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ミステリの祭典

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あびびびさんの登録情報
平均点:6.33点 書評数:669件

プロフィール| 書評

No.449 8点 その女アレックス
ピエール・ルメートル
(2015/02/18 20:54登録)
その女アレックスは、最初は被害者の女、次は殺人狂の女、そして最後は悲しみの女と、変わって行く。

なんだ、この女は!と思っていたら、最後は読み手の感情の中に食い込んできた。そして、その女アレックスの儚い人生に、思わず目を閉じてしまった。自分的には、どんでん返しとはまたちがう、考えさせられた一冊となった。特に最後の、「真実より正義」は、この事件に最もふさわしいと、同調した自分がいた。


No.448 7点 朱の絶筆
鮎川哲也
(2015/02/14 22:26登録)
山荘ものとしてワクワクしたが、第一の殺人に於いてのアリバイトリックは秀逸と思った。その後の殺人は、疑心暗鬼のもので、必要性とか、トリックとか、もう一つのような気がする。特に、第三の殺人トリックはいかがなものか?

だいたいが、普通の人間なら第一の殺人で納得と言うか、満足するのではないか。と言っても、これはミステリなのだから、必要不可欠ではある。


No.447 5点 相棒に気をつけろ
逢坂剛
(2015/02/14 02:54登録)
軽快なタッチで、すいすい読める。まあ、詐欺術を披露する内容たがら、深刻な流れにはならないが、解決編も今までミステリを読んで来た自分にはだいたい想像できた。だから徹夜するほどではなく、部分的に切りよく読めた。


No.446 4点 鍵のかかった部屋
貴志祐介
(2015/02/13 14:07登録)
犯人は最初から分かっていて、それをじわじわ追いつめる。ある意味、刑事コロンボのスタイルだが、堅牢な部屋を徐々にオープン化する手際は鮮やか。

ただ、それにかかわる科学的、偶然的要素(ほとんどなかったが…)が自分には面倒くさい。青砥弁護士と榎本氏の駆け引きが、細かなトリックを分かりやすく説明してくれているが、それでもひとつひとつの仕掛けが現実的ではなくなってくる(貴志さんの作品は全部好きだが、自分には読む資格なしと苦笑した)。


No.445 8点 八百万の死にざま
ローレンス・ブロック
(2015/02/03 19:28登録)
ローレンス・ブロックの代表作と言えばこれだが、マット・スカダーシリーズは8作も読んでいて、あまり感動がなかった。最近の作の方が切れ味あり、ニューヨークらしい情緒が楽しめる。

しかし、それはエレイン(少し登場)、T・J、ミック・パルーがいないせいでもある。やはりシリーズ物は、順を追って読まなければならない。深く反省である。

ただ、その評価は思い入れがありすぎて残念がる個人的なもので、作品的には完成度が高く、ページをめくる手が止まらなかったのは否定できない。8日目にして禁酒を破り、意識不明になったマットが如何にも興味深かった。

この作家の表現として、「なぜ、この作品を8点以下にできる?」というところではないか。


No.444 8点 危険な童話
土屋隆夫
(2015/01/29 06:13登録)
刑事が犯人に振り回され、苦悩すればするほどその事件は本格であり、謎に満ちている。ひとつ、ひとつのトリックがすごく人間臭い。寡作で知られ、40年間の作家生活で10数編もの長編しか書けなかった、土屋さんの推理小説に賭ける情熱が、ページをめくるたびに伝わってくる。

残りはあと数編、また時期をずらし、心して読もうと思う。その前に、彼が暮らし、小説の舞台になつている小諸、上田方面の旅行もしてみたい。あのあたりは、良質の温泉がたくさんあるし…。


No.443 8点 黒い白鳥
鮎川哲也
(2015/01/27 04:28登録)
うーむ、血しぶきの方向か…。鬼貫警部が登場するのは中盤からだが、そこからぐっと話が盛り上がる。風の中にゆらめくろうそくのごとく、消えかけてはまた炎がよみがえり、ひとつ、ひとつの捜査に緊迫感があった。

