makomakoさんの登録情報 | |
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平均点:6.18点 | 書評数:873件 |
No.273 | 6点 | 傍聞き(かたえぎき) 長岡弘樹 |
(2012/06/04 20:36登録) どの作品も必要十分の内容でありきちんと出来上がっているのだが、だからとても面白いというものでもない。 短編なのだから当然不要な内容はできるだけそぎ落としたほうがしまった話となるし、そしてここに収められた作品はいずれもスリムでピシッとした作品でちゃんと落ちもついているのだが。うーんどうもそれほど面白くないのだ。 なんだか機械的で情緒に乏しい。そうすると内容が込み入ってくるほど楽しいというよりうっとおしくなる。短編だから読み通したが、長編だったら嫌になってしまいそう。 |
No.272 | 8点 | グラン・ギニョール城 芦辺拓 |
(2012/06/04 20:25登録) 作中作をうまく盛り込んであり、なかなか楽しめました。作者があとがきで書いているようにわたしもある程度のおあぞびは楽しむのですが、現実をあまり離れてしまったり、登場人物が非人間的であったりするようなものはどうもなじめません。その点この作品は適度の遊び心と推理と幻想がうまくミックスされて、私にとってちょうどよい。ただ二番目の事件ははなかなか大掛かりなトリックなのに、最初のはしょぼいなあ。こんなのあり?。 でもまあ全体としてはとても楽しめましたよ。 |
No.271 | 6点 | 張り込み姫 垣根涼介 |
(2012/05/03 09:00登録) 久しぶりの君たちにシリーズの第3弾。 第1作はとても面白かったが、第2弾3段とだんだん新鮮味がなくなってきた。主人公の村上のキャラクターもだんだん揺れてきているように感じる。 やはりこういったお話は作者に若さとパワーが必要なのかもしれない。 4つのお話のうち「みんなの力」がよかった。これだけだったら私の評価は8点か9点ぐらいのなのだが、他の作品が平凡なので全体の評価はこのぐらいかな。 以前の垣根氏の圧倒的なパワーに期待したいのですが、本作はどうも力が感じられない。このシリーズはもうおしまいとしたほうがよいかもしれませんね。 |
No.270 | 5点 | 完全なる首長竜の日 乾緑郎 |
(2012/05/03 08:45登録) どちらかというとあまり好まない作品だが、読みやすい文体で最後まで読むのに苦痛は感じさせなかったのは立派というべきでしょう。 本格者で作者に混乱させられることは好むが、こういった幻想的な要素で読者を巻き込んで混乱させられるのはどうも好みではない。こんな作風が好みの人にとっては相当面白いのかもしれないが、私にはずっとまじめな話をしていて今のは全部夢でしたなんていわれているような感じ。 こんな話ならそりゃあどんな風にでもできるでしょう。安易だなあ。結末もすっきりしない。不完全燃焼のような感じでした。 |
No.269 | 5点 | 風少女 樋口有介 |
(2012/04/21 18:45登録) 樋口氏のデビュー2作目の作品。最近発表された加筆修正版を読みました。 作者は文章がうまく魅力的な会話が楽しめるのであるが、この作品はそういったところがやや乏しい。それほど長い話ではないが比較的登場人物が多く、人物の描きわけがもう一つうまくいっていないのが残念です。 |
No.268 | 7点 | 鳴風荘事件 綾辻行人 |
(2012/04/21 18:30登録) 発表されてすぐ読んだときは綾辻氏の作品としてはだんだんつまらなくなってきたといった印象でしたが、今回再読してみると結構面白かった。私の常ではあるがトリックや犯人は記憶しておらず、そういった意味でも面白く読めた。 作者からの挑戦があるが、カンで犯人を指摘することはできても論理的に証明することは私にとっては全く無理でした。もちろん最初に読んだときもぜんぜんダメだったことのみは覚えているのです。これが論理的に指摘して方法も分かったなんて方は本当にすごいですねえ。 初読より面白く読めたのは多分ミステリーの中毒症状が悪化したからなのでしょう。 |
No.267 | 8点 | 刺青白書 樋口有介 |
(2012/04/12 21:56登録) なかなかよかった。主人公のスズメ君はいじめられていたことすら気がつかなかったという極めてのんびりしたキャラクターなのだが、だんだん読んでいくとこの娘とてもかわいらしい。作者もこんな女の子がいたらいつでも嫁にもらってやるなどとのたまっているが、同感ですなあ。 柚木シリーズではあるが、いつもの憂鬱さが少なく名探偵ぶりを発揮しているのもよろしい。 ストーリーはなかなか興味深く、私なんぞは登場する若者たちはとても考えられない(同年の作者はいつも私の考えられないような世界を描いてくれて非常に楽しい)のだが、こういった世界もあるのだろう。 終わりは実に気分が良い。 樋口先生へ。スズメ君の再度の登場はちょっと無理ですか?ぜひ読みたいのですが。 |
