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ミステリの祭典

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幻夜

作家 東野圭吾
出版日2004年01月
平均点6.76点
書評数17人

No.17 9点 斎藤警部
(2024/10/26 23:14登録)
「まあな。 『死の接吻』 と一緒や。」

圭吾はん、大胆にやりよったなぁ。 兵庫県西宮市。 大震災の折、これを奇貨とし、絶望から●●へと身の置き場所を遷すべく、或る犯罪に踏み切った主人公。 瓦礫と煙の中、やがて相棒と言える存在に遭い、共に闇の道を切り拓いて行く。 ●●の連鎖は蜜の味やで。 隠したり、仄めかしたり、直接書いたり。 読者には手に取るように見透かせるトリックが、物語内の人物にはまるで分からなかったり。 悪意の乱反射と、咄嗟の急カーブと、時の弾みの乱反射、想定外の緩カーブ。 ホワイダニットの瞬時炸裂と増殖。 ほんと、作者の存在を真っ白に忘れる剛腕絶叫リーダビリティ。 できることなれば大河ドラマのように一年かけて読み切りたい。 ストーリーに関わる事象がふんだんにあり過ぎて、いいぞやれやれやりまくれ、と思ったりする。 いいぞいいぞ地の果てまで追い詰められろ、とも思う。 敵と味方と第三極。 地獄のホワイダニット或いはホワットダニットへの予感がプルプルと顫動し始めるのはどのあたりだったか。 倒叙ミステリならぬ倒叙クライムノヴェルと呼んで良いのだろうか。 嗚呼、清張に読ませたかった。 「白夜行」との噛み合わせもガッチリだ。 ただエンディングだけは、ちょっとどうかね。。。。 しかし逆にこれはもう、続篇(完結篇?)へのシャイな決意表明と見られぬこともない。 こないオモロイ小説、そう無いで。。

“犠牲者六千四百三十四人。 そのうち×××× ・・・ ”

No.16 4点 レッドキング
(2018/08/26 16:53登録)
「白夜行」や「火車」のネタバレ解説のような作品。「白夜行」はハウ・ホワイダニットを「チラ見せ」しつつ進行する「半ミステリ半サスペンス」で、その片鱗しか姿を見せない深水に潜む怪魚のような不気味なヒロインが魅力だったが、こう露骨に楽屋裏描写されるとミステリでなくなる。実に読みやすく大変に面白い小説だが、ミステリとしての評価部分は少なく、オマケしてもこの点数かなあ。残念だが「ミステリサイト」なんで。

※追記。再読してこれが「続白夜行」であることを95%確信。ただヒロインが「新しい身分」を乗っ取る経緯は分かったが、いかに「古い身分」を廃棄したかは不明。これは難しいなあ、整形で顔変えて済む話ではないし。これを描くのは「第三部」の課題だな。そこでヒロインのその後と並行して過去の謎も描ききったら素晴らしい傑作になるかも「白夜行 三部作」。

No.15 7点 E-BANKER
(2018/07/28 08:55登録)
あの名作「白夜行」が蘇る!!
文庫版で800頁を超える大作は、再び、ある男とある女の哀しい物語・・・
2007年の発表。

~阪神淡路大震災の混乱のなかで、衝動的に殺人を犯してしまった男。それを目撃した女。ふたりは手を組み、東京へ出る。女を愛しているがゆえに、彼女の指示のまま、悪事に手を染めてゆく男。やがて成功を極めた女の思いもかけない真の姿が浮かび上がってくる。彼女はいったい何者なのか? 名作「白夜行」の興奮が蘇る傑作長編~

いきなりネタバレで申し訳ないが、新海美冬=唐沢雪穂である。
作中では確かに明示されてはいない。明示されてはいないが、十二分に仄めかされている。
(ネタバレサイトでも確認したが、明らかにそれと分かるヒントが作者によってそこかしこに撒かれている)

物語はまさに「白夜行」と相似形のごとく進んでいく。
誰をも虜にする美女にして、稀代の悪女・・・それが新海美冬。そして、彼女の下僕にして「影」となり働く水原雅也。
これは「白夜行」での雪穂=亮司の関係と完全に被る。
ただ、「影」である亮司サイドからは一切描かれなかった前作に比べ、本作では「影」=雅也サイドからの描写がむしろメイン。
そこが大きく異なる点。
美冬のため徐々に悪事に手を染めていく過程やそれでも美冬を手放したくないという雅也の苦悩が読み手の心に嫌でも突き刺さる。

