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レッドキングさん
平均点: 5.27点 書評数: 888件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.35 5点 バトラー弁護に立つ- ジョン・ディクスン・カー 2021/08/28 15:32
ちょいと席を外した瞬間に刺殺されていた謎のペルシア人。二人の視線の壁をくぐり抜けた「密室」殺人・・てっきり「孔雀の羽根」やポール・アルテ「カーテンの陰の死」トリックだと思ってたら・・・あらら。
フェル、メリヴェールにできないからって、バトラー出すと、まあ、ジェイムズ・ボンドかドラゴンかとばかりに動くこと動くこと、カーが最も精彩放つのって、実はアクションシーンではあるまいか。

No.34 4点 雷鳴の中でも- ジョン・ディクスン・カー 2021/08/25 19:20
かつて「ヒトラー山荘」に招かれた程の伝説の女優。時を経て容色衰え、なお益々盛んな男への情欲。山荘でのかつての容疑者が自屋敷では被害者として謎の死を遂げて・・。見どころはただ一つ、殺人トリック・・「薔薇の名前」の「舌」以前に、この作品では「鼻」がポイント・・で、殺人現場に「いた」事が無罪のアリバイになる、という画期的な殺人トリック。※奇しくも皆川博子と同じく「薔薇とナチス」が物語の背景を彩っている。

No.33 5点 ニューゲイトの花嫁- ジョン・ディクスン・カー 2021/07/25 06:10
舞台は今から二世紀昔の英国。西洋はナポレオン時代の終焉。謎の馬車に拉致された若き貴族が連れ込まれた部屋には刺殺死体が。殴打され失神から目覚めた場所からは件の部屋は「消失」していた。冤罪で死刑判決を受け、執行直前に、死刑囚との偽装結婚を模索していた富豪令嬢との婚姻を受け容れる。が、思わぬ運命の変転から、爵位を相続し自由の身となるのみならず、令嬢の婿として莫大な遺産も手にすることに・・・。
ミステリとしては、「消失した部屋」のトリック・・ホームズ短編のあのネタ・・の解明とフー・ホワイの骨格だが、「三銃士」か「モンテクリスト伯」かと思うくらい面白く、かつ、カーのドタバタ活劇も全開で、1点オマケ。

No.32 7点 疑惑の影- ジョン・ディクスン・カー 2021/06/07 20:00
「密室」に毒殺被害者と二人だけでいた容疑者の女。毒物容器の指紋は被害者と容疑者の二種だけで、他に犯行可能な者はいなかった・・・圧倒的に不利な状況から、「密室」を破り、無罪を勝ち取る弁護士バトラー。だが、一人の女の「無罪」は、別の毒殺事件に絡んだ、もう一人の容疑者の女を作り出してしまい・・・弁護士の分際で、血沸き肉躍るスーパーアクション繰り広げる熱血バトラー。フェル、メリヴェールには逆立ちしても不可能なアグレッシブなハードボイルド展開実に楽しく、点数オマケつき。

No.31 6点 エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件- ジョン・ディクスン・カー 2021/04/26 17:18
英国にとって「プロテスタントvsカトリック」てのが、信仰の問題ではなく、権力闘争の問題だと言うのは分かるが、この小説でミステリなのは「何故に、単なる一判事の死が政治利用され得る程に、民衆レベルの熱狂を得られたのか」ダニットにとどめを刺す。(英国は、ナチスドイツのユダヤアレルギー程は極端なカトリックアレルギー発作に至らず、幸運だった。)  歴史事件に正面から立ち向かったアイデアに敬意を表し2~3点加点。
でもやはり、英国歴史ミステリ言うんなら、「Who was Jack the Ripper?」の方に興味が行く。

※法的手続きと証拠証人の「論証」で進められる近代西洋法廷。一見、理性的客観的に見える有罪無罪審判も、こういう(クイーン「フォックス家」「ガラスの村」等含め)の読まされた後では、わが江戸奉行「カンと見込み」捕物と比べ、さして良い物とは思えず、それどころか、「大岡裁き」「遠山金さん裁き」の方がまだマシにさえ見え・・・

No.30 4点 震えない男- ジョン・ディクスン・カー 2021/04/18 16:19
「幽霊屋敷」を購入した裕福な男が催す幽霊パーティー。「見えない手」がシャンデリアを揺らし、女の足首を掴み、壁に掛かった銃を宙に浮かして殺人を起こす。「それをやっちゃあ、おしめえよ(これ使っちゃあ、どんな「密室殺人」もありだ)」て位のスーパー機械トリック出しちゃって、本来3点だが、操りネタも面白いんで1点加点。

