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ミステリの祭典

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シャドウ・ストーカー
キャサリン・ダンスシリーズ

作家 ジェフリー・ディーヴァー
出版日2013年10月
平均点6.17点
書評数6人

No.6 4点 レッドキング
(2021/05/20 19:22登録)
ダンスシリーズ第三弾。天才シンガーソングライターと彼女に付きまとう超絶ストーカー。歌詞見立て連続殺人?と思わせて、いつものツイスト・・と陽動して、十八番の二重返し・・で終わるはずが、何と今回、驚きの「三重」返し。が、そんだけ、面白いかというと、うーん・・そうでもないんだなあ、ダンスの「透視力」全然冴えないし。
「犯人の名前書いてあんの?」「ジョン ポール ジョージ リンゴてある」・・笑った。 ※ライムトリオがゲスト出演。

No.5 7点 Tetchy
(2017/03/10 23:28登録)
キャサリン・ダンスシリーズ3作目の本書は休暇中に旅先で遭遇する友人のミュージシャンのストーカー事件に巻き込まれるという異色の展開だ。従って彼女の所属するカリフォルニア州捜査局(CBI)モンテレー支局の面々は登場せず、電話で後方支援に回るのみ。彼女の仲間は旅先フレズノを管轄とするフレズノ・マデラ合同保安官事務所の捜査官たちだ。しかしリンカーン・ライムシリーズも3作『エンプティ―・チェア』ではライムが脊髄手術で訪れたノースカロライナ州を舞台にした、勝手違う地での事件を扱っていたので、どうもシリーズ3作目というのはディーヴァーではシリーズの転換期に当たるようだ。

さてストーカー行為は現在日本でも問題になっており、それが原因で女優の卵や若い女性が殺害される事件が最近になっても起こっている。一番怖いのはストーカーが自己中心的で相手を喜ばそうと思ってその行為を行っており、しかも彼ら彼女らが決して他人の意見や制止を認めようとしないことだ。自分の信条と好意に狂信的であり、しかもそれを悪い事だと思ってない。実に質の悪い犯罪者と云えよう。
そして作中にも書かれているようにストーカーのようにあることに対して妄信的に信じて疑わない人々、また嘘を真実のように信じて話す人々には人間噓発見器のダンスが得意とするキネシクスが通用しない。

余談になるが、このキャサリン・ダンスシリーズは彼女の得意とするキネシクスがほとんど機能せずに物語が進む。つまりダンスは自身のシリーズになるとただの優秀な捜査官に過ぎなくなり、“人間噓発見器”としての特色が全く生きないのだ。一方のリンカーン・ライムシリーズがライムの精密機械のような鑑定技術と証拠物件から真相を見破る恐るべき洞察力・推理力を売り物にしているのとは実に対照的である。

また本書ではディーヴァーお得意の音楽業界を扱っているところもポイントだ。ディーヴァー自身が元フォーク歌手を目指していたことはつとに有名で、本書で挿入されるカントリー歌手ケイリーの歌詞ではその片鱗を覗かせている。
またこのケイリー・タウンだが、私の中では彼女をテイラー・スウィフトに変換して読んでいた。特にケイリーがカントリー・ミュージック協会の最優秀賞を受賞したときのある事件のエピソードに関してはテイラーの2009年のグラミー賞に纏わるカニエ・ウェストとの騒動を彷彿させる。そうするとまさにぴったりで、後で調べたところ、作者自身彼女をモデルにしているとの記述があり、大きく頷いてしまった。

ただやはり題材が古いなぁという印象は拭えない。今更ストーカーをディーヴァーが扱うのかという気持ちがある。たまたま今まで扱ってきた犯罪者にストーカーがなかったから扱ったのかもしれないが、今までの例えばウォッチ・メイカーやイリュージョニストを経た今では犯罪者のスケールダウンした感は否めない。遅すぎた作品と云えよう。