やっぱり只者ではない。東野圭吾という作家は!
中盤から終盤、章が進むごと、美冬の強烈な悪意が読者の頭の中で膨らんでいく仕掛け、そして、美冬という存在が、自然に雪穂と一体化していくように計算された仕掛け。
このプロットはもう「秀逸」のひとこと。
こんな大作を息もつかせず読了させるなんて、並みの作家にはできない芸当だ。
巻末解説には第三部を構想中とのコメントもあるが、是非とも実現させて欲しい。
いかん! これでは雅也と同じで、美冬の虜にされているようだ・・・
(ラストについては、評価の是否が分かれるだろうね・・・。呆気なさすぎと言えば、確かにそうだから・・・)

No.14 6点 sophia
(2014/04/13 18:18登録)
これはちょっといただけない。「白夜行」と同じ人が書いたとは思えない。もっとも私みたいな人のために続編なのか否かを曖昧にしたのかもしれませんが。それを「逃げ」と捉えるのは厳しいでしょうか。

No.13 8点 Tetchy
(2013/10/04 23:32登録)
『白夜行』が昭和史を間接的に語った2人の男女の犯罪叙事詩ならば『幻夜』は平成の新世紀を迎えるまでの事件史を背景にした犯罪叙事詩と云えよう。
ただそういう意味では本書は『白夜行』の反復だとも云える。史実を交え、2人の男女の犯罪履歴書のような作りは本書でも踏襲されている。違うのは『白夜行』では亮司と雪穂の直接的なやり取りが皆無だったのに対し、本書では雅也と美冬との交流が描かれることだ。
さらに『白夜行』では雪穂と亮司は絆よりも太い結びつき、魂の緒とでも呼ぼうか、そんな鉄の繋がりで人生を共にしていたのに対し、雅也と美冬の関係はちょっと色合いが違う。

ここに『白夜行』との違いがある。『白夜行』では男女2人の共生の物語であったのに対し、本書は女王と奴隷の関係にあった男が女王に背反する物語なのだ。

読中様々な思いが去来した本書だが、この最後に至ってようやく理解できた。
これは一人の女の生まれ変わりの物語なのだ。
『白夜行』で書かれたのは19年の道行き、そして本書ではたった5年の歩みだ。水原雅也を騙し続けた5年と云う歳月を長いと取るか短いと取るか、それは人によって様々だろうが、『白夜行』を読んだ私にしてみればそれは短いと感じる。それはつまり美女である唐沢雪穂でさえ、年には勝てなかったという暗喩になるのかもしれない。“花の命は短い”というが、生き急いだ新海美冬はそれを一番感じていたのかもしれない。
だからこそ彼女は美を追求し、自らの若さを保とうとする。そして恐らくこの新海美冬の物語もまた唐沢雪穂と云う女性にとっては一過程に過ぎないのだ。

20世紀を生き延び、新たなる世紀を迎えた唐沢雪穂の人生は今後も続くことだろう。彼女の前に第二、第三の水原雅也が現れ、彼らを踏み台にしてさらに上を目指していくことだろう。さらに穿って考えるとこれは不屈の女の物語とも云える。どんなに窮地に陥ろうが、知恵と美貌と人心操作術を使って乗り越える、女の細腕繁盛記の悪女版と捉えることもできる。
彼女の物語が今後語られるかどうかは解らないが―解説によれば三部作構想もあるらしい―、どうにかこの女の最期を見たいものだ。そう思っている読者は私だけではないだろう。

No.12 7点 ボンボン
(2012/04/13 23:56登録)
「白夜行」とほぼ同じ構造の話なのに、表現の趣向が正反対なので、またまた楽しめる。本作は、本人たちの内面が分かるので、人物に魅力を感じられる。
(自分としては、「白夜行」を読んでからかなり時間がたっていて細かいところを忘れていたので、話が繋がっていることにぱっと気付けなかった。残念。)
あの分厚さを難なく読み進められる面白さだが、ラストだけは、映画の「模倣犯」(宮部みゆき)の中居君の最期並みに漫画っぽかった。「白夜行」の終わり方のほうがよく出来ている。