No.29 6点 毒のたわむれ- ジョン・ディクスン・カー 2021/03/31 12:36
ゴシックの亡霊の様な館。「古き良き」価値信仰者の老いたる元判事と彼に支配される一族。連続する毒薬毒殺事件。「好きなミステリ作家は?」と聞かれれば「ジョン・ディクスン・カー!」と反射的に答えてしまうが、残念なことに彼の「毒殺好き」だけには共感できない。が、この作品の毒の差異による犯人特定ロジックは目からウロコだった。
※バンコランとフェル・メリヴェールをワンポイントで繋ぐこれ一作のみ登場の探偵、奇人青年:ロシター・・おそらく、金田一耕助御手洗潔の祖先筋なんだろな。

No.28 4点 アラビアンナイトの殺人- ジョン・ディクスン・カー 2021/02/08 18:10
三章とエピローグから成る長いミステリ。一、二章で別視点からの殺人事件の丁寧な証言が語られ、三章で仮探偵による実に詳細な解明がなされ、エピローグ・・それも文庫本わずか十数頁ほどで、真探偵フェルによるドンデン返し真相が明かされる。実に十一人の容疑者・・実際は九人・・の5~15分刻みの行動時間表の丁寧なアリバイロジック展開と幾つかの物証が良い。たーだ、最後の最後に殺害場所の出入口が一個増えちゃうってのはまあ良いとして、元々、出入り口が複数あるってのがねえ。毎度、書いちゃうが「密室」こしらえてほしかった。

No.27 4点 剣の八- ジョン・ディクスン・カー 2021/02/06 12:40
これも複数者の犯行企図の重なりが引き起こす「?」の話で、こんがらがった「現」況から、「元」況を解き分けるフェル博士の解釈が見事。「何故に諸料理の中から大好物のスープだけ食べ残したのか?」てなロジック展開よいなあ。残念なことに、この現象、フェル以外の一般人には別に「不思議」には見えないんだよな。あの部屋が密室だったら、人間消失していたら・・さらにポルターガイスト現象やタロット「剣の八」カードと有機的に結び付いていたら・・「三つの棺」に近づいていたかも。※探偵マニア聖職者やミステリ作家とフェルの推理マウント合戦が笑える。

No.26 3点 四つの兇器- ジョン・ディクスン・カー 2021/01/17 23:14
バンコランシリーズ第五弾(にして最終弾) 。クリスティー「ゴルフ場殺人事件」とかと同じく、複数者の別の犯罪企図と偶然が、「不思議」を現象させるってやつだが、その「不思議」が「凶器が多すぎる」なんてレベルでは・・・
不思議のカラクリ公開は実に見事だが、カーには「密室」「不可能」レベルの不思議を期待しちゃうからねえ。

No.25 4点 ハイチムニー荘の醜聞- ジョン・ディクスン・カー 2020/11/13 16:24
ホームズ・ワトスン物語に何故あれほどの「ミステリスタンダード感」覚えるのか考えると、あれがガス灯の世界・・電力以前の世界・・の物語だからだということになる。ミステリには、あの世界がよく似合う。電力照明のない世界、想像しかできない世界、そして、ミステリには英国と英国人が実によく似合う。

No.24 5点 悪魔のひじの家- ジョン・ディクスン・カー 2020/11/03 06:25
密室が二部屋。一部屋は「完全」な密室だが、もう一部屋は半開きの「不完全」密室。起きた事件は両部屋とも殺人未遂。とりあえずこれで我が基本評価点5点を進呈。「悪魔のひじ」と呼ばれる岬に佇む、幽霊が徘徊する古豪邸を舞台に、遺産相続の絡んだ殺人未遂事件が展開する。「緑樹館」という魅力的な屋敷ネーミングに半狂いの老兄妹。せっかく舞台を魅惑的な展開期待へと盛り上げたのに竜頭蛇尾につぼみ、フェル博士ドタバタもなく、基本評価点のみで終わってしまった。

No.23 7点 死者のノック- ジョン・ディクスン・カー 2020/10/29 21:04
二部屋の密室。 一部屋目では「密室殺人」、二部屋目は「人間消失」。しかも二部屋とも「完全」な密室。これだけで我が高点基準7点進呈!
(密室構成の出来については突っ込まない・・ただ前から思っとったんだが、外からも内からも鍵で開閉できる扉って普通なのか?・・まあいいやコマカイことは)

No.22 5点 九つの答- ジョン・ディクスン・カー 2020/10/03 19:49
フェル博士は出演せず、長い・・でも結構サクサク読めるミステリ。オカルトホラーではないがソフトにグロテスクで、爆笑ドタバタて程ではないが微笑くらいはさせてくれる。メインのなりすましトリックには騙された。読み返したら・・まあ確かに「ふぇあ」かな、あの叙述。すさまじくチープな不可能トリックも付いてる。で、タイトルの「九つの誤ったカイシャク」だが・・ほぼ、そんな疑い持たんかったわ。

