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ミステリの祭典

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江守森江さんの登録情報
平均点:5.00点 書評数:1256件

プロフィール| 書評

No.936 2点 女面姦鬼
千草忠夫
(2010/07/10 21:42登録)
江戸時代を舞台にした時代SM小説。
女面で素顔を隠した強姦魔は誰か?の謎は正にフーダニット(笑)
しかも、ヒロインがSM的な気付きから姦鬼の正体に到達するのに正直驚いた。
※余談
本のカバーが洒落た時代小説な感じ(絶版になった20年近く前の本)で、元カノが間違えて?(本音は怖くて聞けなかった)購入し本棚に並べていた思い出深い作品。


No.935 2点 闇への供物
千草忠夫
(2010/07/10 21:31登録)
団鬼六と並ぶ官能SM文学の巨匠の大作。
同じ供物でも虚無と間違えて闇の方から入門してしまったのが人生をあらぬ方向に向けてしまった。
女を供物として扱う姿勢はやや男性側の論理なので団鬼六と違い女性ファンは少ない。
暴力的ではないがキッチリ肉体調教する描写は刺激的。
翌々考えると大藪春彦や勝目梓より男女関係に暗黙の了解があり馴染み易い。
バイオレンスに愛は無いがSMには愛がある。
浮気を白状させる為の羞恥責め等はスパイ小説の拷問と同じでスリリングな事に気付いた。


No.934 2点 花と蛇
団鬼六
(2010/07/10 21:17登録)
大河ピカレスク・ロマン、官能SM文学の不朽の名作!(専門分野なら満点)
秘密組織による監禁・誘拐も描かれるので乱歩の奇妙な味系作品がミステリーに含まれる事を考えると広範なミステリーに強引に割り込んでもおかしくはない(私的には遠慮してミステリーに含めない)
暴力的描写は抑えられ羞恥責めを中心に描かれる男女の心理戦は倦怠期の夫婦やマンネリな恋愛には実に魅惑的。
実質上完結していず美女達の行く末はリドル・ストーリーでもある。
杉本彩も魅入られた世界観に浸ってみるのも悪くない。


No.933 5点 花窗玻璃 シャガールの黙示
深水黎一郎
(2010/07/10 12:43登録)
※要注意!
ネタバレ御免!
後半早々に明かされる「読者を被害者」にする作中作の読み辛い試みで隠蔽した毒殺?トリック。
賭博漫画・カイジの鉄骨渡り&高木彬光「わが一高時代の犯罪」の合わせ技な密室状況下での転落死トリック。
さらには犯人の動機まで、本格ミステリ部分は(伏線とその回収が上手い分より一層)小粒な寄せ集め作品としか思えなかった。
一方で、題材の好き嫌いは別にして芸術論と蘊蓄は相変わらず読ませる。
しかし、この作品の肝は結末後の遺品の走り書きから、読者が副題「シャガールの黙示」に込められた作者の意図(構図と事件を絡めた作者自身の縛り)に到達するかどうか?だろう。
#「本格ミステリー・ワールド2010」の自作解説で「気付かれなければ半年後にでもネットで公表するつもりだった(イジワルより独り善がりで不親切)が、早々とネット書評に書き込まれた」と語っていた#
マニア受けしそうな試行で、実際に一部では絶賛されているが、裏の意図に気付いても何ら楽しさは増さなかった。
私的にはメタな部分での単なる作者の自己満足としか思えずゲンナリした。
気付かずスルーした読者は次に手が出なくなる(一般読者には意図も含めた自作解説を袋綴じで付す親切心が必要)
前作の書評でも書いた大成(大衆受け)を阻む欠点が色濃く出ている。
国語や文学の勉強でミステリを読んでいる訳ではないので、読み巧者である事を求められたら楽しさは減じる。


No.932 4点 劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル
蒔田光治
(2010/07/10 11:12登録)
そのうち地上波で放送されるだろうと映画を観ずにいたら早々とノベライズが出版された。
フーディーニ・ネタに夢オチから始まるマンネリ感とギャグにまぶした伏線もあからさま過ぎて結末の展開まで読めてしまった。
目玉的な瞬間移動トリックもよくあるパターンで、正に「TRICK」らしい寄せ集めに終始した。
本格ミステリとしては褒めようがない(3点)が、それが作品の持ち味であり、ファンの要求には応えていて楽しめるのも間違いない(笑いに1点加点)
テレ朝系作品で松平健をゲストに迎えたらラスボス確定でミステリとしての楽しみは減じるが、イメージし易く小説でも笑える。
それでも、ノベライズを読む限りでは映画館に足を運ぶ程とは思えなかった。


