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ミステリの祭典

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永遠の0

作家 百田尚樹
出版日2006年08月
平均点7.25点
書評数12人

No.12 7点 バード
(2021/04/01 22:30登録)
タイトルは元から知っていたものの、中身は完全に未知の状態で挑戦。0って零戦の0だったのね。長い上に暗く、自分の趣味嗜好のど真ん中ではなかったものの、一気に読みたくなるパワーがあり、期待以上だった。

宮部久蔵という人物を旧知人達が語る構成で、語手達の壮絶な戦争体験がリアルに伝わってくる。カミカゼや戦争を正しく認識できた、とはとても言えないが、本書を読み改めて今が平和な時代で良かったと思えた。

No.11 7点 斎藤警部
(2015/06/01 11:47登録)
かなり熱中して一気に読んだ本ですが、それは主に生還パイロット達の語る戦記のくだり。
歴史の証言部分のリアリティ溢れる熱さと、現代の物語(物語なのか?)パートのぬるさのギャップは、現代パートに戻る瞬間さほど心地よいものではありませんでした。
“記憶の断片が揃うとき、明らかになる真実” と業界さんも煽って来るしミステリー的に感動する驚天動地の結末を期待してしまったのですが、人の命のお話に対して誠に不謹慎ながら、何気にチャンチャンな結末だった感はあります。 『永遠の0』という極めて象徴性の高い題名が付いている割に、「0」は「零戦」の事、そしてそれは永遠です、くらいに簡単に整理出来ておしまいとなってしまい、折角の強い題名が活かし切られていないのでは。
でもとにかく大いに読ませてくれたに事は間違い無いので、そうそう低い採点する事も無いです。

No.10 5点 tider-tiger
(2015/02/04 22:03登録)
この作品が社会に与えた影響、意義は認めたうえで採点させて頂きます。
戦記ものには疎い自分でしたが、最後まで興味深く読みました。感動もありました。私は作中のとある人物のように特攻隊員はテロリストだなんて思わないし、日本帝国軍人を悪人の集団だとも思っておりません。
ですが、自分は本作を小説としてはあまり評価できません。作者が自分で考えたであろう小説部分は物語も人物も陳腐。文章もけして上手ではないと思いました。
自分の認識では本作は数人の老人が資料を読み上げる話。その資料には興味深く、哀しく、いろいろ考えさせられる点がありました。
よって資料としては7点ですが、小説としては3点、中間を取って5点としました。

No.9 8点 E-BANKER
(2014/03/22 20:21登録)
もはや説明不要とさえ言えるほどのベストセラーとなった本作。
昨今問題発言(?)が騒がれているが、類まれなるストーリーテラーとなった作者のデビュー作にして最高傑作(だろうな)。

~「娘に会うまでは死ねない、妻との約束を守るために」。そう言い続けた男は、なぜ自ら零戦に乗り命を落としたのか・・・。終戦から六十年目の夏、健太郎は死んだ祖父の生涯を調べていた。天才的パイロットだが臆病者。想像と違う人物像に戸惑いつつも、ひとつの謎が浮かんでくる・・・。記憶の断片が揃うとき、明らかになる真実とは?~

本作を読むことになろうとは全く思ってなかった。
ミステリーとは全く異質の読み物である本作。仕事の関係でどうしても読まなくてはならなくなり、手に取り頁をめくり始めた途端・・・
物語の波に呑み込まれていった・・・

これは書評すべき作品ではないだろう。
入念な取材が成された様子が分かるし、史実に近い内容になっているのだろうと思う。
つい、六十年前、日本は、日本人はこんな時代を過ごしてきたのだ、という圧倒的な事実。

徐々に戦争の語り部がいなくなっている現代。
我々は平和の世を生きる幸せを噛み締めなければならない。
そして何より、「なぜ戦争を始めたのか」「始めなければならなかったのか」・・・
それを考えていかなければならない・・・

あまりうまく書けないが、そんなことを強烈に考えさせられた。
本作にミステリーとしての評価はできないし、一応点数をつけてるけど、参考外。

No.8 7点 メルカトル
(2013/11/18 22:24登録)
これはミステリじゃないね、立派な文芸作品だよ。でも書いちゃうよ、登録されていたからね。
とても素晴らしい作品、何が?それは読まなきゃ分からない。そこかしこに落涙ポイントが散見されるし、その上立派なエンターテインメントとしても成り立つという、まれにみる名作じゃないだろうか。
志願せずして特攻隊として亡くなった祖父の謎を、孫たちが彼を知る当時の仲間たちを訪ねて聴取するという構図は確かにミステリのようではあるが、あくまで文芸作品と捉えたい。
それにしても、本作は様々なことを勉強させられるし、また感動を与えてくれる、勿論嗚咽を堪えながら読まなければならないシーンも少なくない。戦争を体験することなく育った我々が読むべき作品であり、長きに亘って語り継がれるであろう作品でもある。
尚、文庫版の解説は、本好きで知られた今は亡き児玉清さんが担当しているのも、因縁浅からぬものがあるような気がする。

