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ミステリの祭典

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ナポレオンの剃刀の冒険
エラリイ・クイーン、シナリオ・コレクション

作家 エラリイ・クイーン
出版日2008年03月
平均点8.10点
書評数10人

No.10 6点 蟷螂の斧
(2024/04/14 18:07登録)
①ナポレオンの剃刀(1939) 6点 列車内で宝石泥棒が殺害された。凶器はナポレオンが使用したという剃刀(贋作)。泥棒が持っているはずの宝石がなくなっていた・・・剃刀の持ち主は大学教授だが
②〈暗雲〉号(1940) 4点 遺言を書き変えるため、口述で録音中に銃殺された。被害者の資産はすべて宝石。録音の中で宝石(ジュエル)!と叫んでいた・・・ダイイングメッセージ
③悪を呼ぶ少年(1939) 4点 ウサギ肉のシチューを食べた叔母が死亡。叔母自身が作ったシチューに砒素が入っていた・・・そんな馬鹿な(化学的根拠)
④ショート氏とロング氏(1943) 5点 詐欺師の小男が自宅の中に入った。警視が踏み込むが、中には大男の使用人だけであった。小男はどこに隠れたのか?・・・冷蔵庫?(笑)
⑤呪われた洞窟(1939) 9点 洞窟内での殺人。入り口には被害者の足跡のみ・・・このトリックの嚆矢?と思われ高評価。犯人特定のロジックも秀逸
⑥殺された蛾(1945) 7点 宿泊用キャビンの中でガス中毒死。蛾が5匹死んでいた。その様子を見て・・・蛾の習性
⑦ブラック・シークレット(1939) 6点 古書店での盗難、贋作、殺人事件、ダイイングメッセージ(ブラック氏の秘密)・・・それぞれの犯人は?
⑧三人マクリンの事件 4点 マクリン家の三人を強請った女優が殺害された。現場には右袖が濡れているコートがあった・・・5分でエラリーが解決した問題(当時の車を知らないと解けない)

No.9 8点 HORNET
(2022/07/30 23:32登録)
 1940年代に放送されていたラジオドラマの脚本ということだが、クイーンの上質なロジカルミステリを定期的に堪能できたなんて…ワクワクしただろうなぁ。
 書籍以外のメディアにも積極的だったというクイーンらしく、媒体を変えても手を抜くことなく上質の謎を提供していると感じる。さらに、オリジナルにはない登場人物・秘書のニッキイ・ポーターや、ちょっとキャラの違うヴェリー刑事部長など、違った楽しみもある(大衆向けの改変だったのかもしれないが)。
 いずれにせよ、「エラリー・クイーンの冒険」に勝るとも劣らぬ粒ぞろいの謎解き短編(?)集に仕上がっている感じで、クイーンファンとしては十分に楽しめた。
 個人的には「悪を呼ぶ少年の冒険」「ブラック・シークレットの冒険」が秀逸。「呪われた洞窟の冒険」は、なかなか原始的な真相で懐かしい。「〈暗雲〉号の冒険」は、面白かったんだけど、録音した音声(蝋管って何?(笑))を聞いた時点で、そこにいる登場人物たちは気づかないの?とは思ったけど。

No.8 7点 nukkam
(2022/07/22 22:50登録)
(ネタバレなしです) エラリー・クイーンは1939年から1948年の長きに渡って放送されたラジオ番組「エラリー・クイーンの冒険」(小説の短編集(1934年)とは別物です)のシナリオ作りに関わっています。本書の巻末解説にシナリオ一覧が載っていますがその数、実に310作!1時間版シナリオを30分版に短縮改訂したものや他人(アントニー・バウチャー)によるプロット作品も混ざってますが、それにしても相当の力を入れていたことがわかります。ラジオを聴く機会などまずない読者には縁のない作品と思っていましたが、2005年にアメリカ本国で「殺された蛾の冒険」というタイトルで15の(クイーンが書いた)作品を収めたシナリオ集が出版されました。日本では2冊に分冊されて出版されましたがその1冊が本書で(もう1冊は「死せる案山子の冒険」)、1時間版シナリオが4作に30分版シナリオが3作、そして別のラジオ番組用の10分版シナリオが1作です。どのシナリオも「聴取者への挑戦」が挿入されたフェアプレーな謎解きで、手掛かりの配置と論理的な推理にこだわった作品が揃ってますがやはり1時間版の方が凝った謎解きを楽しめますね。トリックはオースティン・フリーマン作品からの借り物ながら複雑な真相に仕上げた「悪を呼ぶ少年の冒険」(1939年)、足跡トリックに挑戦した「呪われた洞窟の冒険」(1939年)、ライバル探偵役を登場させた「ブラック・シークレットの冒険」(1939年)はよくできていると思います。30分版では「殺された蛾の冒険」(1945年)の推理の鮮やかさが印象的です。

