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ミステリの祭典

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nukkamさんの登録情報
平均点:5.44点 書評数:2865件

プロフィール| 書評

No.1185 5点 フランス鍵の秘密
フランク・グルーバー
(2016/05/16 14:36登録)
(ネタバレなしです) 米国のフランク・グルーバー(1904-1969)は1930年代にパルプ・マガジン作家として膨大な量の短編小説を書いて成功、1940年代からは長編小説にも力を注ぐようになり、晩年の自伝(1967年発表)によると長中短編の小説、脚本、伝記本など合わせて1000作近い作品を書いた多作家です。長編ミステリーで特に人気の高かったのが、ジョニー・フレッチャー(頭脳派)とサム・クラッグ(肉体派)のセールスマンコンピのシリーズ(全部で14作)ですが、執筆にあたって作者がベンチマークにしたのがE・S・ガードナー(ペリイ・メイスンシリーズ)とジョナサン・ラティマーということもあって速いストーリーテンポ、ユーモア、そして本格派の謎解きがミックスされたハードボイルドになっています。本書は1940年発表のシリーズ第1作で映画化もされた代表作です。ハードボイルドならではのアクションシーンもありますがフーダニットとしての興味も最終章まで保たれていて、最後はジョニーによって事件の真相がかなり詳細に説明されます。もっとも推理が十分に語られているわけではなく、はったり気味に犯人を追い詰めるので本格派として評価すると採点が辛くならざるを得ませんが。


No.1184 5点 海の秘密
F・W・クロフツ
(2016/05/16 03:14登録)
(ネタバレなしです) 1928年発表のフレンチシリーズ第4作です。英語原題も「The Sea Mystery」ですがその割に海の場面が非常に少ないのは期待はずれと思う読者もいるでしょう。とはいえ釣りをしていた親子が死体が詰められた箱を発見し、ほとんど手掛かりらしい手掛かりのない死体からフレンチが被害者の身元に迫っていく前半の展開は「足の探偵」の本領を十全に発揮したものです。一方後半はフーダニット型の本格派推理小説となりますがこちらはやや平凡な出来で、ミステリーを読み慣れた読者には犯人当てとしては容易過ぎると感じるかもしれません。


No.1183 10点 フォックス家の殺人
エラリイ・クイーン
(2016/05/16 02:14登録)
(ネタバレなしです) 1945年に発表された本書は、架空の町ライツヴィルを舞台にした作品としては「災厄の町」(1942年)に続く作品で、内容的にも互角の傑作です(エラリー・クイーンシリーズ第17作)。有罪判決が出て一応の解決を見た事件をエラリーが再調査するというプロットはアガサ・クリスティーの名作「五匹の子豚」(1943年)を髣髴させます。登場人物がよく描けていてホームドラマとしても大変良くできていますし、事件の真相についてのクイーンの推理もお見事としか言いようがなく、鮮やかなどんでん返しから粋な終わり方に至るまでの展開には文句のつけようもありません。本書以降のクイーンは本格派推理小説としての水準が大きく落ちてしまい、しかも他人による代作もいくつかあるなど個人的にはクイーンは「残念ながら本書で一流作家時代は終わってしまった」と思っています。


No.1182 6点 緑のカプセルの謎
ジョン・ディクスン・カー
(2016/05/15 00:00登録)
(ネタバレなしです) 1939年発表のフェル博士シリーズ第10作はカーが得意とする密室や足跡のない殺人でなく、容疑者の大半にアリバイが成立してアリバイ崩しに挑んだ珍しい作品です。まあ鉄壁のアリバイだって一種の不可能トリックには違いないし、クロフツのアリバイ崩しミステリーと違って犯人当てとちゃんと両立させています。心理実験に隠された様々なトリックや落とし穴が謎解きの面白さを倍増させているのはさすが巨匠ならではの趣向です。また「三つの棺」(1935年)の「密室講義」ほどは有名ではありませんが、本書では「毒殺講義」があるのも興味深いですね。


