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ミステリの祭典

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nukkamさんの登録情報
平均点:5.44点 書評数:2865件

プロフィール| 書評

No.665 7点 靴に棲む老婆
エラリイ・クイーン
(2015/06/21 23:47登録)
(ネタバレなしです) 作者は作風を色々変えたことで有名ですがそれにしても1943年発表のシリーズ第16作の本書の前後に「災厄の町」(1942年)と「フォックス家の殺人」(1945年)が書かれているのは驚きです。というかこの時期の作品では本書が異色の存在というべきかもしれません。シリアスな人間ドラマを展開した前後作に対して本書は歪んだユーモアと軽妙さを特色としており、作品全体が浮世離れしているような印象を受けます。しかしながら本格派推理小説としての謎解きはしっかり作られており、十分に傑作だと思います。


No.664 5点 処刑人の秘めごと
ピーター・ラヴゼイ
(2015/06/21 23:13登録)
(ネタバレなしです) 2007年発表のピーター・ダイヤモンドシリーズ第9作の警察小説です。「最期の声」(2002年)で愛妻ステファニーを失った影を引きずりながらもダイヤモンドは少しずつ気力を取り戻しているようで、得意の皮肉が復活しつつあります。雲をつかむような事件を扱っていますが安定の筆力で退屈させないのはさすがです。ダイヤモンドのプライヴェート描写とミステリープロットの絡ませ方も巧みです。読者が推理に参加する要素がほとんどないのがちょっと物足りないですが。


No.663 7点 死の命題
門前典之
(2015/06/21 22:52登録)
(ネタバレなしです) デビュー作である蜘蛛手啓司シリーズ第1作の本格派推理小説です。元は「唖吼の輪廻(あこうのりんね)」(1996年)という作品で、それを改訂して「死の命題」として1997年に出版されました。思い入れが強かったのか作者は更に改訂して「屍の命題」(私が読んだのはこれ)というタイトルで2010年に発表していますので類似品にはご注意下さい(笑)。なんと冒頭に「読者への挑戦状」が置かれ、雪の山荘に集まった6人の男女、バラバラな殺人方法、更には「そして誰もいなくなった」が示唆されており、謎解き好き読者の心をくすぐります。第一の殺人発生までがやや冗長ですが、そこから先は一気呵成に読めました。真相は奇想的と言ってよく、一般受けは難しいと思いますが丁寧に考えられており衝撃度は相当のものです。かなり無茶なことをやっているのですが死に物狂いで頑張れば不可能も可能になるということですかね(笑)。


No.662 5点 ダイナマイト・パーティへの招待
ピーター・ラヴゼイ
(2015/06/17 19:55登録)
(ネタバレなしです) 1974年発表のクリッブ部長刑事&サッカレイ巡査シリーズ第5作は本格派推理小説ではなく、犯罪組織がらみの冒険スリラー小説という異色作なのでシリーズ入門編としてはちょっと勧めにくいところもあります。しかし主役のクリッブが非常に丁寧に描きこまれているし、派手なアクションこそほとんどありませんがハラドキドキさせるストーリー展開が存分に楽しめます。それから名前のみですが、他の作品で活躍している人物が登場しているのには思わずニヤリとしました(もっともその作品は本書よりも後年の作品です。本書の執筆中に構想していたのでしょうか?)。


No.661 4点 猫目石
栗本薫
(2015/06/15 16:29登録)
(ネタバレなしです) 講談社文庫版で上下巻合わせて550ページ近い大作の本書は1984年発表の栗本薫シリーズ第6作であり伊集院大介シリーズ第4作でもある、「名探偵の競演」に挑戦した本格派推理小説です。事件の中心にいるぼく(栗本薫)はほとんど出ずっぱりで容疑者たちとの接触も多く、一方伊集院大介は完全に部外者のため登場場面は限られますが警察との情報共有では有利な立場とうまく両者を描き分けています。謎解き説明は人物の性格分析が多くを占めていて手掛かりに基づく推理は少なく、そのためどうやって真相がわかったかについては説明不十分です。軽い文体が複雑でどろどろした人間関係描写とマッチしていないようなところもあります。またせっかく盛り上がったドラマ部分がエピローグの唐突な出来事で肩透かしを食らった気分にさせられました。


