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クリスティ再読さん
平均点: 6.43点 書評数: 1252件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1132 5点 腰ぬけ連盟- レックス・スタウト 2023/04/12 17:22
クイーンの「最後の一撃」の中で、スタウトの処女作がヒネクレた純文学だった話が出ているんだけど、ミステリ第二作の本作って、そういう片鱗が窺われる。ケンブリッジの学寮で起きた事故で障害を負った男と、その原因を作った寮生たちの間でできた「贖罪同盟」。障害を負った男は作家として成功するが、「贖罪同盟」の人々はこの件で負い目を負いつづけて...で、この「同盟」のメンバーに変死が立て続けに起き、それを嘲笑うような戯詩がメンバーに送り付けられた!メンバーたちはビビって、ウルフにその作家からの脅威を取り除くように依頼する...
この「腰抜け同盟」のメンバーは、中にはドロップアウトしたのもいるが、大体はインテリで成功者たち。しかもこの作家チャピンのヒネクレ具合といったら、本当に手におえない。このチャピンと、それに連れ添う妻ドーラが極めて個性的なキャラなのが、この小説の読みどころ。で...なんだが、直接に描かれてはいなくて匂わせているだけだが、チャピンはその事故で生殖機能を失っているみたいなんだね。その代りちょいとしたヘンタイな趣味も発揮している。そりゃ妻のドーラも相当変わってる。マゾ?

まあ、ミステリとしての興味が絞られてくるのは相当遅いし、「贖罪連盟」のメンバーのキャラは数が多いだけであまり書き分けられているわけではない。結構読み進むのが大変だったが、訳文がアタマに入りづらいところがある気がする。佐倉潤吾氏だからそう下手な訳者じゃないんだがなあ。
ウルフ物としては、ウルフが珍しく外出する。しかもこの外出について、ちょっとしたギミックがある。またウルフが受けた依頼に「殺人犯を探せ」がないために、ウルフ物らしいヒネった策略もあったりする。そういうあたりは楽しい。ミステリとして悪くはないんだが、どうも不完全燃焼感がある。
ミステリとしての仕掛けがキマってはいるからか、代表作に挙げる人もいるようなんだが、ウルフ物らしい楽しさ全開..とまではいかないなあ。いや良い点いろいろリストアップはできるんだけど、あまり推したくないところがある。

No.1131 5点 バルカンの火薬庫- アルセーヌ・ルパン 2023/04/06 12:39
ボア&ナルの贋作ルパン2作目。前作「ウネルヴィル城館の秘密」のラストで、第一次大戦が勃発することになるのだが、本作はそれを2年ほどさかのぼる話..だけど、第一次大戦の背景となったバルカン情勢に取材した話になっている。
でも幕開けからシャトレ座でのバレエ・リュスの伝説的な舞台をルパン(セルニーヌ公爵)が見物している!ニジンスキーとカルサヴィナの「薔薇の精」である。すごいな~羨ましいというかなんというか(小説の人物を羨ましがっちゃいけないが)。
この帰りがけにルパンが遭遇した乙女のピンチ。見逃したらルパンじゃない....これをきっかけに、不思議な強盗事件・精神病院に囚われたその妹と誘拐事件などなどの怪事件がこの乙女の周囲で起き、それをルパンが助けようと奮闘する話。だから、ルパンというよりも分身のセルニーヌ公爵の冒険譚。
しかし、その背景にはセルビアの大公の秘密の恋が絡み、最後はこの乙女の城館でのラブロマンスと、対立するハンガリーの刺客との闘争、といった展開。