読了後、ディーヴァーのHPを訪れ、本書に収録されているケイリー・タウンの楽曲を訊いてみた。いやはや片手間で作ったものではなく、しっかり商業的に作られており、驚いた。書中に挿入されている歌詞から抱く自分でイメージした楽曲と実際の曲がどれほど近しいか確認するのも一興だろう。個人的には「ユア・シャドウ」は本書をけん引する重要な曲なだけあって、イメージ通りの良曲だったが、かつて幼い頃に住んでいた家のことを歌った感傷的な「銀の採れる山の近くで」がアップテンポな曲だったのは意外だった。物語と共に音楽も愉しめる、まさに一粒で二度おいしい作品だ。稀代のベストセラー作家のエンタテインメントは文筆のみに留まらないのだなぁと大いに感心した。

No.4 6点 take5
(2016/07/20 22:53登録)
ジェフリーディーヴァの作品=ドンデン返しの楽しさと思って読む人を毎回満足させるのは大変ですよ。
そこを引いても、今作品は最高級ではないなあと思いました。勿論楽しめましたしリーダビリティーも高いです。
では何が腑に落ちないのかと思ったら、分かりました。
ライムもダンスもみんな事件解決とは別に、自身の人生の解決はスパッと図れないのが良い訳です。(超主観的)
しかし今回の作品はKTとお父さんの件が、ラストのやりとりとそれにかける時間軸が、年くったディーヴァっぽいんですよ。(超失礼)
そんなこと言ってボーンコレクターやイリュージョニストの頃を美化する私が一番年くった感じです。

No.3 7点 あびびび
(2015/01/07 14:13登録)
清純な女性カントリー歌手が、笑顔の薄気味悪いストーカーに行く先々で張り付かれ、気分が落ち込んでいる時に殺人が起こる。それはホール内の事故に見せかけていたが、すぐに他殺と判明。個人的にその歌手と仲の良かったキャサリン・ダンスがたまたまその地を訪れており、管轄外の捜査を開始する。

読み進めて行くうちに、残り50P(上下段)くらいで犯人が判明する。そこでニヤリ…である。これからどんなどんでん返しが待っているのか?しかし、今回は想定内で破壊力は知れていた。

途中でリンカーン・ライムの一団が登場して事件を分析し、事件解明に一役買うが、しかし、ゲストとしてみると、ライムは扱いにくく、変な男である(笑)。

No.2 6点 HORNET
(2014/12/20 15:40登録)
 物語の後半に、どんでん返しが繰り返されるのは本シリーズの(ディーヴァーの?)常套手段。こっちもそれがわかっているから、厭らしい話残りのページ数などを見ながら「まだ違うでしょ」と思って読んでいる。それは同時に「これがさらにどうひっくり返されるのか?」という期待でもあるのだけど、そういう点ではこの作品は物足りなさもあった。
 一度犯人とされる人物のミスリードがちょっと分かりやすすぎたかな。まぁ私ははじめそれが真犯人だと思っていたのだが、そうなった時点での展開がまだ後半の初頭だったので違うと察した。周り廻ってこういう結末ですか…なるほど。
 このシリーズは全部ではないが、だいたい読んでいるのだが、その「だいたい」がいつの間にかキャサリン・ダンスの方ばかりになってきた。ライムよりこっちの方が人間的に好感もてるし。もうこちらを主流にしてくれていいなぁ。

No.1 7点 kanamori
(2013/11/04 17:58登録)
人気女性歌手ケイリーは男性ファンのストーカー行為に悩まされていた。故郷の街でのコンサートの準備を進めるなか、スタッフの一人が惨殺され、さらにケイリーのヒット曲の歌詞をなぞるように第2の殺人が発生する-------。

カリフォルニア州捜査局の”人間嘘発見器”キャサリン・ダンスを主人公とするシリーズの第3弾。地元モンテレーを離れ、休暇中に、友人ケイリーのために捜査に協力するという設定。
次々と事件が起こるものの、正直なところ、中盤過ぎまではやや緊張感に欠け、それほどリーダビリティが高いとは言えない。
どうせ怪しげなストーカー男が実は....というような展開だろうと予想もつく。しかしながら、リンカーン・ライムとアメリアが”友情出演”で登場するあたりから、予想を裏切る展開の連続でぐいぐい読まされる。何度もひっくり返る犯人像が楽しめたし、ラストもなかなか感動的ないいシーンだった。

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