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みりんさん
平均点: 6.65点 書評数: 464件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.18 7点 ナイルに死す- アガサ・クリスティー 2025/08/05 17:50
はっきりいって今までのクリスティー作品の中でダントツで面白かった。親友に婚約者を奪われた哀れな女性の行く末に心を揺さぶられた。無限に拡散していく人物相関はどこに着地するのだろう?ととにかく夢中になって読んだ。まだ著作を5分の1も読めていない私だが、読んだことない方にクリスティーのおすすめを聞かれたら現時点では真っ先にこれをお勧めすると思う。

【ネタバレ強め】【シリーズ過去作ついても触れるので注意】



肝心な時に限ってピタリと当ててしまった。当てたくなかった。なぜ当てられたかというと同シリーズの過去作にほぼ同じと言ってもいい犯人の設定と動機があるからだ。どうしてもその作品の使い回しという印象が拭えない。緻密に計画した犯行のはずなのに、あの(5分の空白)には確定的な要素がないとも思う。確かに過去作品よりは、経緯が詳細に描写される分、真相は効果的に映るし、ロマンスとしてもビターなエンディングも好みだ。過去作品さえ読まずに本作だけをつまみ食いしていたら、他の名作に並ぶ評価だったのが悔やまれる。でも、本作の持つ魔力に惹かれて、必ずいつか再読してしまうと確信している。

No.17 5点 もの言えぬ証人- アガサ・クリスティー 2025/08/04 00:49
遺産相続をめぐる利己的な一族の話で、『邪悪の家』ってタイトルはこっちの方が相応しそう。事件は老女の転落事件と病死のみで、ポアロが容疑者と話して情報を引き出すだけで500ページ以上引っ張られるのはさすがにしんどかったが、犯人の意外性はある。この感じのズラし方は久々かな?引っかかった。
影が薄くなってきたヘイスティングスが今作でほぼリタイアと聞いてやや寂しくなる。助手による記述形式は手がかりの与え方、ミスリードの手法に限界がきたのかな。
※直井明氏の解説で『カーテン』に関して超重大なネタバレを喰らったような気がします(大泣) 問題なければいいのですが…

No.16 6点 ひらいたトランプ- アガサ・クリスティー 2025/08/03 14:39
全く知らなかったがオールスター編だったのか。普通に容疑者4人以外のレイス大佐とか疑ってたぞこっちは。初耳のブリッジはクリスティーオリジナルゲームかと思ってた。面白そうなのになんで日本で浸透してないんだろう。2vs2のゲームで1人休憩てよくわからんな。
他の方もおっしゃっているように、ゲームから容疑者の心理や性格を分析するスタイルは『カナリヤ殺人事件』や『心理試験』を想起させるが、それ一辺倒にはならず、容疑者4人の過去の犯罪にも焦点を当てている分、説得力があると思う。後ろめたい過去のある4人の容疑者をポアロが聴取で追い詰めていく展開も高度な騙し合いとなっている。フェミニストの推理作家はやや浮いた道化として描かれているので、完全に投影しているわけではないのだろうが、推理作家の苦労やポリシーが伝わってきて楽しい。

ブリッジ知らなくても結構面白い。ブリッジ自体も多分ポーカーより面白い。

No.15 7点 メソポタミヤの殺人- アガサ・クリスティー 2025/08/02 22:14
いやあ面白かった。クリスティーって東野圭吾と同じで会話文中心で一気に読ませる力があるから広く親しまれているんだろうな。映像も映えるし。本サイトの国内国外書評数1位がこの2人なのも納得。

【ネタバレ】


元夫が姿を変えて容疑者の中に紛れ込んでいるかもしれない!て展開は最近読んだカーの『夜歩く』みたいで興奮した。食傷気味の入れ替わりもこうやってあらかじめ提示されていれば許せる。
ポアロシリーズにしては珍しく半密室で不可能犯罪が取り入れられている。執筆当時ですらそこまで斬新でもなさそうだが、これがあるだけで嬉しい。被害者の人となりや背景を探ることで浮かび上がる真相とポアロの推理というよりプロファイリングが面白い。それまで和気藹々としていたのに被害者が輪に入るだけで調査団員同志がギスギスする…これは現代でいわば"サークルクラッシャー"てやつだな。にしても作者は恋愛沙汰好きすぎるね

No.14 6点 雲をつかむ死- アガサ・クリスティー 2025/08/02 15:07
1935年のポアロ中期作。『ABC殺人事件』の前なのか。日本では『ドグラ・マグラ』が発表された年だと思うと、意外と我が国のミステリーも先進性があるというか本国イギリスに健闘しているな。

【ネタバレのようなものあり】

列車内では飽き足らなくなったのか、遂には天空で殺人事件が起こる。メイントリックはその綱渡り的な面も含めて実にホンカクミがあって好感が持てた。吹き矢とハチのアイデアはミスリードとして十分に機能している。
ただ人物関係でよくやるアレは流石に食傷ぎみだ。いくら当時の戸籍制度・身分制度・捜査手法が杜撰でも、流石にこれを見逃すことはないだろうと思う。『オリエント急行』と同じように、捜査編もかなり退屈。

