皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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みりんさん |
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| 平均点: 6.66点 | 書評数: 577件 |
| No.577 | 8点 | メルカトルと美袋のための殺人- 麻耶雄嵩 | 2026/09/12 02:25 |
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| 銘探偵メルカトル鮎の第一短編集。こいつも名探偵推理力トーナメントがあれば手段問わず勝ち上がりそうな卓越した探偵の1人。「哀しいかな、基本的に私は長編には向かない探偵なんだ」←かっけぇよ… ただ、そろそろ長編にも最初から最後まで登場して苦戦してくれw
初っ端から『遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる』で幻惑密室の先にあるホワイに心を奪われてしまった…この短編の切れ味に8点を献上すべきだと思わされた。 『化粧した男の冒険』や『彷徨える美袋』はまあいかにも短編向きの小粒なネタだが、名探偵にあらざる倫理観を披露するダークヒーローメルさんシリーズ。 短編のくせにやたら複雑で2回読まさせられたのが『ノスタルジア』と『シベリア急行西へ』 この作者は、斜め読みしていると重要な手がかりを素通りしてしまうから気を抜けない。『ノスタルジア』はメルカトルの書いた超悪文ですこぶる読みにくいが、途中からあまりにも変態的なロジックを展開し、こういった作中作叙述モノをするならここまでやれと示してくれた。『シベリア急行西へ』もフツー短編でこれをやるか?というような、捻くれた多重解決もの。「そう思うだろ。それが犯人の目的なんだよ。」←いや、わかるかよww この二つは並の短編じゃ満足できなくなった変態向けでしょう。 |
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| No.576 | 7点 | 青の炎- 貴志祐介 | 2026/09/12 01:40 |
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| 倒叙=犯人わかってる=つまらないという俺の辿り着いた結論等式を覆した作品。読者を物語の世界にグッと引き込む筆力がずば抜けている。東野圭吾と同様に小説家として一流なのかも。
【展開バレ】 1つ目の計画はQ=Ivtと不自然なアリバイ工作以外ほぼ完璧だったんじゃないか。ここまでは秀一の名に恥じない秀才ぶりを発揮。問題は2つ目の計画。監視カメラに一部始終を撮影されるのはあまりにもリスキーだし、すっ転んで死んだなんて主張は無理筋だろう。読みながら「おい秀一、それは流石にやめておけ」と手に汗握りながら必死に応援していたが、案の定ここから芋蔓式にバレてしまう。でも、天才とはいえ、秀一は高校生なのだから仕方がない。殺人を一度犯したことで、秀一自身を青の炎が焼き尽くす。罪悪感で徐々に冷静さと正常な思考判断能力を失い、杜撰な計画に頼ってしまうというのは、秀一が等身大の高校生であることを痛感させる。 そう、あの義父さえ存在しなければ、秀一は普通の高校生だった。紀子と真剣に交際し、やがてはおしどり夫婦になる未来もあったと考えるとあまりにも救いのない結末だ。例え証拠不十分で釈放されても、母と妹が好奇の目に晒されることが耐えられないのであれば、秀一はああするしかなかった。トラックの運ちゃんは気の毒だが… 中高校生の頃に読んでいたら、櫛森秀一のことを夜神月ばりに神格化していただろう。とにかく、絶対に忘れられない主人公の1人になった。 |
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| No.575 | 7点 | プレーグ・コートの殺人- カーター・ディクスン | 2026/09/06 18:39 |
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| 唖然の密室トリック以上に、WhoとHow双方のミスリーディングが物語の核として機能している点が見事。なかでも、白い粉によるWho・Howダブルミスリードが気持ち良すぎるだろ。解決編の前に計画乗っ取り型の犯罪であることを明かしてもなお、誰も真相に到達できないレベルの難易度であり、フェアさを気にしない俺みたいな読者にピッタリ。『三つの棺』の密室講義をスキップしていて本当に良かった。ただ、H・M卿とフェル博士のビジュアルほぼ同じじゃね?
