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ミステリの祭典

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リモート・コントロール
ジョン・バイパー&クインシリーズ

作家 ハリー・カーマイケル
出版日2015年07月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 8点 mini
(2017/03/07 09:32登録)
先日に論創社からハリー・カーマイケル「ラスキン・テラスの亡霊」が刊行された
ハリー・カーマイケルと言えば、一昨年に出た論創社海外ミステリの中で意外な拾い物として一部の目利きに高く評価されていた「リモート・コントロール」を覚えておられる方も居られよう

よく”60年代は本格派不毛の時代”という言い方をする方が居られるが、この表現は本格派しか眼中にない視野の狭い視点であり基本的には正しくない
正しくは”スパイ小説の1人勝ち”、つまり”60年代はスパイ小説以外の全てのジャンルが不振だった時代”、という言い方が正しい
もちろんスパイ小説以外の全てのジャンルの中には本格派も含まれるわけだが
この60年代頃に活躍した本格派作家は特にアメリカでは確かに少ないが、英国では2人の作家が頑張っていた
1人は今では日本でも人気が定着したD・M・ディヴァインと、そしてもう1人がハリー・カーマイケルである
ただし両者は活躍年代的に大きな違いが有り、活躍した期間も短く実質的に60年代作家と呼んでいいディヴァインに対し、カーマイケルはそもそも50年代から70年代に渡って大量に書きまくった多作作家であり、別名義での私立探偵小説作品も数多い

ディヴァインと作風が似ていると言われるカーマイケルだが、初めて日本に紹介された「リモート・コントロール」を読むと、とにかくそのセンスの良さに驚かされる
私の印象では本格派作家としてはディヴァインよりもむしろ優れているのではとも思った
ミステリー小説に対しよくロジックを最重視する読者も多いが、私はロジックなんて全然重要だと思った事が無い読者である
私が最重要視する要素は、ずばりセンスと基本アイデアと雰囲気である
これらに才能が感じられるのであれば、少々の完成度の低さなんて問題にしないのがミステリー読者としての私の流儀である
特に結末にくどくどした説明を付けるなんて実は一番どうでもいい作業だと思っている
どちらかと言えば、ある一点が判明すれば全ての謎に納得がいくというのが理想である
つまり「リモート・コントロール」はそういう作品なのだ、まさにセンスとアイデアの良さが光る逸品である
「リモート・コントロール」に対し評価が低い人は、ミステリにやたらと懇切丁寧な説明とロジックを求める読者なのだろうと思う
しかしこの作品はそれをしては台無しであろう、くどい説明など殆どしない事で鮮やかさが際立つ
あともう1つ、この作品に不満に感じる読者タイプとしては、〇〇〇の存在を嫌うタイプの読者でしょうかね
もっとも〇〇〇の存在というのは絶対に駄目だとは私は思わなくて、要は使い方次第でしょう、特にこの作品の場合はそれが優れたアイデアに直結しているからね
実を言うとね、私は前半でほぼ作者の狙いを見破っちゃったんだよね
これは基本的にこういう真相ではないのかと思ったらその通りだった
ところが1つだけどうにも腑に落ちない出来事が有ってこれが分からなかったのだよなぁ
肝となる根本的真相に関してはほぼ確信していたが、ある出来事が有ってそれだけが確信した真相にマッチしていなくて読書中は悩んだのだよな
そして終盤にあるトリックが簡潔に説明されるのだが、それで全ての謎が氷解するのである
このトリック、すごく単純ではあるが指摘されると成程そうだよな、それしか考えられないよなと感心してしまった
そして真相解明シーン自体くどいロジックも説明も省略した真相解明なのだが、それで正解でしょう、この作品の場合は

No.1 5点 nukkam
(2015/08/12 10:11登録)
(ネタバレなしです) 1970年発表のジョン・バイパー&クインシリーズの本格派推理小説です。クインが事件に巻き込まれ、警察から重要容疑者扱いされます。読者(とジョン・バイパー)から見ればクインが犯人でないのは明らかですが、微妙な状況証拠が捜査をややこしくします。単純な事件のようですが結構手の込んだ仕掛けが用意されています。ただこの種の真相はアンフェアと感じる読者もいると思います。アンフェア感を減らすためにももっと推理説明を丁寧にしていればよかったと思います。

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