No.266 | 6点 | 今夜は眠れない 宮部みゆき |
(2012/04/08 19:27登録) 宮部氏の小説は久しぶりに読みました。初期の作品は大好きで夢中になって読んでいたこともあったのですが、作者の描く世界が広がるにつれ多少の違和感が生じたせいかこのところ遠ざかっていました。 最初は大金が突然転がり込んできたらあんまり幸せではないといったどこかで読んだことのある出だしなので、こんなことで大丈夫なのだろうかとちょっと心配でしたが、最終的には意外な展開が待ちうけており、この点さすが宮部みゆきです。 ただ主人公が余りよくないかな。 |
No.265 | 5点 | 美しき凶器 東野圭吾 |
(2012/04/08 19:15登録) タランチェラなる女がやたら強く、簡単に人殺しを続けていく展開に納得できるかどうかで評価が分かれそう。 ただただ陸上競技だけのためにサイボーグとなっていた女性が、どうして関係ない人間でもあっさり殺せるのかと思ってしまうと、もうこの小説にはついていけそうもない。 ヒットメーカーの作者だけにたくみに読みやすくストーリーを展開してくれて入るのだが。 私は最後まで読むのがちょっと苦痛でしたが、読み終わってみると美しき凶器とはタランチェラだけではないかもしれない様に感じられ、多少良い印象となりました。 |
No.264 | 7点 | 名探偵の呪縛 東野圭吾 |
(2012/03/31 18:50登録) 前作「名探偵の掟」ですら最後にはちょっと長すぎたなあと思っていたのでまさか続編が出るとは意外でした。まあこんな切り口もありなんでしょう。さすがは東野圭吾、色々仕掛けてくるねえ。 作者の本格物に対する考えや変貌した理由などがわかってそれなりに興味深い。最近の作品では謎がなくなったのではないのだが、本格志向が全くといってよいほどなくなってきている理由も分かるような気がしました。 本格ものを書いている作者たちがしばらくして行き詰ってしまっていくのを尻目に、作者が話題作をどんどん発表できているのもこういった変革があってのことなんだと妙に納得しています。 でも無邪気な本格物のファンとしては、初期に書いていたような作品をもう一度書いてくれないかなあと願うばかりですが。無理ですかね。 |
No.263 | 7点 | 名探偵の掟 東野圭吾 |
(2012/03/25 09:36登録) なるほど推理小説作家はこんなことを考えて書いているのだ妙に納得して読みました。私もここで語られているようないい加減な読者なので、きちんとした本格ものではほとんど犯人もトリックも分からず、だいたいは名探偵の推理に感心してしまう。作者にとっては実にありがたい読者なのです。 この小説パロディーとしても面白いのだけどちょっと長すぎて、最後のほうになると息切れがしてくる。この三分の二ぐらいのところで終わっていたらもっと面白かった。 |
No.262 | 7点 | 殺人方程式 綾辻行人 |
(2012/03/21 18:11登録) 久しぶりに再読。やっぱり本格物としてとてもよく出来た作品と再確認しました。物理トリックは何となく覚ええていたのだが、犯人は意外だったのにコロっと忘れていたので、またしても楽しく読みました。 こういった作品では好き嫌いが出やすいとは思いますが、私はゲーム感覚で殺人をあつかうような登場人物が出てくるものよりははるかに好きです。 実によく考えてあり、キズも少なく、トリックも無理がなく、犯人も意外で、どなたかが書いておられたように教科書的な本格推理小説だと思います。 館シリーズより受けなかったせいか2作しか書かれていませんが、綾辻先生もうちょっと書いてくれないかなあ。 |
No.261 | 4点 | 楽園 樋口有介 |
(2012/03/17 22:49登録) 作者のマイベストなのだそうだが、私にはどうもいただけない。樋口氏の作品は洒落た会話が魅力の一つなのだが、これにはほとんどそういった趣向はない。 多分楽園と銘打っているのだからとてもきれいな風景などがあるはずだが、小説にはそういったところはほとんど出てこない。暑苦しくて腐ったような臭いがただよい、住んでいる人たちは怠け者で愛想が悪い。 大体日本人がほとんど出てこない日本人が書いた小説というのも珍しいのだが、作者がズック人たちに愛着を感じているようにもみえないので、読んでいてもなんだかつまらない。話自体もはっきり言って支離滅裂に近い。 作者のファン投票なるものでも本書が最下位であるらしい。私も樋口氏の小説の中では最も面白くなかったくちです。 |
No.260 | 6点 | 卍の殺人 今邑彩 |
