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ミステリの祭典

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makomakoさんの登録情報
平均点:6.17点 書評数:887件

プロフィール| 書評

No.527 5点 鳩のなかの猫
アガサ・クリスティー
(2016/12/04 08:35登録)
 クリスティーにしてはこの作品はあまり出来がよろしくないと思います。本格物としてはこのサイトの書評でも述べられているように無理があります。ポアロが登場するのも半分以上話が済んだ後、しかも彼が話を聞いたらたちどころに解決してしまう。犯人のわかった理由は後付けで出てくるといったアンフェアさ。
 確かにこれでは誰が犯人でも成り立ってしまうでしょう。しかも彼女の長編の中でも長いほうのお話なので、途中で退屈してしまう。
 なんだか無理やり書き上げた作品のような気もします。
 大作家でもこういった駄作?があるのですね。


No.526 6点 書斎の死体
アガサ・クリスティー
(2016/11/25 21:23登録)
 小説の序文に筆者自身が書いているように、オーソドックスな書斎にその住人には全く面識のない奇抜な若い女性の死体が発見されるという、現実には到底無理な設定の事件のお話です。
 ミスマープルによって真相が明らかにされるとまあ納得できるものではあります。
 クリスティーの作品だけあって真相はそう簡単には見抜けません。こんな真相であるなんて私は思いもよらなかった。ただしこのトリック?はあくまでも古き良き時代のお話であって、現代なら絶対無理でしょうね。現代の推理小説作家さんは大変だなあ。


No.525 5点 死者のあやまち
アガサ・クリスティー
(2016/11/23 17:33登録)
 お金持ちの屋敷で余興に殺人ゲームを企画したら、殺される役の女の子が本当に死んでいたという、サービス精神にあふれた作品といえましょう。
 登場人物の推理作家アリアドニオリヴァーはクリスティーの分身のようなところがありなかなか興味深いのですが、このお話はクリスティーとしてはあまり出来が良いとは言えないと思います。
 例によって最後にポアロにより真相が明らかにされますがあまりにも作りすぎで、これほど複雑なことをしなくてもいくらでもやりようがあろうかと思うのです。


No.524 6点 麒麟の翼
東野圭吾
(2016/11/16 21:47登録)
作者は話の始め方がとても上手な作家と思っていますが、このお話はそれほどでもない。初めのほうは加害者とされている人物や彼を愛する女性の悲惨な状態、そして被害者の家族がいじめにあったりしてちょっとやりきれない。
 次第に加賀の地道な捜査から、意外な結末が浮かび上がってくる。最後には何となくよかったといった終わり方なのだが、あまりすっきりしないのです。
 この結末ではとても重く取り返しのつかないことが残ったままで、全然すっきりとはしない。まあそこが物語の重さともいえるのですが。
 それにしても被害者が突然刺されたときに、瀕死の重傷を負いながら急に思いついて必死に歩いて日本橋まで行くというのがちょっと無理がある気もします。


No.523 5点 象は忘れない
アガサ・クリスティー
(2016/11/11 19:42登録)
 最近クリスティーの作品をよく読むようになりましたが、これは本当に最晩年の作品で、やはり年寄りが書いたの作品といった感じは拭い去れませんでした。
 悪くはないのです。
 作家がファンからあまりに称賛されると気恥ずかしくていやだといったところは、多分作者自身の感慨からのものであろうと思います。クリスティーは謙虚な人だったようですから。
 高齢になっても筆力が衰えないことをある意味証明したような作品ではありますが、うまくまとめてはいるが若いパワーがないなあとしみじみ感じるところもあります。
 私だけかもしれませんが、ことに前半ではセリフのうけとりの場面が長く続き、誰がしゃべっているのかよくわからなくなるところが多くありました。ひょっとしたら翻訳のせいかもしれませんが、これが重なってくるとかなり読みにくい。原文はどうなのかな。


No.522 6点 新参者
東野圭吾
(2016/10/30 15:23登録)
 加賀恭一郎は東野氏の作品の中でも好きなキャラクターです。今回も彼らしいというか、彼らし過ぎる展開でした。
 物語の初めは淡々とした感じで、でも作者の巧みな導入でとても面白く読めます。 一章ごとが連作風となっていて、いずれもそれなりの解決を見る。なかなか人情もあって興味深い。どうしてこれが全体の話となるのか心配になるのだが、そこは東野氏で実に巧みに最終結末へと導かれる。
 なるほどね。よくできたお話。でも加賀がこんななんでもないことばかりやっていたのが、全部ストライクというのもできすぎな感じ。勿論そうでないと話としてまとまりがつかないのでありますが。
 ということで一つずつの話はかなり良いのですが、全体としてみるとなんだかこじんまりとまとまってしまった感じがして、私としてはやや評価が低くなりました。


