(2016/07/24 06:35登録)
(ネタバレなしです) 2000年発表のアラン・バンクスシリーズ第11作となる警察小説で本格派推理小説の推理要素がほとんどないのは個人的には残念。でも非常によくできた作品だと思います(私の好みのタイプではないので評価点は低いのですが)。序盤でバンクスがまるでハードボイルド小説の私立探偵みたいな活動をしているのが印象的です(派手なアクションシーンはありません)。中盤からはいつもどおりに警察官として活躍しますがどうも本書はハードボイルドでありながら内省的なロス・マクドナルドの作品を彷彿させます。マクドナルドがハードボイルドらしく人間をドライに描いているのとは対照的にロビンスンはきめ細やかな心理描写が特徴で、そのためか事件の悲劇性ややるせなさは息苦しいほどです。(ネタバレ防止のため曖昧な書き方になりますが)バンクスが最後にある人物に対してああいう態度をとるシーンの何と重苦しく悲痛なことでしょう。講談社文庫版が上下巻で出版されるほどの長大なボリュームを感じさせないストーリーテリングは見事ですがここまで救いの少ない物語は読者を選ぶかも。でも本書の講談社文庫版巻末解説によると後年作にはもっと気分が落ち込みそうな作品もあるようです。
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