No.931 5点 未知海域
宗田理
(2010/07/07 23:40登録)
作者が「ぼくらの〜シリーズ」でブレイク以前に書いていた作品(直木賞候補作)
漁連の研究所て働いていた親友が海外で遭難したとの知らせを聞いた水産会社社員の主人公が、未知のニシン漁場と親友の消息を追う。
猥雑な東南アジアを舞台に欲望と陰謀が渦巻き息詰まる追跡行が展開する国際サスペンス。
この作品が書かれる以前に梶山季之や清水一行に資料提供していた経験が存分に活かされた作品で、予想外に面白かった。


No.930 3点 ぼくらの七日間戦争
宗田理
(2010/07/07 23:30登録)
横暴?な親や先生に反抗して集団で立てこもる中学生とその親や先生との駆け引きに誘拐を絡めてドタバタ描かれたジュゥナイル・ミステリー。
私はこの一冊で離れたが、宮沢りえ(貴乃花との婚約解消以降のやつれ方は半端なかった)の主演第一作で映画化されブレイクしたのでシリーズが長く継続し、一時は古本屋の特売棚を赤川次郎と分け合っていた。
赤川次郎は大人も読めるが、此方は中学生までだろう。


No.929 2点 仮面ライダー
和智正喜
(2010/07/07 22:48登録)
石森章太郎(当時←名前の違いに気付くかな?)原作の漫画をテレビ化した物を土台にして「藤岡弘(仮面ライダー1号&本郷猛・役)が事故降板せずに物語が進む」コンセプトで小説化された作品なのでストーリーはオリジナル(但し怪人のモデルは察せる)
繋がった長編で「誕生1971」「希望1972」「流星1973」と3冊完結になっている。
世界征服を目論むショッカーと陰謀を阻む仮面ライダーの対決は忍法帖の現代SF版だと言える。
流石にミステリーだ!と範疇に含めたりしない(ポリシー通り2点)が、今野敏の警察官の皮を被った戦隊ヒーロー物程度には(ミステリーだし)楽しめるので取り上げた。
仮面ライダーのテレビとは違うパラレル・ストーリーを楽しんでは如何だろう。
※余談
今でも藤岡弘は好きな俳優のナンバーワンかもしれない。


No.928 5点 月光仮面
川内康範
(2010/07/07 22:23登録)
日本でのヒーロー物のハシリで、近年4冊復刊した。
各々サブタイトルがあり「恐怖の秘密兵器」と「怪人ドクロ仮面」・「バラダイ王国の秘密」と「魔人(サタン)の爪」がセット(実質一話)になっている。
どちらの話も陰謀を阻止する冒険活劇。
名探偵・祝十郎&月光仮面(一応正体不明)の活躍は、少年探偵団での明智小五郎に、対決相手も怪人二十面相に相当するのでミステリー扱いで良いと思う。
流石に古さは感じるが一世を風靡しただけの躍動感は楽しめる。


No.927 3点 銀座旋風児
川内康範
(2010/07/07 22:06登録)
作者は森進一との「おふくろさん」騒動で一時期芸能界の話題をさらった頑固親父の川内康範。
この作品は和製ハードボイルドのハシリで都会のヒーロー二階堂卓也の活躍を描いている。
テレビ普及以前の都会(銀座界隈)の風俗が描かれノスタルジックではある。
当時、流行の最先端だった事は間違いなく‘マイトガイ’小林旭の主演で映画化もされシリーズも継続した。
こんな作品でもドラマのフィリップ・マーロウ程度にはハードボイルド(マフィアではなくヤクザが相手なのは日本だから許容範囲だろう)しているのでミステリー扱いで良いと思う。
もっともミステリーに含めると活劇(アクション)の面白さは評価対象ではない為に採点は低くなる。
※余談
二十年以上前に古本屋廻りで集めた春陽文庫の島田一男作品と同じダンボールに紛れ込んでいた。