No.1181 7点 骨と沈黙
レジナルド・ヒル
(2016/05/14 22:53登録)
(ネタバレなしです) 1990年に発表されたダルジールシリーズ第11作で、1991年のCWA(英国推理作家協会)ゴールド・ダガー賞を受賞しています。ダルジールが巻き込まれた死亡事件の他に、ダルジール宛てに次々に送られる自殺を予告する手紙の主をパスコーが探す物語、ダルジールが何と「神」の役を演じることになる聖史劇の話などが複雑にからむプロットです。死亡事件に関しては犯人当ての要素は全くなく、有力容疑者の尻尾をつかもうとしつこく追い回すダルジールと容易にはダルジールの挑発に乗ってこない手強い相手との駆け引きを楽しむ内容となっています。手紙の書き手探しの方がまだしもフーダニット要素がありますが、こちらも終盤には場当たり的に「お前が犯人だろ」告発が連発され、通常の本格派推理小説とは全く色合いの異なる結末を迎えます。実のところミステリーとしては大した作品ではないような気がしますがそれぞれの物語がそれぞれに面白く、シリーズ作品の中では個人的には結構気に入ってます。


No.1180 7点 旅人の首
ニコラス・ブレイク
(2016/05/14 22:35登録)
(ネタバレなしです) 1949年に発表されたナイジェル・ストレンジウェイズシリーズ第9作の本格派推理小説で、首発見の場面を読んだ時にはこの作品は島田荘司の「暗闇坂の人喰いの木」(1990年)に影響を与えたんじゃないかと思いました(多分違うでしょうけど)。首なし死体の事件を扱っていますが島田作品のように不気味な雰囲気が全編を支配するわけではなく、時にはユーモアさえ混ぜています(死体発見の電報のやりとり等)。無論犯人当て本格派推理小説としてのツボはしっかり抑えてあって、どんでん返しもなかなかの切れ味です。そして最終章でのナイジェルの悩みも印象的です。読者も一緒に悩みましょう(笑)。


No.1179 7点 死体が多すぎる
エリス・ピーターズ
(2016/05/14 22:19登録)
(ネタバレなしです) 本書のminiさんのご講評で「物語中心の本格というのもありだと思う」とこのシリーズを統括評価されていますが私も賛成です(謎解きの魅力がないことの免罪符乱発になっても困りますけど)。1979年発表のカドフェルシリーズ第2作の本書の場合はどうでしょう?作中時代は1138年8月、94人の戦争捕虜を処刑したはずなのに埋葬のためにカドフェルたちが調べると死体が95体あったという発端は非常に魅力的です。しかし余分の死体の正体はあっさりと判明します。書き方によってはここにもっとページを費やすことも可能でしょうがそこはピーターズ、どんどん話を進行させます。前作の「聖女の遺骨求む」(1977年)が神秘宗教劇的な要素が強かったのに対して本書は冒険小説的な要素が強いです。特にカドフェルとある登場人物〇〇との、財宝を巡っての虚々実々の駆け引きは見事な出来映えです。犯人当てとしては弱く、ある登場人物が指摘したように論理的関連のない推理ですがストーリーの面白さは抜群で、結末の弱点をカバーしています。


No.1178 6点 検事出廷す
E・S・ガードナー
(2016/05/13 17:23登録)
(ネタバレなしです) 1940年発表のダグラス・セルビイシリーズ第4作です。事故死した(殺されたかもしれない)浮浪者の正体がなかなかわからないため、利害関係のもつれなのか愛憎関係のもつれなのかさえもとらえどころのない事件にセルビイ、大苦戦です。弁護士となったアイネズ・ステープルトンにも苦しめられます。セルビイの失脚を狙う連中に解決に手こずっているところを見せるわけにはいかず、同時に間違って逮捕もいけないと行動的ながら慎重なセルビイにシルビアならずともはらはらします。地味な捜査で少しずつ事件の全貌を明らかになる一方、どんでん返しも狙うという難易度の高い謎解きに挑んでいます。なお法廷場面は意外と短く終わってますし、そこで事件は解決しません。英語原題は「The D.A. Goes to Trial」ですが、ハヤカワポケットブック版の巻末解説で説明されているように「Go to Trial」という言い回しは出廷以外の意味でも使われるようですね。


