皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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31864. | RE:RE:RE:ボアゴベと涙香について 弾十六 2021/12/16 06:04 [雑談/足跡] |
空さま おばんでした。 涙香作品リスト、実に良いですね。でも原作の記述が全然行き届いていない… 原綴さえ書いてないし。 このリストを見ると、意外と日本の国会図書館のデジタル化が進んでいるんだなあ、と感じました。涙香は大抵の作品がデジタルで読める時代が来ていたのですね。(検索機能が充実すればなお良い… まあこれはかなりハードルが高いでしょうけど) 涙香が仏語ダメだった、というのであれば、原作が仏語のものは英語翻訳も示さないと不十分ですね… 例えばこんな感じで。 『海底之重罪』都新聞1889-1-3〜3-10 原作Boisgobey “Une affaire mystérieuse”(初出Le Petit Moniteur Universel du Soir 1869-6-10〜8-14, 連載タイトル”L’homme sans nom”; 出版Paris, E. Dentu 1878) 英訳”The Nameless Man”(London, Vizetelly 1887) 翻訳者不明 情報ありがとうございました。涙香の口語訳がネットにあげられているようなので読んでみようかな… 感想は涙香作として、ここに挙げても良いのでしょうか?(電子本ではないから、規定外になっちゃいますね。 |
31862. | RE:RE:ボアゴベと涙香について 空 2021/12/16 00:31 [雑談/足跡] |
弾十六 様 > でも日本の研究ってWeb公開が貧弱だと思います。涙香著作リストさえ満足なのがないなんて… 涙香だけでなく、古い作家の著作リストが充実しているのとしては、次のサイトがあります。 http://iwawi.a.la9.jp/index.htm > ところで私は、涙香は英語から翻訳したのでは、と思っています。もちろん仏語も出来たでしょうけど、なんとなく英語の人だったのでは?と思うのです。なので涙香の連載年月日と英訳の出版年月日を比べると面白そう、と思うのですが、 確かに、涙香研究の第一人者である伊藤秀雄氏が書かれているところによれば、涙香は英語が非常に得意で、千冊以上読んだと豪語していたとか(どうも仏語はだめだったようです)。涙香死後、相当数の涙香蔵書の英語本が古本屋に出回っていたそうです。 |
31856. | RE:RE:RE:RE:おっさん様、『のろわれた潜水服』原作について おっさん 2021/12/15 10:22 [雑談/足跡] |
弾十六さんへ ご無沙汰しています。 お言葉に感謝。 サイトを覗きにくれば、ご活躍はチェックするようにしていました。 しかし、弾さんの克明な調査は、こちらも腰を据えて読まねば、というところがあって、心せくときには、あとでゆっくり読もうと――途中でパスしてしまっていたことを、告白いたします。スミマセン。 介護に葬儀に相続に、と続いた日々も過ぎ、来年からはまたゆっくりした日々に戻れるはずなので、過去のご投稿を読み返させていただきます。 何か、小生宛てのメッセージを読み漏らしていた可能性もありますが、目についたものがあれば、亀レスでお応えしていきます。 まずは取り急ぎ、お礼とご報告まで。 おっさん拝 |
31854. | RE:ボアゴベと涙香について 弾十六 2021/12/15 00:20 [雑談/足跡] |
空さま おばんでした。 素晴らしい発見が続々と! 涙香研究の新境地ではないかと思います!(私の方は例によって周辺の小ネタを拾うだけ) でも日本の研究ってWeb公開が貧弱だと思います。涙香著作リストさえ満足なのがないなんて…(私が探せてないだけですかね?) 実は私が持ってる涙香本は、創元推理文庫の日本探偵小説全集第1巻と「小野小町」(教養文庫だったと思います)くらいなのです。いずれも書庫のどっかに眠っています。 特に後者は「貞女は一夫だにまみえず」と冒頭から無茶苦茶で、ダメだコイツ、と先を読んでいません… 当然、全集第1巻の方の「無惨」なんて字が詰まりすぎてて読めません… 涙香で思い出すのは、ミステリ・マガジンの裏表紙に結構長く掲載されていた涙香全集の広告。あれずっと読みたいなあ、と思ってたんですが、現物を全く見たことなくて、ポシャった企画だったんでしょうね。