No.660 5点 ワシントン・スクエアの謎
ハリー・スティーヴン・キーラー
(2015/06/08 23:11登録)
(ネタバレなしです) 米国のハリー・スティーヴン・キーラー(1890-1967)は長編作品が約70作と結構な多作家(ミステリーだけでなく歴史ロマンスやSFも書いたそうです)で、活躍時期がE・D・ビガーズ、ヴァン・ダイン、エラリー・クイーンと重なっていますが1933年発表の本格派推理小説である本書の(論創社版)巻末解説を読むと怪作や問題作の多い一癖も二癖もありそうな作家です。この巻末解説がなかなかの力作で、本書のことを「一度読んだきりでは紙くずのような駄作にしか見えないかもしれません」とか「猛烈に中途半端」とか随分と批判しているのですがそれでいて「読者諸氏よ、それでも怒ってはいけません。これがキーラーです」と、できの悪い子ほどかわいい的に擁護しまくっています(笑)。この巻末解説さえあれば私の拙い感想文なんて全く不要です。26章の終わりに「読者への挑戦状」を挿入していながら思い切りアンフェアな謎解き、脱力感を感じるトリック、巻末解説で「すばらしいまでのつまらなさ」と評される動機など良くも悪くもインパクトはあります。これでもキーラー作品の中では「なじみやすい」部類だそうですが。


No.659 5点 フライアーズ・パードン館の謎
フィリップ・マクドナルド
(2015/05/29 15:40登録)
(ネタバレなしです) 1931年にマーティン・ポアロック名義で出版された作品で、シリーズ探偵の登場しない本格派推理小説です。殺人はすぐには起きず、代わりに不思議な現象の数々が紹介されるという序盤の展開はポール・ ギャリコの「幽霊が多すぎる」(1959年)を連想させます(怪奇性の演出ではギャリコの方が巧いと思いますが)。水のない場所での溺死と密室の組み合わせという、とびきり魅力的な謎は島田荘司の「水晶のピラミッド」(1994年)が有名ですが、それより半世紀以上も前にこのテーマに取り組んでいるわけです。もっともトリック自体ははっきりいって大したことありません。特に現場に水が残っていなかった謎の真相はバカトリックの範疇に入ると思います。何かの書評でマクドナルド最良のトリックが使われていると紹介されていたように覚えていますが、これで最良だとすると他の作品を読むのが恐くなります(笑)。もっともネタ的には十分に面白いのであまり結末に期待かけずに読めばそれなりには楽しめる作品です。


No.658 5点 別館三号室の男
コリン・デクスター
(2015/05/25 08:29登録)
(ネタバレなしです)  「ニコラス・クインの静かな世界」(1977年)のハヤカワ文庫版の巻末解説にデクスターの初期作品群の評価が載っていますが(評者は瀬戸川猛資)、その中では1986年発表のシリーズ第7作である本書への評価が最も手厳しく、「凡作と大差ない」とまでこき下ろされています。確かに誰もが楽しめる万人向けの本格派推理小説ではありませんが、多くの容疑者が行方不明となって事情聴取さえなかなか実現しないのにモースが強引に推理していくプロットはある意味ユーモラスで、個人的にはそこそこ楽しめました。ただ43章の最後に登場した人物が非常に重要な役割をしていることが紹介されるのですがこの人物が登場人物リストに載っていないのは大きな減点対象で、再版時にはリスト修正を出版社に切望します。


