皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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レッドキングさん |
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| 平均点: 5.29点 | 書評数: 999件 |
| No.259 | 6点 | 十日間の不思議- エラリイ・クイーン | 2019/11/08 16:50 |
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| 殺人事件が起きるまでが実によい。サスペンス超えて狂気と情念の美学・・・まるで「嵐が丘」か「白痴」か。ここまでならば「シャム双生児」と並ぶクイーン小説の双璧として8点献上。
全体4分の3まできて殺人起きてミステリになって、「十戒見立て」オチで尻つぼみに一件落着。マイナス1点。一年後に、どんでん返し「操り」オチして最終解決。さらにマイナス1点。で、計6点。 ところで「操り」って魅力的なテーマとは思うが、催眠術同様に何か噓くささが付きまとう。東野「悪意」や京極「絡新婦」にしても「そんなうまくいくか?」てなる。そのへん「Yの悲劇」はあの偶然性が見事だったかな。 |
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| No.258 | 3点 | 死者はよみがえる- ジョン・ディクスン・カー | 2019/10/26 15:37 |
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| 思いもよらない真犯人、見返せば意味のある見取り図、登場人物全てが互いに互いを疑い合う状況・・「こういう状況を何と言ったらいいのか」「わしなら推理小説と呼ぶね」・・・この「落とし」だけのためにこれ書いたんだろな、カーさん。 | |||
| No.257 | 5点 | 三幕の殺人- アガサ・クリスティー | 2019/10/21 17:25 |
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| アガサ・クリスティーには映画よりも「舞台」が似合う。別にクリスティー原作の芝居を見たいってんではなく、二十世紀前半、芝居が中上流階級の娯楽社交場だった時代の登場人物達がよく似合う。「~公爵」「~卿」「~夫人」「~令嬢」「~大尉」「~医学博士」・・といった面々が、気どり取り澄ましふんぞり返った容疑者として、ずらりがん首揃えるエヅラがよい。「エッジウエア卿の死」同様に犯人が演じる「無実芝居」と「アリバイトリック」。
※ところで、若い清純な女と三十歳も年長の恋多き男の「純愛」なんて、どうしたって眉に唾付けたくなるわな、われらおじさん世代としても。んな男、インチキおやじに決まってるじゃん。あのバランスの悪いひねくれた若者の方が遥かにましだぞ、同伴者にするならと、おじさん心から思う。そこんところはアガサ・クリスティーしっかりと押さえてくれていて拍手拍手。 |
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| No.256 | 4点 | エッジウェア卿の死- アガサ・クリスティー | 2019/10/18 16:23 |
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| 「犯人こいつだ!」→ 「適中!」。「こういうアリバイトリックか?」→「適中!」・・・気持ちいい。
死刑執行を前にした犯人がポアロにあてた手記のニヒル具合が良い。死刑囚はいつもあれくらいの奴であってほしい。 ※「人間関係トリック」もそうだが「偽悪キャラ一捻りトリック」も続けて読むと少し色あせてしまうな。 |
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| No.255 | 6点 | フォックス家の殺人- エラリイ・クイーン | 2019/10/13 16:31 |
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| 「殺人が行われた。」「Aには犯行が可能だった。」「A以外には犯行は不可能だった。」「したがって犯人はAである。」・・・完璧な密室のごとく組み立てられた完璧なロジック。
だが探偵には「密室のトリック」を破る様に「ロジックのトリック」を破ることを要求される。よくできた「密室」が、結局は作者が読者を騙す「叙述トリック」であるように、この作品の「ロジック」も巧妙に読者を欺く「叙述トリック」により構成されている。 そして「本格ミステリ作家」エラリイ・クイーンには、そうした「欺き」でさえも「フェア」であることが要求される。ここでの叙述は「フェア」か?自分は「OK」だった。 |
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| No.254 | 4点 | ねじれた家- アガサ・クリスティー | 2019/10/07 21:54 |
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| これまたマザーグース物の一つ。クイーンが「靴に棲む老婆」で描いた家族や、それ以上にカーの描くフリークな群像とは違い、クリスティーは英国女流小説風の人間描写から筆をすべらせない。それがひんやりとした、いかにもなミステリな雰囲気を醸し出して、それはそれでとても良いのだが、「マザーグース童謡」とはいまいちそぐわない。 | |||