まあだから「ウネルヴィル」と違って、ルブラン作品のパスティーシュの色は薄く、ルパンを主人公としたロマンス色の強いオリジナルの活劇になっている。それでもルパン、最後にはしっかり推理して殺人犯人を暴くミステリ要素がしっかり組み込まれているんだが、ボア&ナルの狙いはなんとなく、わかる。
王室のラブレター争奪戦というロマン色というのは、やはり「ボヘミアの醜聞」を連想するが、「醜聞」自体は1889年のマイヤーリンク情死事件(「うたかたの恋」)からヒントを得たものでもあろう。あるいはセルビア大公の「ミカエル」という名前から、あるいは架空の小国シリリアからたとえば「ゼンダ城の虜」を連想したりもする。そういった「ルリタニアン・ロマンス」の味わいを贋作ルパンとして構築してみせた、といったあたり。

それでも展開はやや地味かなあ。登場人物はこの姉妹が中心でかなり少ない。まあ、警官あがりでルパンと行動を共にする私立探偵モングージョがなかなかナイスなキャラ。

No.1130 6点 不自然な死- ドロシー・L・セイヤーズ 2023/04/03 11:08
「ブラックマスク」の件が気になるので、本作やろうか。
いや結構この話、リアリティがあるんだよね。最後まで問題になる犯行手段の件も、突飛なトリックではない(聞いたことはあるが、フツーの状況ではよっぽどの量がないと問題にならないようだし、直接的なやり方には違和感がある)し、具体的な動機となった法律の問題も、似たような話で評者もちょいとアタマが痛い。そうしてみると、この作品の「いい部分」というのは、現実の社会に根付いた「あるあるネタ」に近いようなリアルな部分だ、と結論できると思う。セイヤーズは松本清張同様にトリックメイカーだけど、トリッキーではないんだ。話のアウトラインだけを取ったら「ブラックマスク」に載ってもおかしくない非情なシリアルキラーの話なのかもよ。

いやだから、というか、クリスティとセイヤーズの違いみたいなものも気になるのだ。同じ女流とはいえ、中流上層出身で貴族探偵を起用するセイヤーズがイギリス社会の現実に即したリアルな話が得意なのに対して、クリスティの捉えるイギリス社会にリアルな味わいがない。これ意外かもしれないが、実はクリスティの両親はアメリカからイギリスに出戻った(※後記)人らしく、クリスティのバックグラウンドって、イギリスの地縁血縁のシガラミから脱したあたりにある。セイヤーズのいい面は「イギリスのローカルをリアルに描いた小説」である部分だし、クリスティのいい面は「インタナショナルで普遍的な小説」である部分なんだと思う。「イギリスのミステリ」という面ではクリスティ(とイギリスびいきなアメリカ人のカー)が特殊であり、セイヤーズの方がたとえばイネスやらクリスピンやらアリンガムやらに直接つながる面があるんだろう。

イギリスのリアル、という面だと、2組のビアン?なカップルが描かれた小説...と読めなくもないあたりも面白い。いや実はクリスティの「予告殺人」でも、田舎町で養鶏を営む女性二人組の話があったりして、本作ともヘンな共通性がある。「オトコ勝りな女」が、独力で社会生活を送ることができるようになった、最初の世代のストーリーとしてセイヤーズは読むのが、海外での最近のトレンドになっているんだろうなぁ。

うんまあ、ちょっとセイヤーズ、追いかけようか。

後記:クリスティの両親の経歴について、弾十六さんからのツッコミあり(掲示板#34467「RE:アガサさんのルーツ」参照)。ありがとうございます。実情はもう少しややこしいですが、一般的な意味での「イギリス人」というものとはちょっと違う面があります。

No.1129 7点 黄金の褒賞- アンドリュウ・ガーヴ 2023/04/01 22:23
ガーヴというとシリーズキャラクターを頑固なくらいに排斥し、無名で平凡な善人が時ならぬ「悪意の脅威」に晒されて、右往左往・七転八倒するプロットが十八番のわけだ。本作はそれを純粋化したような話だから「道の果て」あたりが近い。

