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ミステリの祭典

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火刑都市

作家 島田荘司
出版日1986年04月
平均点6.62点
書評数13人

No.13 6点 ぷちレコード
(2024/07/07 22:36登録)
社会派推理の要素が強い重厚な捜査小説だが、社会派にありがちな生硬さがないのは、ヒロインをめぐる叙情的部分もさることながら、極めてトリッキーな奇想に裏打ちされていればこそだろう。
ヒロインの寒子が終章で「私は、東京が怖かったです。いえ、今でも怖いけど」と言うように、そういう哀しく弱い人間を異常な行為に駆り立てたという点で、巨大都市の魔性が炙りだされる仕組みになっている。本書は、一種の東京都市論でもある。

No.12 5点 ボナンザ
(2019/07/16 23:11登録)
社会派よりな一作。
トリックが地味なこともあるが、それよりも火刑都市というタイトルの動機が結局は彼女の動機の前では荒唐無稽なインテリの絵空事のように描写されてしまった結末の方が賛否両論なのではなかろうか。

No.11 6点 いいちこ
(2018/01/25 14:48登録)
評論家が必ず著者の代表作の一つに挙げ、著者自身もそれを自認し、自画自賛している一方、市井のファンからは、「一定の評価はするものの、奇想天外なトリックがなく、犯人の動機を構成する主題に納得できず、サスペンスも弱い中途半端な作品」と評されることの多い本作。
一連の犯行の不可解性と、そこに秘められた謎(=本作の主題)、それを盛りあげるストーリーテリングの妙(改稿を重ねた全集を読了したからかもしれないが)は高く評価するものの、本作の主題が本件犯行動機に成り得るか、仮に成ったとして本件犯行のような態様を取るか、という点には疑問を感じた。
ご都合主義的な登場人物の配置や、その魅力の乏しさも減点材料であり、この評価

No.10 6点 パメル
(2017/10/03 01:05登録)
密室状態での放火はどのように行われたのか?連続して発生する放火事件の犯人の意図は?そして現場に残された張り紙の意味は?と謎が多く楽しめる。
そして江戸から東京へと近代化が進み失われてしまったものを作者なりに警鐘を鳴らしている感じが伺える点からも本格派と社会派が融合しているミステリ。
この作品のポイントは犯人の動機だと思うが、犯人にその動機を抱かせた背景は共感出来る部分もあるが納得は出来ない。
またこの作者にしては、登場人物のキャラクター・ストーリー・トリックともに地味なため、その点を期待していると肩透かしを食らうと思います。

No.9 7点 斎藤警部
(2015/07/01 17:58登録)
何を措いても動機にびっくりの一品。決してバカ動機ではありません(たぶん)。スケールで圧倒する物理的大動機(??)とでも呼びたくなっちまう。
無理を感じる所もあるが、ミステリ小説として充分アリでしょう。
「ブラタモリ」と「宮部みゆき」が一緒になったような趣も。 こういう勉強させてもらう本はいいね。

No.8 6点 yoneppi
(2013/04/08 22:14登録)
評価が高いですね。十分読みごたえはあったけれど、もうひとつ感情移入できなかったのがちょっと残念。

No.7 7点 spam-musubi
(2010/10/01 17:42登録)
作者お得意の、本格と社会派の融合作品。
奇想天外なトリックは出てこないが、地道な主人公の
地道な捜査は読み応えがある。

が、真の主役は某女性。重く暗い過去から抜け出そうと
苦しみながら歩き、なんとか幸せを手にしようと必死に
もがくその生き様がこの作品の肝だと思う。

表面上の主人公は事件を捜査する警部、しかしながら
真の主人公は犯人サイドの女性の生き様。
この構図はどこかで読んだな、と思ったら
宮部みゆきの火車に通じるものがあるような気がする。

No.6 7点 seiryuu
(2010/07/16 21:26登録)
派手な展開はないけど、読者を惹き込ませる工夫を感じた。
設定や構成がしっかりしているので安心して読み続けることができました。
丁寧に作ってある作品だと思いました。
好印象です。

No.5 7点 りんちゃみ先輩
(2009/11/10 21:20登録)
「火車」に似た趣のあるストーリーだった。都市の今昔、都会と地方の格差、そこに生きる人間像、いろいろ考えさせられた。吉敷とも御手洗とも関わりを持つ中村刑事が主役だったがこの物語には適任であるし、物語の重みを出していると思う。

No.4 9点 E-BANKER
(2009/08/15 12:34登録)
吉敷刑事の上司、中村警部が活躍する珍しい初期作品。
「社会派」と称されることも多い作品ですが・・・
~東京・四谷の雑居ビルの放火事件で若い警備員が焼死する。不審な死に警察の捜査が始まった。若者の日常生活に僅かに存在した女の影・・・。女の行方を追ううちに次の放火事件が発生した。今度は赤坂。そして、現場には「東京」という謎のメッセージが残される~

今回の本筋は、東京の中心部で起こった連続放火事件と、ある1つの殺人事件。特に、放火事件の方は、まるで何かを象徴するように、地図上で「円」を描きながら続発していきます。
そして、現場に残された犯人のメッセージ「東京」(※本当は「京」の字が違うんですよねぇ・・・ただし、この字は変換できない!)。
島田氏のライフワークとも言える「都市論」、特に「江戸」と「東京」という2つの都市の歴史、相違点に気付いたとき、真犯人が浮かび上がります。
本作は、いわゆる「社会派的作品」と称されることが多いわけですが、確かに島田氏の明確な主張や考え方が読み手にもよく理解できるような気がします。
中村警部は、本作の主役としてまさに適役。
御手洗シリーズのような派手なトリックやプロットは全くありませんが、初期島田作品で共通する、何ともいえない味わい深い作品に仕上がっています。
(本作を読了後は、是非古地図を片手に外堀通り辺りをブラブラ散歩することをお勧めします。まさに「ブラタモリ」か「地井さんぽ」・・・)
因みに、中村警部は御手洗シリーズの短編「疾走する死者」にも登場。そこで御手洗のスゴさを実感したことで、その後「斜め屋敷」事件で困惑する牛越刑事に対して御手洗を推薦する・・・という展開につながっていきます。

No.3 8点 測量ボ-イ
(2009/05/27 19:42登録)
(少しネタばれ有)
島田氏初期の作品群では社会派っぽい作品ですが、本格物と
しても十分通用する仕上がりです。
あと主人公の女性に何となく感情移入できる部分(何となく
ですけど)もあって高得点をつけました。
あと東京、というか江戸の地理の勉強(?)にもなりました。
放火された箇所の必然性って、そういうことだったのですね。

No.2 8点 Tetchy
(2008/10/28 23:04登録)
当時初めて読んだ島田流社会派小説。
そんな中でもトリックが組み込まれているのが島田らしいなぁと思った。
解決部分では唸らされたけど、犯人の動機が観念的で、ちょっと作者自身、自論に酔っているような気がせんでもない。

No.1 4点 のり
(2002/04/13 02:12登録)
島田作品には珍しく、意外性の無い展開だったと思う。ハードボイルドっぽいんだけど、それにしては動機や設定がなんか変だし、作品の裏に有るテーマも薄弱な印象を受けた。捜査の推移が火サスっぽいなあと思ってたら、実際ドラマ化されてたらしく(解説)なんとなく納得。
関係ないかもしれませんが、J・D・カーの類似タイトルとはあんまり接点が無いみたいです。

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