No.13 6点 無実はさいなむ- アガサ・クリスティー 2025/07/26 16:45
まだほとんど読めていない戦後のクリスティー作品の1つ。
舞台は『ねじれた家』で形式は『そして誰もいなくなった』みたいな感じだった。最近は初期のポアロシリーズを読んでいたので、ガラッと雰囲気が変わって面食らった。資産家夫婦の5人の養子の人間模様が複数視点で丁寧に描かれ、まるで自分ごとのように読ませてしまう力がある。日本の新本格作家(好きですよ)に足りないのはこういうところなのだろう。
親の愛情は子にとっての束縛となる。血の繋がっていない親ならなおさら倒錯した感情を抱いてしまうのだろう。犯罪をゲームのように楽しむフィリップだけがこの重さにそぐわずかなり浮いている(てかちょっとサイコっぽいw)。得意の恋愛描写も健在だが、最後は少し雑かな。
パズル好きの私の嗜好とは少しズレた作品だが『ねじれた家』と共に自著ベスト10入れているのも何となく頷ける。

No.12 7点 三幕の殺人- アガサ・クリスティー 2025/07/23 22:49
ポアロが登場するまで約200ページ。日常でも何かしらの役を演じてしまう自己愛の強い俳優と人間観察が趣味の好事家による素人探偵コンビが活躍して新鮮。

【ネタバレあり】


ポアロを悩ませるのが聖人の権化のような牧師が殺された動機。これは良心が痛む凄まじい一撃だ。しかし、それよりどちらかというと2つの殺人の会食に居合わせた者を疑わせるというミスディレクションのためだったという動機の方が良かったのではないか?

よくもまあこんな良作をポンポンかけるなあ
いや今作に関しては「犯人はエッグでチャールズを自分の元に呼び戻すためだ」という確信があった。怪しいモノローグや独り言もあったし。だがクリスティーはそこまで甘くなかった。

No.11 8点 エッジウェア卿の死- アガサ・クリスティー 2025/07/23 14:47
このシリーズは騙された人と見抜いた人(もしくはネタバレ等で知っていた人)で評価が分かれがちだなあと思います。

⚠️ネタバレ注意⚠️ ※ポアロシリーズ過去作のネタバレもあり




著者の得意とするこの手のテクニックにまた騙されちまった。むしろお前が見抜ける作品あるのかよと思われそうだが。もう流石に"この技"はないだろうと油断していた。悪く言えば過去作の使い回しであるが、それが連続すると見事に決まる。
????「今考えていることの逆が正解だ。でもそれは大きなミステイク」って奴です…
今作はわざわざモノマネ女優までフェアに登場させているのだから、このトリックにも実現可能性が保証されているし、成功したかを電話で確認までしているのだからリスクが極めて低い。実際に○○○○○に気付いて殺された奴もいるわけだし。

トリックは見事◎で動機も前例なし◎(自分の読んだ中で)。ミスリードは本サイトのレビューを見ると引っかかってる人は少なめなので微妙か△ 最後の獄中からの手紙、自信に満ちた狡猾な犯人の造形もよし◯ てことで8点!

No.10 7点 邪悪の家- アガサ・クリスティー 2025/07/22 12:55
すごくシンプルに読めば、真相が浮かび上がってくるという構成が面白い。いや普通に疑ってたんですよ中盤くらいまではね。でもそこから色々あって頭からポッカリ抜け落ちていたというか、勝手にその可能性を消していたというか…まあ素直な読者なんです。まあポアロもずっと見抜けなかったんで(笑) ミスリード・ミスディレクション(違いや如何に?)の巧みなクリスティーと相性良いのかもね。
※人並さんのありがたき警告によって、ソチラをどうせ読んでいないであろう私は皆様の書評が読みたくても読めないのが辛いところ。

No.9 4点 青列車の秘密- アガサ・クリスティー 2025/07/20 02:37
列車内で顔を潰された女の遺体とその部屋に潜んでいた男の影、ルビーの盗難、骨董商の話…そして謎のロマンス展開。話がとっちらかりすぎてあまり整理できていない。
アガサ・神・クリスティーにしては珍しくつまらん。でもポアロの推理が聞きたくてこんな深夜まで読まされちまった。

No.8 7点 検察側の証人- アガサ・クリスティー 2024/07/21 00:01
読んでる途中に話の大枠を思い出しちゃった。法廷ミステリーとして想定内のどんでん返しに納まっている感もあるが、コンパクトに纏まっているゆえ疑念が生じる前に意表を突かれる(のではないか?)
演技力が大きく関わってくる内容だからこそ演劇で見てみたい。戯曲版だけでなく、短編小説版があるそうで、そちらも読んでみたいなと。

No.7 6点 ねじれた家- アガサ・クリスティー 2024/07/17 19:28
クリスティ自選ベスト10に入るほど自信作とのこと。派手な展開はないものの、レオニデス一家の特殊な背景や人間模様を楽しむいぶし銀みたいな作品だったかな。もし発表年代順に読んでいくと、徐々にこういう類の作品に傾倒していく様が読み取れたりするんかな?と妄想。
あと某作が与えた影響は計り知れないなあと。実は私も事前情報でネタバレの如きものを喰らっていたが、読んでいるうちに「この作品じゃなかったのかなあ?」と徐々に自信をなくし、仕舞いには完全にミスリードされるという(笑) ネタバレまでも貫通してミスリードするこの手腕はさすが女王。というか自分がアホなだけか?

