| nukkamさんの登録情報 | |
|---|---|
| 平均点:5.44点 | 書評数:2940件 |
| No.1480 | 5点 | 黒後家蜘蛛の会3 アイザック・アシモフ |
|
(2016/07/24 06:47登録) (ネタバレなしです) 1976年から1980年にかけて出版された作品を集めて1980年に発表された短編集ですが謎解きレベルはますます下がっているような気がします。専門知識が必要な謎解きが多いだけでなく真相(正解)の説得力が弱い作品さえあります。そういう不満点が少ない作品というと「犯行時刻」(といっても犯人探しではない)と「欠けているもの」(意外にも天文学知識なしでも何とかなる謎解きです)ぐらいでしょうか。レギュラーキャラクターたちの謎解き議論の楽しさは相変わらずです。1番アシモフらしい作品というなら(これはミステリーといえるかやや疑問ですが)どんでん返しがユニークな「かえりみすれば」かもしれません。 |
||
| No.1479 | 4点 | 武器と女たち レジナルド・ヒル |
|
(2016/07/24 06:39登録) (ネタバレなしです) 2000年発表のダルジールシリーズ第16作は(タイトルからも推測できるでしょうが)女性陣が目立つ作品です。とはいえダルジールも裏側でしっかり活躍しています。本書は過去作品の人物再登場や回想シーンが目立ちますのでダルジールシリーズ入門編としてはふさわしくありません。少なくとも「殺人のすすめ」(1971年)と「薔薇は死を夢見る」(1983年)は本書より先に読んでおいた方がいいと思います。本格派推理小説の要素は全くなく、(〇〇組織がらみの)スリラー小説系なのもシリーズ作品としては異色です。本の分厚さを感じさせないサスペンス豊かな展開はさすがですが個人的には推理による謎解きを楽しめないのが残念でした。 |
||
| No.1478 | 5点 | エミリーの不在 ピーター・ロビンスン |
|
(2016/07/24 06:35登録) (ネタバレなしです) 2000年発表のアラン・バンクスシリーズ第11作となる警察小説で本格派推理小説の推理要素がほとんどないのは個人的には残念。でも非常によくできた作品だと思います(私の好みのタイプではないので評価点は低いのですが)。序盤でバンクスがまるでハードボイルド小説の私立探偵みたいな活動をしているのが印象的です(派手なアクションシーンはありません)。中盤からはいつもどおりに警察官として活躍しますがどうも本書はハードボイルドでありながら内省的なロス・マクドナルドの作品を彷彿させます。マクドナルドがハードボイルドらしく人間をドライに描いているのとは対照的にロビンスンはきめ細やかな心理描写が特徴で、そのためか事件の悲劇性ややるせなさは息苦しいほどです。(ネタバレ防止のため曖昧な書き方になりますが)バンクスが最後にある人物に対してああいう態度をとるシーンの何と重苦しく悲痛なことでしょう。講談社文庫版が上下巻で出版されるほどの長大なボリュームを感じさせないストーリーテリングは見事ですがここまで救いの少ない物語は読者を選ぶかも。でも本書の講談社文庫版巻末解説によると後年作にはもっと気分が落ち込みそうな作品もあるようです。 |
||
| No.1477 | 5点 | 最後の刑事 ピーター・ラヴゼイ |
|
(2016/07/21 15:50登録) (ネタバレなしです) クリッブ部長刑事&サッカレイ巡査、アルバート・エドワード皇太子殿下に続く第3のシリーズ探偵が1991年発表の本書でデビューしたピーター・ダイヤモンド(本書では警視)で、初めて現代を舞台にしたシリーズでもあります。捜査の初期段階では対決色が強かった容疑者から後半は頼りにされるなど、一見とっつきにくそうですが意外と人情味あふれる探偵役を演じています。大作の割に読み易い作品ですがダイヤモンドがどうやって犯人の正体に気づいたかの推理を説明しないのは本格派推理小説としては減点です。またこれは作者のせいではないのですが、ハヤカワ文庫版の裏表紙粗筋紹介で6部構成の物語の第5部での出来事まで紹介しているのはさすがに勇み足だと思います。せっかくの驚きの展開が効果減少になってしまいました。 |
||
| No.1476 | 5点 | 引き潮の魔女 ジョン・ディクスン・カー |
|
