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ミステリの祭典

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あびびびさんの登録情報
平均点:6.33点 書評数:669件

プロフィール| 書評

No.329 8点 ヘラクレスの冒険
アガサ・クリスティー
(2013/09/25 18:21登録)
ヘラクレスの12の冒険をボアロ風にアレンジしたオムニバス的な短編集。中には長編にしても良さそうな物語があり、クリスティー好きなら100%満足する一冊になっている。

しかし、この作家の資源は尽きることがないですね。


No.328 5点 十二本の毒矢
ジェフリー・アーチャー
(2013/09/18 00:06登録)
作者初の短編集。ミステリ、サスペンスというより、逸話的な要素が盛り込まれた物語が多い。最後の、「ある愛の歴史」は、天才と呼ばれた男女ふたりの一生を描いた、文字通り愛の物語だった。

どちらかといえば、この後に出た「十二の意外な結末」の方が好みで、ハッとさせられた。


No.327 8点 百万ドルをとり返せ!
ジェフリー・アーチャー
(2013/09/16 16:20登録)
この作家のデビュー作と聞いてびっくりした。自身の投資失敗を糧にして書いたらしいが、自分には縁のない投資の世界が垣間見えてくる。

騙された4人が集まり、それぞれのプランでお金を取り戻すわけだが、最後は奇想天外な終結。でも最初悪人だった男が、最後は善人のようになっていないか?(笑)


No.326 7点 十二の意外な結末
ジェフリー・アーチャー
(2013/09/10 21:25登録)
「40ぐらいの短編ならいつでも書ける」と、来日した時に言ったそうだが、なるほど色々な分野の作品が並べられ、唸るほどではないけど、思わずニヤリとさせられた短編集だった。

中でも「完全殺人」は意味深なだった。「清掃屋イグナチウス」はわずか12ページだったが、切れ味が鋭く「あっ」と言ってしまった。まあ、分かる人は予想通りだったのかも知れないが…。


No.325 2点 ペーパー・マネー
ケン・フォレット
(2013/09/03 22:06登録)
「針の目」が良かったし、その時他の作品も読みたいと思った。しかし、この物語はあまりにも登場人物が多く、謎がなさすぎた。

誰が主人公なのかも決めかねる。ロンドンで北海石油採掘権を巡る話が中心だと思うが、そうでもないような気もする。登場人物の一番上にある名前も物語の中枢にいるとは思えなかった?


No.324 7点 殺人症候群
リチャード・ニーリィ
(2013/08/31 14:10登録)
叙述トリックは半分くらい読んで分かってしまったが、読むにつれてサイコミステリの醍醐味を感じた作品。「心引き裂かれて」より前に読めば、驚愕の真実だったのかも知れないが、大体の傾向が分かってしまったのでこの結果に。

しかし、全編に流れる怪しげな雰囲気は、まるで映像を見ているような気にさせられた。もっと人気になってもいい作家ではないか。早く次の作品を探さなくては…。


No.323 5点 ウッドストック行最終バス
コリン・デクスター
(2013/08/20 01:38登録)
必ず海外ベスト100くらいには入っている秀作。でもこの作者とは呼吸が合わない。キドリントンは4点しかつけなかったが、ここでも5点が精一杯だ。これを皆さんの評価になぞって高得点をつけてもまったく意味がない。

モース警部のユーモアはなぜか笑えなかった。そう言えば同じタイプに見えるフロスト警部もあまり得意ではない。俺は人間そのものが固すぎるんだな(ミステリ界では)と、思う。


No.322 5点 三毛猫ホームズの推理
赤川次郎
(2013/08/17 11:15登録)
もう何十年も前になるが、ベストセラー作家として、若い人、特に女性に人気があるのは知っていたけど、この作者の本は一冊も読んだことがなかった。この前、古本屋で見つけ、安かったので買って読んだが、なるほど軽いタッチで読みやすい。

密室トリックについては大胆と言えば大胆だが、滑るように落ちる可能性もあり、確実に死ぬかどうか疑問が残る。まあ、しかしそんな細部のことは軽いノリでクリア。なにより、三毛猫ホームズという語呂がいいなあと思った。