ずっと大地康雄の顔が浮かんで、そう言えば火曜サスペンスで見たような気もしたが、これはアリバイトリックの名作だなと思った。


No.442 5点 頭痛と悪夢
ローレンス・ブロック
(2015/01/21 13:36登録)
霊能力があり、心霊コンサルタントとして静かに暮らしていた女性が、夢で殺人現場を見て、警察に駆け込むと、まさにその通りの事件があり、解決した。彼女の評判は一気に上がり、依頼人からの電話がひっきりなしに掛かるようになった…。表題作の「頭痛と悪魔」は、ほぼ予想通りの展開で目新しさがなかった。

初めの3編、「ダヴィデを探して」、「慈悲深い死の天使」、「夜明けの光の中に」、いずれもマット・スカダーものがおもしろかった。


No.441 6点 無防備都市
逢坂剛
(2015/01/21 13:21登録)
禿富鷹秋(とくとみ・たかあき)、通称・禿鷹刑事。相手が悪党なら、警察、暴力団、外国マフィアと相手問わず。徹底的に叩きのめし、地獄に落とす。

一応、味方の?やくざ幹部が、「この人には人間の心がないのか?」と、呆れてしまうほどの徹底した非情は、中途半端でないところが爽快。今回は南米マフィアとある刑事グループとのつながりを根絶やしにしてしまう。


No.440 4点 誰よりも狙われた男
ジョン・ル・カレ
(2015/01/18 12:48登録)
ドイツのハンブルクにやって来た痩せぎすの若者イッサ。体じゅうに傷跡があり、密入国していた彼を救おうと、弁護士のアナベルは銀行経営者ブルーに接触する。だが、イッサは過激派として国際指名手配されていたのだ…。

映画にもなった話題作だが、序盤のもっさりした進行に「放棄?」も考えたが、終盤は地元のドイツ、アメリカ、イギリスの虚虚実実の諜報合戦がおもしろかった。しかし、結果的には…。


No.439 7点 シャドウ・ストーカー
ジェフリー・ディーヴァー
(2015/01/07 14:13登録)
清純な女性カントリー歌手が、笑顔の薄気味悪いストーカーに行く先々で張り付かれ、気分が落ち込んでいる時に殺人が起こる。それはホール内の事故に見せかけていたが、すぐに他殺と判明。個人的にその歌手と仲の良かったキャサリン・ダンスがたまたまその地を訪れており、管轄外の捜査を開始する。

読み進めて行くうちに、残り50P(上下段)くらいで犯人が判明する。そこでニヤリ…である。これからどんなどんでん返しが待っているのか?しかし、今回は想定内で破壊力は知れていた。

途中でリンカーン・ライムの一団が登場して事件を分析し、事件解明に一役買うが、しかし、ゲストとしてみると、ライムは扱いにくく、変な男である(笑)。


No.438 7点 泥棒はライ麦畑で追いかける
ローレンス・ブロック
(2015/01/06 15:00登録)
大人の色香を漂わせた女性が、バーニイに手紙を盗んでほしいともちかけてきた。これまで正体を隠し続けてきた著名な作家が、正体を暴かれかねない手紙が競売にかけられるのを阻止したいというのだ。女性の魅力に参り依頼を引き受けたバーニイは、手紙の所有者の住むホテルの部屋に忍びこんだ。ところがそこで彼が見つけたのは、こともあろうに他殺死体だった…。

忍び込んだ先に死体があった…これは定番である。そこから濡れ衣をどう晴らすかだが、自分が泥棒だけに一筋縄ではいかない。有名な作家とは、「ライ麦畑でつかまえて」のサリンジャーを意識した写真さえ現存しないという放浪の作家で、この存在が大きなカギになるのは言うまでもない。

最後にエルキュール・ポアロのごとく、ホテルの一室に関係者を全員集めて事件を解剖する。その後に抜け目なく、泥棒らしく…。


No.437 4点 シティ・オブ・ボーンズ
マイクル・コナリー
(2015/01/06 11:49登録)
はじめてのマイクル・コナリー、ハリー・ボッシュ刑事だったが、違和感なく読めた。犬が人間の骨をくわえてきて、その場所に埋められた死体を巡る捜査が開始されるわけだが、全体的に盛り上がりに欠け、たどり着いた犯人も定番中の定番…。

実際の事件はこんなものだろうが、小説としては少し退屈だったかも。


No.436 8点 墓場への切符
ローレンス・ブロック
(2014/12/24 23:32登録)
「とりわけモットリーと言う、人間の皮をかぶった怪物の書き方が卓抜である。ロバート・B・パーカーも、スー・グラフトンにもできないことを、いや、だれにもできないことをブロックはやってくれた」と、スティーブン・キングがべたほめだった。

確かに、モットリーと言う殺人鬼は、凄かった。これにはエレインもくじけそうになった。しかし、マット・スカダーがいた。彼は敢然と立ち向かった!