あまり類似性を指摘されていないが、処女作『夜歩く』を発展させた作品という印象を受けた。 |
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| No.574 | 8点 | 造反有理 文革楼の殺人- 稲羽白菟 | 2026/09/05 21:03 |
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| ジャンルは本格/新本格になってしまっているが、個人的には歴史物としての感興の方が大きい。
舞台は1960年代中国。毛沢東の夫人・江青らが主導する紅衛兵による知識人への弾圧が進む「文化大革命」の最中、周恩来首相は命を狙われている重要人物達を「文革楼」に逃して匿っていたが、その屋敷内で連続見立て殺人が起こるという話。 「文化大革命」を全く知らなかったので、この凄惨な動乱について調べてから読んだ。「文革楼」というものは実在しないが周恩来首相が文化人や科学者のリストを作成し、保護していたのは史実通りらしい。 登場人物が多く最初は混乱したが、次第に読む手が加速した。文革楼の外での大虐殺、中での連続サツ人という二重地獄の状況である。本格ミステリとしての最大の読みどころは「見立て」だが、その「見立て」にこそ、この地獄の時代・状況を選んだ必然性が見えてくる。途中からはスパイ小説的なハラハラ感もあり、終盤では理不尽な革命に翻弄されながらも自分の誇りを貫く文化人達がいちいち格好いい。 本格としての骨格だけを評価すればせいぜい6〜7点だが、舞台設定の独創性、革命に生きる人間達のドラマ性・メッセージ性、作者の並々ならぬ熱量に押されてこの評価。 |
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| No.573 | 6点 | 本を読むのが超速い人の頭の中ってどうなってんの殺人事件- 白井智之 | 2026/09/04 18:15 |
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| 自分も挑戦した。30分ちょいだった。
なかなかひねりの効いたオチだった。このギミックをM先生やT先生ではなく、白井智之がやるのかという驚きがある。感心したので7点でもいいのだが、基本的に同一作家内の評点は面白さ・凄さ順にしたい派である。これに7点をつけてしまうと『ミステリー・オーバードーズ』や『そして誰も死ななかった』より面白い・凄いということになる。それはそれでどうなの?と思い直し6点。 |
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| No.572 | 7点 | 法月綸太郎の冒険- 法月綸太郎 | 2026/09/04 17:47 |
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| 「死刑囚パズル」
執行直前の死刑囚の毒殺事件を扱った純粋なフーダニットもの。動機も独創的でこの短編集の中では頭ひとつ抜けた出来。死刑囚が死刑執行直前に毒殺されるという奇異な状況により、通常の殺人事件の捜査よりも取り調べが緩くなっているというのが実は大事なのかも。共犯者否定のロジックは結構ガバい気がする。 「黒衣の家」 あの有名なサイコパス診断テストと全く同じネタだね。AIによるとそのテストが流行り始めたのは2000年ごろでこの作品の方が古い。お、これはもしかして元ネタなのか?と興奮して、AIに時代を遡らせると戦前の推理作家の某短編、フロイトの著作、江戸時代の実際の放火事件など類似ネタが色々ヒットした(笑) その某短編が収録されている短編集はこのサイトでもかなり人気が高いみたいなので、読みたい作品リストに入れた。 「カニバリズム小論」 動機1本に絞った半ば論文のような作品。評論家としても一流の作者らしく、筆が乗っているのが伝わってくる。カニバリズムという映像的な恐怖以上に、人間の思考そのものの悍ましさに愕然とさせられる。 図書館シリーズは前3作と比べると雰囲気が緩くなり、ユニークな密室トリックが炸裂する『緑の扉は危険』以外は個人的にイマイチだった。前半3作と図書館シリーズは別の短編集に収録すべきでは。 |
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| No.571 | 7点 | 楽園- 夕木春央 | 2026/08/31 00:35 |
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| 『方舟』1発で終わる予定だったものを、大人の都合で無理矢理シリーズ化させられただろうに、特殊なクローズドサークルを拵えて…旧約聖書に準えて…犯人は…と様々な制約がある中で、一定のサプライズを演出しなきゃいけないなんて罰ゲームに近いだろう。それをやってのける作者は本当に凄い…この状況を成立させるために、不自然なほど物分かりのいい犯罪者達を登場させ、ありえない選択を主人公に強いるあたりで、作者の苦心が窺えた
