シミソラ ウェクスフォード警部 |
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作家 | ルース・レンデル |
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出版日 | 2001年03月 |
平均点 | 5.33点 |
書評数 | 3人 |
No.3 | 5点 | ◇・・ | |
(2022/12/19 18:50登録) ネタバレあり 一見信頼できそうもない目撃証人を登場させたことで、より意外な効果を狙っている。高齢者が自分の目撃した光景をそのまま証言しても、警察がそれを額面通り信用することはないと見越したうえでのアリバイトリックは、現実の犯罪だとするとかなり危うい綱渡りと言わざるを得ないが、本格における決まり事の裏の裏をかいたトリックとしては見事と評するべきだろう。 |
No.2 | 4点 | nukkam | |
(2016/07/21 12:23登録) (ネタバレなしです) 1994年発表のウェクスフォードシリーズ第16作は人種差別問題を取り上げた作品です。ウェクスフォードは保守的な人間ながら新世代の人間や価値観の異なる人間とも上手く迎合するだけの度量を持ち合わせ、例えば「無慈悲な鴉」(1985年)では過激なフェミニストへの事情聴取も無難にこなしていましたが本書では無意識の内に人種差別的な言動をとったことに衝撃を受けています。社会性描写に重きをおいたシリアスな作品で物語としては充実してますが残念ながらあまり推理場面はなく謎解としては物足りません。また登場人物が約50人近くと極めて多く、角川文庫版ではその内23人が登場人物リストに載っていますがあの重要人物(24章で〇〇を殴った人です)がリスト外扱いなのはちょっと問題ではないでしょうか。 |
No.1 | 7点 | Tetchy | |
(2009/09/15 00:50登録) “差別”が本書の一貫したテーマになっている。 事件の本筋のように人種差別は元より、軽い物では女が男を養うことへの抵抗を示した女性蔑視、老人の記憶は当てにならないという先入観、醜い者を見ると苛めたくなる心理。差別は心に悪戯をする。それが時には人の死に至るまでの事になる。 内容はウェクスフォードの推理が神がかり過ぎるところが多々あるが、明かされる真実が痛々しく、心を打つ。 最後の最後で明らかになるタイトルの意味は簡単な物だが、別の意味で一人の人間の尊厳を謳っているように思える。 |