No.521 6点 パーフェクト・ブルー
宮部みゆき
(2016/10/24 19:51登録)
 宮部氏の本は結構読んではいるような気がしていたのですが、初めての長編小説がこれとは知りませんでした。
 今読んでみるとなるほどちょっと古い時代であることがわかる。8mmフィルムが出てきたりすると懐かしいですね。
 物語は犬が主人公である必要があまりないようにも思うのですが、初めての長編で犬を主人公としたところは大胆不敵(ふるい)。お話もお笑いのように始まり、比較的地味っぽく続き、最後はど派手という新人らしい野望にあふれた展開ですが、はっきり言って最後はちょっと無理があるでしょう。途中で出てくる謎の美女もなんだかはっきりしないまま終わってしまい、消化不良のところも多い。
 でもこの後の活躍を期待できるようなはつらつとしたお話でもあり、栴檀は双葉よりかんばしいといったところでしょうか。


No.520 5点 ABC殺人事件
アガサ・クリスティー
(2016/10/19 21:24登録)
 クリスティーはどの作品も水準が高く楽しめると思っていますが、この作品はあまり好みではありません。ちょっと無理がありすぎると思うのです。
 ABC順に予告殺人がポアロのところに届き、すべて実行されてしまう。名探偵も赤っ恥といったところですが、ポアロは全然めげずに最終的には真犯人をみつけだす。
 読んでいる途中では犯人らしき挿話がちょろっと入るのですが、これが犯人なら推理小説として成り立たないなあと若干心配になる。主な登場人物でない人物が犯人で、話の本筋とは違うところで急に見つかってでは、推理小説としてはいかんでしょう。
 当然ながらクリスティーはそんなに甘くはないのですが。
 それでも話としてはやはり無理があると思うのです。結構書評が高いようですが、私はあまり楽しめませんでした。


No.519 7点 夢幻花
東野圭吾
(2016/10/16 11:30登録)
 この小説は推理小説として謎の殺人事件、不可解な人物の登場、一見つながりのないように見えるお話、ちょっとしたラブストーリー、最終的に矛盾がない解決と爽やかな読後感がある、など名作となりうる要素はきちんと入っている。さらに作者の巧みな筆さばきですらすらと読んでしまえる。
 素晴らしい作品とも思えるのだが、その割に感動はやや少ない。作者の物語の語り口が巧みすぎてもいけないのだろうか。いかにもお話がうまくできているが、すらすらと書かれたような感じ(そんなことはないのかもしれないが)がして、ちょっと重みが少ないのでしょうか。
 近年の作者は相変わらず多作でしかも一定の水準を保っているのは立派だと思いますが、少しじっくりと書いたものが読みたいというのは読者のわがままかな。


No.518 7点 メソポタミヤの殺人
アガサ・クリスティー
(2016/10/11 20:18登録)
 ずいぶん前に読んだことがあったのですが、内容はすっかり忘れてまた面白く読めました。
 最初読んだときはメソポタミア文明に興味があったのでそこが舞台の小説と期待したのでしたが、案外メソポタミアの雰囲気は少ない(クリスティーの話は場所が変わっても旅情ミステリーのように旅が主題ではない)。
 ポアロは本来尋問を繰り返すことにより犯人を見つけるといった志向が強い探偵ですが、ことにこの作品ではほとんど実際の調査は重要ではなく、かなりアームチェアーデテクチブ風です。
 密室殺人のトリックはちょっと強引で成功率が低そうな感じです。

以下ちょっとネタバレ
 犯人はめちゃくちゃに以外で、これが成り立つ可能性は低そうだなあ。女性は男と違って体の特徴をあまり覚えていないの?。夫婦でなければわからない癖が絶対あるからそれを忘れることなんて信じられないけど。

 でも全体としては面白く読めましたよ。


No.517 5点 僧正殺人事件
S・S・ヴァン・ダイン
(2016/10/10 21:12登録)
 40年ほど前にグリーン家を読んですぐ後にこの作品を読み、その後ヴァンダインを読まなくなった。
 なぜそうなったのか忘れておりもう一回読んでみることとしました。勿論内容などはすっかり忘れていて、実に新鮮な気分で読んだのです。
 マザーグースの見立て殺人。天文学のような学問をやっていると人間など単なるものとしか思えなくなる?そんなことなら天文学者はとんでもないやつばかり?とても承諾しかねる人物が登場して、しかもファイロヴァンスはそれを面白がっている。
推理小説としてのお話としては多分につまらない薀蓄(今となっては古臭い薀蓄となったものもあるが)でごまかしているところもあるが、まあ良いでしょう。ただ私にとってはこんないやな人物が登場する話は、不愉快だなあ。
 若い頃もうヴァンダインは読みたくなくなったのが再認識されました。