最初から犯人が分かっているので謎ときは皆無だったが、これはマット・スカダーシリーズの中でも上位ランクされると思う。


No.435 6点 死への祈り
ローレンス・ブロック
(2014/12/24 23:17登録)
ある資産家の夫婦が待ち構えていた二人の強盗に殺された。しかし、その強盗は内輪もめをし、二人とも死んでしまう。警察はそれで一見落着としたが、夫婦に可愛がられていた姪がマット・スカダーに真相を暴いて欲しいと依頼する…。

大都会だからこそ発生する事件、ニューヨークの闇に潜む謎の犯人にスカダーは持ち前の粘りと根性で迫る。

それにしても、スカダーの友人のミック・パルーは凄い悪人だが、魅力的である。彼が好むアイリッシュ・ウィスキーのジェムソンを飲むようになってしまった!


No.434 8点 災厄の紳士
D・M・ディヴァイン
(2014/12/18 00:46登録)
少ない容疑者の中で驚きの犯人…。途中からアガサ・クリスティを読んでいるような錯覚に陥った。

ハンサムな詐欺師が、綿密な計画を基に恐喝を成功させた。しかし、事件は一転、二転し、殺人者の恐怖があたりに蔓延する。どこにも『馬鹿』いなかった…。


No.433 8点 皆殺し
ローレンス・ブロック
(2014/12/15 17:47登録)
今まで、チャンドラー、ロス・マクドナルド、ロバート・B・パーカーとハードボイルドを読んできたが、このマット・スカダーシリーズは自分の中では集大成みたいな感覚。

洒落た文句があるわけではないが、会話のうまさ、読後感の良さが満足感を増長させる。

ただ、物語は残酷で、ずっと親しんできた人間が次々に死んでしまう。まさに、「皆殺し」である。この先、このシリーズはどうなるのか?


No.432 8点 ポーカー・レッスン
ジェフリー・ディーヴァー
(2014/12/14 15:24登録)
クリスマスプレゼントに続く短編集と言うことで楽しみにしていたが、やはり珠玉の作品揃いだった。次はどんな設定で、どんなどんでん返し?

個人的には表題作はイメージ通りでごく普通、「通勤電車」と、「一時不再理」が好みだった。リンカーン・ライムの「ロカールの原理」はいつも読んでいるせいか、方向性、犯人は予測できた。しかし、短編もうまいなあと、つくづく思う。


No.431 7点 処刑宣告
ローレンス・ブロック
(2014/12/05 01:30登録)
デイリー・ニュース誌のコラムニストに届いた一通の投書。署名も差出人も書かれていないその手紙は、翌週起こる殺人を予告したものだった。

誰が見ても有罪の性犯罪者が州法で無罪になり、『ウィル(意志)』という処刑人が予告殺人を敢行、そして同じように無罪放免となったマフィアのボスも殺された。ニューヨークはパニックに陥り、次の処刑宣告に巨大都市がざわめく…。

マット・スカダーは例によって粘り強い捜査ですべての事件を解決するが、あくまでも謙虚で冷静に、自分のスタイルを崩さない。しかし、マット・スカダーの友人はすべて魅力的で羨ましい限りである。最後のT・Jとのやりとりは思わずホロリと来てしまった。


No.430 7点 すべては死にゆく
ローレンス・ブロック
(2014/12/03 13:41登録)
殺人鬼がどういう方法でアパートに忍び込み、殺人を企てるのか?なるほどそういう手があったか!

マット・スカダーも60代の半ばになり、この内容だから、シリーズの終わりを感じさせたが、続編があるということでホッとした。ある意味、マンネリ化は感じるが、それでも常に新しい発見があり、本当に外れのないシリーズである。

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