No.21 5点 テニスコートの謎- ジョン・ディクスン・カー 2020/08/22 21:56
テニスコートの中央に横たわる絞殺死体。現場は被害者以外の侵入痕跡なき「密室」状態だった。衝動的に死体に接近して足跡を残してしまった女。女の窮地を助けるために偽装工作を練る男。恒例のフェル博士と警視庁警視、怪しげな杖男や軽業師などを交えて、ブラックなシュールギャグのようなサスペンスドタバタ劇が展開する。不可能トリック解明のダミー解釈・・「ロングジャンプ」「手に靴はいての倒立接近」「ネット綱渡り」・・が実にファンキーで、真相解明など、もうどうでもいいような気にさえなった。

No.20 3点 死の館の謎- ジョン・ディクスン・カー 2020/07/24 11:07
曰くのある館。怪死事件から十数年の後、侵入不可能状態の二階部屋から転落怪死した女。状況は「密室」にして、関係者には皆アリバイがあった。肝心の密室トリックは小学生向け探偵ものレベル。せっかくターゲットが心臓病持ち設定なんだからそれ利用するトリックがほしかった。
※あの手すりの一部に隠しスイッチが接続されていて、ベランダの箱から「オバケ」のびっくり風船が飛び出して被害者をショック死させ、風船は空に飛んでってしまうての考案した。(やはり小学生向けだな)

No.19 3点 盲目の理髪師- ジョン・ディクスン・カー 2020/07/10 07:25
航海中の客船で起きた、外交上支障のあるフィルム盗難や宝石紛失事件、さらに殺害された女の死体消失事件。連続事件のフーダニットミステリが、コミカルに誇張された人物達によって演じられるドタバタ劇だが、カーにあるまじき事に不可能事件がなく残念!
※犯人指摘の脚注付きロジックは見事だが、フィル博士には安楽椅子にではなく、ドタバタ渦中にいてほしかったな。

No.18 7点 仮面劇場の殺人- ジョン・ディクスン・カー 2020/07/03 20:46
劇場の鍵のかかったボックス席で、背中に矢を射られて殺された女。「密室」ではない。舞台に向かって大きく「窓」が開いていたのだから。殺害状況とアリバイの二つの「不可能性」解決がテーマの作品。
※これ、もちっとで「くたばれ健康法」とんでもトリックになれた(かな?) ただ、あのやり方で本当に背中から刺し殺せるのか?(ま、よいとしよう)
※同様な「半密室」不可能トリックを扱った「第三の銃弾」に比べて、トリック自体は見劣りするが、「第三の銃弾」が余剰部分を極力削った作品だったのに対して、こちらは約2倍の分量の、トリックテーマ外の「物語」たっぷりの作品で、そこが魅力的なので点数はオマケ加算。

No.17 6点 眠れるスフィンクス- ジョン・ディクスン・カー 2020/02/27 16:21
愛してやまない女が狂女なのか、信頼してやまない旧友が殺人者なのか・・。二者択一に揺れる男の夢幻的なサスペンスティックミステリ。納骨堂「密室事件」のオマケも付く。物語の雰囲気はカー王道で、密室トリックもなかなか。残念なことにメインテーマと密室の関連性がイマイチ。「皇帝のかぎ煙草入れ」とは同格だが、「曲った蝶番」「火刑法廷」には一歩、「三つの棺」「囁く影」にはニ、三歩及ばないかなと。

No.16 6点 猫と鼠の殺人- ジョン・ディクスン・カー 2020/02/09 18:16
2回射殺された金持ち色男と容疑者の非情裁判官と目撃者の娘。アリバイ時間トリックの解釈を持ちカードに、娘の証言をサイ目にして、自白心理戦ポーカーを争う探偵二人と容疑者。女の資産が目当ての、いかにもなジゴロ風に見せかけて、実は骨のあるなかなかの資産家だったという被害者人物像返しと、アリバイトリックがちょっと面白い。

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レッドキングさん
ひとこと
ミステリは戦前の乱歩の様に 子供が親に隠れてコッソリ読むような、恥ずかしい存在でありたい。 ミステリ書きという驚異的な作業に神経を減らし 結果報われることの無いミステリ作家たちに心から崇敬を捧げます。 ...
好きな作家
ジョン・ディクスン・カー  PD・ジェイムズ  トマスH・クック  沼田まほかる
採点傾向
平均点: 5.27点   採点数: 888件
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