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ミステリの祭典

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ロビンさんの登録情報
平均点:6.56点 書評数:130件

プロフィール| 書評

No.50 9点 女王国の城
有栖川有栖
(2008/11/09 00:07登録)
個人的にわけあって、今まで本書を読むのを我慢してきたんですけど、この度ついに手に取り、読むことができました。
いやあ、面白かった!待ちに待った学生アリスシリーズ。
今回はエンタテインメント性に申し分なし。本格作品で、探偵による推理以外であんなにドキドキさせられるとは。それを成立させたのも、本書の持つフーダニット以外のもう一つの謎、ホワットダニットのおかげかと。「何故、頑なに警察を呼ぼうとしないのか?」まさかこんな仕掛けが隠されていたとは。

確かに名作で、十分学生アリスに相応しい名作なんだけど、まだ足りない。これだけの分量でありながら、犯人指摘のロジックに物足りなさを感じてしまった。僕の中では、現代日本の本格作品の最高峰と捉えているシリーズなので、求めるハードルは半端なく高い。どうしても前三作と比べてしまう。よって、惜しくも10点には届かず。

願わくは、次の長編で完結とは言わず、もっと書き続けて欲しい。(そう願うのは書き手の苦労を知らない読者のエゴか?)クイーンの後継者として、堂々と「読者への挑戦」ができるのは有栖川氏だけです。


No.49 7点 皇帝のかぎ煙草入れ
ジョン・ディクスン・カー
(2008/11/07 00:05登録)
いやあ、意外な犯人だった。自分もすっかり騙されてました。カーものにしては読みやすく、話も無駄がなくコンパクトにまとまっていた。
意外性はあるのだけど、都合のよさが目に付いて、どうも小粒感が拭えない。肝心要の伏線も、あの嗅ぎ煙草入れの存在一つだからなあ。


No.48 3点 姑獲鳥の夏
京極夏彦
(2008/11/05 00:38登録)
途中からはもう、なんだか置いてけぼりにされたような感じで……。自分には全く合いませんでした。


No.47 4点 伯母殺人事件
リチャード・ハル
(2008/11/01 17:16登録)
三大倒叙物の一つ。
ああ、辛い。読むのが辛い。主人公にも腹が立つし、伯母や周りの人間にも腹が立つ。本来ならば、「ああ、この伯母は本当はいい人物だったんだなあ」と思わせたいのかもしれないけど、前半の主人公視点の部分を読んでいても、苛々とした気持ちにさせられるだけで、全然救いがない。やっぱり腹が立つ。まあ、これだけ感情を弄ばれたのなら、それだけ筆力があったってことなのかもしれないけど。
ちなみに、『伯母殺人事件』というタイトルが最大のトリックです。


No.46 7点 クロイドン発12時30分
F・W・クロフツ
(2008/11/01 17:14登録)
三大倒叙物の一つ。
細部にまで徹底的に、本当に丁寧に描写されている。無駄な部分も本筋もどこをとっても描写に手を抜いていない。だから少しだれたなあ。でも倒叙ってこういうものみたい。
ありがちなラストのサプライズではなく、フレンチ警部が論理的に解決してくれる。犯人の立場から読んでいくと、完璧だと思っていたもの、問題ないと思っていたものも、改めて第三者の目で見た出来事を語られると「なるほど、確かにおかしい」と思わせてくれる。
だけど肝心の、推理を展開させるための絶対的な証拠が最後まで記述されていないぶんアンフェアか。
(一箇所、これは叙述トリックだなと思われる箇所があったが、見当違いでした)


No.45 6点 殺意
フランシス・アイルズ
(2008/11/01 17:12登録)
三大倒叙物の一つ。
フランシス・アイルズ名義の作品。主人公が実際に殺人を行うまでが長く、下手な恋愛ものを読んでいるような感じで、ちょっと辛い。しかし、それも後の主人公のコンプレックスや妄想的な狂気をかきたてていくために必要なものだったなと納得。倒叙ものの醍醐味である心理描写に関しては、丁寧に綴られていて徐々に感情移入を誘われていった。しかし、もう一つの醍醐味であるサプライズには、読後すぐには意味がわからず混乱。


No.44 9点 人形はなぜ殺される
高木彬光
(2008/10/28 13:06登録)
やっぱり自分は、古き良きド直球な本格ものが大好きなんだなあ、と実感させられた。
冒頭から何度も作者がこちらに語りかけてくる「人形ははなぜ殺される?」この命題の答えが明らかになったときは、久々に体の中を何かが突き抜けていった。すごいトリックだ!
ただ、神津恭介は名探偵のわりに話術がちょっと弱いかなと。解決編もわりとあっさり終わっちゃったし。もっとくどいくらいにロジカルに言葉を駆使して推理を披露すれば、もっと盛り上がったはず。


