皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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風桜青紫さん |
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平均点: 5.62点 | 書評数: 290件 |
No.15 | 6点 | 真実の10メートル手前- 米澤穂信 | 2016/05/03 17:28 |
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表題作の「真実の10メートル手前」はこの作者としては久しぶりに小さな推理を重ねて話を進めていくタイプの作品だったが、『氷菓』や『さよなら妖精』からの成長が確かに感じられた。……が、オチが「死人宿2」でげんなりしてしまった。いい加減、先が読めるし、食傷気味である。これで少し不安になってしまったが、続く「正義漢」は、違和感のある状況から、はっとさせる結末にもっていく、この作者の本領発揮ともいえる作品で、やや持ち直してくれた。「恋累心中」もつっこみどころ全開なのはさておき、伏線の回収の巧みさと意外な結末を見せつけてくれてなかなか楽しめた。「名を刻む死」はなんともしょうもない話で笑った。迷惑じいさんを追い払うのにわざわざ「切り捨てる」という言葉を使わせるあたり、「道徳の逆こそ正論だよね」みたいな作者のしょっぱい意図が読み取れる。「ナイフを失われた思い出のなかに」は期待が大きかったぶん、やや肩透かしだった。日本人が書いた西欧人の一人称には悪い意味で鳥肌がたってしまう。しかし『さよなら妖精』の後日談という意味ではそこそこの出来か。「綱渡りの成功例」もベタな米澤短編だが、なんか面白かった。シリアルが
美味しそうだからか。 『満願』と『王とサーカス』のボーダーライン上の作品だが、正直この二つより面白かった。米澤の本格ミステリ作家としての実力を印象づけてくれる作品である。 |
No.14 | 5点 | 王とサーカス- 米澤穂信 | 2016/05/03 17:04 |
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知り合いからの評判があまりよろしくなかったので、ハードルを下げて読んだ。……そこまで悪くないと思うが、かといって面白いかといわれるとなんとも微妙で、平均的な米澤穂信の作品だという印象だった。
わりと本格としては凝ったつくりなんだが、真相がやや予測しやすく、先行きが気になる謎もなければはっとするどんでん返しもない。となると読ませどころはセンドーの葛藤と成長……なんだが、こちらもいかんせん月並というか軽いというか、虫警部氏のおっしゃる「いかにも」という言葉がふさわしいように感じる。 筆致は落ち着いてるし、話のまとまりもそれなりにあるから、読ませはするけども、ラストシーンの大袈裟さほど余韻の残る読後感ではなかった。第二の『折れた竜骨』を想定していたが、どちらかといえば、第二の『追想五断章』だった。 |
No.13 | 6点 | 満願- 米澤穂信 | 2015/12/28 20:11 |
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『夜警』は「こんな人間おるかい!」ってな、ふざけた話なんだけど、印象的なエピソードと伏線がよくからんでおり、なかなか良くできた本格ミステリ短編です。この水準の話が続いてくれれば、風桜の米澤嫌いも治るかもしれないと思ったんだが、まあ、話にアクセントがないからか無理矢理毒を押し込んだような『死人宿』に萎えてしまい、世にも奇妙な物語のつまらない回みたいな『関守』でがっくりしてしまい、有栖川有栖の使い捨て短編みたいな『満願』を退屈しながら読み終えたときには「これがこのミス1位……?」と首をかしげてる自分がおるわけです。
