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風桜青紫さん
平均点: 5.62点 書評数: 290件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.190 5点 ビブリア古書堂の事件手帖5- 三上延 2016/01/26 22:25
やっぱりこのシリーズは短編のほうが合っているなあ……。初期のころよりもストーリー作りは丁寧になっている印象。どの作品も充実していました。「こんな都合のいい話あるわけないじゃないか!」と笑っていた志田さん、なんだかヘヴィな過去で悲しいです。彼の人生、都合が悪すぎます。頑張って欲しいです。一方、門野さんはなんと嫌な奴なんだ。こんなあくどい外道でも若い女の子と仲良くできるとはなんたる不条理だろう。不幸になってしまえ。

ところで、栞子ママンの「知識を手に入れたい欲求」とかなんとかいうのがどうにもわからない。というか作者もわかっていないのだろう。本を読んで知識を得たいだけなら、わざわざ外国なんかに行かんでも市民図書館に通っていればいいのだ。人間、一生の間に読める本なんて数少ないし、市民図書館に置いてある本をその間に消化しきるなんてことはよほどテキトーな読み方をしなければまず不可能である。そもそも本がそんなに好きならあんな本を新聞紙扱いするような狂った乱読はせずに、お気に入りの本をじっくり読むと思うのだが……。もちろん、言ってしまえば、この作品はライトノベルなので、キャラの中身よりも設定が先行しているんだろうけども、それならそれでそれなりに説得力のあるキャラ造形をしてほしいのである。

No.189 3点 ビブリア古書堂の事件手帖4- 三上延 2016/01/26 21:39
このシリーズ、短編はけっこう面白いのだけど、長編だとなんかダルいです。栞子さん乱歩大好きらしいなのに、その大好きぶりがいまいち伝わってこない。「二銭銅貨……意外なオチの作品です」「人間椅子……意外なオチの作品です」。いやいや、どれも同じオチやっちゅうねん。なんか、説明が微妙。『押絵と旅とする男』は個人的には乱歩短編の最高峰なんだけど、栞子さんの紹介では、「なんかいろいろあって書き直された話」ぐらいの印象しか抱けないよ。『孤島の鬼』に至っては、栞子ママンが本の分厚さについて語ってドヤァと笑っているだけだし……。違うでしょ。ここは栞子さんが「ダイスケさん! これはガチホモとグロメンと改造人間たちがわっしょいわっしょいする名作です!」と熱く語るところでしょ。読者は引くだろうけど。

うーん、なんか、作者がただ装飾としての意味だけで乱歩を使っている感じが拭えなかった。ミステリ小説としては前三作より充実しているけども、まだまだ弱い。一応、恋愛パートは今回で峠を越えて、栞子さんと大輔さんもなんらかの意味で一線を越えそうだが、どうなることやら。

No.188 5点 ビブリア古書堂の事件手帖3- 三上延 2016/01/26 21:27
シリーズを重ねるたびにミステリ小説としての質はやや上がっていっている気がする。その代わりに世界観のライトぶりが少しずつ疑問になっていくけど。どいつもこいつもハッピー人間すぎて、悪党が栞子ママンしかいない……。なんかねえ、しのぶさんの話も嫌いじゃないけど、「何だかんだでうまくいくんでしょ?」って気になるし、事実その通りで、ちょっと……、うーん。ライトな筆致のおかげで気分転換にはいいのだけど、このスタイルが続きすぎるとちょっと飽きがきてしまうかもしれない。まあ、作者もそれを自覚していただろうし、今回のラストシーンでたぶんワルモノ(?)であろう栞子ママンの登場がほのめかされたのもそんなところにあるのだろう。なんだかんだでママンもいい人ってことで終わりそうだけど。

No.187 5点 ビブリア古書堂の事件手帖2- 三上延 2016/01/26 21:17
本の魅力を語るという点では、前作よりも充実していたように思う。シバリョーが推理小説を書いたりしてたところなんか驚いたし、藤子不二夫のエピソードも『まんが道』を思い出して楽しかった。栞子さんの読書感想文もなかなか笑える。うーん、やはりミステリーというよりライトノベルとして面白い。このシリーズ、作者の人の良さがなかなか良く出てるのよ。ただ残念なのはゴーラくんが高校時代に彼女がいた程度には青春を満喫していたこと。女っ気のないむさくるしい柔道部員だと思ってたのに(笑)。