No.43 9点 赤朽葉家の伝説
桜庭一樹
(2008/10/26 19:19登録)
鳥取県の紅緑という架空の村に存在する赤朽葉家。そこに住む千里眼奥様、万葉。その不良娘、漫画家の毛毬。その娘、普通の女の子、瞳子。その母娘三代にまつわる物語。
形式としては、瞳子の一人称で、祖母や母から聞いたそれぞれの時代の話が丁寧な描写で綴られていく。三部作となっていて、最後の瞳子の話になってから、突如この物語はミステリに変貌した。強引に枠に括ろうとするならば、「手記もの」(残された手記を読んだ探偵が、その矛盾点をつき、隠れた真実が露見する、みたいな)になると思う。
ミステリとしては弱いかと。あくまで小説として、美しい物語。「ようこそ、ビューティフルワールドへ」本当にそう思わせてくれるのは、そのミステリの部分があってこそ。涙を誘う感動とはまた違う。深く届く、余韻の残る本当に美しい物語です。


No.42 6点 髑髏城
ジョン・ディクスン・カー
(2008/10/24 23:58登録)
髑髏の形に似た古城で起こる事件。被害者は全身を炎に包まれて城壁から転落する。バンコランとライバル役の探偵が真相をめぐって対決するという構造。
怪奇趣味は満載。だけどなんかいまいち。事件自体は食指を動かされるものだけに、探偵対決もお決まりな感じに終わり、高みには届いていない。初期のバンコランシリーズはこれも含めて二作しか読んだことはないが、どちらも不満足。初期はだいたいこんなものなのかなぁ。


No.41 7点 犯罪ホロスコープⅠ 六人の女王の問題
法月綸太郎
(2008/10/24 23:48登録)
「ゼウス」と「ヒュドラ」がベスト。特に後者が好き。シンプルなフーダニットものだけど、一つ先に真相が置かれている。手袋のロジックも、クイーンっぽくって素敵。それ以外はどれも少し小粒な印象。長編ではヘマをしまくりの綸太郎も、短編での有能な安楽椅子探偵ぶりは健在。
ちなみに「ライオン」での作中の脚本が以外とツボ。けっこう面白そうな作りになっているのでは?(もしかして前例あり?)


No.40 6点 動く標的
ロス・マクドナルド
(2008/10/21 17:33登録)
私立探偵リュウ・アーチャーの初登場作品。正直、ロスマクの初期作品はあまり期待していなかったのですが、結果予想通りなものに落ち着いたかなという印象。悲劇の訴求力も、中~後期の作品に比べて全然足りない。
っていうかアーチャーのキャラがなんか違う。スタートはこんな情けない奴だったのか。後の「質問者」というスタイルもまだ確立されていない感じ。それでも終盤の展開はそれなりに満足できるものでした。


No.39 7点 扉は閉ざされたまま
石持浅海
(2008/10/20 00:17登録)
なんて恐ろしい女だ笑。その後の犯人の人生はいったいどうなるんだろうな。それを知るためだけでも続編を読みたくなった。(触れられているのかな?)
倒叙にありがちなサプライズではなく、ロジックで勝負。本当に緻密。倒叙だから読者は知っているはずなのに、思わぬところから取っ掛かりを引っ張ってくる。
動機に関しては、僕はかなり甘い立場を取っている人間なので問題なし。


No.38 10点 ウィチャリー家の女
ロス・マクドナルド
(2008/10/18 22:32登録)
『さむけ』と並ぶロスマクの傑作。失踪した娘フィービ・ウィチャリーを探し出して欲しいと、父親である大富豪のホーマー・ウィチャリーから依頼を受けたアーチャー。
非常に複雑に入り組んだアメリカ上流家庭の悲劇。終盤に向かって転がり続ける事件の中で、徐々に判明していく事実はあまりにも救いがない。ラストに犯人が漏らした、「過去のちょっとした過ち」それが徐々に大きく育っていって、このとんでもない悲劇へと発展していく様が非常に非情に描かれている。唯一、彼女の生存が小さな希望を抱ける要素かなあ。だけど、このどうしようもなく物悲しい感じがまた好きで。
個人的には本格とハード・ボイルドを見事に融合させた『さむけ』よりも本書のほうが好きです。