No.7 8点 白い風
(2013/07/07 22:16登録)
初めて百田さんの作品を手に取りましたが、人気なのも分かります。
特攻隊で亡くなった祖父のことを孫の姉弟が当時のことを知る元戦友を訪ねる形で進んでいきますね。
特攻=テロと云う新聞記者も現れ、かなり今までのイメージが違う戦争感が味わえました。
当時のことを知っている年配の方より、戦争を知らない若い方に読んで貰いたい作品ですね。
ミステリー度はあんまり高くはなかったけど、内容が素晴らしかったので8点を付けました。

No.6 7点 あびびび
(2013/05/22 21:53登録)
日本男児たるもの、太平洋戦争、それも末期の特攻隊のことは知らなければならない…そんな感情があったのは確かだが、この本で良かった。

自分の田舎(山口県周南市)の大津島というところに、人間回転魚雷の装置が残っており、特にそう思っていた。しかし、日本の場合は「一体」ではなく、上層司令部が個々の出世のために、赤紙一枚で集めた人間を捨て駒に使っていたという事実。逆にアメリカを含む連合軍は第一に人間の命を尊重し、その方向性から戦闘機の改良が進んだという素晴らしき進化。

島国根性むき出しで、視野が狭かった当時の日本軍。ナチ狩りではないけど、終戦後に司令部狩りみたいなことはなかったのかな?

No.5 8点 バックスクリーン三連発
(2013/04/02 13:14登録)
ミステリなのでしょうか
という疑問はありますが
私は序盤中盤と冒険活劇として読んでいました
海軍のゼロ戦乗りの話ですね しかもエースの話なので
非常に痛快に読み進めることが出来たし
ゼロ戦の優秀性が良くわかりました
終盤は予想外の展開でしたが
清清しい後味だったように思います

No.4 6点 Q-1
(2012/06/22 05:29登録)
私の祖父が海軍だったこともあり生前は祖父の家に行くと必ず戦争の話を聴かされていたので、
宮部さんと井崎さんがおじいさんになったら戦争の話を孫に聴かせるのかなという件は感慨深いものがありました。

しかしながら、太平洋戦争というノンフィクションの中に
宮部さんの軌跡を遡るというフィクションが入ってくるという構成上故か、
有名な逸話が参考文献からトーレスしたように書き綴られているのでオリジナリティを感じられませんでした。
はっきりといえば、フィクションである宮部さんの話を除くと様々なこの戦争に関する文献を読みやすくした本だと思います。

とはいえ、特攻隊の話は日本人であれば涙なしには語れないですし、
言い方は悪いですが、戦死した方々の屍の上に平和ぼけするほど平和な日本があるということを知るためにも
余り太平洋戦争に明るくない方は一読されることをお奨めします。

最後にフィクションフィクションといいましたが、
宮部さんの話も実在したモデルがいてもおかしくない話で感動的です。

No.3 9点 makomako
(2011/10/09 09:25登録)
 世代の違いなのか私には想像できない程狂った時代とは感じられない。知覧の特攻隊の文章を読んで特攻がテロリストなどと感じる人がいるとは思わなかった。愛する家族や国を守るためにそして命令に背くことが不可能なために命を投げ出さずにいられなかった。さらにその作戦そのものの成功率がほとんどなくなってからも続行されて無駄に(といってはあまりにかわいそうだが)死地に赴いた。本当に気の毒でならない。
 この作品はこういった時代に直面した人間の切なる物語であり、まさに涙なくして読めないところがある。

No.2 8点 ムラ
(2011/06/20 22:30登録)
これほど狂っている話も中々ない。それも実際に会った話だというからなお狂っている。
いまの時代を生きる自分にとっては彼らの話はフィクションと言われても信じられるだろう。それくらい狂っている。
戦争の話はボンヤリとしか知らなかったが、こうやって長々と見ると心にズシンと来るものだ。あとこれは一人で見るものですね。電車とかで見たらボロ泣きしている姿を見られてしまう(笑)
9点かどうか迷ったが、この本の命題でもある宮部が死んだ理由が納得いかなかったのでこの点数で。仮に宮部の本来乗るはずだった戦闘機が壊れていなくても、特攻に行ったのかどうかこれではわからなくなってしまう。それと現代編の書き方も悪い気が。お姉さんの恋の話は心の底からどうでもよかった。
しかし実体験者が語る方式の戦争物に興味を持たせてくれたこの本の価値は高い。いまの日本人にはぜひ読んでほしい作品です。