別に風桜はそこまで連城が好きなわけでもないけど、これを「連城三紀彦の再来」と呼んでいいものか疑問。リアリズムをアピールしながら到底有り得ないような話を書くのは確かに連城三記彦的なんだが、連城の作品はもう少し説得力があると思うのよ。たとえば親子をあつかった作品でいうと、『能師の妻』や『花衣の客』なんかは、たとえ現実にはありえん話でも、結末にいたるまでの登場人物の心の動きがよく伝わってくるから、なんとなく納得してしまう。けど『柘榴』は明らかに男のせこい妄想で書いたような「女の怖さ」だから、人物に共感が出来なくて、あんなオチを出されても、なんというか、イラついてしまうのです。父への偏愛の根拠が「ごはん食べたあとキッスした」と「声がエロい」だけじゃね……。直木賞の選評で女性作家からの風当たりが強かったのも納得。あと、これは私見だけど、女の子は傷がついてるほうが(乱歩や彬光的な意味で)エロいので、強めにしばいたところで、月子の弱々しいかわいさが倍増するだけじゃないかと思う。このあたりの感情が計算できないようでは、夕子は読書好きといっても、電撃文庫ばかり読んでいたのではないだろうか。なんにしろリアリズムに向いてないであろう作風の米澤を「連城三紀彦の再来」とかいうのは納得がいかんわけです。あえていうなら、『万灯』は米澤の色がよく出てて好感が持てた。やれるところまでやりたいみたいな変な義務感で主人公がつっ走って、どんどんダメな方向に行ってしまうところ。結末はツッコミどころ満載でも、妙に殺伐とした世界観や、主人公の心の動きが妙につたわってきて楽しめた。米澤本人はこういうタイプの人間だからかは知らんが、説得力という点ではこの作品が強かったんじゃないかな。まあ、結末はツッコミどころ満載だが、エンタメ作品だしこれぐらいは許してもいいだろう。 なにやらけっこうな長文になってしまったが、まあ、えてして嫌いな作家というのはこのように言いたいことが増えてしまうわけです。米澤の短編集なら、『儚い羊たちの祝宴』のほうが非現実味を前面に出してるぶん、鼻につかないし、内容も充実していたかな。まあ、話運びは巧みだから読んでる分には退屈しない。『夜警』だけなら7点。総合で6点といったところ。 |
No.12 | 6点 | 秋期限定栗きんとん事件- 米澤穂信 | 2015/12/19 09:59 |
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最後のひとことで妙に盛り上がっているかたもいるっぽいけど、ゆきの「小動物っぽいけど、実は狼みたいに凶暴、でも処女」みたいな胡散臭い設定にはほとほと嫌気がさしてるので、「あほ臭い」という印象しかなかった。逆にファッション彼女を作ったジョーゴロは今回好感度がずいぶん増した。馬鹿馬鹿しくても彼女ラブはやりたくなるよね。くだらんことを大真面目に推理する系でいえば、『あたたかな冬』はなかなかの出来。『おいしいココアの作り方』や『シャルロットだけはぼくのもの』よりか出来がいいような気がするけど、はて、どうして短編オールタイムベスト100みたいな企画だとこの二作品に押されちゃうのかな(もとより米澤の作品がオールタイムベストレベルかはかなりの疑問なんだけど)。 |
No.11 | 7点 | 折れた竜骨- 米澤穂信 | 2015/12/19 09:43 |
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ファンタジーものとして面白いという意見が多いけど、世界観といい、ストーリーといい、ものっそいベタだし、登場人物たちも月並みなキャラ設定なので序盤は読んでいて退屈だった(フィッツジョン殿とかコンラートみたいないかにもって感じのキャラは嫌いじゃなかったけど)。最後の犯人当ては倉知淳から持ってきた臭いがぷんぷんするが、まあ、カッチリした犯人当てになってるし、嫌いじゃない。犯人当ての道具をファンタジー世界の道具立てにするってのも、短絡的といえば短絡的だけど、違和感なく話に溶け込んでるから鼻につかないし。米澤の長編では今のところこれがベスト。 |
No.10 | 6点 | インシテミル- 米澤穂信 | 2015/12/19 09:34 |
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嫌いじゃない。子どもや阿呆に人気のデスゲームものだが、そのガジェットを利用して謎解きの骨格を組み立てるって発想が良かった。デスゲームものとしては王道……っていうかベタで、そこまで楽しめるわけでもないけど、道具仕立ての上手さにはなかなか感心させられる。結末の盛り上がりも良し。しかしヒロインらしき女には終始腹立った。こいつにはトイレにいるところを、おはしで襲われるみたいな展開が必要だった。 |