No.1177 6点 ある殺意
P・D・ジェイムズ
(2016/05/12 18:55登録)
(ネタバレなしです) 1963年発表のアダム・ダルグリッシュシリーズ第2作の本格派推理小説で、本書では警視に昇進しています。後年の作品に比べると本格派の謎解き要素が濃厚な作品で、結末のどんでん返しがなかなか鮮やかです。ただ「女の顔を覆え」(1962年)が家庭という極めて限定された世界を描いて背景が理解しやすかったのに対して、本書では診療所内の様々な人間関係が整理しきれず難解な印象を与えているのは否めません(それでも後年作に比べればまだまだ読みやすいですが)。


No.1176 5点 聖女の遺骨求む
エリス・ピーターズ
(2016/05/12 18:49登録)
(ネタバレなしです) 歴史ミステリーというジャンルはあのジョン・ディクソン・カーがパイオニアと言われていますが、シリーズ探偵を設定しなかったことが災いしたのかその時は人気を博するというところまでにはいかなかったようです。しかしウンベルト・エーコの「薔薇の名前」(1980年)やこの修道士カドフェルシリーズの成功により歴史ミステリーは市民権を得て、今では色々な作家が書くようになっています。1977年発表の本書はカドフェルシリーズの記念すべき第1作で、フーダニット型の本格派推理小説です。舞台は12世紀の英国(本書では1137年5月)ですが、さほど歴史に強くなくても十分に楽しむことができます。クリスティーを彷彿させるようなストーリーテンポが心地よく、なるほど幅広い人気があったのも納得できます。ただ謎解きとしては、ある容疑者に動機があり犯行機会があるのがわかっただけで解決へと持っていくのが強引で、やはり何かしらの決定的手掛かりが欲しかったです。


No.1175 8点 スタイルズ荘の怪事件
アガサ・クリスティー
(2016/05/12 18:07登録)
(ネタバレなしです) 問答無用のミステリーの女王、英国のアガサ・クリスティー(1880-1976)の1920年発表のデビュー作がエルキュール・ポアロシリーズ第1作の本書です。実は1916年には既にほぼ完成されていてあちこちの出版社に送ったけど全く陽の目を見ず、ようやく1920年になって出版されたそうです。粗削りな部分がないわけではありませんが、時代を考えるとかなりハイレベルな本格派推理小説だと思います。登場人物の間を容疑が転々としていく展開が見事で、謎づくりの巧妙さと謎解きの面白さが早くも発揮されており、E-BANKERさんが「デビュー作とは思えないほどのクオリティ」、miniさんが「クリスティーはデビュー時からクリスティーだった」とご講評されているのに私も賛成です。本格派黄金時代の幕開けを飾る作品と評価されるにふさわしい作品です。


No.1174 6点 皇帝のかぎ煙草入れ
ジョン・ディクスン・カー
(2016/05/12 12:58登録)
(ネタバレなしです) 1942年に発表されたシリーズ探偵の登場しない本格派推理小説で、使われたトリックをアガサ・クリスティーが絶賛したことでも有名な作品です。ネタバレになるのでどういう種類のトリックかは紹介しませんが、このトリックは別にカーが最初に考案したわけではありません。私が知っているだけでも3人の作家が本書よりも以前にこのトリックを使っていますが、不思議なことにその1人が他ならぬクリスティー自身。まさか自分でそのことを忘れてしまったのでしょうか?とはいえトリックの使い方とそれによる意外性の演出ではカーが断然優れており、クリスティーが感心したのもその辺かもしれません。ロマンスの行方も思わぬ方向へと流れていきますが、こちらはいささか唐突過ぎて私には理解できませんでした。男女の関係ばかりは論理的に解けないミステリーですね(笑)。