No.186 6点 ビブリア古書堂の事件手帖- 三上延 2016/01/26 21:08
ミステリーとしてはやや弱く、トリックはどれも(後の栞子さんシリーズと比べても)単純で、割とすぐにわかってしまう。しかしまあ、文章はそれなりに安定していて、フリーターが歳上の美少女(というには少しきついか?)と初々しいラブを繰り広げるライトミステリーとしてなかなか楽しく読めた。「美少女が優しくしてくれるなんてそんなことあるわけじゃねえか!」などと宣うホームレスが女子高生と仲良くなる有り様は必見。

No.185 5点 徳利長屋の怪- はやみねかおる 2016/01/26 20:55
「うおー!」と雄叫びが上がるしょうもない格闘シーンに笑う。あとがきで作者がそれを謝っていてさらに爆笑する。手作りの暖かみに関していえば、はやみねかおるは清涼院流水とつながるものがあるな……。とはいえ、内容は流水よりもしっかりしている。城消失に関しては有名なマジックが元ネタだろうが、ここまで大袈裟にできるのもファンシーな江戸時代という設定があってこそ。なかなか盛り上がるラストでした。

No.184 5点 ギヤマン壺の謎- はやみねかおる 2016/01/26 20:42
外伝ということであまり期待していなかったが、読んでるみるとなかなか面白かった。ミステリ短編集としてはむしろ本編より充実していたかも。「大入道事件」みたいな話はこういう舞台設定じゃなきゃできないし。なかでも気に入ったのは「六地蔵事件」。妙に大仕掛けなトリックもいいんだが、清志郎ザエモンと梅太郎の放浪生活がなかなかいいのよ。それにしても新撰組をかませ犬にするのはいただけない。この時代の戦争っていうのは、はやみね的な小学校道徳感で批判していいものじゃないでしょう。平和がいちばん!という考えがここではやや押し付けがましくなっている感じがする。児童も読む本だからこそ、このような点は気をつけて書いてほしかった。

No.183 5点 機巧館のかぞえ唄- はやみねかおる 2016/01/25 22:34
亜衣たんが死んだwwwwwwwww
なんで児童向け小説で『匣の中の失楽』なのかと思うが、まあ、きっとやってみたかったのだろう。作者が趣味で書いたような色合いが強く、アイデアはそれなりに充実している。パーツを抜き出してみればこれまでのどのはやみね作品よりもブラック。なんだその殺しかた。第Ⅰ部の「怪談」もなかなか不気味でいい。子どものころに読んだらたぶん怖かっただろう。第Ⅲ部の「さよなら天使」はタイトルの元ネタの作品の発表時期をのぞいて、本編とあまり関係がないけども、まあ、教授が普通に熱いハートを見せてくれました。

No.182 4点 踊る夜光怪人- はやみねかおる 2016/01/25 22:21
『キガチガウガ、シカタガナイ』に笑わせてもらった。レーチの一人称といい、田村正和の口調といい、どうも作者が作品を書くのが楽しくて仕方がないという感じが伝わってくる。しかしまあ、内容はめんどくさい暗号もので、暗号解読も例に漏れず地道なものだからカタルシスは得られず。これまでのキャラクターの総出演がなんだか楽しいので、読み物としてはそこまで悪くなかった。

No.181 6点 魔女の隠れ里- はやみねかおる 2016/01/25 21:18
充実したアイデアのトリックと犯人の意外性、真相のインパクト、はやみねかおるの作品でも出色だろう。犯人当て自体は難しくないのだが、はやみねかおるがこんな結末を用意してくるのかと肝を冷やした。元ネタであろう某大御所作家のデビュー作よりずっとショッキングであったから、ギャップの大きさとはなんと効果的なのだと思わされた。マネキン人形wwww。

No.180 4点 消える総生島- はやみねかおる 2016/01/25 21:12
はやみねが好きそうなトリックだが、荒唐無稽さを「不思議な機械」で終わらせてしまうのはよろしくない。『笑わない数学者』などでも思ったことだが、建築物消失ものは、トリックの例が少ないために、検討をつけやすい。『嵯峨家の消失』ぐらい凝った作りでなければ、個人的には評価できかねるのである。教授のキャラクター性でそこそこ読めるので、読み物としては悪くないけど。

No.179 5点 亡霊は夜歩く- はやみねかおる 2016/01/25 21:08
学園ものの児童小説としてはなかなか良くできている。三姉妹たちの学校生活、なかなか楽しそうである。ミステリクラブの知り合いにこの作品がトラウマだったという人物がいて笑った。突っ込みどころ満載なエピソードだが、児童には結構ショッキングかもしれない。大仕掛けの機械トリックに関心するものの、あまり釈然とはしなかった。やりすぎやねん。