No.7 6点 レッドキング
(2022/07/08 20:07登録)
エラリー・クイーンラジオシナリオ集。元本は「殺された蛾の冒険及び他のラジオミステリ集」てな題で、そのうちの半分を我が国で独自に選集。
  「ナポレオンの剃刀(冒険は略)」 列車内宝石強盗殺人。消失した宝石が車内に無い以上、唯一隠せた場所は・6点
  「暗雲号」 遺産目当ての船内射殺事件。遺言録音に残るダイイングメッセージからのWho。3点
  「悪童」 大家の女のヒ素毒殺事件。悪童甥っ子の悪戯のWhy。 7点 ※ウサギってヒ素に耐性あるんだ(ホント?)
  「ショート氏とロング氏」 150、180cmの詐欺師コンビ。消失トリックは「あなたのお金を倍に」に及ばず。6点
  「呪われた洞窟」 心霊研究家の足跡なき扼殺事件のHow・・あれしか、ないわな。8点  
  「殺された蛾」 ホテル部屋のガス殺事件。蛾の死骸からのWhoロジック。肝心の明り位置描写がない(~_~;) 5点
  「ブラックシークレット」 稀覯古書店の三つの・・贋作と盗難と殺人ダイイングメッセージ・・事件。6点
  「三人のマクリン」 恐喝女の刺殺事件。容疑者は老父母と倅の三人で、残されたコートからのWho。4点
で、平均して、6+3+7+6+8+5+6+4=45÷8=5.625、四捨五入して、6点。

No.6 7点
(2020/05/04 22:17登録)
ラジオドラマ版『エラリー・クイーンの冒険』シリーズって、『犯罪カレンダー』もその内から選んで小説化したものだとは知っていましたが、それ以外にもよくできたものがいろいろあるんですね。第2弾『死せる案山子の冒険』も併せた原書のタイトルは、皆さんに圧倒的に評判のいい『殺された蛾の冒険』(他ラジオ・ミステリ)が採用されています。この作品はドラマ・シリーズの中でも、本書中最も新しい1945年の放送作です。犯人はなんとなくこの人物が怪しいとは思ったのですが、蛾の死体から導き出される推理には全く思いいたらず、まいりましたというところです。堂々とこれが手がかりだと宣言しているところは、『オランダ靴』をも思わせます。
他には足跡トリックがわかっただけでは犯人を特定できない『呪われた洞窟の冒険』、メッセージを解読できてかえって混乱した『ブラック・シークレットの冒険』が気に入りました。

No.5 8点 あびびび
(2019/05/28 12:14登録)
ラジオドラマだが、普通の小説より分かりやすいし、おもしろい。テレビが普及する前に1500万人の人が胸をワクワクしながら聞いていたというが、毎週待ち遠しかったに違いない。完璧である。

No.4 10点 ボナンザ
(2019/05/05 11:05登録)
ミニ国名シリーズとでもいうべきシナリオ集だが、短いために長編の国名シリーズ以上にクイーンのロジックがストレートに堪能できる。
クイーン好き必読。