子供と妻の命を我が身を投げうって偶然助けた見知らぬ男。主人公は退役軍人と称するこの男への負い目から、とんでもない運命に巻き込まれる。主人公が善人であり世間知らずの学者体質だからこそ、この話の趣きがあるのだが、今回は「イベント」自体は中盤であっさり片付いてしまう。だからこそ、話の進行の中で「どんなかたちでのドツボが待っているのか?」と読者がアタマをひねるのが眼目で、現在進行形のスリラー要素がない、というのが大きな狙い。結構珍しいタイプの話じゃないのかな。

だから本作、ガーヴの中でも地味といえば地味な作品だし、「考えオチ」みたいな面があるヒネった小説だ。そういう罠といえばそうだが、それを最後にするりと....ガーヴのハッピーエンドのお約束はしっかり守られている。
「ガーヴは甘口」と仰るのはわからないわけではないが、これが王道というものでしょうよ。

No.1128 7点 奇相天覚- 高山和雅 2023/03/30 10:17
SFマンガというものは、ちょっと主流から外れた扱いされつつも、それでも一定の地歩を保っているものだ。でも「マニアックなハードSFマンガ」となると、マーケットは限られる。高山和雅といえば、一時講談社モーニング誌で活躍しはしたが、単行本の多くは青林工藝舎(要するにガロ系)から散発的に出ているだけで、作品評価の高さの反面、極めてマイナーな作家にとどまっている。
というわけでハードSFの代表作の「天国の魚」を取り上げるつもりなのだが、まずは小手調べ。モーニングに前半を連載した後で、後半を書下ろしで出した伝奇SFの本作である。メジャーの仕事なので、ある程度キャッチーは狙っている。

辻占で生計を立てる容貌魁偉な天覚は、街で角の生えた男と遭遇する。その男の邪気にただならぬものを感じた天覚は、赤ん坊に生えた角をこの菊池という男の額に移植したことを調べる。菊池の行方を追って天覚は戸隠村を訪れるが、山中にダイダラボッチと呼ばれる巨石遺跡と、それを守護するイズナ使いたちとの、独鈷杵を巡る争いに巻き込まれる。しかしこれは鬼と人類の超歴史的な闘争の最終決着の幕開けだった....舞台は飛鳥からアイスランドへと移り、地球レベルでの地殻変動を天覚は防ぐことができるか?

まあこんな話。「暗黒神話」+「ヤマタイカ」といった伝奇SFマンガの王道な雰囲気。しかし、絵柄は大友克洋をサイケデリックにしたような...というと、分かったような分からないような。この超古代のガジェットたちが実に縄文サイケデリックなデザイン、かつ「鬼の因子」の発動による変身が強く諸星流の「あんとくさま」テイスト、さらに「地上最強の男竜」みたいなパースの美もあって、グラフィックな楽しみが強くある。
逆に言えば、主人公の天覚、プロレスラー体格で坊主頭、と読者のいわゆる「感情移入」を期待しないような造型、というのがメジャー作品としてはかなり異色。いやキャラはすべてクールに外面的に描かれるだけで、そこらへんでも「SFの矜持」が窺われる。
まあとはいえ、アクションの連続で話が進んでいくから、スケールの大きさに讃嘆しながら読み進めればいい。そこらへんはメジャー仕事である。ガロ系SFな「天国の魚」だとこういうキャッチーな要素が切り捨てられて、ずっと渋くなるのだが、これを一人の作家の振幅として楽しむべきだろう。
(個人的には伝奇SF次世代の有名作品の「七夕の国」あたりとヒケを取らないとおもうのだがなあ...)