No.9 | 7点 | 儚い羊たちの祝宴- 米澤穂信 | 2015/12/19 09:24 |
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宣伝文句のように「最後の一行に驚かされる!」というのは大してなかった。『玉野五十鈴の誉れ』など、いかにもオタク男子が好きそうな女同士のにゃんにゃんが書かれていて嫌気がさしてしまった。『身内に不幸がありまして』も多小なりとも本に触れてりゃすぐに共通モチーフに気づくし、気づいたところで「だから何だ」としかならん。キャラクターの動きも飛ばしすぎ。しかしまあ、ブラック童話めいてる『北の館の罪人』と『儚い羊たちの晩餐』は割と面白かった。ミステリーとしては弱くとも話の流れだけで楽しめる。個人的なベストは『山荘秘聞』。前二つでなめてかかったから、あっさりと作者の手のひらに乗せられた。結末にも素直に驚く。てか、守子が米澤作品でもトップを争うかわいさ。ハチャメチャさと健気さがたまらん。年増なのもいい。ということで『山荘秘聞』単体なら7点。総合で6点といったところ。『満願』より上。
(2016.3.19 追記) 6点→7点。雰囲気の演出に関して再評価。 |
No.8 | 4点 | 追想五断章- 米澤穂信 | 2015/12/19 09:07 |
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なんか予想に反したオチとかがあるかと思えばそんなことはなかった。導入部の発想なら本ミス大賞の候補になっても違和感はないんだけど。作中作のリドルストーリーもみみっちい自称文学だし、こんなもんに感心してるのはよほど普段文学に触れない輩だろう。文章と話のスジはまともなので4点にしておく。 |
No.7 | 5点 | 犬はどこだ- 米澤穂信 | 2015/12/19 09:01 |
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軽いタッチのハードボイルドもので、まあ、サクッと読めた。……としか言いようがない。事件のインパクトがうすいんだよね。米澤本人はこんなとってけたようなオチでも「連城三紀彦的」とか思ってそうだけど。紺屋くんのどうしようもなさとか、ネットで絡んでくる奴の怖さとか、けっこう楽しめるところもあったから5点。 |
No.6 | 5点 | ボトルネック- 米澤穂信 | 2015/12/19 08:55 |
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舞台やキャラクターの設定は面白いけど、ミステリーとしては弱いかな。主人公がなにやら苦悩しまくってるけど、共感しづらい(キャラの性格よりは作者の手腕のせい)から、「どうぞ好きにして」としか言いようがない。彼女かわいいし、兄貴もけっこういい奴じゃん。こんないい人たちをバカにするとは、嵯峨野リョウは死んでよし。うどんがうまそうだし、まあまあ楽しめたので5点。 |
No.5 | 6点 | さよなら妖精- 米澤穂信 | 2015/12/19 08:47 |
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米澤穂信を多少は見直そうと思ったのがこの作品。ミステリとしては弱いって意見が多いけど、途中のショボい日常の謎はともかくとして、ラストの生存確率推理に関しては、解決の行方を気にさせるという点で絶妙な盛り上げかたでしょう。「密室なんてなんかトリック使ったんだろ?」ってな白けモードにはならない。キャラの動きに関しても、守屋くんのガキっぽい健気さとか妙にじんとするし、マーヤも無性に儚げで可愛らしいから守屋くんの行動に説得力が生まれるんだよね。センドーや剣道部の顧問やホットドッグ屋のおっさんみたいな脇役もいい味出してる。というわけで、米澤作品でも別格(それでも6点だけど)。これデビュー作にすりゃよかったのに。 |
No.4 | 5点 | 夏期限定トロピカルパフェ事件- 米澤穂信 | 2015/12/19 08:37 |