No.1 7点 レイ・ブラッドベリへ
(2011/02/20 15:12登録)
 もし、このサイトの管理人さんから、「あなたは神を信じますか?」と訊かれたら……
あ、すみません、ジョークです。管理人さんがそんなこと言うはずないし……元へ。

 もし、このサイトの管理人さんから、「あなたはこの作品をミステリと断言できますか?」と訊かれたら……少し伏せ目がちとなる自分がいるなあ。
 まあ、聞いてください、ストーリーの概要はこうです。
現代を生きる姉弟が、太平洋戦争で亡くなった祖父の人物像を究明するため当時の関係者を訪ねて証言を集める。
彼らの話から浮かび上がってくる、祖父の多様な姿…
そして最後には一転、祖父は死を決意するが、その理由とは?

 どうです、ハードボイルドみたいな構成でしょう?
(…すみません。僕はハードボイルドといわれるものはほとんど読んでいません。知ったかぶりをして、自分の適当なイメージで言ってみました)。
 それから最後には意外な犯人…じゃなかった、意外な証人も出てきます。そして解決編…じゃなかった、最終章では、さりげなく書かれたこれまでの伏線が綺麗に収束し「ああ、そうだったのか!」という感動の結末を迎えます。
というわけで、「この作品はミステリです」と確信して感想へ移ります。

 この物語では「孫」にあたる青年が語り手だが、主人公は紛れもなく「祖父」の方だ。そして主人公が生きた時代背景として、「太平洋戦争での日本海軍の主要な戦い」が描かれてる。また主人公が搭乗していた零戦(「れいせん」あるいは「ぜろせん」)という戦闘機と、その空中戦の有様が詳細に書き込まれている。
それぞれが相当なボリュームを占めているので、この種のものに興味がない方は読みづらいかもしれない。タイトルである「永遠の0」の 0 は「ゼロ」で、零戦のことを指している。

 ところで、清水政彦氏の「零式艦上戦闘機」(新潮選書)によると、零戦の最大の欠点は「補助翼の舵利きの悪さ」だったそうだ。
飛行中に「ロール」(胴体部を軸として機体を回転させる)するには操縦桿を横に倒して補助翼を上下させる。ロールは飛行機の方向を変えるにも、旋回するにも、急降下するにも、初動として必ず行う運動だ。だが零戦は補助翼の舵の利きが悪く、特に高速時には操縦桿が重くなり制御不能となったそうだ。このため、急降下して逃げる敵を追おうとロールに入っても、動作が緩慢なために時間がかかり、しばしば逃してしまったとのことだ。
 作中、主人公が壊れた機銃の銃身を片手で持ち上げて、腕力を鍛える場面がある。(この銃身は、主人公の部下が両手でようやく持ち上げられた物だ)主人公の操縦技術は超一流だが、その強い腕力で零戦を制御していたのだ。

 それから、この作品ではアメリカ海軍が使用していた「F4Uコルセア」を「シコルスキー」と書いているが、先ほどの清水氏の本によると、当時の日本では確かにそのように呼称していたそうだ。

それから……
(ハッと我に返り、気がつくと)こちらを見る管理人さんの視線に力が……

 この本の巻末に、児玉清さんが解説を書かれている。
それはまさに、この作品の素晴らしさを言い尽くしている。
今さら僕なんかの駄文を重ねることはない。第7章以降は、涙を拭くティッシュ・ペーパーの箱を手放せなかった。

 主人公が特攻に出撃するのを見送った男の、
「あの時、奴の目は死を覚悟した目ではなかった」という言葉と、
主人公が、最後に妻に残した言葉、
「必ず生きて帰ってくる。たとえ死んでも、それでも、ぼくは戻ってくる」の意味がわかったとき、僕はティッシュの箱のおかわりをしたものだ。

 読後の感想は、体感温度(?)では文句なしの10点だったけど、「笑点」の大喜利メンバーが「しまった!はずしたな…」と思ったときは自主的に座布団を返上するように、なんとなく「後ろめたさ」のある自分も3点ほど減点しておきますね。

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