No.657 6点 誤植聖書殺人事件
ロバート・リチャードソン
(2015/05/22 08:52登録)
(ネタバレなしです) 英国のロバート・リチャードソン(1940年生まれ)の1985年発表のミステリーデビュー作である本格派推理小説です。希少な誤植聖書の盗難事件で幕開けしますが扱いは非常にあっさりしています。聖書に関する説明が簡潔なのは個人的には歓迎です。メインの事件は失踪事件で、失踪者はなかなか発見されませんが生存は絶望視される展開となります。猟奇的な要素もありますがこちらの描写もあっさりしており、地味なプロットながら端正にまとまっていて謎解き伏線もしっかり用意されています。動機がちょっと珍しいのですが、人物描写もまた抑制が効いているためかインパクトが弱くなってしまったところが惜しいです。


No.656 5点 シャドウ
道尾秀介
(2015/05/14 09:52登録)
(ネタバレなしです) 2006年発表の長編第4作で私にとって初の道尾作品でした。創元推理文庫版では本格ミステリと紹介されている一方、巻末解説では謎の発生から解決までを骨格とする本格派推理小説の展開にぴったり当てはまるわけではないとも書かれており、どちらかといえばサスペンス小説と評価している人も少なくありません。確かに色々な伏線が後になって真相に結びつく形態はとっているのですが、そもそも解くべき謎が何なのかがはっきり提示されていないところが本格派としてはどこかしっくり来ないのかもしれません。もちろん犯人当て謎解きでなければ本格派でないと言うつもりはないし、そもそも作者は「人間を描くこと」が先にありきで書いているのでジャンルについてはこだわっていないのかもしれません。その人間描写は確かによく描けていますが主人公の少年は小学生にしてはしっかりし過ぎ、自分が主人公だったら現実逃避して泣き叫んでいただろうな(笑)。


No.655 4点 刹那の魔女の冒険
関田涙
(2015/05/12 08:33登録)
(ネタバレなしです) ヴィッキーシリーズ第3作でシリーズ最終作となった2004年発表の本格派推理小説です。過去の2作は王道的な謎解きミステリーでしたが本書はそのイメージを破壊するような趣向があって、そこが評価を二分することになると思います。二通りの読み方が楽しめるという斬新なプロットが用意されています。「Aの読み方」はページを順番に読んでいきます。「Bの読み方」は作者の指示に従って途中をいくつか飛ばしながら読んでいきます。私は「Bの読み方」から始めましたが、読後の感想は、独立した2つの事件をヴィッキーが普通に解決する普通の本格派推理小説でした。問題は「Aの読み方」で、どうもこれは(私は定義を十分に理解していないのですが)メタ・ミステリーをねらったようです。何を書いてもネタバレになりそうですが、ヴィッキーが小説世界(結構現実離れした世界)に飛び込んでその世界のヴィッキーと共に謎解きに挑むというものです。しかも「Bの読み方」で読む章と交互に読んでいくという、現実と虚構の描写が入り乱れ状態なのでかなり読みにくいです。結末のつけ方も合理的とか現実的とかとは程遠く、マニア読者向けかと思います。


No.654 6点 犬はまだ吠えている
パトリック・クェンティン
(2015/05/06 00:45登録)
(ネタバレなしです) リチャード・ウェッブとヒュー・ウィーラーのコンビ時代のパトリック・クェンティンはダルース夫妻シリーズが有名ですが、同時期にジョナサン・スタッグ名義で9作のヒュー・ウェストレイクシリーズも書いています。1936年発表の本書はシリーズ第1作の本格派推理小説です。猟奇的な殺人事件に加え、コブ警視に「この辺りじゃ誰も寝ないのか?」とうんざりさせるほど夜中に怪しげな行動をする容疑者たちが不気味な雰囲気を盛り上げます。残虐描写はそれほどきつくはありませんが仮に映像化したら凄いことになりそうです。動物たちの扱い方も巧妙です。謎解きとしては思い切ったどんでん返しに挑んでいるのが印象的ですが、動機の説明が後出し気味に感じられるのがちょっと惜しいです。