(2016/07/21 15:30登録) (ネタバレなしです) 1961年発表の本書はシリーズ探偵の登場しない歴史本格派推理小説ですが、空さんのご講評で指摘されているように1907年という作中時代は歴史を感じさせるのには中途半端で、現代を舞台にしたミステリーと大差ないように感じました。そしてこれも空さんのご講評の通りですが、出てくる人物がそろいもそろって筋が見えにくい話ばかりするので特に序盤は非常に読みにくかったです。探偵競争的な要素を織り込んだ後半はサスペンスがそこそこありますが。カーが得意とする不可能犯罪(足跡のない犯罪)を本書でも扱っていますが現場見取り図はできれば付けてほしかったです。なおTetchyさんのご講評にあるように、作中にガストン・ルルーの「黄色い部屋の謎」(1907年)の露骨なまでのネタバレがあり、本書に手を出すような読者ならこの有名な古典的作品を既読でもおかしくないとはいえちょっとマナー違反行為ではないかなと思います。密室トリックから犯人の名前までばらしていますので。 |
||
| No.1475 | 4点 | シミソラ ルース・レンデル |
|
(2016/07/21 12:23登録) (ネタバレなしです) 1994年発表のウェクスフォードシリーズ第16作は人種差別問題を取り上げた作品です。ウェクスフォードは保守的な人間ながら新世代の人間や価値観の異なる人間とも上手く迎合するだけの度量を持ち合わせ、例えば「無慈悲な鴉」(1985年)では過激なフェミニストへの事情聴取も無難にこなしていましたが本書では無意識の内に人種差別的な言動をとったことに衝撃を受けています。社会性描写に重きをおいたシリアスな作品で物語としては充実してますが残念ながらあまり推理場面はなく謎解としては物足りません。また登場人物が約50人近くと極めて多く、角川文庫版ではその内23人が登場人物リストに載っていますがあの重要人物(24章で〇〇を殴った人です)がリスト外扱いなのはちょっと問題ではないでしょうか。 |
||
| No.1474 | 5点 | 夜の静寂に ジル・チャーチル |
|
(2016/07/21 12:20登録) (ネタバレなしです) 2000年発表のグレイス&フェイヴァーシリーズ第2作です。時代描写(1930年代のアメリカ)に優れており、特に印象的だったのが第一次世界大戦の悲惨さが語られる場面でした。無論コージー派の作品なのでいつまでも重苦しさを引きずることはなく、随所にユーモラスな場面が用意されています。謎解きとしては動機の説得力がいまひとつ弱いように思えます。 |
||
| No.1473 | 4点 | 死がお待ちかね ベゴーニャ・ロペス |
|
(2016/07/21 12:03登録) (ネタバレなしです) ベゴーニャ・ロペス(1923-1989)はキューバの心理学者でミステリー作品は本書がデビュー作なのですが、1989年の出版直前に逝去したため遺作でもあります。私にとって初めてのキューバ作家の作品ですが別に共産主義を意識しているような場面はなく観光描写もありません。マリブラン家と近隣住民の人間関係の描写が大半で、その中で起こった殺人事件の謎解きを扱った本格派推理小説です。人物描写に力を入れてはいるのですがこれがとてもわかりづらく、アドリアーナ・マリブランの1人称になったり、(正体が伏せられている)犯人視点になったりと変化をつけていますがそれもあまり効果的とは思えず、物語のメリハリが感じられません。最後は何と警察の電話盗聴から事件解決です。どうやって犯人の目星をつけていたかの説明がないのも不満です。 |
||
| No.1472 | 6点 | 流れる星 パトリシア・モイーズ |
|
(2016/07/20 05:09登録) (ネタバレなしです) 前作「殺人ア・ラ・モード」(1963年)ではファッション業界という特別な業界と業界人を緻密に描いていましたが、1964年発表のヘンリ・ティベットシリーズ第5作の本書では映画業界が描かれています。登場人物のエキセントリックさが前作以上に強調されており、このあくの強さが受け入れられるかどうかで本書が面白く読めるかは左右されるでしょう。ユーモアも従来のモイーズ作品が持つ明るさよりはブラックで皮肉な面が目立ちます。但し本格派推理小説としての謎解き部分は真面目にしっかりと書かれています。 |
||
| No.1471 | 6点 | 「エルサレム」亭の静かな対決 マーサ・グライムズ |
|
(2016/07/20 04:56登録) (ネタバレなしです) 1984年発表のリチャード・ジュリーシリーズ第5作の本格派推理小説です。ピエール・ヴェリーの「サンタクロース殺人事件」(1934年)でも田舎風なクリスマスが描かれていますが、本書もそれ以上に素朴でしみじみとしたクリスマスが描写されています。終盤のメルローズ・プラントの贈り物も(多少メロドラマじみてはいますが)演出効果抜群です。ミスリーディングが効果的な謎解きもまずまずの出来栄えですが、これから読む人にはぜひ作品全体が醸し出す叙情的な雰囲気を堪能してほしいです。 |
