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ミステリの祭典

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ルパン対ホームズ
怪盗ルパン

作家 モーリス・ルブラン
出版日1959年01月
平均点5.00点
書評数8人

No.8 5点 弾十六
(2025/04/16 16:41登録)
1908年出版。原題Arsène Lupin contre Herlock Sholmès。早川文庫で読みました。
(1) La Dame blonde (初出Je sais tout 1906-11-15〜1907-04-15) 「金髪の女」
(2) La Lampe juive (初出Je sais tout 1907-07-15〜08-15) 「ユダヤのランプ」
私はルルーの怪盗は完全にルパンを意識してると思うし、ルブランの密室って大抵機械仕掛けなので、それに対抗して完全密室の『黄色い部屋』(初出1907-09〜11)を発案したのだろう、と考えている。
Herlock Sholmèsの初出については『怪盗紳士ルパン』に詳しく書いたが、Je sais tous 1906-12-15である。(単行本版第3章以降。第2章までは雑誌ではSherlock Holmesとなっていた)
なぜか初出誌と単行本版では作中の日付がずれている。
p9 去年の12月8日 初出誌では違う(メモし忘れた)。
p34 3月12日火曜日 1907年が該当。初出誌では「六月五日火曜日」le mardi 5 juin (1906年が該当)
フランス人がホームズとワトソンのような友人関係を理解できない人種だ、とよく分かる。カミのワトソンもホームズを先生と崇めてる。
(以下2025-04-17追記)
仏Wiki "Je sais tout"を見てたら、この雑誌でもコナン・ドイル作のシャーロック・ホームズものの翻訳を載せていた。最初は1905-06(創刊5号)「踊る人形」でルパン初登場の1号前である。そして次がドイルとウィリアム・ジレット共作の舞台劇Sherlock Holmes: The Strange Case of Miss Faulkner, 1899 (Je sais tout連載1908-02〜04)、この翻訳権を取得する際に、Sherlock Holmesの名前をそのまま使うのはまずいと自主規制したか、ドイルの文芸代理人に「テメーいい加減にしろよ!」と怒られたか、という事だったんだろう。雑誌でHerlock Sholmèsに変えた時、全く説明が無かったので、自主規制だった可能性が高いかなぁ(抗議されたなら謝罪も兼ねて何らかのステートメントがあって然るべきだろうから)。

No.7 5点 虫暮部
(2023/04/27 13:24登録)
 “ルパンとホームズの共演” と言うコンセプトだけで、事件の内容は練らないまま突っ走ってしまったのか。あまり “対決” って感じがしない。
 キャラクター小説としては面白い。探偵側はちょっと三の線で、Herlock Sholmes の名の方が寧ろ相応しいかも。「金髪婦人」中盤でウイルソンが “洞察力” を見せる場面など素晴らしい。

No.6 5点 レッドキング
(2018/11/15 07:41登録)
子供の頃、「怪盗対名探偵」て少年版ので読んだ。明らかに自国びいきで書かれていたが・・ホームズのこと「頭の禿げあがった中年」て・・その後、ホームズ本の方ばかりに興味がいくようになった。美男青年紳士の怪盗なんて鼻もちならん。わがルパン三世(あれ日本人だよな、それともハーフクォーターか)の方がカッコいい。

No.5 5点 E-BANKER
(2013/04/27 22:19登録)
「世紀の大怪盗アルセーヌ・ルパンと史上最高の名探偵シャーロック・ホームズの対決」と聞くと、やっぱり興奮する(?)わけですが・・・
今回も新潮文庫版を読了。堀口大學の翻訳はやはり格調高いなぁ(読みにくいとも言えるが・・・)
本作は中編的分量の①と短編②の二作品で構成。