No.1127 7点 建築探偵の冒険 東京編- 藤森照信 2023/03/28 13:09
久々に反則したい。「探偵」ってタイトルがついているからまあいいじゃないの。
ポオの「群衆の人」が都市の不定形な群衆のイメージを「探偵」の目で観察した作品だったわけで、「都市の観察者としての探偵」というものは、実はミステリの成立の足元で同時に立ち現れていた...そう捉えるならば80年代の路上観察学会やら考現学といった動きはそのまま「探偵」活動だった、と言ってもいい。赤瀬川原平「超芸術トマソン」と並ぶ「都市の探偵」はこの藤森照信の「建築探偵」ということになる。
この本は東京都内に残された洋館建築を藤森が足でルポするエッセイなんだけども、そういう「探偵活動」、管理人に怪しまれ、犬に追いかけられ、はたまた誰も立ち入らないバックヤードに侵入しetc,etc な活動をユーモアを交えてレポートしている。小説のつもりで読んでも、いいんじゃない?
扱われる建築は「ダダイズム建築」として名高い東洋キネマ、クラシックな東京駅、ゴシック聖堂を内包する聖路加病院などなど、今では幻の建築も含まれるが、そういった東京の名建築の楽しみどころや由来を探検し探偵していく話である。実際、東洋キネマなどは著者のレポートがきっかけで無名の設計者への聞き取りも実現して、建設の経緯なども明らかになったそうだ。
訪れた建築にはマッカーサーが接収して本部とした第一生命館もある。以前、細野不二彦の「東京探偵団」の話を書いたことがあるが、その一編「星条旗の幻」(コミックス6巻)はこのビルが舞台で、本書に載っている写真がおそらくマンガの描写内でも模写されているし、このビルの土台の話もこの本から取材したものと思われる。原作みたいなものだな。

まあ80年代に元気よく東京の学生生活を送った人には、大変懐かしい本であろう。この本で取り上げられた建築のほとんどがそのままではもうすでに存在していないわけで、消え去った昭和への哀悼の念を改めて感じる。
「探偵」は必ずしも犯罪事件を追わなくてもいい、というのが「日常の謎」ミステリならば、本書だって立派に「日常の謎」かもしれないや。

No.1126 6点 一角獣殺人事件- カーター・ディクスン 2023/03/27 19:20
そういえば手元に別冊宝石63号があるので確認してみたのだが、1957年の訳者も国書刊行会が1995年に新訳で出した訳者も、田中潤司である。38年ぶりの旧訳者による改訳。訳文を対照してみたが、まったく新たに訳し直した訳文になっている。藤原編集室が企画した国書刊行会「世界探偵小説全集」の目玉だった作品。「こんなクラシック出して大丈夫?...でもね、マニア根性としては...」というあたりを突いた企画で、ギョーカイを動かしちゃったわけだが、こんな「仕掛け」も潜んでいたことが面白い。

「スパイとか怪盗とか大時代的な作品」で一般評価の低い作品なんだけども、いや、悪くないよ。人の出し入れがごちゃごちゃしている欠点はあるけども、導入のファース風味活劇がしっかりとした伏線になっているので、そういうあたりを肯定的に評価したい。
というかさ、今の読者が嫌がる理由って、「ありえないくらいの偶然から、話がもつれている」というあたりじゃないのかな。けどこれ「不可能」を解くためにはそうでないといけないから、十分推理可能だと思う。まあカーの独特の掟破りな傾向から「当てにくい!」という声があるのはわかるのだが。

まあ怪奇趣味にポイントはなくて、どっちかいえばケン&イヴリンのラブコメ冒険が軸の作品だと思うといいのかも。これも日本のマニアが嫌がる要素ではあるか。

そうしてみるとマニア向けなのかそうでないのか、ビミョーなあたりも妙に評者は面白い。
(あ、あと凶器の英語名称に評者は興趣を感じる。調べてみて)

No.1125 5点 海の門- ボアロー&ナルスジャック 2023/03/26 16:26
義弟メリベルと不動産会社を経営するセーブルは、狩の後に恐喝者の訪問を受けた。ショックを受けたメリベルが猟銃で自殺するのをセーブルは止められなかった。しかし、セーブルはこの義弟と入れ替わって逃亡するという夢を抱いた...妹に言い含めてセーブルは会社が建てた無人のリゾートマンションに潜伏する。その元になぜか侵入してきた謎の女の正体は?