||
| No.1470 | 5点 | イングリッシュ・ブレックファスト倶楽部 ローラ・チャイルズ |
|
(2016/07/20 04:51登録) (ネタバレなしです) 「お茶と探偵」シリーズも2003年発表の本書でシリーズ4作目になりますが作品の質という点では過去3作品と同じレベルで安定しており、シリーズファンなら安心して読めると思います。この作者の優雅な文章表現は個人的に大好きな部類に入るのですが謎解きが相変わらずなし崩し的解決に終わってしまうのはもう少し何とかならないかなあ。犯人が誰でもよかったように思ったのは私だけでしょうか(笑)。 |
||
| No.1469 | 5点 | 疑惑の影 ジョン・ディクスン・カー |
|
(2016/07/20 04:49登録) (ネタバレなしです) 1949年発表のフェル博士シリーズ第18作ですが従来のシリーズ作品とはかなり趣を変えた作品です。本格派推理小説としての謎解き場面はちゃんとあるのですが弁護士のパトリック・バトラーを主人公にした冒険スリラー小説の要素が非常に強く、ジャンルミックスタイプのミステリーと言えそうです。「盲目の理髪師」(1934年)やカーター・ディクスン名義の「一角獣殺人事件」(1935年)のようにカーはこれまでにもアクションシーン豊富な本格派をいくつか書いていますがそれらとも異なるのは、ある組織の存在が事件の背後に見え隠れしていることです。これは本格派ファン読者にとって好き嫌いが分かれるでしょう。 |
||
| No.1468 | 6点 | ドーヴァー2 ジョイス・ポーター |
|
(2016/07/19 21:55登録) (ネタバレなしです) 長編10作(短編も同じぐらい書かれました)のドーヴァーシリーズの中で最も世評の高い作品といえば「切断」(1967年)、次いで「ドーヴァー 1」(1964年)あたりでしょう。確かにこの2作品は大変独創的ではあるもののその「ブラック」ぶりも半端ではなく、いきなりここから読むと拒否反応を起こす人がいるかもしれません。となると無難な入門書としては1965年出版のシリーズ第2作である本書あたりがお勧め。ドーヴァーの無茶苦茶ぶりもしっかり描かれてますが前述の2作品よりは口当たりがいいです。できれば8ヶ月前の事件の現場地図があれば謎解き好き読者としてはもっとよかったですが。 |
||
| No.1467 | 6点 | 孤独な女相続人 E・S・ガードナー |
|
(2016/07/18 20:45登録) (ネタバレなしです) 1948年発表のペリイ・メイスンシリーズ第31作となる本書には容姿端麗な女相続人が登場しますが性格描写が意外とあっさりしているため読者が共感するほどのキャラクターになれていないのが惜しいです。でもマリリン・マーローという名前は当時人気絶頂だった女優マリリン・モンロー(1926-1962)に由来しているんでしょうね。物語としては切れ味があり、特に第11章や第17章でのやり取り場面や法廷でのトラッグ警部への反対尋問場面などは強い印象を与えます。 |
||
| No.1466 | 7点 | 悪魔はすぐそこに D・M・ディヴァイン |
|
(2016/07/18 20:26登録) (ネタバレなしです) 1966年に発表されたミステリー第5作となる本格派推理小説です。ディヴァイン自身大学の事務員だったということもあってか大学を舞台にした本書はかなりの力作です。登場人物が多過ぎで関係も複雑な感がありますがその割りには読みやすいです。謎解きに関してはミスディレクションも巧妙で結構難易度が高く事件発生前の伏線なんかはまず見落とすでしょう。物語のエンディングもきれいに締めくくっています。 |
||
| No.1465 | 4点 | ハルイン修道士の告白 エリス・ピーターズ |
|
(2016/07/18 19:04登録) (ネタバレなしです) 時は1142年12月、事故で重傷を負って死を覚悟したハルイン修道士がラドルファス院長とカドフェルにかつて人を死に追いやった罪を語り始めることから物語が始まる、1988年発表の修道士カドフェルシリーズ第15作です。このシリーズは単なる謎解き小説ではなく人間ドラマとして読ませることにも力を入れていますが本書の場合は特にその傾向が強く、前半は完全に非ミステリー作品のプロットになっています。後半になるとようやくミステリーらしくなってきますがこの締めくくり方ではミステリーとしては不満を覚える読者も多いのではないでしょうか(だから私は厳しい採点にします)。しかしある登場人物が言うように「神のお導きにより」としか思えないような展開が充実の読み応えを感じさせる人間ドラマを成立させています。 |