No.1173 6点 黒い霊気
ジョン・スラデック
(2016/05/11 20:07登録)
(ネタバレなしです) ジョン・スラデック(1937-2000)は米国のSF作家です。本格派推理小説の分野では不可能犯罪トリック豊富な素晴らしい作品を書いたのですが、あまり売れなかったらしくサッカレイ・フィンシリーズはわずかに長篇2作、短編1作のみしか残されていません。売れてナンボの世界とはいえ、本格派ファンとしてはもっと書いてくれてたらと大変残念に思います。本書は1974年に発表された長編第1作ですが、トイレからの消失トリックは「まさか〇〇なんて子供だましのトリックは使っていないよな」と思っていたら本当に使っていて唖然としたのを覚えています。一方スティーヴ・サンディの空中浮遊トリックはなかなか面白いトリックだと思います。総じてなんか読みにくく感じたのは「霊気マンダラ協会」のメンバーが浮世離れしたような人間ばかりだったからかもしれません。もっとも一番浮世離れしていたのはフィンですが。


No.1172 8点 プレーグ・コートの殺人
カーター・ディクスン
(2016/05/11 19:42登録)
(ネタバレなしです) 1934年発表のヘンリー・メリヴェール卿(H・M卿)シリーズ第1作の本格派推理小説です。カー名義のフェル博士シリーズと並ぶ名探偵シリーズですが、どちらかといえばユーモア・ミステリー色が濃いのが特長です。しかし本書はその点では例外的でユーモアは見られず、重苦しくてオカルト色も強いです(横溝正史への影響大です)。プロットは詰め込み過ぎの上に回りくどく、名探偵のH・M卿はまだしもマスターズ警部が質問に対してまともに答えずはぐらかしてばかりなのにはちょっといらいらしました。特に殺人が起きるまでの序盤の展開はとても難解で読者は集中力が必要です。とはいえトリックの豊富さは全作品中でも屈指の多さで、足跡トリックなんかはお粗末ですが凄さを感じさせるトリック(トリックネタバレ本でもよく紹介されています)には素直に驚きました。


No.1171 6点 ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎
アントニイ・バークリー
(2016/05/11 12:05登録)
(ネタバレなしです) 1927年発表のロジャー・シェリンガムシリーズ第3作の本格派推理小説で、シェリンガムのライヴァルであるモーズビー警部が初登場する重要作品です。互いの腹の探り合いが楽しい作品で、最後の一行には推理小説に対する痛烈な皮肉がこめられています。謎解きとしては「〇〇〇〇トリック」(本書の昌文社版の巻末解説を参照のこと)が紹介されているのには驚きました。後年発表の某作家の某有名作よりもはるかに早く本書で着想されてたんですね。このトリックを作品の核にしていれば本書がミステリー史に名を残したかもしれないのに、惜しい。


No.1170 10点 スイート・ホーム殺人事件
クレイグ・ライス
(2016/05/11 11:39登録)
(ネタバレなしです) クレイグ・ライス(1908-1957)の人生はまさしく不幸を絵に描いたようなもので、結婚離婚を繰り返し、アルコール中毒に苦しみ、自殺未遂事件まで引き起こしています。その突然の死が発表された際にも自殺説が流れたほどです。そんな作者がこのように明るく楽しい作品を世に送り出したのはまさしく奇跡的。1944年発表の本書はシリーズ探偵は登場せず、3人の子供たちが主人公の本格派推理小説です。こう紹介すると大人を大人とも思わぬような生意気なマセガキの物語だろうって敬遠したくなるかもしれませんが、騙されたと思ってせひ読んでみて下さい。確かに大人顔負けの活躍はしていますが、その根底には常に母親への愛情が満ち溢れています。ミステリーなのに読んで心が温まるという稀有な作品で、「Home Sweet Home」をもじった「Home Sweet Homicide」という英語原題もまたセンス抜群です。