No.516 6点 死との約束
アガサ・クリスティー
(2016/09/26 19:54登録)
 このお話は初めから殺されそうな人は分かっているのになかなか殺人事件が起きない。ちょっとイライラ気味となるが、ようやく待望の?事件が起きる。
 犯人は誰であっても成り立ちそう。実際この小説をアレンジして良いといったら誰でも犯人にできそうです。
 さらにおしまいになってポアロが次々と何人もの容疑者に対して犯人らしいといった推理をする。さいごは全く意外な犯人で。またしてもやられました。
 小粒な話で映画化がヒットしなかったのはある意味当然でしょう。小説のほうがはるかにあっている話でした。
 初めのイライラした話が長いため、私の評価としては少し低めです。


No.515 8点 ナミヤ雑貨店の奇蹟
東野圭吾
(2016/09/20 19:39登録)
 東野氏はやはりとても才能のある物書きさんなのっすが、最近相変わらずの多作でそれなりに売れる作品を書いてはいるのですが、何となくちょっと冷たくて薄味な感じが否めないと思っていました。
 なんせ小説を書くテクニックがあるので、どんな話を書いても一応面白く読めてしまうのです。これはこれですごいと思いますが、初期の作品のような情熱や優しさが少なくなっていると感じていました。読めば面白いが初期の作品のような情熱が不足していると思ってしまうのです。
 この作品も何となく買ってしまったのですが、これは近年になく面白い。
 氏の優しさが伝わってくるようです。一気読みしてしまいました。


No.514 7点 スタイルズ荘の怪事件
アガサ・クリスティー
(2016/09/19 20:57登録)
クリスティーのそしてポアロの最初の作品。
 初めからこんなに濃い内容の話を書けるなんてさすがクリスティー。どんな作家でも処女作は初々しい反面どこかに完成度が低いところがあるのですが(それもまた楽しいのですが)、クリスティーは初めから熟達した作家に負けない作品を書いていたのだ。すごいねえ。


No.513 6点 アクロイド殺し
アガサ・クリスティー
(2016/09/19 20:47登録)
 クリスティーの作品の中でもとりわけ有名なものと思いますが、ずっと敬遠していました。それというものなにで知ったのか忘れましたが、犯人を知ってしまっていたからです。それでも結構読めましたが、やはり知らない方が数倍びっくりすることでしょう。さらに多分を立てるかも。
 当時ヴァンダインもこんなのありかといっていたそうですが、そりゃそうだ。
 忘れっぽい私でもさすがにこんな犯人は忘れることができませんでした。
 推理小説は、ことにこの小説のように犯人がわからない、とても意外な犯人だったといったところが楽しみなのに、犯人を知っていては興味半減です。
 クリスティーの作品は映画化やテレビ化されることが多いので時々みてしまうのです。それなりに面白く見るのですが、本を読む前に見るのはやめよう。オリエント急行は映画が面白かったが、これもあまりにすごい結末なので忘れられません。そのため本は未読のまま。


No.512 8点 グリーン家殺人事件
S・S・ヴァン・ダイン
(2016/09/13 21:22登録)
 この作品を始めて読んだのは40年以上前のことです。当時グリーン家は異常な人物ばかりが出てきてアメリカ人というのはこんなにゆがんだやつばかりなのだろうかと、アメリカに対する幻想が打ち砕かれてしまった(我々の世代ではアメリカは素晴らしいと教え込まれていたのです)。さらに探偵のファイロヴァンスも本筋に入る前にやたらに長い余談を話し続けたり、変な人物のおかしな話を面白がって聞いていたり、相当に変なやつといった印象でした。
 今回再読しようと古い本を探し出したらあまりに汚いのできっと新訳が出ているに違いないと新たに購入したところ、なんと40年前と全く同じ。古い本は活字も小さく老眼になり始めているものにとってはせめて最近の本のように活字だけでも大きくならないものかと思っていたのですが、なんと92版という骨董品的新品本でした。
 推理小説ファンとなって久しい現在の感想としては40年前よりはるかに面白かった。つぎつぎと事件が起こり、登場人物がどんどん殺されてしまい最後には犯人の資格があるのは2人ぐらいとなってしまうのですが、でもやっぱり真相は分からない。犯人はさすがに見当はつくのですがね。
 こういった古典的小説を読んでみると現在大量に発行されるものはだいぶん薄味であることがよく分かります。
 しばらくいろんな古典的小説を読みなおしてみようかな。