No.11 4点 つよ
(2011/05/01 22:12登録)
続編の方はイマイチだね。

No.10 4点 touko
(2011/04/17 23:47登録)
百夜行の続編(かもしれない)という微妙な位置づけの作品。
なんかよく出来た携帯小説とか韓流ドラマみたいな印象。
さらさら読めて、つまらなくはないし、適度にドラマチックではあるんだけど、特に面白いところもないというか……。

No.9 7点 ムラ
(2011/01/29 04:23登録)
(ネタバレあり)


このオチのパターンは一応予想してなかったわけではないけど、実際にあれだけあっさりとやられるとやっぱり驚いてしまった。
白夜行の興奮が再びというキャッチフレーズだけど、さすがにあれほどの興奮は無かったですね。(というよりあれが個人的に名作すぎた)
とはいえ所々に隠れされた続編としての伏線が隠されていることによって、美冬=雪穂かという推測も出来て楽しめる。
これだけの長さの作品を飽きることなく読ませられるのは、やはり流石としか言え無い。
しっかし読了後の気分の悪さだけは白夜行越えますね……(笑)

No.8 9点 Q-1
(2010/12/19 05:15登録)
冷徹な女が男を利用して非情に生きて行く様を描いた内容は完全に白夜行の二番煎じですが、
舞台背景や登場人物、その他諸々白夜行よりも好みでした。
何よりこの厚い本をスラスラ読ませる東野さんの文章力に脱帽しました。

No.7 5点 simo10
(2009/09/24 21:21登録)
白夜行を読んでどんな作品は分かっていたので、本格モノだと思い込むことはありませんでした。
登場人物のメモも見切りをつけつつ控えるようにしました。
作風はやはり白夜行にとてもそっくりで惹きこまれる文章です。
前作とは異なり、男性の主人公の視点が追加されており、苦悩の様子が描かれている点が人によって好みが分かれそう。
私はこっちのほうがいいかな。
しかしやはり話の流れも前作同様、主人公(女)が私利私欲のためにえげつないことを繰り返すといったもので、感心しません。
ラストはおいおい何だそりゃって感じ。
前作とのつながりを仄めかす仕掛けはちょっと面白いと思いました。

No.6 8点 だい様
(2009/03/05 10:37登録)
白夜行と違って主人公の視点で描かれている作品。
連続して読むとより楽しめると思います。

No.5 5点 COBRA
(2008/06/13 14:00登録)
どうせなら最初から白夜行の続編と
銘打って書いて欲しかったし、
もっと言えば、続編を書いて欲しくなかった。
結果、個人的には続編として読んだけど、中途半端。

No.4 7点 白い風
(2008/02/18 23:16登録)
「白夜行」に続けて読みました。
別バージョンの作りですが、「白夜行」と比較してしまうと、二番煎じの感が否めません。
もし、「白夜行」が刊行されていなければ評価を上げていたかもしれませんが・・・。
でも、読んでいて飽きることは無かったです。

No.3 9点 いけお
(2007/10/10 13:28登録)
普通に佳作だと思うが、白夜行の財産な感は否めない。
差し引いても・・・って差し引いて評価できないし。
自分の中ではそれだけ白夜行が偉大だった。

No.2 7点 シーマスター
(2007/08/11 23:54登録)
『白夜行』と同様に並のミステリ3冊分ぐらいの内容が詰まった作品だが、白夜の後だと本作中の数々のエピソードのパターンは大方読めてしまうし、結末も概ね予想できてしまう。
冷徹無比な人生ゲームも2度目になるとインパクトもさほど強くはない。

そういう嫌いがあるにしても、読んでいて飽きさせない情景を次々に繰り広げてくれるところは流石ケイゴリン(と銀座のクラブで呼ばれている、と解説に)。
阪神大震災を物語の原点に据え、その後比較的最近の社会情勢を背景にした展開も、読む者を離さない引力になっている。

また白夜行では敢えて排除していた叙情描写が多いのも特徴。(これは「男の主人公」のキャラクターの差異によりコントラスト付けされている)

No.1 9点 akkta2007
(2007/07/21 20:08登録)
白夜行を読んだ後でこの作品を読んだが・・・
自分的にはこの幻夜の方が夢中になり読めた作品である。
長編作品でありながらそれを感じさせない所は、さすが東野氏である。
白夜行、幻夜、両方あわせて読んで頂きたい。

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