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米澤穂信ってこの作品で一気にミステリランキングに名をつらねたんだけど、いまいちどこがすごいのはわからん(そこまで上位じゃないから、別にすごいわけでもないんだろうけど)。『シャルロットだけはぼくのもの』とか面白そうな事件設定なのに解決がしょうもなさすぎてがっかりしてしまった。ジョーゴロもゆきもあまり好きじゃないからキャラ読みできない(ゆきはもっとボコボコにされるべきだった)し、前作のが面白かったな。とはいえ安定した読み心地だったし、5点ぐらいはつけてもいいだろう。 |
No.3 | 5点 | 春期限定いちごタルト事件- 米澤穂信 | 2015/12/19 08:30 |
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ゆき嫌いなのよね。ああいう、ロリキャラなのに中身は凶暴――ってなキャラつけはそこから胡散臭さを感じる。この作品を評価する人に「キャラな魅力うんぬん」という人がいるけど、果たして、ジョーゴロやゆきやジョーゴロの元同級生の人に、作品ひとつ支えられるだけの魅力ってあるのか? ちなみに私はアンチ米澤だけど、この作品集はそんなに嫌いじゃなかったりする。日常ミステリとしての道具仕立てが面白いのだ。『おいしいココアの作り方』とか普通に感心しちゃったし。米澤穂信は文学を書く才能がないんだから、「青春のほろ苦さ〜」とか「人間を書く(書けてないっちゅうの)」とかやらんでいいと思う。こういう仕掛け重視の作品を多く出してりゃ、割と好きになれるかもしれないんだけどね……。 |
No.2 | 1点 | 愚者のエンドロール- 米澤穂信 | 2015/12/19 08:20 |
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我孫子武丸がかわいそうになってくる。自信作のアイデアをこんなせこい作品にこんなみみっちいパクられかたをされりゃ、それは怒りたくなるわな。ホータロの解き明かすひっかけトリックは綾辻の使い捨てをパクったただけ。真相や推理合戦もしょうもないし、これで『毒入りチョコレート事件』とか米澤はぜったいにラノベ読者をなめてるだろう。あと意図的に書いてるんだろうけど、千反田とホータロ姉のキャラクターが無理。いっぺん酷い目にあっちまえ。「あたしゃひとごろしの話なんて書きたかないのよー・゜・(つД`)・゜・」などと、ぶっ倒れる女は、優しいお方というより、すごく太宰治的なクズっぷりを感じちゃう(千反田も同類ってのがまた……)。こういう女はホータロが一発ビンタして目をさまさせてやらなきゃいかんのだ。彼は今回失敗したようだが、これからがんばってほしい。
(2016.2.15 追記) 「青春の挫折をミステリにからめてて上手いと思った」の一文で済むような感想を長々水増ししたあげく他の真面目な採点者の方々を愚弄する残念な採点者も中にはいるようだ。ところどころ文章が日本語になってない上に、作者の名前を間違えるという体たらく(さらに言えば『愚者のエンドロール』は群像劇ではない)でよくそんな真似ができるものだと感心してしまうが、まあ、作品を擁護する気持ちよりも、「ラノベを頭いい感じに解説できるかっこいい自分」を見てもらいたい気持ちが上回ってしまっているのだろう。 登場人物に好感が持てなければ、彼らが挫折しようが立ち直ろうが何も思わん。私はホータロも千反田もその他の登場人物も人間として気に入らないのだ。だから『愚者のエンドロール』を小説として面白いと思わないし、これまで読んだ中でもっとも嫌いな作品の一つだと思っている。勝手に「最後まで読んでない」などとテキトーなことを抜かさんでほしい。 |
No.1 | 2点 | 氷菓- 米澤穂信 | 2015/12/19 08:12 |
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ホータロのキャラが無理。腹立つもん、あいつ。ちくしょう。陸上部をバカにしやがって。でもそれ以上にトリックもストーリーも地味であくびが出てしまう。どこを楽しめばいいのかわからんまま読み終えてしまった。でも友だちには『氷菓』が好きって子が多い。理由を聞けば、答えはだいたい決まって、「千反田えるの声がかわいいから」。 |