No.926 2点 魔界転生
山田風太郎
(2010/07/07 18:34登録)
カラオケの十八番がジュリー(沢田研二)な私には、深作欣二監督での映画が一番だが、原作も文句のないエンターテインメント(満点)だと思う。
実在した歴史上の人物が蘇り対決する正に夢の世界でもある。
パチンコ台にするのを想像し、対決は信頼度の高いストーリー・リーチで、対宮本武蔵なら確変確定プレミアにするだろう。
そんな点でも、単なる読書に留まらない凄い作品と云える。
※私的に、ミステリーの範疇を考える基準作品の一つ。
作品の本質は時代劇ファンタジーで(方向性は違えども)東野圭吾の一部の作品や山崎豊子作品と同様に私的なミステリーの範疇には含めたくない、よってポリシー通りに2点にする。
本格か?そうでないか?は、結構柔軟に含める方向な反面、作品の本質が時代劇・SF・ホラー・ファンタジー・経済等は専門分野か一般小説扱いでミステリーの範疇外としている。


No.925 4点 TRICK新作スペシャル2
蒔田光治
(2010/07/07 17:47登録)
今日が「TRICK」10周年記念日らしいので記念書評を!
年初からG・W明けまでの「トリック大感謝祭」の一環で放送したスペシャルドラマのノベライズ版。
舞台設定は横溝「悪魔の手鞠唄」の丸パクリに近い。
大技な第一のメイントリックもコンセプトは東野圭吾「聖女の救済」から拝借して気長にした感じ。
他はそれ以下で、まさに「TRICK」的な寄せ集め。
上下(かみしも)の使い方は上手(←笑い所)だが、それもドラマの方が活きている。
ドラマで役者のコミカルさや、細かいギャグを笑い飛ばして観る分には楽しいが、文章で読むとチョイと残念に思える。
本来なら3点だが、ドラマにはない巻末用語解説の親切さに1点加点した(これも「イニシエーション・ラブ」の解説のパクリなのだろうか?)


No.924 5点 木乃伊男
蘇部健一
(2010/07/07 17:21登録)
ノベルス出版時、講談社の密室本企画に物凄く期待したが、裏切られたと感じる作品が並んだ。
その中では密室本に意味があり、真っ当な本格だったので一応の満足感はあった。
一部のマニアが作者に求める方向とは違う作風で、ここに至るまでに一般読者を逃してきたので冷静な判断をした読者は少ない。
里中満智子(何故この仕事を引き受けたのかが作品最大の謎と言われている)のイラストが無駄遣いとも効果抜群とも言える。
ラスト1ページのイラストの意味に、自力で気付けるかが評価の分かれ目でもある(凄いと一部では大絶賛)
※付記
文庫版でも結末は袋綴じらしい。


No.923 3点 長野・上越新幹線四時間三十分の壁
蘇部健一
(2010/07/07 17:03登録)
表題作は、今では二時間ドラマ用の遺物にすらなった時刻表アリバイ物で、文庫版ではスッキリしたが、それでも駄作な二時間ドラマレベル。
「指紋」は文庫版で脱力方向に改訂され賛否両論。
文庫版にはボーナス・トラックで「乗り遅れた男」が収録されたが評価は上がらない。
数多のクズミス同様に2点にしたいが、文庫版解説が好きな大倉崇裕なのでオマケで1点加点した。


No.922 5点 怪盗紳士ルパン
モーリス・ルブラン
(2010/07/06 15:51登録)
怪盗ルパン・シリーズは日本では、圧倒的に児童向けで読まれる率が高い(それだけポプラ社は良い仕事をした)
今では、勝手に創作された漫画「ルパン三世」の方が浸透している(その漫画もテレビアニメが一人歩きしている)
正直な話、児童向けと洒落た大人向け漫画(今では貴重本)しか読んでいないが(楽しめたし)それで充分満足してしまった。
ホームズやポアロと共に図書館の蔵書から無くならない安心感(積ん読状態)が、却って読まずに放置する最大要因かもしれない。