No.511 8点 黄色い部屋の謎
ガストン・ルルー
(2016/09/05 21:24登録)
 40年ほど前にこの小説を読んだのですが、この時はまだミステリーにさほどはまっていたわけではなく、ただすごい密室のお話として記憶に残っていました。当時はルールタビーユの傍若無人で礼儀知らずのくせに、やたら自尊心が高いキャラクターにちょっとついていけない感じを抱いたものです。
 今から読むと本格物の探偵の変なキャラクターに慣れたせいか、まあフランス人にありがちな感じぐらいにしか思えない。人間経験の差によってずい分感じ方も変わるものだと実感しています。
 黄色い部屋の密室の謎だけの小説のような感じと記憶していましたが、今回読み返してみると廊下で犯人が消え失せてしまった方がさらに不思議に感じました。こんなにあからさまな犯人の消失が本当にありうるのかと、ハラハラして読んでいました。この話はすっかり忘れていたのです。
 登場人物が少ないので犯人は限られる。読んでいくと誰も犯人らしくない。被害者の女性はなぜか犯人がわかっているのにあかそうとしないし、誤認逮捕された婚約者も有罪死刑となりそうなのにやっぱり犯人の名前をあかさない。非常に変な感じを抱きますが、最後にはまあ納得する結論が提示されます。めでたしめでたし。
 今回読んだ新訳では昔読んだ訳よりはるかに読みやすく、多くな方が評されているような読みにくさはほとんど感じませんでした。
 名作にふさわしい内容と思います。ただ本格物としては「黒衣夫人の香り」などこの小説では意味をなさないところが散見されて、ちょっと中途半端な印象を受けのがマイナスです。
 なお黒衣夫人の香りは次作として書かれているが、このサイトで不評のようです。私も40年ほど前に気になったので読んだのですが、全くダメだったことのみ覚えています。勿論今回再読するつもりはありません。


No.510 5点 毒草師 七夕の雨闇
高田崇史
(2016/08/14 16:54登録)
 パンドラの鳥籠が結構面白かったので、次作の本作品を続けて読みました。
 御名形史紋は相変わらずの博学で関係なさそうなことの薀蓄を長々と述べて、警察をうんざりさせ、最終的に事件を解決します。
 このお話の中にはQEDシリーズのナナちゃんやタタルと思われる人物が垣間見え、QEDの愛読者には興味があるところです。七夕がこんなに悪いお祭りであるとはもちろん知りませんでした。その点は興味深いのですが、話の進め方はQEDとほとんど同じ。こんなことなら人の話をさえぎって独眼的な話を長々と述べる感じの悪い御名形などを探偵とせず、普通のQEDのタタル君とナナちゃんを登場させたら良かったのに。大体ナナちゃんの苗字は「たなばた」だったはずですから。
 とにかくこのお話は探偵の御名形が際立って感じ悪いので、ちょっと評価は低くなりました。


No.509 6点 毒草師 パンドラの鳥籠
高田崇史
(2016/08/14 16:41登録)
毒草師シリーズはQEDの番外編として書かれたもののようだが、ご本家がおしまいとなった現在はこちらが続くこととなった。
 今回は浦島太郎伝説に関する薀蓄がたっぷり入ったお話。
 ちょっとこのシリーズから離れていたので、御名形史紋の独断的推理を読むのは久しぶりです。
 このシリーズは、推理の内容より現在常識となっている歴史が実は捻じ曲げられていることを、御名形が相変わらずの博学で語るところが最も興味深いところ。
 昔から乙姫様はなんで浦島にあんな物騒なお土産を渡したのだろうと思っていたのですが、このお話で何となく分かったような気がしました。


No.508 7点 マギンティ夫人は死んだ
アガサ・クリスティー
(2016/08/11 08:02登録)
 被害者はどこにでもいる平凡な中年女性、どんなに探しても動機が見つからない。犯人と目された人物ははすでに裁判でほとんど有罪になっており、しかも犯人とされた人物そのものが、自分の無罪をとりわけて訴えようとしない。
こんな状況なのに実際に担当した警察官からほかの犯人がいそうだとの依頼がポアロされる。
 ほとんど無理そうな設定の中から鮮やかな推理のもとに意外な犯人が名探偵によって暴かれる。
 うーん本格推理の教科書のようなお話ではありませんか。とてもよくできたお話と思います。本格物が好きならぜひどうぞ。
 その割に評価が特別良くないかというと、このお話は現代の日本ではちょっと成り立ちにくいということと、「何とか婦人」がたくさん出てきて、名前を覚えるのが苦手な私にとって誰が誰なのかが分かりにくく、話の筋がはっきりつかめないところがあったところです。

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