||
| No.1464 | 7点 | 名門校 殺人のルール エリザベス・ジョージ |
|
(2016/07/18 18:43登録) (ネタバレなしです) 全寮制の名門校から新入生が1人行方不明になったことに端を発する1990年発表のリンリー警部シリーズ第3作です。これはどう転んでも「痛々しい」結末しかありえないだろうという雰囲気が前半から漂っています。私は身構えて読んでしまったので結末の衝撃という点では「大いなる救い」(1988年)には一歩譲るように感じましたが本書も相当なものです。重厚さと読みやすさが両立するストーリー展開が見事だし、犯人探しの謎解きもきちんとやっています。サイドストーリーも本筋を邪魔しない範囲内で充実しており、特にハヴァーズ部長刑事は「逆境に負けるな」と応援したくなります。ドラマとして出来過ぎていて、これから子供を寮や寄宿舎に預けようかと検討している親にはちょっと勧めにくいかも。 |
||
| No.1463 | 6点 | 爬虫類館の殺人 カーター・ディクスン |
|
(2016/07/18 18:33登録) (ネタバレなしです) 1944年発表のH・M卿シリーズ第15作は単に施錠されているだけでなくドアや窓の隙間に目張りまでされているという、とんでもない密室の謎が提供される本格派推理小説です。この謎についてはクレイトン・ロースンとアイデア競争があったという裏話があり、ロースンは短編「この世の外から」で謎解きしてますので本書と比較するのも一興でしょう(両者にトリックの共通点はほとんどありません)。戦時色濃厚な作品ですが単なる雰囲気づくりだけでなくプロットに活かしているところも巧妙です。完全に余談ですがプロットに若い男女のロマンス描写を織り込むのも恒例ではあるのですが本書の場合は冒頭の出会いの場面の印象が(個人的に)悪く、ロマンスを応援する気になれませんでした。これまた余談ですがH・M卿が犯人に仕掛けた罠の危険性を別の人物が危険ではないと説明していますがアレ(ネタバレ防止のため不詳)が氷のようにツルツルならという条件で成立する指摘であり、今回の条件では多分成立しない(つまり危険)と思いました。 |
||
| No.1462 | 5点 | 百万に一つの偶然 ロイ・ヴィカーズ |
|
(2016/07/18 03:26登録) (ネタバレなしです) 短編倒叙推理小説の書き手としてはおそらくフリーマン、クロフツと並ぶ存在のヴィカーズですが、この迷宮課シリーズの大きな特色は犯人の失敗というよりも偶然の要素が解決につながることが多いところでしょう。9作を収めて1950年に出版されたシリーズ第2短編集である本書に収められている「百万に一つの偶然」はその典型で、決め手としては完全ではありませんがこの手掛かりは実に印象的です(私は何かのネタバレで読む前に知っていてあまり驚けなかったのが残念)。「ワニ革の化粧ケース」は手掛かりに基づく推理が丁寧なところに好感を持てます。中には何で殺人に至ったのかよくわからないプロットの作品もありますが「相場に賭ける男」や「9ポンドの殺人」などは犯人と被害者の関係をきっちり描いて物語としても十分に読ませます。余談ですがこの短編集、英語原題が「Murder Will Out」ということわざでした(興味ある方は英語辞書を参照下さい)。 |
||
| No.1461 | 5点 | アパルトマンから消えた死体 キャサリン・ホール・ペイジ |
|
(2016/07/18 00:43登録) (ネタバレなしです) 1992年発表のフェイス・フェアチャイルドシリーズ第4作はフランスを舞台にしています。本書でのフェイスはこれまでの作品に比べると探偵能力が結構上がったようなところがあり、少なくとも中盤までは警察よりも真相に迫っているように感じられました。但し探偵小説らしい展開は物語の3分の2ぐらいまでで、残り3分の1は冒険スリラー小説風に流れていきます。決して後半部の出来が悪いわけではありませんが本格派推理小説好きの私としてはちょっと残念でした。まあこのシリーズは謎解きにそれほど重きを置いていないのが過去3作品を読んでいてわかってはいましたのでそれほど落ち込みもしませんが(笑)。 |
||