【ネタバレ】 『方舟』にはまだ動機を推測する余地が読者側に残されていたが、こちらは後出し感が強くて、衝撃はあるものの納得感には欠ける。あと、犯人による怒涛の動機開示はサイコパスネタで笑かせにきているだろうとややシラけてしまう。とはいえ、whyに驚愕したのは事実だし、シリーズ前作からの流れとしては完璧な落とし所であるのは間違いなく、十分に期待に応えた作品である。なにより、こんな縛りプレイに近い状態でここまでのものを提供できる作者に感謝すべきなのかもしれない。 |
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| No.570 | 6点 | シュレディンガーの密室- 麻根重次 | 2026/08/29 21:26 |
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| 「シュレディンガーの猫」という思考実験はいつの間にか「観測するまで分からない」という程度の意味で使われることが多いよね。本来は、単に観測者が結果を知らない。観測すれば収束するという話ではなく、量子力学をマクロな世界に適用すると死んでいる状態と生きている状態が重ね合されてしまうことへの問題提起なのに。その点でこの舞台設定はミステリー的にはとても面白いけど、「シュレディンガーの猫」という言葉の意味をかなり単純化したタイトルには引っかかってしまう。と、偉そうなことを書いているけど、所詮はシュレディンガー方程式を習った時にほぼ理解できなかった人間の戯言です。
【ネタバレ】 負圧の密室を開けた瞬間に硫化水素が流入して死ぬ。しかし、すでに死んでいる場合は密室に押し入り、臓器を回収しなければならない。この状況設定が非常に独創的で素晴らしい。帯の過剰なハードル上げがなければまあフツーに面白いじゃんと楽しめたはずだ。前例のありすぎるひっくり返し方ではあり、その点は『千年のフーダニット』には敵わなかったが、それを差し引いても十分に魅力的な作品です。 ※風船を用いたダミートリックは風船の中に二酸化炭素が溜まるだけかつ注射器を用いた風船への空気の送気は不可だというような記述があったから、ダミーとはいえそもそも成立しないような気がするのだが…なにか読み落としたのかな。 |
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| No.569 | 6点 | 愛国殺人- アガサ・クリスティー | 2026/08/28 22:54 |
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| クリスティーなのにあくびが止まらなかった。複雑さのせいか登場人物の希薄さのせいか…それでもやはりトリックはさすがである。アムバライオティス(覚えにくい)を「国のため」ではなくただ自殺偽装のためだけに殺していれば、かなり納得感のあるトリックに仕上がったのではないか。期待したような国を愛するが故の尊い殺人ではなく、限りなく卑小な動機だな。ポアロも引いているぞ。
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| No.568 | 8点 | 開かせていただき光栄です- 皆川博子 | 2026/08/23 23:08 |
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| 日本の歴史ミステリーは文体がとっつきにくいから俺には読めないんだが、この作品はロンドンが舞台なので逆に読みやすいのかも。冒頭からハードな解剖シーンが描かれるものの、『死の泉』ほど陰鬱な雰囲気はなく、五人の弟子や詩人の天才少年、盲目の判事がそれぞれ実に個性的で楽しい。冒頭から3人の死体(身元不明×2)が登場し、徐々に複雑な関係図が浮かび上がると、頭の収拾がつかなくなりそうなところで、適度に謎を明かしていくバランスがいい。ミステリーといえばの中性的な美少年2人が登場し、虚言・偽証で事件を引っ掻き回すが、これに関する動機がこの時代でしか成立しないもので、よく考えられている。小説としての面白さと立派な本格の"技"を兼ね備えた稀有な作品。
※ALFAさんのレビュー見て驚愕。は、は、80歳??? |
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| No.567 | 6点 | 名探偵再び- 潮谷験 | 2026/08/23 01:27 |
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| 実はちょっと前に読んで記憶が薄れているが、主人公がとても祖母使いが荒く、超利己的な性格でベリーキュートだったのは覚えている。表紙イラストもかわいい。
【ネタバレ】 連作短編で一つ目の風呂の事件の出来が良かった覚えがある。他も悪くはなったが大オチについては偶然予想していた。○○○○○トリックはどんでん返しが無くて困ったら使われるくらいには便利ネタなんだが、幽霊という設定で実現度を大幅に上げているのがポイントか。キャラクターミステリーとして結構好き。 |
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| No.566 | 8点 | I- 道尾秀介 | 2026/08/19 23:50 |
