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ミステリの祭典

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十二本の毒矢

作家 ジェフリー・アーチャー
出版日1987年09月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 E-BANKER
(2018/01/10 22:29登録)
J.アーチャーお馴染みの作品集。
どうも本作が「十○・・・」タイトルのシリーズ初っ端の作品だった模様。
1980年発表。『毒矢』に相応しい『毒』は含まれているのか?

①「中国の彫像」=価値があると思っていたものに価値はなく、価値なんかないだろうと思っていたものに価値がある。まぁ人生においてはよくある話です。多分。
②「昼食」=いつの時代でも、古今東西問わず、男の“見栄”って奴は共通ってことなんだろう。例え、財布には小銭しか入ってなくても、大枚入ってるフリをしたい! 要は「小物」ってことかな。
③「クーデター」=ひとことで言い表すならば、「万事塞翁が馬」っていうことなんだろうか?(合ってるのか?)。変な肩肘を張っていたことに気付いたとき、素直になれる人間は強い。
④「最初の奇蹟」=キリスト教徒でないとイマイチ理解できないお話。ラストはキリストの故事に絡んだオチなのだろうと思う。
⑤「パーフェクト・ジェントルマン」=これもオチが今ひとつ理解できず。プロットとしては作者の短編によくある手なのだが・・・(要は「風刺」)
⑥「ワンナイト・スタンド」=これも②と同様、「男の見栄」に関するお話。そんな男が「女の計算高さ」を前にしたら、赤子の手を捻るように、いいようにやられてしまう・・・。なんか、最近の文春砲の数々を思い出してしまった・・・
⑦「センチュリー」=クリケットに関するお話なのだが、クリケットのルールを知らない読者に対しても、親切なことにラストでルールの解説をしていただいてる。でも、それでも分からん!
⑧「破られた習慣」=これが一番「赤面」だな。勝手に意識して、勝手にコケて、っていうことなんだけど、電車の中の日常の風景に落とし込む当たりが旨いよね。
⑨「ヘンリーの挫折」=これは「見栄」+「赤面」かな。こういうお話も結構作者に多いパターン。
⑩「信念の問題」=スコットランドの堅物の信念VSメキシコ人のラテン系信念、っていうお話。我慢できんよね。
⑪「ハンガリーの教授」=ハンガリー人の老教授とイギリス人の若手アスリートの一日限りの交遊録。結局、「見てもないくせに・・・」っていう皮肉が書きたかったんだよね?
⑫「ある愛の歴史」=ふたりの天才の男女の愛の形を描いた最終譚。なまじ頭がいいだけに素直でなくひねくれてる。

以上12編。
こういう形式の短編はさすがの出来栄え。ただ、後年の作品の方がこなれてきた分、インパクトは大きいように思えた。
本作はそういう意味ではインパクトにやや欠ける作品が多かったかもしれない。
でもまぁ、十分楽しめたし、まずまず評価していいのではないか。
(個人的には③⑧当たりがオススメ。後は①かな)

No.1 5点 あびびび
(2013/09/18 00:06登録)
作者初の短編集。ミステリ、サスペンスというより、逸話的な要素が盛り込まれた物語が多い。最後の、「ある愛の歴史」は、天才と呼ばれた男女ふたりの一生を描いた、文字通り愛の物語だった。

どちらかといえば、この後に出た「十二の意外な結末」の方が好みで、ハッとさせられた。

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