| No.253 | 4点 | 靴に棲む老婆- エラリイ・クイーン | 2019/10/07 01:21 |
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| マザーグース見立て殺人ものの一つだが、登場人物達の「フリーク」具合が、カーに比べてイマイチ。カーならば、もっともっとホラーでドタバタでグロテスクかつファンタスティックな童話的キャラで楽しませてくれたろう。
「全く同じサインというのは偽造である。」てなロジックは目からウロコだった。 |
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| No.252 | 6点 | 孤島パズル- 有栖川有栖 | 2019/10/01 17:31 |
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| 「密室殺人」に「宝探し」に「ロジック」と豪華3点セットで8点付けたいが、
➀「完全な密室」だがカラクリがチャチなのでマイナス1点。 ➁0次元1次元2次元と進化する「宝探しパズル」も3次元に至って尻つぼみとなりマイナス1点。 ➂犯人特定のロジックは見事・・・もちろん「あの日記に虚偽記載がないとは言い切れない」「拾った紙は最初に見過ごした紙とは別物で、誰かが自転車で踏んでたことに気付かなかった」「実はライフルは二丁あった」などのイチャモン付けは可能で犯人確定の「十分条件」とは言えない・・・見事だが、「分り安すぎる犯人」のキャラ描写が「純粋なロジック」の判断を阻害しており、ここはプラマイ0。で、計6点。 (いろいろネタバレ) あの女が一人ボートで湾を漕いで行く場面が、「獄門島」で住職が夜の寺の石段を提灯灯りで登っていく場面や「ゼロの焦点」で女が一人で海に舟を漕ぎ出す場面に重なり、ロジック以前こいつが犯人だと直感できてしまう。 |
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| No.251 | 6点 | 死時計- ジョン・ディクスン・カー | 2019/09/28 07:43 |
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| 古い時計の、狂い、よじれ、ねじけて噛み合わない歯車の様な登場人物達。誰もかれもが怪しく描かれる中で、「うさん臭さ過ぎる」キャラの一群が物語早々に容疑者リストから「お払い箱」になった後に、「いかにも容疑者らしい」キャラ群が残されるが、最後にカラクリ時計の「カラクリ返し」が待っていた。
これもカーのトリックとしては「スカ」な部類(〇〇道だの隠し〇〇〇だの、それ自体ペケだろう)の作品だが、面白かったんで点数はオマケ付き。 |
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| No.250 | 3点 | 赤後家の殺人- カーター・ディクスン | 2019/09/20 12:29 |
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| 魅惑的なオカルト冒頭から十八番の密室殺人展開に広がり、フランス革命にまで辿る歴史浪漫溢るる物語を経て、竜頭蛇尾な尻つぼみ感たっぷりな結末で終わる。まあ、あんだけ毎度毎度「密室」「不可能」やってんだから、たまにはこんな「脱力感」あふれる「スカ」なトリックもあるだろう。 | |||
| No.249 | 8点 | ポアロのクリスマス- アガサ・クリスティー | 2019/09/15 18:36 |
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| 「最近のあたしが取り澄ましたお上品なミステリしか書かないと思ったら大間違いよ。えげつない血生臭いのも書けるのよ・・」ってな自慢気な前書きだが、本当は「あたしだってジョンのような『密室もの』くらい書こうと思えばいくらでもこしらえられるのよ・・」を示した傑作。十八番の「人間関係トリック」をダミーに使い捨てるところがGood。 | |||
| No.248 | 4点 | 鏡は横にひび割れて- アガサ・クリスティー | 2019/09/12 19:47 |
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| ほぼ一気読みできる位に読みやすいアガサ・クリスティのミステリの中にあって、珍しく「退屈さ」を感じてしまう作品。このネタは短編でまとめてほしかった。 | |||
| No.247 | 5点 | 杉の柩- アガサ・クリスティー | 2019/09/05 11:00 |
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| ハヤカワ文庫の表紙画、なんで薔薇の絵?と思ったが、ちゃんと理由があった。冷静な判断力を保ちながらも、強くひたむきに異性への情念を抱き続けるのは男とは限らないってことね。クイーンはおろかカーでもこんな女は描けない。 | |||
| No.246 | 8点 | 囁く影- ジョン・ディクスン・カー | 2019/09/03 09:22 |