No.3 10点 青い車
(2016/05/06 23:51登録)
 以前図書館で借りて既に一回読んでいましたが、このたび再読。そして改めてその造りの見事さに驚かされました。よくできたミステリーは二回読んで真価がわかるものと思います。クイーン作品のほとんどがそうで、事実この本もその例に洩れませんでした。どのエピソードも制作されたのが約70年前とは信じられないほど質が高く、音声のみという縛りがあるにも関わらず謎解きの内容にはパズラー作りのセンスが行き渡っています。特に気に入っているのは『殺された蛾の冒険』です。
以下、各話の感想です。

①『ナポレオンの剃刀の冒険』 知識による手がかり、状況の不自然さ、宝石の隠し場所、といった複数のアイディアが盛り込まれ、かつミスディレクションも巧みな佳作です。
②『<暗雲>号の冒険』 冒頭の何気ない会話が解決に不可欠なヒントになっているのが面白いところ。ただし、多くの日本人は気付けないだろうとも思います。
③『悪を呼ぶ少年の冒険』 トリッキーな事件の構図が目を引きます。まずほとんどの人が騙されるでしょう。動機があまり釈然としないところを除けば文句なしです。
④『ショート氏とロング氏の冒険』 チェスタトンの『見えない人』をベースに、より巧妙なアレンジを加えた作品です。タイトルからまったく別の不可能トリックを想像させてしまうのも見事。
⑤『呪われた洞窟の冒険』 メインのトリックは小さい頃推理クイズで見たことがあり、さほど驚きはありません。しかし、再読でその緻密な伏線の数々に気付き、傑作であると評価を改めました。
⑥『殺された蛾の冒険』 何でもないような物証から、犯行時間や犯人の細工をすべて暴いて見せるエラリーの軽やかかつスマートな推理は国名シリーズを彷彿とさせます。
⑦『ブラック・シークレットの冒険』 ③と同様、意表を突く犯人です。しかし、本作の見どころは三つの犯罪に三人の犯人という特殊な事件、そして意外な整合性をもったダイイング・メッセージにあります。
⑧『三人マクリンの冒険』 最後に収められているのはキレの良い推理クイズ的作品です。短い分量で証拠の提示も堂々としているので、きっと解ける人もいるはずと思います。

No.2 9点 はっすー
(2016/02/16 13:29登録)
やはり神
法月綸太郎がそう言うのも分かってしまう…
ラジオドラマだがそれぞれの作品の完成度があまりにも高い
正直クイーンの国名シリーズは少し長く感じてしまうことが多かった…
しかしこの短編集はラジオドラマなので一つ一つの作品がコンパクトにまとめてありスラスラと読める
クイーンの良質な犯人当てを気軽に楽しむことのできる傑作短編集
やはり神…

No.1 10点 ロビン
(2009/04/11 00:26登録)
アメリカで放送されたクイーンのラジオドラマのシナリオ集。解決編の前には「読者への挑戦」ならぬ、「聴取者への挑戦」が挿入されています。ラジオなので、物語は全て会話のみで構成されています。「ラジオドラマという制約の多い中で、これだけの作品を生み出せるクイーンは、やはり神」と法月氏が語っていましたが、僕も賛同です。
お気に入りは「殺された蛾の冒険」「呪われた洞窟の冒険」の二つ。
特に「呪われた洞窟の冒険」は、カーを彷彿とさせるようなオカルティズムと不可能犯罪。足跡密室のトリックは、他の作家では思いつきだけのバカミスになりかねないものですが、クイーンはやはり違います。幾重にも張り巡らされた伏線をロジックによってつなぎ合わせていく。その伏線の張り方が非常に巧妙で、それをラジオドラマという自由の利かない中でやってのける。正に初期の国名シリーズに引けを取らないパズル作品だと思います。さらにラストの趣向といったら、まんま「あの作品」と同じで、クイーン好きな方はついニヤリとしてしまうでしょう。「殺された蛾の冒険」は、これぞクイーンというアクロバティックなロジックを堪能できます。
聴取者に「解くことができる」という前提の下のラジオドラマでなく、小説の形式を取っていたら、もっと完成度の高い作品になっていたと思います。
正直、10点は甘すぎますが笑。久しぶりにクイーンの物語を堪能できたという喜びが多分に加味されています。

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