No.37 8点 ネジ式ザゼツキー
島田荘司
(2008/10/16 19:50登録)
途中で御手洗が物凄いロジックを展開してくれるおかげで、おそらくほとんどの読者にはメインのトリックは分かってしまうだろう。それでも残る事件の不可解な点、猟奇的殺人の真相がラストに明かされ、前記のロジックでは理解し切れなかった部分がようやく把握できた。
この作品の御手洗さんはずいぶんおとなしいですね。彼の個性がほとんど出てこない。


No.36 8点 ユダの窓
カーター・ディクスン
(2008/10/15 12:07登録)
終始一貫して舞台はほぼ法廷のみで、物語展開は期待できないのでどうかなぁ、と最初は身構えていた。だけど事件の不可能状況、徐々に明かされていく真相の意外性と、どんどん引っ張られていった。
ちょっとした食い違いが事件をさらに複雑にしていくのはカーのお得意のパターンですが、今回の食い違いは本当にひどい。あの人物は可哀相過ぎる。
自分も、ハードルが上がりすぎて、「ユダの窓」の正体には満足できませんでした。


No.35 7点 弥勒の掌
我孫子武丸
(2008/10/13 18:46登録)
妻が失踪し、その殺人容疑をかけられた教師の視点と、妻を殺され、汚職の容疑をかけれらたため警察組織から外れ独自に捜査を開始する刑事の視点で、物語は展開される。
どうやら、『殺戮』『探偵映画』的仕掛けが施されているらしいと……。
うわ~、まだこんな面白い構造があったのか。実際は、どちらかといえば新本格よりもサスペンス風な仕掛けで、想像していたよりも種類が違うもので、その分衝撃も。
確かにネタは面白いし、驚きはあったんだけれども、なんか勿体無い。ページ数も少ないし。もっと、もっと完成度の高い作品にできたはず。
ちなみに、『殺戮』程でないとしても、後味は悪いです。


No.34 8点 殺人交叉点
フレッド・カサック
(2008/10/11 23:49登録)
くは~。そういうことか。脱力。そして爽快。
この手のトリックは国内物ばかりかと思っていたら、だいぶ昔から海外でも存在していたみたい。なんとなく『弁護側の証人』を髣髴とさせられるところがあるが、あれは読者を騙すためだけの物に対して、こちらは読者も作中の人物たちも皆騙されてしまいます。まあ、アンフェアだとか野暮なことは言いっこなしで笑。


No.33 6点 クビキリサイクル
西尾維新
(2008/10/11 23:42登録)
キャラと世界観は、「メフィストだなぁ」というもの。物語は、孤島もの、連続殺人、密室といったコテコテのミステリー。
僕はなんだか、主人公に物凄く共感できてしまった笑。
本書の持つ哲学的な言葉は面白いが、天才を多発させる最近の風潮はなんとかならんものか。どうしても森博嗣がチラついてしまう。

現代そして未来のミステリー界では、こういった作風でしか新しい作家はデビューできないのかなと思うと、古き良きド本格な探偵小説を愛する自分としては、ちょっと感傷的な気分になってしまいます。


No.32 5点 シンデレラの罠
セバスチアン・ジャプリゾ
(2008/10/10 17:47登録)
確かに本格ではないので、論理的帰結は必要ないのかもしれないけど、とにかく理解し辛い。(とりあえずそれは翻訳のせいにして)
突如過去の話に戻ったり現実の話だったり、時系列がばらばら。視点も一人称から三人称へと行ったり来たりで混乱した。
まあ、「そういう系」のものだと割り切って読めば……。


No.31 8点 眠れる美女
ロス・マクドナルド
(2008/10/09 04:03登録)
石油が漏出した海岸でアーチャーが心惹かれて出合った女性が、彼の家から致死量の睡眠薬を盗んで失踪。彼女は石油流出事故を起こした石油王の孫であることが後に判明。夫から失踪した彼女を探す依頼を受けたアーチャーは捜査を開始。しかし、彼女の両親の元に、彼女を誘拐し身代金を要求する脅迫電話がかかってくる……。

お得意の家庭内悲劇と、石油漏出という社会的悲劇が混ぜ合わさって、前者の悲壮感を盛り上げている。
本当に二転三転するラストの真相は、複雑なプロットのわりには分かりやすいものだったけど、最後の最後まで転がるので油断できません。

ロスマクの作品を読んでいると、法月さんはクイーンよりもこっちのほうの影響を強く受けているんじゃないかな、と思わずにはいられない。

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