No.653 6点 奇面館の殺人
綾辻行人
(2015/04/19 21:16登録)
(ネタバレなしです) 2012年発表の館シリーズ第9作の本格派推理小説です。講談社文庫版で上下巻合わせて650ページを超す大作です。仮面の人物が登場する本格派推理小説では横溝正史の「犬神家の一族」(1950年)や綾辻行人の「水車館の殺人」(1988年)が有名ですが、本書ではそれが何人も登場して名前の代わりに<〇〇の仮面>と表記されるのです。作者によるあとがきの中で、本格派推理小説に対して「顔が見えない」という批判がよくされていたことへのちょっとした開き直りみたいなコメントがあります。それが執筆理由の全てではないでしょうけどきっとにやにやしながら書いたんだろうなあと思います。殺人が起きただけでなく吹雪の山荘状態で外部とは連絡できない、寝ている間に鍵付きの仮面をかぶせられて外すことができないという異常な状況の割には登場人物の誰一人パニックになることもなく、「妙に」落ち着いた雰囲気なのがちょっと違和感ありますが、初期作品を彷彿させる軽やかなパズラーを書いておきたいという作者の思いは実現できていると思います。怪奇幻想や狂気描写の類は排除されてます。


No.652 5点 puzzle
恩田陸
(2015/04/17 10:47登録)
(ネタバレなしです) 2000年発表の本格派推理小説で祥伝社文庫版で150ページ程度の短い長編(中編に分類している文献もあります)です。無人島の三重死亡事件、死因は餓死、墜落死、感電死、しかも屋上の墜落死体の周辺にはそれより高い場所がなく、椅子に座った感電死体の周囲は黒焦げ等の痕跡がないなど実に魅力的な謎が提示されます。さらには死者の身元もわからず、当然ながら人間関係もわからないという状況が謎を深め、この短いページ数でどう収拾つけるのかと期待しながら読みましたが、説明の中途半端感が拭えませんでした。生きている登場人物が2人しかいないという特殊なプロットなので仕方ない面もあるのですが、「なぜ」の謎解きは推理が納得できる材料がないまま強引に推理しているとしか思えません。トリックも微妙でした。


No.651 5点 鉄鼠の檻
京極夏彦
(2015/04/16 12:01登録)
(ネタバレなしです) 1996年発表の百鬼夜行シリーズ第4作です。相変わらずの大作主義で、私の読んだ講談社文庫版は実に1300ページを超える厚さがありました。後に出版された分冊文庫版が全4巻になったのももっともで、価格は多少高くつきますがこれだけの分量なので読みやすさを優先して分冊版の方がいいかと思います。このシリーズの特色である京極堂による「憑き物落とし」(犯人探しはついでの位置づけになってしまいますが)は本書でも健在と言いたいところですがあまりにも宗教色が強く、その分妖怪色は後退しているところは評価が分かれそうです(巻末解説を宗教学者に書かせているほどです)。非常にユニークではあるけど万人が納得するとは思えない殺人動機など本格派推理小説の謎解きとしては前衛に走り過ぎではと感じました。


No.650 4点 望湖荘の殺人
折原一
(2015/04/16 09:13登録)
(ネタバレなしです) 1994年発表の本書は、私の読んだ光文社文庫版の裏表紙の粗筋紹介では本格派推理小説と紹介されていましたが推理要素がほとんどありません。測量ボーイさんのご講評に私も賛成で、登場人物が思いつきの仮説で行動する場面の連続を描いたサスペンス小説だと思います。「結末が最後までわからない」という紹介は誤りではありませんが、そもそもあの結末は読者が事前に推理で当てられる伏線がありません。襲う側と襲われる側の立場が逆転したりとプロットはスリルに富んでおり、サスペンス小説としては悪くないと思いますが本書を本格派推理小説と期待して読むとがっかりすると思います(私はがっかりしました)。