という話。ボア&ナル中期らしい悪夢的なサスペンス。貴族的な義弟に対するコンプレックスがあったのかな....とか思うのだが、このセーブルの入れ替わりの説得力があまりない。それを言っちゃおしまいんだがね。孤独な潜伏者としてのサバイバルのリアリティが眼目。でも無人のはずのマンションに誰かが隠れている?訪れてきたはずの妹が消失したのはなぜ?とかね。やや無理筋な謎設定もあるのだが、無理に無理を重ねた感がある。
まあそれでも最後に主人公が「対決」に赴くあたりに、ややノワール風の味わいがあるのが面白いか。フランス人だからそんな雰囲気が出るのも当然かな。

でなんだが、ポケミスの登場人物一覧での人物紹介で、ややバレに近い記載があるのが評者は興醒め。編集者はもう少し気をつけようよ。

No.1124 4点 メグレを射った男- ジョルジュ・シムノン 2023/03/25 09:07
「死んだギャレ氏」「国境の町」は入手を諦め気味だから、評者的には第一期メグレの最後の残り。駄作というか、第一期の終盤でシムノンがヤル気なくしていた作品という評価が多いもの。

いやね、それでもツカミとかいいんだ。公用をひっかけてバカンス気分で旧友を訪れようとメグレはボルドーに向かった。寝台列車の上寝台の男の落ち着かない様子に迷惑したメグレは、その男が急に列車から飛び降りたのを目撃した!後を追うメグレは、その男に銃で撃たれる。負傷したメグレは田舎町ベルジェラックのホテルで、呼び寄せたメグレ夫人と旧友を手足にベッドの上で、猟奇殺人鬼の事件の捜査を始める....

面白そうでしょ!列車内でのイライラ感やら興味を持ったメグレが単独行動でムチャやるあたり「サンフォリアン寺院」みたいだし、田舎町アウェイ事件で旧友と対立するのは「死体刑事」やら「途中下車」やら第二期以降によく出るパターンだし、それに珍しいベッド・ディティクティヴが絡む。モチーフ的には大変興味深い.....

原題は「ベルジェラックの狂人」。アウェイのメグレが被害者でベッドに釘付けなせいもあって、街の有力者からは「(内心)妄想を育んでいて、おかしいのでは?」と思われるのともかけてあるが、行きずりの女とSMプレイの果てに心臓に針を刺して殺す猟奇殺人鬼やら、街の有力者の秘密の趣味やら、メグレらしからぬ派手でサイコな話。でもこれが全然、物語として効いていない。何かリアリティのない背後事情と、シムノンらしいといえばらしい家庭悲劇で話がアチラの方向に逸れていって行ったきり。

瀬名氏は本作を「浮ついている」とバッサリ。らしからぬといえば、らしからぬ作品。

No.1123 6点 ちゃっかり女- ボアロー&ナルスジャック 2023/03/23 10:07
1970年代前半に日影丈吉がHMMの上に訳載していたボア&ナルの短編の翻訳をまとめた短編集。ネタ元の短編集が1971年に出ていて、その翻訳書の体裁は取っているが、訳者あとがきによると、日影が訳したもので収録していないものもあれば、HMMには載っていない新訳もあるようだ。短編集の完訳ではなくて書誌としてはややこしい。
ポケミスで250ページほどで、24作収録(原著は33作)。ショートショートに近いポケミス5ページ程度のものもあるが、ポケミスで10ページほどの作品が多い。前半のシリーズ風のものは、精神科医を主人公にした連作5作、メグレの孫弟子のような刑事を主人公にした連作が7作。精神科医主人公の連作は「迷探偵」度が高いわりにつまらない。刑事主人公のものはロジック逆転を含んだ本格テイストが強い。一応密室殺人で手口からきれいにロジックが決まる「疥癬かき羊」が優秀。
後半は本当に雑多。モーリス・ルヴェル風で残酷味と皮肉が効いたスケッチみたいなものもある。翻訳表題作の「ちゃっかり女」はボア&ナルお得意の男女の機微をひねったトリック。後半の方が「奇妙な味」に近づいてきて、九死に一生を得たことを聖母に感謝して巡礼を思い立つギャングの話「願掛け」やら、プレイボーイに騙された女たちが結託して制裁を下す「女豹」、密室の中で黒猫が灰色猫・白猫に変身する謎解き「かわり猫」など、最後の方がヘンな話が多くて面白い。