No.6 7点 ゴルフ場殺人事件- アガサ・クリスティー 2024/07/17 00:26
評点が5点台で全く期待してなかったのだが、ふつうに面白い。この人もしかして代表作群が凄すぎて、他のパッとしない作品の評価が霞み&厳しくなりがち?なんとなくロジックを重視する方は合わないかなあと。ポアロが超人すぎて、作者の思いつきをそのまましゃべっているようにしか見えないほど(笑)
複雑な人間関係トリックによる入り組んだ真相が明かされた時の快感たるや。あとベッタベタのメロドラマも自分好みで、読後感も心地よい。

No.5 7点 スタイルズ荘の怪事件- アガサ・クリスティー 2024/04/14 11:56
個人的にはABCに匹敵するくらい面白かったです。
国内の有名古典にも同じものがありますが、本作はこういう系のトリックの元祖として、ABCと同等クラスの評価をされるべきなのでは…?と思いました。


【以下トリックのネタバレあり】



それとは別の時間差毒殺ケミカルトリックの方ですが、すごくユニークな発想ですね!こういうの好きですよ。ですが、底に溜まった沈殿物を無警戒に飲み込んでしまうものなのだろうかと少し気になってしまいました。どういう状態の液体か分からないのであまりなんとも言えませんが…
あと、ラストの決定的証拠の隠し場所についてですが、食べた方が良いと思います(追記:と思ったら他の方が全く同じことを指摘していました笑)

と不満点が2つほどありましたが、全体的には処女作と思えないほどハイクオリティな本格であり、大小さまざまなプロットやお手本のようなミスリードが楽しめる良作で間違い無いでしょう。

No.4 7点 ABC殺人事件- アガサ・クリスティー 2024/03/26 00:11
クリスティ四天王の中でも最弱と噂の『ABC殺人事件』
四天王は全てネタが分かった状態で読んだが、本作が1番楽しめたかな。ABC>そし誰>アクロイド>オリエント急行の順。まあ、いずれも衝撃が薄れた状態での評価のため、あてにならないけど。(ちなみに私の42件目の書評で、これらの作品が書評数でもTOP4に^ ^)
この手のトリックに最初に出会った時は甚く感動したなあ。某推理漫画の劇場版の作品。こうした先行作を読むことで後発作品への当時の感動が薄れてしまう現象、あるあるですよね。後発作品が先行作品を完全に凌駕していた場合には、逆の現象が起こるんですけどね。

あと、法月綸太郎の解説が良い。解説ってこのくらいの平易さがベストなんだよ、もっと担当してくれ。ABCパターンという雛形を作った功績だけでなく、本作の他の魅力についても分かりやすく述べられている。解説で触れられているABCパターンの後発作品についても(E.Q,マクロイ,ディヴァイン等)もこれからゆっくり読んでいきたいところ。

No.3 8点 オリエント急行の殺人- アガサ・クリスティー 2024/03/20 13:15
人生で初めて読んだミステリ長編は『Yの悲劇』で短編はホームズ。でも、人生初のミステリー(映像作品)はこの『オリエント急行殺人事件』なので思い入れのある作品。まあ、1974年の本国の映画の方ではなく、松嶋菜々子が主演の邦ドラの方なんですけどね…

最近ポアロシリーズを読んでいて、既読だからと飛ばせなかった本作。前は山本やよいの訳で読んだので、今回は中村能三の翻訳で再読。
本作の弱点は論理性の欠如と物語の奥行きの狭さ。しかし、国籍の異なる13人の容疑者を巧みに書き分け、読者を見事に欺いたこの斬新な趣向と悪魔に相応しい結末は現代でもきっと光り輝いている。これを機にたくさんのミステリと出会えたことに感謝して8点。

No.2 6点 アクロイド殺し- アガサ・クリスティー 2023/05/17 23:57
御多分に洩れず、この超有名作は既にトリック・真犯人共にネタバレされている状態で読みました。
ミステリはそれだけで魅力半減…かと思いきや一周目から作者の仕掛けにニヤニヤするのも悪くないなと。
やはりクリスティのアイデアは革新的 

追記
と思っていたら日本人の純文学作家が『アクロイド殺し』より前にほぼ同じトリックを書いていたみたいですね。読んでみようかな。

No.1 8点 そして誰もいなくなった- アガサ・クリスティー 2023/02/26 23:33
中学生の時に読んで以来の再読 
本格推理小説の歴史を大きく動かした一冊としてその地位を確固たる物にしているこの作品。
原点にして頂点とまでは言いませんが、あらゆる本格ミステリの元ネタであり続けながら、いま読んでも面白い古典作品というのは珍しいですね。

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