No.321 9点 心ひき裂かれて
リチャード・ニーリィ
(2013/08/13 21:07登録)
2日がかりで読み終えたのは通勤電車がちょうど目的地に着いた時だった。そこから家まで、ボーっとしていた。終始淡々と読んでいたが、最後の衝撃度は予想外だった。

どう表現すればいいのか?ロス・マクドナルドの「さむけ」と、我孫子武丸の「殺戮にいたる病」をたして2で割ったような、サイコ・スリラーの頂点のような気持ちを味わった。

文句なしなら10点満点だが、それでも9点にしたい…という気持ちになった。その状況を認めたくない、そんな防衛本能が働いたのかも知れない。


No.320 7点 消えゆくものへの怒り
ベツキー・マスターマン
(2013/08/12 11:20登録)
毎年夏に発生し、若い女性が犠牲になっている「ルート66連続殺人事件」。これを解決するためにおとり捜査のスペシャリスト、ブリジッド・クインの指揮で罠を仕掛ける。

しかし、ずっと無線連絡していたおとり役の女性捜査官からの連絡が絶え、その新人捜査官は行方不明になる。その7年後、退職していたブリジッドに犯人逮捕の報が入る。しかし、その犯人の自白にはどうも違和感が残り、自ら再捜査を開始する…。

この作家のデビュー作だそうだが、元は犯罪心理の仕事をしていただけあって、微妙な駆け引きが実にリアルであり、真犯人もこの作品にふさわしかった。


No.319 6点 フリーファイア
C・J・ボックス
(2013/08/05 00:29登録)
イエローストーン国立公園で4人の若者が射殺された。しかし、出頭してきた犯人は弁護士で、死のゾーンとと呼ばれる法律の抜け穴を利用して釈放される…。

調査を依頼されたジョー・ピケットは、広大なイエローストーンの自然の中に犯行動機があると気付き、ある企業の陰謀に巻き込まれる。

それにしてもイエローストーンの巨大さにびっくりした。


No.318 7点 バッドタイム・ブルース
オリバー・ハリス
(2013/07/25 02:46登録)
一人暮らしの大富豪が姿を消した。取り調べをしたのはニック・ベルシー刑事だが、彼は破産寸前。多額の借金を背負っており、その大富豪のスーツを着、車、家財道具を処分、カードまで使ってしまう。

その大富豪を取り巻く世界は大金の臭いがプンプン。警察の仕事と言うより、自分の利益(大金をさらって逃亡する)を目当てに事件を解明しようとするが…。


No.317 9点 クリスマス・プレゼント
ジェフリー・ディーヴァー
(2013/06/26 00:45登録)
この作家のファンだと言うことを改めて認識した。16もの短編はどれも素晴らしいが、書き下ろしの表題作は思わずニヤリとした。どこにどんでん返しのネタがあるのかと思いきや、ちゃんとジェットコースターに乗せてくれるのが嬉しい。

作者はテレビの「ミステリーゾーン」が大好きだったと言うが、まさに一作、一作が驚愕に満ちている。ジェフリー・ディーヴァーの魅力が凝縮された一冊だと思う。


No.316 8点 時のみぞ知る
ジェフリー・アーチャー
(2013/06/09 23:52登録)
「ケインとアベル」を凌駕する、世界で4億冊を売った作家の
新作、ということで、文庫上下を買った。だが、ともに400ページに満たず、そのページ数であの傑作(私は10点満点)を超えるはずは…と思いながら読むと、まだ序章というべき内容だった。

しかし、さすがに面白い。貧民家庭から最高学府まで進んだ主人公がある女性と婚約をするが、決定的事項で婚約破棄になり、第二次大戦の志願兵となる。しかし、その修練過程で乗っていた貨物船が
Uボートに撃沈され、アメリカの客船に救助、ニューヨークに着いたところでこの物語は終わっている。

簡単に言えば、「青春の門」で、筑豊から出たばかりのあの主人公と同じ立場である。と言うことは、この物語はこれからが起承転結の承に入るのだと思う。そういう意味では、「ケインとアベル」を超える可能性もある。


No.315 5点 解錠師
スティーヴ・ハミルトン
(2013/05/27 23:31登録)
言葉の出ない少年が色々な経緯から鍵に興味を持ち、その世界のキングから教えられ、一流の解錠師になる。まだ18歳と言う若さである。