ボア&ナルの多彩さを楽しむ短編集、ということになるのかな。気楽に書いていて、大したことない作品も多いから、全体的にはこんな採点。日影丈吉の訳にクセが強いから、やや読みづらいか。

No.1122 7点 世界短編傑作集5- アンソロジー(国内編集者) 2023/03/19 09:21
さて評者もこのシリーズ最終巻。今となっては「現代」を扱ったはずの最終巻も大古典になっている。昔読んだときには「創元の海外ミステリのモダン」の定番紹介だった本だったのだが、隔世の感も強いなあ(約50年前か...)

だから古典的な「名探偵小説」だとマーチ大佐登場の「見知らぬ部屋の犯罪」くらいしかない、ということにもなる。「黄色いなめくじ」だと名探偵登場ではあっても、清張の「鬼畜」を連想するのが自然じゃないのかな。貧困問題を陰鬱な心理描写でドラマチックに描いたヒューマンな味わい。
「心理」が重視されることもあって、小説としての側面が追及されることになるから、長めの作品にいいものが多い。「ある殺人者の肖像」なんてそうじゃないかな。子供のプライドと親の愛の相克がよく描けていて、心が痛い作品。
中編で名探偵小説、といえばネロ・ウルフ登場の「証拠のかわりに」が、モダンな意味での「名探偵小説」の回答、ということになるのだろう。キャラクター小説の側にシフトして、それで成功している人気シリーズのわけだからねえ。いややっぱり楽しいよ、これ否定しちゃいけないことだと思ってる。前にも書いたが、ウルフ&アーチ―物って、ホームズ探偵譚にあった「度胸一番の駆け引きや土壇場での機知」といった「ミステリのパズラー化」の中で意図的に無視された部分の楽しさを、しっかりと再現したシリーズなのでは?なんて評者は思っているのだ。

だから逆に、短い作品というのは「アイデア・ストーリー化」してしまう。それは当然なのだが、技巧に走るわけだから、定型的な要素を排除したインパクト重視の語り口に傾いてくる。だからこそ「ミステリ古典」からはこちらも逸脱しつつあるわけだ。

というわけで、評者もいろいろと考えることも多いこのシリーズでした。

No.1121 7点 ウネルヴィル城館の秘密- アルセーヌ・ルパン 2023/03/14 13:49
最近ボア&ナル再開したし、ルブランやってるし....で問題の贋作ルパン。

いや本サイトだと「著者:アルセーヌ・ルパン」にせざるを得ない。シリーズ5作も新潮文庫で出た3冊はアルセーヌ・ルパン著、サンリオからの第4作はボワロ=ナルスジャック、ポプラ社ジュヴナイルのみの翻訳の最終作「ルパン危機一髪」はポプラ社ボア&ナル・ルパンの通例で用心深く南洋一郎の名前しかない....

シリーズの評がいろいろな著者名に散乱することになる。まあ仕方ない。

このボア&ナルの贋作シリーズは、ルブラン遺族に了解を取って、ルパン自身が書いた回想録から...という設定になっている。世界再現度は高いし、シリーズ内登場人物もそれとなくいろいろ登場。設定年代も第一次大戦直前で「813」あたりの時代。ルパン自身が車やサイドカー付きバイクを運転したりもする。それでも焦点はウネルヴィル城館に隠された二月革命動乱時の秘密とは?と「813」っぽい。いや事件も「813」のアルテンハイム男爵みたいなガルスラン男爵が表の敵役で、暗躍する謎の殺人鬼は誰?というあたり、「813」を彷彿させる内容。「続々813」みたい、といっちゃあ褒めてるのかけなしているのか?