No.1169 9点 曲った蝶番
ジョン・ディクスン・カー
(2016/05/11 11:24登録)
(ネタバレなしです) カーの作品を読んで現場見取り図が欲しい、と要求不満になったことが何度あることか。1938年発表のフェル博士シリーズ第9作の本書は庭にいる被害者に誰も近づけなかったという不可能犯罪ものなのですが、文章だけでは庭の間取りや登場人物の位置関係がわかりにくく、せっかくの不可能性がぴんときませんでした(私の読解力が平均レベルを大きく下回っているのも要因ですが)。ただそれを差し引いても本書は本格派推理小説の傑作だと思います。このとんでもないトリックは成立条件が極めて特殊なので、そんなの見破れるわけないじゃないかと拒否反応を示す読者も少なくないでしょうけど。二人の財産相続人候補の静かな対決も読み応えありますし、自動人形(現代のロボットとは全然異なります)の演出も巧妙です。もしも本書を映像化したらあの場面やこの場面はどう再現するのかと想像するだけでもわくわくします。


No.1168 6点 魔法人形
マックス・アフォード
(2016/05/10 19:23登録)
(ネタバレなしです) 1937年発表のジェフリー・ブラックバーンシリーズ第3作の本格派推理小説で怪奇色が濃くしたのが特長です。こういう作品を書いているからか作者のことをオーストラリアのカーと評価するむきもあるようですがminiさんのご講評に私も賛同で、カーよりはエラリー・クイーンの某作品を連想しました。確かに死を予告するかのように人形が登場するプロットですが、人形の描写は最低限に留まっているし人形と呪いの薀蓄(うんちく)が語られるわけでもありません。不可能犯罪や怪奇趣味よりもむしろ謎解き小説のツボを心得ていることを評価すべきだと思います。伏線や手掛かりがきちんと配置されて論理的に謎が解かれる本格派推理小説です。


No.1167 6点 月長石
ウィルキー・コリンズ
(2016/05/10 19:08登録)
(ネタバレなしです) 英国のウィリアム・ウィルキー・コリンズ(1824-1889)が1868年に発表された本書は友人であったチャールズ・ディケンズに献呈され、ディケンズが「エドウィン・ドルードの謎」(1870年)を書くきっかけになったとされる、英国最初の長編ミステリーと言われています。名探偵の風格を持ったカッフ部長刑事による捜査と推理があり、ちゃんと謎解きがなされます。但しカッフが一人で真相の全てを見抜くのではなく、幾人かの登場人物がそれぞれ真相の一部を解き明かして最後に全体が見えてくる展開になっているのが特長で、そこはシャーロック・ホームズ型の名探偵による謎解きとは異質です。第一部はやたらと話が脇道にそれて退屈ですが、第二部になると俄然面白くなり一気に読み通せました。階級社会的な言動があったり、事件の再構成に人体実験を行うなど古臭い個所も散見されますが、今読んでも十分に面白い作品です。


No.1166 5点 ポンスン事件
F・W・クロフツ
(2016/05/10 18:49登録)
(ネタバレなしです) 1921年発表の第2長編のアリバイ崩し本格派推理小説です。プロの捜査官であるタナー警部の捜査に対抗させるかのようにアマチュア探偵を登場させているのがいい意味でのアクセントになっています。それでも物語のテンポはゆっくりですが、終盤の追跡劇はなかなかスピーディーでサスペンスに富んでいます(ある意味クロフツらしくない)。デビュー作の「樽」(1920年)にはない工夫を色々織り込んだ意欲作だと思いますが、問題は真相でしょう。堅実な作風のクロフツですが本書では実に大胆なことをやっています。しかしマニア読者なら評価するかもしれませんが、一般的な読者はどちらかといえばお粗末と感じてしまうかもしれません。

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