No.178 6点 そして五人がいなくなる- はやみねかおる 2016/01/25 21:03
大仕掛けではあるもののトリックも動機も比較的わかりやすく、ミステリ的なカタルシスを得るためにはやや弱い。しかしまあ、童心に帰って、謎の演出にワクワクするという点ではよくできた作品。このような作品がミステリの入口だった読者は幸運だといえるでしょう(流水とかは不運)。教授、ステキです。

No.177 7点 赤朽葉家の伝説- 桜庭一樹 2016/01/25 20:49
文庫400ページちょっと鳥取の興隆と滅亡(してない)を描いたなにやら壮大な物語。たぶん『百年の孤独』のパロディだろうけども、万葉を主人公にした第一部は、荒唐無稽な光景を交えながら、未開の地・鳥取の不思議な魅力を体現している。桜庭一樹は冒頭で登場人物の(いろんな意味での)最期を暗示させるという戦法を好んで使うんだが、万葉の予知能力はその手法を見事に体現するものだろう。登場人物の不幸をあらかじめ知っているからこそ、その人物に妙な同情がうつり、なんとなく気になってしまう存在にさせてしまうのだ。なごやかな空気のなかでもどこかに不安を含んでいることが、絶妙なリーダビリティを生み出している。そんなわけで第一部は文句なしに面白いのだが、第二部から作者がノリノリに成りすぎたのか、変な方向性のとんでもストーリーが展開される。製鉄天使ってなんやねん。てか漫画家になりやがった……。荒唐無稽さばかりが目立ってしまって、どうも話に入り込みづらくなるのだが、まあ、桜庭一樹の楽しそうな筆致が楽しめたので良し。第三部は、瞳子のだらけたクズっぷりがなんとも笑える。ラブホで待ち合わせるニートwww。ミステリとしては弱いものの、作品の開始地点である人間飛行を、万葉のキャラクターとその人生に絡めてオチをつけるのは悪くなかった。まあ、楽しめる一作でした。

No.176 8点 少女には向かない職業- 桜庭一樹 2016/01/25 20:16
主人公がなんかもう色々と笑えます。かわいいです。茶髪のツインテールというだけですでに面白いのですが、ドラクエやったり、ムシキングやったり、遊戯王で男子と盛り上がったり、セーブデータ消されて泣いたり、斧を買ったり、モップで同級生をぶちのめしたり、もうこんな(真の意味で)中二な女の子は好きにならざるを得ないです。その一方で、家庭環境はなんとも複雑で、野蛮なダメ親父にびびる毎日。本人が「こんなのそこら中で起きていることだ」と言うとおり、なんとも陳腐な不幸なんですが、だからこそ、主人公に共感してしまうわけです。父親は野蛮。母親は自分のことをぜんぜん見てくれない。愛に飢えてる! っていうか寂しい! そんな感情がなんとも野蛮な友情に結び付いていくわけです。だからこそ、おっさん刑事の存在が、なんとも暖かく感じられる。ああ、くそ、こういう大人がもっといれば……。しかし悲劇で終わってしまうものの、鬱な状態に落ち込むわけではないパワーが桜庭作品の魅力と思います。ファンシーさと野蛮さが入り交じったなかで、登場人物の情感をうまく描き出した魅力的な青春小説です。

No.175 8点 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない- 桜庭一樹 2016/01/25 19:52
海野藻屑……彼女はなんというかまあ、ファンタジーな存在です。そもそも名前からしておかしいし、自分を「ぼく」と呼ぶのも変だし、なんか人魚を自称してくるし、ミネラルウォーターがぶかぶ飲んでるし、すごく美少女だし、こんなファンシーな人間が存在するわけがないじゃないの。

