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ミステリの祭典

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百万に一つの偶然 
迷宮課事件簿Ⅱ

作家 ロイ・ヴィカーズ
出版日1962年01月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点 nukkam
(2016/07/18 03:26登録)
(ネタバレなしです) 短編倒叙推理小説の書き手としてはおそらくフリーマン、クロフツと並ぶ存在のヴィカーズですが、この迷宮課シリーズの大きな特色は犯人の失敗というよりも偶然の要素が解決につながることが多いところでしょう。9作を収めて1950年に出版されたシリーズ第2短編集である本書に収められている「百万に一つの偶然」はその典型で、決め手としては完全ではありませんがこの手掛かりは実に印象的です(私は何かのネタバレで読む前に知っていてあまり驚けなかったのが残念)。「ワニ革の化粧ケース」は手掛かりに基づく推理が丁寧なところに好感を持てます。中には何で殺人に至ったのかよくわからないプロットの作品もありますが「相場に賭ける男」や「9ポンドの殺人」などは犯人と被害者の関係をきっちり描いて物語としても十分に読ませます。余談ですがこの短編集、英語原題が「Murder Will Out」ということわざでした(興味ある方は英語辞書を参照下さい)。

No.1 6点 kanamori
(2014/07/18 22:17登録)
ロンドン警視庁の迷宮課が担当する様々な事件を倒叙形式で描く連作ミステリ。本書はシリーズの第2弾ですが、ポケミスでの邦訳は、第1作の「迷宮課事件簿(1)」より先(1か月前)に出版されています。

ジャンル登録の”クライム/倒叙”というのは当シリーズにもっともふさわしい。
”クライム”と”倒叙”では本来ジャンルが異なるのですが、当シリーズは、犯人の犯行に至る経緯や心理状況の描写に重点が置かれており、主役であるはずのレイスン警部率いる迷宮課は最後まで影の薄い存在になっている。そのため、探偵役が存在するのに犯罪小説に近い印象がある。
しかも、ほとんどが偶然が作用して解決するパターンなので捜査小説として見ると物足りないのですが、発覚の手掛かりが思いもよらない方向から飛んでくると、その意外性でかなり楽しめる。
本書でいうと手掛かりの意外性という点で表題作がずば抜けていて、シリーズ屈指の傑作だというのも肯ける。

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