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| オカルトとドタバタを両翼に、不可能犯罪トリック解明をエンジンにして飛翔するカーのミステリの中で、この作品はオカルトのみドタバタ抜きの片翼飛行で疾走する。そして切なく歪んだ心情とサスペンスが、ハウ・フーを超えて「いったい何が起こっているのだろう」のホワットダニットを噴き上げて行く。
ところでこの作のフェル博士にはいつもの魅力がないが、なんせ片翼のドタバタ自体がないのだからやむを得ず、ヒロインの魔力がそれを補ってあまりある。「あなたは彼女を愛してなどいないのよ・・幻想の女・・あなたの頭が創り出した夢の女よ・・ねえ、聞いて・・」「あの人が、どんな女だってかまわない。僕は、あの人のところに行く。」 嗚呼、「幻の女」「愚かなる男」 |
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| No.245 | 4点 | 地獄の奇術師- 二階堂黎人 | 2019/09/02 09:58 |
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| これが江戸川乱歩の作品だったら、敬意を表して「名誉9点」位は付けちゃってたかもなあ。
それにしても、あの女子高生探偵のキャラ、もちっと何とかならんのか。 |
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| No.244 | 4点 | スタイルズ荘の怪事件- アガサ・クリスティー | 2019/08/29 22:42 |
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| アガサ・クリスティーの記念すべき処女作。1920年発表てことは1915年の「恐怖の谷」とほぼ同時代なのか。キャラ的にもプロット的にも「こいつが不幸に消えないと話が収まらない」=「ミステリ的には犯人のわけがない」て位に分かりやすいヒールを出しちゃいながら見事に一捻りして終結。十八番の「人間関係トリック」も既にきめてる。 | |||
| No.243 | 6点 | 魔女の隠れ家- ジョン・ディクスン・カー | 2019/08/25 06:13 |
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| 旧家継承のオカルト風秘儀に絡めた連続殺人。キャラ的に一番怪しい人物には鉄壁のアリバイが・・・。アリバイトリックは見事だが、「密室」「不可能犯罪」ではないのが残念。自決し損ねた犯人の情けなさがよい。
※ところでフェル博士って妻帯者だったのね。忘れてた。 |
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| No.242 | 7点 | 九人と死で十人だ- カーター・ディクスン | 2019/08/23 14:06 |
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| 喉を切り裂かれた女の死体に残された指紋は、登場人物の誰とも適合しなかった・・ 航海中の船上という舞台が連続殺人の緊張感を煽る。しかも戦時中の航海ときてはなおさらに。指紋トリックの方は「へえ、そうなんだ」って感じだが、人物入れ代りトリックは読み返してみると「ああ、本当だあ」とただただ感心。
※いまさらだけれども、フェル博士とヘンリ・メリヴェール卿のキャラの違いって「えっへん、おっほん」するかしないかだけだよね?それとも両方ともしたっけ? ※2021/5追記。メリヴェールも咳払いの「えへん」位はしてた。あと、メリヴェールの方が、爆笑度が高い。 |
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| No.241 | 7点 | 葬儀を終えて- アガサ・クリスティー | 2019/08/20 06:21 |
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| 富豪一族の遺産相続をめぐる連続殺人のごとき展開にも関わらず、もっと何か「奥のありそな」ひんやりとしたホラー風味。「どいつもこいつも『怪しげ』に描かれてるなあ」「逆に、犯人この中にいないんじゃね?」「でもどうやって話まとめるんだ?」ときて「え? 犯人それえ?」となる。回り道一捻りされた「意外な真犯人」だった。
※「・・女はあまり親切ではありません・・」女流作家が書くと変に説得力があり・・ |
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| No.240 | 4点 | 毒猿 新宿鮫II- 大沢在昌 | 2019/08/18 14:59 |
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| このサイトで知り、興味を持って読んだ一冊。素直な感想は「面白かった」。「ハードボイルド」とか「クライム」なんてジャンルでの評価ならば7点8点とか遠慮なく付けちゃうと思うが、やっぱりジャンルにはこだわりたい。だからこのサイトでは「ミステリ」として評価して、おまけ付けてこの点数。
風俗店バイト店員が、自身を「ドゥ・・ユアン(毒猿)」と正体を明かす場面がカッコイイ。 ただ我が国のヤクザをゴミみたいに扱う戦闘描写は何とも・・・彼らだって人間だろうに・・・。 ※ところで空手やってる奴に「脳天かかと落とし」なんて技は無意味だと聞いた。(真相は知らん) |
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