明治期の大流行作家なのに全然復権する気配がないなんて、どういうことでしょう。 ところで私は、涙香は英語から翻訳したのでは、と思っています。もちろん仏語も出来たでしょうけど、なんとなく英語の人だったのでは?と思うのです。なので涙香の連載年月日と英訳の出版年月日を比べると面白そう、と思うのですが、まあ自分でやる根気がありません… もう一つ、ボアゴベのL’homme sans nomですが、これが世に認められた最初期の連載(1869)なのに書籍化が遅れたのは何故なんだろうと思っています… そして書籍の方のタイトルがUne affaire mysterieuseで、この本には連載時L’homme sans nomだったとかは一切書いておらず、この表現が小説中に出てくるのは数か所(BnFのファクシミリ版はOCRの検索機能も付いてて全文検索も出来るのです!恐るべし!)なのに英訳者がThe Nameless Manというタイトルを選んだのは何故?とか… (もちろん重要なワードなので『謎めいた出来事』なんてタイトル弱いから別にないかなあ、と英訳者が偶然見つける表現であっても不思議はないのですけど) まあこういうどうでも良いことを悩んで小ネタにばかり注目するのが私の悪い癖です… 空さまのご研究が進むことを楽しみにしております。 |
31853. | ボアゴベと涙香について 空 2021/12/14 20:46 [雑談/足跡] |
弾十六 様 いつもながらの緻密なリサーチには、敬服の他ありません。英語版タイトルの由来も、すっきり納得できました。 こちらはともかくフランス語小説冒頭を読んでいく方で… すると、また従来の説を覆すものが出てきました。いや、『劇場の犯罪』の原作は間違いなく"Le crime de l'Opera"(オペラ座の犯罪)だと確認もできたのですが。で、問題なのは、 Le cochon d'or(金の豚)1882 冒頭、ほぼ会話のみで語られる内容は… 二人の若者が午前4時のパリを歩いている。田舎に住むサヴィニエンヌ・ダマンリは、伯父の勧めで、パリに6ヶ月滞在することになり、パリ在住の旧友ジョルジュ・フルジュレーを訪ねたのだった。フルジュレーは旧友を歓待し、レストランや賭博場を連れ回した後、家に帰る途中である。ダマンリにはイヴォンヌという婚約者がいた。なお、金の豚とは、ダマンリが伯母からもらった装飾品のことである。 ダマンリはフルジュレーと別れ、ホテルに帰った。部屋でくつろいでいると、妙な音が聞こえてきた。 涙香の『玉手箱』(従来の説では、『閉じられた扉』(Porte close)が原作)の出だしは、これとそっくりです。なお、"Porte close" (1879)はトリガヴー城の一室に、ある夜ウルベック男爵夫人フラヴィアがいる場面から始まります。男爵は朝から狩に出ていて、彼女は一人。夜中過ぎ、窓をノックする音が聞こえ、夫人が窓を開けると、アラン・ド・トリガヴーが入って来ます。彼女は彼を待っていたのだったという、要は浮気話から始まる物語です。 伊藤秀雄氏の『黒岩涙香の研究と書誌』でも、本作については「「閉じられた扉」というもののよし。」と書かれていて、根拠の弱い説であることは伊藤氏もわかっていたようです。 |
31841. | RE:RE:RE:おっさん様、『のろわれた潜水服』原作について 弾十六 2021/12/13 04:54 [雑談/足跡] |
空さま、おっさんさま おばんでした 呼ばれるとついついしゃしゃり出てきてしまいます。 まずは おっさんさま おひさしぶりでございます。私も人のことは言えない半分幽霊寄稿者ですが、ゆるりゆるりと続けていきますので、どうぞよろしく。若い人は古いネタに興味があまりなさそうですが、おっさんさまが精力的に古いのを取り上げてくださるので、いつも非常に参考にさせて戴いております。 続きまして 空さま 今回の涙香ねたには唸りました。子供の頃、夢中で『幽霊塔』を読んで(あれは小学館?の少年少女文学全集だったかなぁ、思えば両親が買ってくれたのです… 感謝感謝)、後年、元ネタが見つかったよ、という報に接して、でもそういう調査はすっかり済んでいるものと思い込んでいました… さてお褒めいただき調子に乗った私も、追跡調査を一つやってみました。 話題の”Une affaire mystérieuse”(出版1878)の新聞連載を、フランス国立図書館(BnF)で探そう!という企画です。なんせBnFは異国の人間にも完全無料で古い新聞をWeb公開してますからね。 