No.921 4点 ルパン対ホームズ
モーリス・ルブラン
(2010/07/06 15:20登録)
この作品に感化され乱歩は「黄金仮面」を書いたのだろうか?
他人の主要キャラを勝手に使用する姿勢はルブランや乱歩でも海賊版製造業と同類だと考える。
しかも、自分のキャラの引き立て役にしてしまったら尚更良くない。
この手の作品は中立的立場で先人に対する敬意を持った作家のパスティーシュが一番良い。
フランスのイギリスに対する侮蔑が滲み出ていて、その点だけは対岸の火事として楽しめる。
もっとも、中国や韓国で明智小五郎を狂言廻しにした小説を書かれたら対岸の火事ではなくなる。
ルパンは児童向けが一番楽しいのは乱歩の少年探偵団に同じだと思う。


No.920 6点 不完全仏殺人事件
大谷昭宏
(2010/07/06 03:36登録)
ドキュメント的新聞記者小説シリーズの第三弾(幻冬舎アウトロー文庫で復刊)
シリーズのラストは真冬の大阪湾に浮かんだ女の腕一本、そのバラバラ殺人事件に極秘捜査本部を設置し地道な捜査から犯人のアリバイを崩そうとする警察。
作者を思わせる主人公の新聞記者が事件の匂いを嗅ぎつけ、またまたシリーズのお約束、警察対記者の騙し合いが始まる。
初読時には、これでシリーズが終了してしまい以降作者が小説を書かなかった事が残念だった。
今思うに、売れない小説よりニュース番組のコメンテイターの方が断然旨い商売なのだろう。


No.919 6点 陰毛怪怪殺人事件
大谷昭宏
(2010/07/06 03:23登録)
ドキュメント的新聞記者小説シリーズの第二弾(幻冬舎アウトロー文庫で復刊)
下品でもインパクトのあるタイトルに作者の記者魂を感じる(1点加点)
一時期ハマった島田一男のブン屋物が書かれなくなり渇望していた頃に出た作品なので後継者が現れ非常に嬉しかった。
今、再読しても面白さは減じていなかった。
空き家から発見された強烈な異臭を放つ液体が実は死体で、僅かな人骨と黒髪から執拗な科学捜査が始まる。
基本的に事件の推理や捜査よりも刑事の執念と不屈の記者魂のぶつかり合いが読み所で、文句なしに面白い。
それでも、今読むと書かれた当時のモラルには疑念を感じるかもしれない。
しかも、偉そうに作者がニュース番組でコメントしているのを観たら、その疑念は強まる。


No.918 5点 新婚夫婦殺人事件
大谷昭宏
(2010/07/06 02:58登録)
夕方のニュース番組のコメンテイターをしている作者を観て、このシリーズを再読したくなった。
マイナーな出版社から出た古い本で読んだが、シリーズ3冊共に幻冬舎アウトロー文庫から事件記者シリーズとして復刊している(一般には此方が流通している)
実際の事件を元にドキュメント的に描かれた新聞記者小説の第一弾。
大型台風直撃の深夜に起きた陰惨な新婚夫婦の殺人事件を警察と新聞記者が駆け引きしながら捜査する。
島田一男のブン屋物・大阪版と云える作品で推理や捜査よりも、テンポ良く展開する駆け引きが読み所。
非常に面白く読めるが、新聞記者がスクープに対してエゴ丸出しなのは書かれた時代を考えると致し方ないのだろうか?


No.917 7点 藪の中
芥川龍之介
(2010/07/05 03:45登録)
小説推理に掲載中の佐野洋「推理日記」で触れられていて興味を持った。
講談社文庫の表題作含む6編収録の短編集で読んだ。
※但し書き
国内リドルストーリーの代表的作品である表題作のみを対象にしている。
藪の中で起きた殺人事件を、当事者3人を含む7人の証言(独白)で描いている。
微妙に食い違う証言(独白)は、まさにミステリーで、作者は結論を書かずに終了する。
リドルストーリーと捉えるか、東野圭吾「どちらかが彼女を殺した」に先駆けた解決を書かない読者挑戦小説と捉えるかは、お好み次第だろう。
挑戦小説と捉え謎の解明に数多の方々が挑んでいる(らしい)
私的には、じっくり各人の証言を検証すれば論理的な帰結を得られると思うが、数多ある論文では統一された結論に到達していない(論文はあたっていないので詳細不明)
古い文体なので、贅沢を言うなら現代版に訳してほしかった(短編なのでさほど苦痛ではない)
幾ら芥川作品でも、教科書向けではない題材なので、勉強を強要された感じを受けない事が却って新鮮だった。
それでも、文学的評価が採点基準ではないので満点(8点)にはしない。

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