No.649 6点 災いの黒衣
アン・ペリー
(2015/04/11 23:49登録)
(ネタバレなしです) 1991年発表のモンクシリーズ第2作の歴史本格派推理小説で、上流階級の一族を中心にしながら使用人たちの描写にもかなりの力を入れているのがユニークです。推理としては不完全で一部の謎解きを自白に頼ってしまってはいますが、真相は非常に大胆なもので印象に強く残りました。それにしてもモンクは終盤はヘスターに主役の座、そして探偵役までも(?)を明け渡してしまったようなところがあり、今後はどうなるんでしょうね。なお作中でシリーズ前作の「見知らぬ顔」(1990年)の犯人名をネタバラシしているのは残念です。


No.648 5点 幽溟荘の殺人
岡田鯱彦
(2015/04/11 23:39登録)
(ネタバレなしです) 1952年発表の本格派推理小説で1958年には「黒い断崖」というタイトルの改訂版が出版されています。典型的なパズル・ストーリーになっており、「読者への挑戦状」と「手掛かり索引」が挿入されています。どちらも読者に対してフェアプレーな謎解きであることを強調する手法ですが、一つの作品で両方を備えているのは初めて読みました。もっとも改訂版の「黒い断崖」(私は未読です)では「手掛かり索引」が削除されてしまったそうです。この改訂版では探偵役やワトソン役が別人になり、さらには舞台の名前が幽溟荘からミモザ荘に変更されています。ページ数が少なく登場人物も多くなく犯人当てとしては難易度は低め(トリックがなかなか面白いです)、物語性は完全に犠牲にして謎解きのみに集中しており、「薫大将と匂の宮」(1950年)と同じ作者の作品とは思えません。本格派嫌いの読者には全くお勧めできないです。論創社版の「岡田鯱彦探偵小説選Ⅱ」(2014年)に収められているものは仮名づかいを現代風に改めてあって読みやすくなっています。


No.647 6点 龍神池の小さな死体
梶龍雄
(2015/04/11 23:35登録)
(ネタバレなしです) 1979年発表の本格派推理小説です(ケイブンシャ文庫版では長編第4作と紹介されていますが、「透明な季節」(1977年)、「海を見ないで陸を見よう」(1978年)、「大臣の殺人」(1978年)、「天才は善人を殺す」(1978年)に次ぐ長編第5作です)。全部で5章から構成されていますが、過去の事件を調べる最初の2章はあまりにも手探り感が強くてテンポが遅く少々退屈です。しかし現代で事件が発生し、名探偵気取りのヒロインが活躍する第3章から一気に謎解きが盛り上がり、第4章の最後では「推理小説でいえばここで犯人を推理するデータは全部出つくしたというところ」と宣言されます。そして第5章、ネタバレにならないように紹介するのは難しいのですが、この章は「解決」と「もうひとつの解決」で構成されています。前者だけで物語を終わらせることも可能だったでしょう。ところが後者によってまるで世界が歪んでしまったかのような衝撃が読者に提供されます。例えば(結末は全く違いますが)ジョン・ディクスン・カーの「火刑法廷」(1937年)のようなひっくり返し方です。但しカーが最初の解決を否定するようなところがあったのに対して本書は「もうひとつの解決」が「解決」を否定しているわけではありませんし、カーよりも手が込んでいます。


No.646 5点 ハーバード同窓会殺人事件
ティモシー・フラー
(2015/04/11 23:27登録)
(ネタバレなしです) 全部で5作書かれたジュピター・ジョーンズシリーズの1941年発表の第3作でシリーズ代表作と評価の高い本格派推理小説ですが個人的には評価の分かれる問題作かと思います。真相は(似た前例はありますが)あまりに大胆過ぎて万人受けは難しいでしょう(この大胆さのゆえに高く評価する意見があるのも何となく理解はできますけど)。この作者の持ち味である軽妙な文体で簡潔に説明しているのが本書の場合はネックとなっており、こういう真相ならもっと丁寧に説明しないと論創社版の巻末解説にある通り、読者にとって「不条理感が残る」ことになってしまうでしょう。

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