Webで検索すると、Le roman est publié d'abord dans le Petit Moniteur Universel du Soir, du 10 juin au 14 août 1869という記述がみつかり、ところがこのページではタイトルがL'homme sans nom (une affaire mystérieuse)となっているのです。ああ、英訳タイトルThe Nameless Manに引っ張られて今フランスでもそういうタイトルで呼ばれてんのかな?と思いました。でもPetit Moniteur紙1869-6-10を見てビックリ。連載タイトルはL’HOMME SANS NOMで第一章(6/10及び6/11)のサブタイトルだけがUne affaire mystérieuseとなっているのでした… 仏WikiにもL’homme sans nomのことは一切書いてなくて、まあ確かに書籍化したときの初版(1878 Dentu)のタイトルはUNE AFFAIRE MYSTÉRIEUSEで間違いないのですが… (これもBnFで無料公開されています… 恐るべし!) Webでboisgobey homme sans nomと調べると、現行のフランス語書籍はこれで流通してるものがありました。 なお調査の途中で、国蕊さんによる清国翻訳の研究「陳冷血による翻訳小説の底本に関する考察」というのが見つかって、江蘇松江(現在の上海市)の出身の陳冷血(本名 陳景韓 1878-1965)は1899-1902に日本で留学、帰国後、新聞界へ、ジャーナリストとして活躍するかたわら、小説の創作と日本語からの西洋小説の重訳にも取り組み、77部の翻訳小説(共訳を含む)を発表した、とのこと。 この論文では作品21として 中国語訳タイトル「怪人」:’時報’1910.8.23-1911.2.14. 日本語訳本:「海底の重罪」(‘都新聞’, 黒岩涙香訳, 1889.1.3-3.10). 原 作:Une Affaire mystérieuse (英訳:The Nameless Man), 1878, Fortuné du Boisgobey. と挙げられています。冷血は結構涙香からの重訳が多かったようです。(15篇) 涙香をアジアの中において考えたことがなかったので、意表を付かれるとともに、深く考えさせられました… いずれにせよ、空さま、きっかけを与えてくださり、大変感謝しております! おっさんさまも復帰されるようで、とても楽しみにしています! |
31840. | RE:RE:おっさん様、『のろわれた潜水服』原作について 空 2021/12/12 23:57 [雑談/足跡] |
おっさん様 追記、おそれいります。 普通は原典まで追求しないですものね。(弾十六さんは別でしょうか) 自分も、伊藤秀雄氏の『黒岩涙香の研究と書誌』を借りてきて読んでいたところ、あれ? "The Nameless Man"の原作は、英語版Wikiでは確か別の…、と気づいたのです。 そこで気になって、他のボアゴベ作品も原作データ・アーカイブにあるものの冒頭部分を読んで伊藤秀雄氏の解説・粗筋と比較してみたところ、うわぁ… Mariage d'inclination(恋愛結婚)1888 その夜、パリのオペラ・コミックに3人の人物がいた。母と娘、そして叔父である。叔父の名前はポール・ノワゼ。彼の亡き兄シャルルは銀行家で、娘の名前はシモーヌである。彼らはシモーヌの見合いの相手を待っていた。 これ、涙香の『美少年』(従来の説では『ゼノビーは何処に』が原作)の書き出し部分じゃないですか。 涙香では、家族の名字は「野瀬」、娘の名は「紫紋」です。 じゃ、『ゼノビーは何処に』はどんな話かというと、 Où est Zénobie? (英語版 Where's Zenobia? でチェック) 1880 現在は賑やかなモンマルトルも、当時は閑散としたものだった。1815年7月2日の夜、二人の男が佇んでいた。一人は背の高い若者、もう一人はずんぐりした年配者である。 脚をケガしていなければ、戦いに行けるのに、なぜ我々はこんなところにいるのかとぼやく若者に、年配者は、「じゃあ、君は何も詳しいことは聞いていないのかい?」 間違いなく、涙香の『活地獄』(従来の説では "Le bac"(渡し船))です。 "Le bac" については、冒頭部分だけでは、該当作があるかどうかわかりませんでした。 簡単にチェックしただけで(仏語Wikiのデータ・アーカイブへのリンクが少ないおかげもありますが)、芋づる式に出て来てしまったことには、正直驚いたのですが、涙香の原作研究については、現在どうなっているのでしょうね。 |