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| こういうギミック系を前面に押し出して売り出す作品を遠目から冷笑し、敬遠していたのだが、いざ読んでみるととんでもない。同じような冷笑してる人にもかなりおすすめです。読む順番で結末が変わるなんてどうせ解釈的な差異であって大したもんじゃないだろうと疑っていたのですが、表紙詐欺ではありませんでした。ギミックを成り立たせるためにとある登場人物の言動が極めて不自然という弱点はありますが、それを差し引いても、とにかく読ませる力があり、ちゃんと伏線を記憶させてくれる良い作品です。
【以下未読の方はスルー推奨】 自分はバッドエンドの順番で読んでしまったのですが、これは明確に読者の意思でキャラクターを殺してしまったということになります。何気にウルチモ・トルッコ(読者が犯人)を成立させている稀有なミステリーということになりませんか?屁理屈?読者としては、なぜこれで結末が変わるのだろうと物語に散りばめられた手がかりから推理しながら読むわけですから、本格ミステリというジャンルに1票を投じます。 たださあ、前情報は「読む順番で結末変わります」だけでよくねえか 救うか○すかあなた次第みたいなの言っちゃうと衝撃薄れるじゃん。それでマーケティングに成功してるなら仕方ないのだけど |
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| No.565 | 6点 | 神狩り- 山田正紀 | 2026/08/19 00:32 |
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| 格好いい文章を書く人だな。50年前の作品とは到底思えないし、24歳でデビュー作というのが怖い。SFを全然読んでいないためか、まったく新しいジャンルと出会えたなという感動がある。強いていうなら『虐殺器官』がギリギリかすってるかな、全く違うかなという感じ。
我々の使用している論理記号が5つ「そして」「ならば」「あるいは」「でない」「必然である」ってのは腑に落ちませんが定説なんですかね?今作で登場する「古代文字」の論理記号は2つのみ。2つで言語を成立させるのは人間ではありえないと。ここの説明がいちいち格好いいんですよ。ワクワクします。 神との対決はここからだ!ってところで終わるので暫定評価ですが、シリーズ続編次第で9点10点になるポテンシャルを秘めています。 ※実は登場人物達が受けた理不尽を、存在もしない「神」のせいにして、夢遊病者の如く狂っていただけという可能性が残されているw |
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| No.564 | 8点 | 疑惑の霧- クリスチアナ・ブランド | 2026/08/16 20:11 |
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| 同シリーズの諸作品と比べて事件そのものに求心力はなく、退屈であった。犯人が判明しても「なぜそれが実行できたか」というのが腑に落ちず、疑問が残る。このまま終わるのかと思っていると、最初から作者の巧妙な罠にまんまと踊らされていたことが最後の最後に判明する。真相そのもの以上にこの焦らし方がいやらしいほど効果的だった。探偵による推理の披露ではなく、たった数行の犯人のセリフだけで、まさに霧が晴れるようにすべてが繋がるのがキザで格好いい。「うわああああ…!」ではなく「お、おおおお…!」って感じでやられた。本格ミステリとして特段凄いわけではないが、今のところ1番好きかも。
ちなみにコックリルとチャールズワースの推理対決要素は薄い |
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| No.563 | 7点 | 自宅にて急逝- クリスチアナ・ブランド | 2026/08/15 23:55 |
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| 大富豪の住む白鳥の湖邸(スワンズウォーター)、遺言状の書き換えによる混乱、遺産相続を巡る2つの足跡密室殺人、クライマックスは○の○○。実にホンカク^ ^
十八番(?)の多重解決は探偵ではなく、なぜか容疑者達がただ安心を得るために必死に考案していくという斬新な趣向であり、それぞれ単独でナミの長編ミステリーが仕上がるレベル。登場人物はどいつもこいつもノンデリカシーのやばい奴ら‥これが恐るべきリチャード一族の血かw 最後に明かされる脱力物の足跡トリックは、あらかじめ仮説の中で潰しておいて欲しかったが、最後の1行を読むとブランドさんはどうしてもこれをやりたかったんだなと笑ってしまう。表紙裏の「ユーモア溢れる本格ミステリー」に偽りなし |
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| No.562 | 7点 | 緑は危険- クリスチアナ・ブランド | 2026/08/15 10:16 |
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| 第二次世界大戦でドイツ軍による空襲を受けている最中の陸軍病院で起こる殺人。手術中ということはどうせ専門的なメディカルトリックだろうとハナから諦めていたら、誰でも思い至れるようなシンプルなトリックであった。重要なのは第二の事件。被害者がナイフで2回刺され、白衣を着せられていたという謎で、そこから導かれる推理がなかなかに鮮やか。その他、前代未聞の兵糧作戦(?)や、探偵役の明白なミスなど見どころは色々あり、大技を決めた『ジェゼベル』ほどではなかったが満足。