①「金髪婦人」=ある古道具屋に並んでいるなんの変哲もない古机。この古机をめぐる盗難事件からスタートする本作。途中、殺人事件までも挟み、事件のあちこちに登場するのがタイトルにある「金髪婦人」。やっぱり、ルパンの冒険譚には彼と美女との恋愛が絡んでくるのがフランス人たる作者らしいのだろう。ホームズはガニマールまで従えてルパンと対峙するが、どう見てもルパンに押されてる感じ。まぁ最後は一応「痛み分け」という形で決着は付くのだが・・・。
②「ユダヤのランプ」=①の解決後、一定の期間経過後に発生したのが、「ユダヤランプ」をめぐる盗難事件。ホームズがパリへ向かう前から、ルパンの影につきまとわれることになる。脅迫状のからくりに気付いたホームズが真相に肉薄するのだが、ラストにはドンデン返しが待ち受けている。そして、今回も結果は痛み分けということに・・・。子供に教えられるホームズの姿がある意味微笑ましい。

以上2編。
他の方の書評にもあるとおり、ホームズについてはコナン・ドイルからの抗議を受け、原文ではHerlock Sholmesとなっている。ただし本作では、その正体が明白なのでシャーロック・ホームズとしますという旨が冒頭に堂々と書かれてある。
(なぜかワトスンはウィルソンのまま表記されている。どうせならワトスンと書いちゃえばいいような気が・・・)
対決というのは、いわば「ファンサービス」というようなものではあるけど、エポック・メイキングであることには違いない。

でも、ミステリーまたはスリラー・サスペンスとしての出来そのものは誉められるレベルとは言い難い。
視点人物が等分に分けられたせいか、どうも煮え切らないプロット&ストーリーという読み応えなのだ。
はっきり言えば「中途半端」の一言だけど、まぁ本作はそんなことで評価云々というべき作品ではないのだろう。
ミステリーとしての歴史的価値を若干プラスして評価。
(シャーロキアンには我慢ならない表記が多いと思うのでご注意を!)

No.4 4点 江守森江
(2010/07/06 15:20登録)
この作品に感化され乱歩は「黄金仮面」を書いたのだろうか?
他人の主要キャラを勝手に使用する姿勢はルブランや乱歩でも海賊版製造業と同類だと考える。
しかも、自分のキャラの引き立て役にしてしまったら尚更良くない。
この手の作品は中立的立場で先人に対する敬意を持った作家のパスティーシュが一番良い。
フランスのイギリスに対する侮蔑が滲み出ていて、その点だけは対岸の火事として楽しめる。
もっとも、中国や韓国で明智小五郎を狂言廻しにした小説を書かれたら対岸の火事ではなくなる。
ルパンは児童向けが一番楽しいのは乱歩の少年探偵団に同じだと思う。

No.3 6点 vivi
(2010/04/30 19:28登録)
とりあえず、できるだけホームズにも敬意を払おうとしたけど、
無理でした(^^;みたいな作品ですね(笑)

ウイルソン(ワトソン)の無能ぶりも、
もはやお約束ギャグのようでした。
きっと作者も楽しんで書いたと思います。

No.2 5点 okutetsu
(2009/08/21 07:10登録)
子どものころに読んだ影響か
ルパンとホームズの対決というだけで心躍りました
内容は平凡だったけどこういう企画自体が好きですね
子どものころに読むべきだろうけど

No.1 5点 Tetchy
(2009/06/24 19:29登録)
識者の話によれば、当時ルブランはドイルに何の断りもなくホームズを自作に出演させ、この作品を発表したとのことで、当然のことながらドイルは抗議を申し出たが、したたかなルブランはSherlock HolmesのスペルをHerlock Sholmes(ヘルロック・ショルムズ)と変え、するりと交わしたそうだ。
そんなルブランが書いたこの作品だから、自身のキャラクターに思いが偏り、ホームズがホームズらしくない。
「金髪の婦人」など、作品としての面白さはあるものの、やはり有名なキャラクターを借りただけに、色眼鏡的読み方をするのは否めない。
しかしルブランも後々日本の大乱歩が同じようにルパンを拝借して長編を書かれているのだから、ドイルもルブランもやはりこれは有名税というべき業だろう。
まあ、ルブラン本人も極東の地でよもや自分のキャラクターが敵役に使われ、なおかつ勝手に子孫を創作されて、日本のアニメ界に幅を利かせているなんて思いも知らなかったんだろうけど。

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