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ミステリの祭典

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五つの死の宝石
ヴァージル・ティッブス刑事

作家 ジョン・ボール
出版日1979年11月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 nukkam
(2015/08/12 15:11登録)
(ネタバレなしです)  1972年発表のヴァージル・ティッブスシリ-ズ第4作です。これまでのシリーズ作品でも社会からの差別待遇と向き合う人物としてティッブス自身やヌーディストの家族が登場していましたが、本書にも日本人と黒人のハーフ(ハヤカワポケットブック版では「アイノコ」という表現が使われています)の女性が登場します。ティッブスのように処世術に長けているわけでもなく、家族同士の支えあいもない境遇のためかこの女性は耐え忍ぶタイプの目立たない人物として描かれており、そこにリアリティーは感じるものの、物語全体としては何とも暗く地味になってしまいました。また事件の陰に麻薬(しかも国家絡みの犯罪さえ匂わせている)が浮かび上がるプロットは本格派推理小説好きの私にはちょっと肌が合いませんでした。最後は推理で締め括っているところは評価すべきでしょうが、ティッブスの推理は最初の登場場面こそシャーロック・ホームズ風の鮮やかさが印象的でしたが、「何も証拠はありません」と説明しているように犯人を絞り込む段階ではかなり苦しい推理になってしまいました。

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