ただブランドさん、クリスティーに比べるとすこぶる読みにくい ポケミス版の翻訳 ちょっと→ちよっと やっぱり→やつぱり 『ハイヒールの死』同様、意地でも小文字を使わないのはなぜ?訛りか何かを表現しているのかと思ったら、地の文でもこれなのでちよっと気持ち悪い |
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| No.561 | 6点 | ハイヒールの死- クリスチアナ・ブランド | 2026/08/15 10:15 |
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| 財力で女を誑かすろくでなし男べヴァンが経営するクリストフ衣装店で起こる毒入りカレー事件。
金髪美女ばかり登場して視覚的に心地よい(幻覚) が、一人一人の個性を記憶していくのが大変だ。容疑者のほぼ全員が怪しい行動を取り、真相を上手く覆い隠すテクニックは既に完成されているものの、最終的な解決が、『緑は危険』ほど論理的ではない。習作というやつかな。 容疑者達が揃いも揃って怪しい行動を取った理由に関しては、なかなか心に染みるものがある。 |
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| No.560 | 8点 | エコール・ド・パリ殺人事件- 深水黎一郎 | 2026/08/11 23:28 |
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| これを読むまでキュビズムが麻耶雄嵩の造語だと勘違いしていたレベルに美術の知識がない自分でも、作中作の美術評論は興味深く、登場する画家達を検索した。評論がただの蘊蓄の披露に止まらず、物語の根底にまで深く関わっているのも、芸術に造詣の深い探偵が真っ先に解き明かすのも芸術探偵というシリーズの名に相応しい。読者への挑戦状で期待させた割に密室は肩透かしだが、犯人が憎悪に至るまでの過程が細部まで描かれていてこちらの方が印象的であった。密室なんてなくして被害者を救いようのないクズにしても良かったんじゃないかと思う。
エコール・ド・パリの評論はそのままミステリー作家の姿に重なって見えるのは深読みのしすぎだろうか。商業主義に陥らず、一人一派として作者にしか書けないものを書く。そんな作家としての矜持を体現した芸術ミステリーの傑作だと思う。 |
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| No.559 | 6点 | 痾- 麻耶雄嵩 | 2026/08/11 11:40 |
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| 「翼ある闇」の密室トリックに感銘を受け、「夏冬」の意味不明さにブチ切れると同時に笑いが込み上げ、「麻耶雄嵩は俺には早すぎたのだ…」と戦略的撤退をしてから早3年が経過し、今の俺ならいけるかと再開。
(シリーズ前作も含むネタバレ) 前作に登場した概念である対象の絶対化「キュビズム」にあたるのが今作では「能」か?「リテラアート」か?前2作に続いて、無意識下における洗脳という反則級のトリックが用いられている時点でミステリーとしてはダメかもしれないが、メルカトル鮎というつかみどころのなかった銘探偵がこの回で一気に好きになった。1作目で死んでしまったが以降のシリーズでも登場する(逆時系列で?)ようなので楽しみだ。ところで、"桐璃"が和音島の惨劇の真相について烏有に嘘をついた謎や、メルカトル鮎と編集長の関係はまだ明かされてないよね?烏有サーガはまだ続くのか。 ※後日談とのことだったので、読む前に『夏と冬の奏鳴曲』をネットの考察サイトで復習すると「え、もしかして「夏冬」って大傑作だったの?」と俺も烏有のように洗脳されそうになった、危ない。 |
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| No.558 | 8点 | ジェゼベルの死- クリスチアナ・ブランド | 2026/08/08 22:52 |
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| ジェゼベルって格好いい名前だなと思っていたが、聖書から引用したこの名前自体がこの殺人の舞台装置に関わっていたのか。
全てが明かされてから思い返すとあのトリックから逆算してすべてが練られている。ページェントという舞台における衆人環視の密室殺人に首無死体、事件発覚の順番、自白合戦。すべてがトリックの演出とミスリーディングに上手く機能している。相当自信があったんだろう。 『薔薇の輪』と同様、リーダビリティに欠ける上に真相解明まで乗り切れないところがあったが、間違いなく本格ミステリーの傑作だと思う。「お手本のような」という言葉が相応しいかな。 てかシリーズ4作目かい!ブランドさんの他の作品も読まんとねえ。 |
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