(2012/03/10 14:25登録) この作品は前から読みたかったのだが、なかなか手に入らず今回ようやく手に入れた。本格物としてかなりいい線をいっているように思うのだが、登場人物がもうひとつ好きになれない。 さらに気になるのは卍屋敷についての違和感です。本格物らしくへんてこりんな建物なのはむしろプラスなのですが、本文ではとても広大な建物で真ん中の大ホールは運動会ができそうなほどと書いてあるのだ。そうすると各個室はやっぱりべらぼうに広くないと挿絵のようにはならないのです。ところが部屋の図や本文の説明によると各個人の個室は普通の個室並みの広さとなっているようです??。どうみてもおかしいよね。 殺人の方法もペーパーナイフでのどをひと切りで即死状態!。抜群のナイフの使い手?そんな人物は一人も出てこないのだが。 こういった違和感を感じながら読んだのでどうしても低めの評価となりました。 |
No.259 | 7点 | 誰もわたしを愛さない 樋口有介 |
(2012/03/05 21:10登録) 作者の小説では素敵な女性がたくさん登場する。いつも思うのだが作者とは同世代なのに何故かであったこともない女性が多いので、ある面でとても興味が湧く。 今回もとんでもない女子高生が出てくる。 めちゃくちゃな生活をしているのに、これほど覚めた人生観を持っている高校生はさぞかしつらいのであろう。もうちょっと自分を大切にしたらと言いたくなってしまう。逆にその子の友達はまじめで人生観もしっかりしていると思ったら、実はとんでもない金儲けをしていたりする。ショックだなあ。 どんでん返しもあり犯人も意外で(作者によると初出版時の帯には犯人が分かってしまうようなことが書いてあったそうですが)、私はきっちりだまされました。まあ大体はだまされて読んでいるおめでたい読者なのですけどね。 |
No.258 | 6点 | 初恋よ、さよならのキスをしよう 樋口有介 |
(2012/02/27 22:11登録) 作者の小説はいずれも主人公の女性との軽妙なセリフがある面での読みどころで、柚木シリーズにももちろんそういった嗜好はあるのだが、彼が中年のせいか物語が暗くて重い。 こんなにいい加減にやっていると、若いうちはよいが次第にいろんなしがらみが増えてだんだんつらくなってくるのだろうか。 ことに本作品はともに青春を過ごした高校の同級生があつかわれており主人公はさらに陰鬱になってしまったのだろう。 推理小説としてはちょっと弱い。意外な犯人といえるが、なんか突然に真相が暴かれてしまい、どこでこんな推理をしていたのかがはっきりしない。作者によると一人称で書いてあるのでトリックの仕掛けができににくいのだそうだが、それにしてもこんな唐突な展開はもう少し何とかならないのかなあ。 |
No.257 | 7点 | 女王蜂 横溝正史 |
(2012/02/26 09:08登録) 30年前に読んだときも古い感じがしたが、再読したらさらに「あー古臭い」。ピンポンバットやハンケチなどは死語でしょう。それも古きよき時代(良くはないのだが)の話、と思えばむしろこのおどろおどろしい話にふさわしくも思える。 サービス精神にあふれた物語で、トリックは色々出てくるし、怪しい人物が出てくるし、神秘的な美しい女性が出てくるし、で読んでいて楽しめることは間違いない。でも獄門島や本陣よりちょっと落ちるかな。 |
No.256 | 6点 | 彼女はたぶん魔法を使う 樋口有介 |
(2012/02/19 09:26登録) 作者が初めてシリーズものを書くということで作り上げた柚木草平のある意味で個性で読ませる小説のようだ。 柚木はもと刑事で中年の別居中の妻と子供があり、キャリアの警視と不倫しており等等、結構複雑なシチュエーションとなってはいるが、おしゃべりや行動様式は「ぼくと、ぼくらの夏」以来の主人公とほとんど同じなのだ。 ある意味で安心して気取ったせりふを楽しめるのだが、新しい作品の出発といった雰囲気が少ない。 こんなことならいっそのこと初期の作品の主人公をそのまま流用してもよかったと思えるぐらい。 初めて氏の作品を読んだとしたら主人公のしゃれた話しぶりに感心するかもしれないが。 |
No.255 | 5点 | 輝く夜 百田尚樹 |
(2012/02/19 09:10登録) 短編で読みやすく、あっという間に読んでしまった。どの作品も悪くはないが、ことにすばらしいということもなかった。この程度のことなら自分でも思いつくのではといった感じ。まあ時間が余ったときの暇つぶしにはよさそう。 あとがきを読むと作者は「ボックス!」を途中で中断してまでも書きたかったとのことだが、私には「ボックス!」のほうがはるかによかった。 |
No.254 | 8点 | 白色の残像 坂本光一 |
(2012/02/11 20:32登録) 第34回江戸川乱歩賞受傷作品。推理小説としては密室殺人にかなり無理があり、登場人物のとった行動も納得できないところもあるが、それを差し引いても非常に心をうたれた。自分が作者とほぼ同世代で、レベルは違うにしても高校、大学と野球をやっていたためか、高校野球、甲子園を舞台としたこの作品は共感するところが多くとても感動した。登場人物も野球人らしい「いいやつ」で、するりと感情移入し、一気に読んでしまった。 作者は仕事が忙しいからか乱歩賞受賞後あまり作品がない。でもそろそろ定年でしょ。そうなったらまた魅力的なミステリーを書いてほしいものですね。 |