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ミステリの祭典

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歌う砂―グラント警部最後の事件
グラント警部

作家 ジョセフィン・テイ
出版日2005年06月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 nukkam
(2015/08/09 00:45登録)
(ネタバレなしです) ジョセフィン・テイ(1896-1952)の死の年(1952年)に出版された遺作(グラント警部シリーズ第5作。脇役扱いの「フランチャイズ事件」(1948年)はカウントしていません)です。前作「時の娘」(1951年)ではけがで入院していたグラント警部、今回は病気で休養しています。P・D・ジェイムズの「黒い塔」(1975年)を先取りしたような設定ですがグラントの病気が決してお飾りではなく、苦しみから快方に向かう姿がよく描かれています。冒険ロマン小説のネタを本格派に仕上げたような内容で、謎解きとしては論理的に弱いですが魅力的な詩の謎にスコットランドの風景描写や多彩な人物描写を巧妙に絡めた文学的香りの漂うミステリーとして十分に楽しめます。それにしてもグラントと女優マータ・ハランドの仲が結局進展しないままシリーズ終了になってしまったのは心残りですね。

No.1 6点 mini
(2009/10/19 10:27登録)
日本では「時の娘」1作だけで知られるジョセフィン・テイだが、例えばリリアン・デ・ラ・トーレのような元々歴史ミステリーの専門家というわけではない
テイはグラント警部を探偵役とするシリーズを計6作書いており、「時の娘」はシリーズ5作目で極端に安楽椅子探偵に偏った異色作らしい
「時の娘」以降はシリーズは1作しか書かず、それが遺作となった「歌う砂-グラント警部最後の事件」である
「歌う砂」では警部は普通に行動する普通の探偵役であり、まあこういうのがテイ本来のスタイルなんだろう
ただこの遺作では、「時の娘」とは違った意味でのグラント警部の療養休暇的な扱いになっていて、作者側も「時の娘」同様の異色作的効果を狙ったのかも知れないが
しかし一般の本格読みの人が読むと、もう一つ捉えどころの無い本格としか見えず評価も低めになると予想する
テイは解決の切れがどうとか、そういう観点で読んでも面白さが伝わらず、途中経過を読ませるタイプだと思う
でも今の本格編愛読者は解決編だけを重んじる風潮だからなあ

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