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ミステリの祭典

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弱った蚊
ペリイ・メイスン

作家 E・S・ガードナー
出版日1957年01月
平均点5.33点
書評数3人

No.3 5点 人並由真
(2020/08/01 12:30登録)
(ネタバレなし)
 その年の春先。ペリイ・メイスンの事務所は、中年の鉱山師ソルティ・パワースの訪問を受ける。本当の用向きがあるのはパワースの相棒の鉱山師バニング・クラークだが、彼は心臓がよくないので代理で来たとのことだった。秘書のデラ・ストリートとともに、クラーク当人の屋敷に向かうメイスンだが、砂漠での生活を愛するクラークとパワースは庭でキャンプ生活を営み、屋敷にはクラークの亡き妻エルヴィンの兄ジェームズ・ブラディスンや、その兄妹の実母(つまりクラークの義母)リリアンたち雑多な人間が居住。しかもその面々のなかの一部は、クラークの鉱山の所有権にも密接な関係があった。同家に宿泊して事態に関わるメイスンとデラだが、やがて予期しない殺人事件が……。

 1943年(第二次大戦中、真っ盛り)のアメリカ作品。
 評者が本当に久々に読んだメイスンシリーズだが、この作品は大昔の少年時代に少しだけ中身を齧りかけて、そのときは物語の主題の鉱山業のことがよくわからず、放り出した記憶がある。
 長年の宿題を片付けるつもりで改めて読んでみると、先行の方のレビューにあるように、いかにもガードナーらしい砂漠&探鉱生活への憧憬がそこかしこの叙述に見受けられ、その辺は正に本作の味であった。昔はこういうところが、まだコドモで分からなかったのだな。

 メイスンとデラがとんでもないピンチに遭遇したり(詳しくは書かないが、このシリーズで<こういう趣向>があったのか! とギョッとなった)、妙にイカれた登場人物(自称二重人格者で、自分に不利益な責任はぜんぶ、その第二人格の方に押し付けようとする)が登場したりと中盤まではなかなか面白い。
 が、ストーリーが錯綜する割に、前述の特化されたキャラクター以外の登場人物の書き分けが平板で、正直、ミステリとしての狙いどころをしっかりと楽しむにはかなりキツイ。
 いや、珍妙なトリックとか、斜め方向の事件の真相と犯人の意外性とか、それなりに凝ったことをしようとしていることは理解できるのだが(とある被害者が被った、かなり特殊な状況の殺人についての法律的見解なんかも、興味深いといえば興味深い)。

 なお、終盤、メイスンとデラが互いの関係性を確かめ合うくだりは、ちょっと感じるものがある。評者みたいな本シリーズをつまみ食いする読者じゃなければ、もっとさらに思うところも多いだろうね。

No.2 6点 弾十六
(2019/08/15 19:41登録)
ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第23話。1943年9月出版。HPBで読みました。(なお、以下はAmazon書評の転載です。いずれ再読したらあらためて書きます。)
砂漠は一番親切な母、と言う砂漠大好きガードナー。これも一種の動物タイトル? 事務所のビルの窓には「ペリイ メイスン法律事務所」の文字。ガーティは馬に乗れない。事件の舞台はサン・ロバート市(LAから100マイル程度) 鉱山師には騾馬がつきもの。星が綺麗なキャンプ生活でデラは熟睡。メイスンとデラが大変なことになり、ドレイクは呑んだくれの日々。法廷シーンは無いが、口供調書をとる場面あり。砂糖は配給、配給手帳の券、若い男は皆いなくなった、など戦時中の話題がそこかしこに。メイスンの大胆な行動、狸寝入りも上手い。トラッグは管轄外だが義弟の助っ人で登場。解決の後、メイスンがデラに…
銃は古い45口径と錆びついたコルトのリヴォルヴァ(グリップに手彫りで1882年)と38口径 自動拳銃の薬莢(38スペシャル弾?)が登場。アウトドア風味あふれた作品。入り組んだペテンのネタも西部っぽいですね。
なお、ここに出てくる金鉱本、架空の本かと思ったらトリビア本Perry Mason Book(2014)によるとThe Miner’s Guide, compiled by Horace J. West(3rd ed.? 1929)という実在本だそうです。
(2017年3月20日記載)

No.1 5点 nukkam
(2016/05/29 16:02登録)
(ネタバレなしです) 1943年発表のペリイ・メイスンシリーズ第23作はそこそこ意外な真相ですが謎解きは強引な感があります。しかしメイスンとデラが思わぬ事件に巻き込まれるし、いつもこき使われているポール・ドレイクが珍しくおいしい仕事をしているしとプロットは抜群に面白いです。また謎解きに直接関係はありませんが、ガードナー自身の野外生活好きを反映しての第17章の砂漠の描写が実にロマンチックで素晴らしいです。ガードナーの文体はハードボイルド風の簡潔でドライなタッチが特徴ですがその気になれば詩的で叙情的な表現もできることをよく示しており、この多面性が高い人気の秘訣なのでしょう。

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