その過程の中でアメリアと言う同年代の女性と知り合い、生きることへの望みを持つが、解錠師とは泥棒の手助けをすることであり、結局は逮捕され、10年以上の刑期を課せられる。

異色的だが、青春のほろ苦さが伝わってくるいい小説だと思う。


No.314 7点 永遠の0
百田尚樹
(2013/05/22 21:53登録)
日本男児たるもの、太平洋戦争、それも末期の特攻隊のことは知らなければならない…そんな感情があったのは確かだが、この本で良かった。

自分の田舎(山口県周南市)の大津島というところに、人間回転魚雷の装置が残っており、特にそう思っていた。しかし、日本の場合は「一体」ではなく、上層司令部が個々の出世のために、赤紙一枚で集めた人間を捨て駒に使っていたという事実。逆にアメリカを含む連合軍は第一に人間の命を尊重し、その方向性から戦闘機の改良が進んだという素晴らしき進化。

島国根性むき出しで、視野が狭かった当時の日本軍。ナチ狩りではないけど、終戦後に司令部狩りみたいなことはなかったのかな?


No.313 8点 二流小説家
デイヴィッド・ゴードン
(2013/05/11 01:22登録)
ハリー・ブロックは二流小説家。ゆえにほとんど偽名を使い、ポルノ、ヴァンパイヤ小説などのマニアに提供してきたが、収監されている殺人鬼が読者の一人で、真実を明かすから告白記を書いて欲しいと手紙が来る…。

その殺人鬼には多数の女性ファンからファンレターが来ており、告白する条件として、その女性たちを訪ねて欲しいと言う。ここから一気にサスペンスとなるわけだが、この二流小説家がいい味を出して、意外な犯人?驚きはしなかったが補足的などんでん返しもある。


No.312 6点 邪悪
ステファニー・ピントフ
(2013/05/02 23:59登録)
2009年のデビュー作。女流作家で最優秀新人賞、アメリカ探偵クラブ賞を受賞。あの元アメリカ大統領のビル・クリントンも「素晴らしい読書体験」と、コメントしている。

時代は1902年、ある田舎の裕福な大邸宅の2階で天才的数学者になりうる女性が惨殺された。ほとんど手がかりがなく、混乱しているところにニューヨークの犯罪学者から「犯人を知っている」という連絡が来る。そこから事件はヒッチコックの映画のように、ずっと緊張感を孕んでいた。

ある作家の「陰影のあるキャラクター、手に汗を握るサスペンス、歴史のディテールを巧みに織り込んだ傑作」との評価も納得。


No.311 7点 マーキュリーの靴 三番館の全事件(2)
鮎川哲也
(2013/04/27 23:10登録)
どれも小粒だが、推理小説の原点のような作品ばかりで、それなりに楽しめた。元刑事の探偵に事件を依頼するのはでぶの弁護士。元刑事の事務所は汚くて、空気が澱んでいる。でぶの弁護士にとって体調を崩しかねない部屋だが、それでも事件の依頼をするのは、その探偵の事件解決率の素晴らしさだ。

しかし、この探偵は元刑事であり、裏付け捜査には真面目に奔走するが、ほとんど事件を解決したことはない。捜査が行き詰ると、必ず会員制のバーに行き、そこの達磨大師に似たバーテンダーに経過を報告して事件を解いてもらう。

そのバーテンダーは、エルキュールポアロのごとく、理路整然とした推理で(ただし、どこまでも謙虚である)謎を解明する。そして、その探偵はまたでぶの弁護士の信頼を深めていくのだった。


No.310 7点 ビター・ブラッド
雫井脩介
(2013/04/17 15:50登録)
本当に外れの少ない作家だと思う。警察小説、いわゆる刑事モノで新米刑事が主役。この設定はよくあるが、周りのベテラン刑事たちが魅力の面々。特に離婚して家族を見捨てた…と思われている実の父親(苗字がちがう)の存在感が笑える。

その父親と組んでの捜査だが、いくらなんでも「お前」呼ばわりはどうかと思うが、寛大な父親のキャラでそれがユーモアに変換され、読みやすくなっている。

刑事と情報提供者、信頼と裏切り。驚くようなどんでん返しがあるわけではないが、展開スピードが早く、なかなか読ませてくれる。

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