しかし初っぱなから彼女がバラバラ死体で発見される(「ミステリ流儀的には無し」とかいうちょっと何を言ってるかわからない意見もあるようだけど)ことが仄めかされることで、この作品が決してスイーツなホンワカ小説でないことが読者に提示されます。それゆえに藻屑のファンシーさは痛々しさとなり、作品全体に不安をもたらしていくわけです。「うううう」と言う唸りや「人魚なんです」発言は、「やばいぞこいつ……」と距離をとらせる一方で、スカートに隠れた身体的欠陥やクレイジーな父親というような彼女の「弱者の部分」というのが、どうしても彼女の放っておかせない。しかし彼女はデンジャラスな女の子なのです。ペットボトルをぶつけてきたり、笑顔で人をからかうだけでなく、時には主人公の可愛がっていたウサギを惨殺してしまうような狂暴な一面も除かせます。このパンクな行動は「ウサギが可哀想だ!」とか「こいつ頭やばすぎるぜ!」と拒否感をもたらす一方で、主人公への偏愛だとか切望を痛烈に表しているから「危険だけど放っておけない」という気持ちにさせてしまうのです。DVの男と別れられない心理です。主人公がニート兄貴を保護しているって事実はもちろんこれと無縁ではないわけです。

でも兄貴は就職できたのに対して、藻屑はあっさりとゴミのように殺されてしまう。どうしてこの違いができたかと言えば、やはり、タイトルの通り「砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない」からであって、ファンタジー的な想像の世界を守っていても現実には敵わないというわけです。主人公の藻屑の死に対しての後悔は、「弱い立場の者にはどうあるべきなのか」という問いかけを残していくわけです。

ライトノベル作家には本編で愚にもつかないようなお涙頂戴を垂れ流しておいて、あとがきでは「人間を書くことを意識した」なんて書いてのける輩もいるんですが、桜庭一樹はそのような凡百の作家とは一線を画しているのは疑いようもない。 ライトノベルの特徴である漫画的キャラクター性を逆手にとって、こんな刃物のような青春小説を作り出す技術力は、見事、のひとこと。

No.174 5点 私という名の変奏曲- 連城三紀彦 2016/01/25 07:45
連城らしいといえば連城らしいなんともバカげた作品。短編ミステリの書き手としては日本最高峰であろう連城三紀彦だけども、長編でこういったネタをやられると拍子抜けしてしまう。人間が七回死ぬトリックなんてのは早い段階で予想がつく(というか考えられる可能性があまりに数少ない)わけだから、結末に関しても驚きよりバカらしさばかりが目だった。言うまでもなく穴だらけの計画で、現実味もクソもあったものではない。真面目に本を読まないタイプの読者は、「見事な構成と流麗な文章」とやらでこの結末も受け入れられるのだろうが、私の場合、連城の自分に酔ったような文章はどうも鼻につく(『変調二人羽織』とかではいいスパイスになってるけど)し、構成についてもそうよかったとは思えない。変にハイなレイコのキャラクター性のおかげで「犯人」一つ一つのエピソードはそこそこ読めるけども、それにしたって作品ひとつを最後まで楽しませるものに足るものではなかったと思う。やはり連城作品には仕掛けの巧妙さを期待するのだし、それが外れれば、なんとも釈然としない気持ちが残るのである。

No.173 4点 嫉妬事件- 乾くるみ 2016/01/25 07:00
乾くるみはスカトロ趣味でもあるんだろうか(ありそう……)。とんでもないオブジェが使われているものの、謎の解決はやや強引なところに落ち着いてしまった感あり。「変な臭い」からそこまで結びつけられるのは、天童ぐらいのスケベ心がなくては無理というものだ。正直「三つの質疑」のほうが面白かった。犯人当てクイズとしてはそんなに悪くないし、アイデアがなかなか光る。翔子には頑張って欲しいものだ。

No.172 6点 イニシエーションラブ- 乾くるみ 2016/01/25 06:41
メイントリックの発想自体は(結構な割合の人が)おそらく途中で気づいてしまうだろうから、叙述トリック系作品の宣伝文句によくある「衝撃」というものは受けづらい。そのためアホな読者には「普段本を読まない人向け」などと言われてしまうのだろうが、まあ、この作品の面白さは細部の作り込み具合にある。綾辻や折原のような親切設計とは違い、読者に「二度読み」をさせることで、仕掛けが次々に浮かび上がるシステムになっている。初読では変に甘ったるくて笑える話だけども、二度目に読むときには色々と酷すぎてさらに笑えてくる。便秘ってwww。一本道の単純な作りに見せかけながらも、なかなかの技巧が凝らされた作品。

No.171 4点 QED 百人一首の呪- 高田崇史 2016/01/25 06:21
百人一首の謎解きについてはそこそこ読めるけども、なにも小説仕立てにする必要性を感じない。殺人事件に関してもトリックの発想自体は悪くないと思うが、事件そのものが百人一首の影に隠れているので、どうにもインパクトが薄い。演出もいまいち。パーツは悪くないけども、なんだか作者が小説を書くことに慣れてないように思えた。

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