謎に加えて、ビブリア古書堂に復帰した栞子さんの母親の過去の秘密が明かされたりして、シリーズ第二弾としてありがちなパターンを踏襲している。
ただし、前作に比べて若干出来が劣る感じがするのは否定できない。
謎が若干弱いのと、キャラの魅力に頼りすぎな点がその原因ではないかと思う。


No.205 7点 奇面館の殺人
綾辻行人
(2012/01/19 22:21登録)
待望の館シリーズ第9弾、待たされた甲斐はあったかな。
実に丁寧に描かれていて、それだけに前半殺人が起きるまでまわりくどい感じは拭えない。
しかしさすがに「館」は本格の芳ばしい香りが漂っていて、楽しませてくれるのは間違いない。
被害者の首を切った理由、招待客全員に仮面を被せた理由、指を○○した理由などは十分納得できるが、殺人を実行した動機だけはいかにもありきたりでやや拍子抜け、これはちょっといただけない。
それと、前のお二方も書かれているが、鹿谷の推理はややもすると推測と偶然に過ぎない部分があるのは否定できない。
とまあ、色々あげつらったが、細かい点まで緻密に書かれていて好感が持てるし、「館」ならではの趣向が満載で、本シリーズのファンは間違いなくその世界観を存分に味わえると思う。
随所に伏線が張られているのも、高評価。
しかし、読者によっては、ジリジリするような苛立ちを感じるかもしれない気がするのは、ちょっぴり残念な点ではないだろうか。

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