でも真相は結構面白い。ミステリ度が高い、と言ってもいい。ちょっと評者の評価がいいのはそのせい。財宝の隠し場所が二転三転するあたりもいいしね。欠点はルパン、というよりも「ルパン三世」っぽい。要するに、チャラい。本家はもっと誇大妄想的だから、それがマジなロマンの味わいになっていると思っているんだ。

パスティーシュ・パロディの羞恥心がないのが、天然の味。

No.1120 7点 毒を食らわば- ドロシー・L・セイヤーズ 2023/03/11 13:19
今回は手に入りやすい創元ではなくて、幻戯書房「ストロング・ポイズン」で。
なんでわざわざ新訳?というと、

本書を翻訳した動機は、英語圏で盛り上がりを見せるセイヤーズ研究が国内においてはまったく見当たらないからに他ならない。

と訳者解題で書いているように、セイヤーズのミステリを「フェミ小説」で読んでやろう、という狙いがあるからなんだね。確かに本作の面白さというのは、ピーター卿が陰のオーナーの「タイピスト会社」、実は女性探偵社の大活躍を描いたシスターフッドなスリラーと見るのがいいし、また Akeru さんがご指摘のような、なぜピーター卿が無実の罪を着せられたハリエットに一目惚れするか?が「最大の謎」だったりするあたりでもある。そういうトピックが海外で取り上げられている、のは確かにセイヤーズという作家の、ミステリ外での影響力の高さとも相俟って、ごく当然のアプローチでもあるわけだ。

社会的に期待される探偵のイメージと男性性の不安の間で引き裂かれながらも、ウィムジィはヴェインを救うために男らしい探偵であり続けなければならない。

とまあ、訳者(男性)はフェミ視点を活用してこういう結論を出してくるわけである。「男性性の毒」をピーター卿が自ら飲み干して....とかね。見当外れでもなかろうが、ハリエットがヴァーニア・ウルフやフォースターやストレイチーなどのブルームズベリー・グループの周辺にいたらしいなど、第一次大戦後の女性の社会進出と経済的に男性から独立した「働く女性第一世代」のセイヤーズ自身の自画像としてのあたりを追及してもいいんじゃないかな。

でなんだが、あともう一つ。本作のトリックって大変有名なもので、本作がそのオリジナルとされているのだが、評者が発見したことを書いておこう。本作は1930年の出版だが、ハメットの1929年の「ブラックマスク」掲載の短編に、このトリックが使われている。パズラー的な使い方じゃないが、シニカルでリアルな話になっているので、これもなかなか優れた使い方だと思うよ。でも評者は「トリック先願主義」みたいなものには懐疑的だな。セイヤーズが「ブラックマスク」を読んでいたとは思わないから、この短い間に同一トリックで出ている、というのは、現実の事件か事故で話題になったことがあったのだろうか?なんて勘繰る。どうだろう?
(いやごめん、セイヤーズって「不自然な死」の中で「ブラックマスク」を小道具に使っている...じゃあ、やっぱオリジネイターはハメットじゃん)

No.1119 7点 ハムレット復讐せよ- マイケル・イネス 2023/03/09 13:16
大昔ポケミスで読んだことがあったが、今回は国書刊行会。
イネス=難解、を乱歩が日本の読者に刷り込んだわけだが、まあ言うほどのものじゃない(ポケミスだってそう難解な印象はなかった)。後期クリスティ風の「どんな事件なのか?」をうまく転がして構成した、英国風ユーモアにあふれた洒落た小説。キャラ描写がしっかりしていることもあって、大量の登場人物もそうそう苦にはならない。

シェイクスピアやらバレエのペダントリ満載なのも、公爵家大邸宅での「ハムレット」アマチュア上演、という超スノッブ・イベントが舞台だからこそ、現代でのリアリティが出る、というもの。こんな舞台で一癖も二癖もあるインテリたちが、あーだこーだ機知の限りを尽くして議論する小説だ、と思えば、楽しいものがあるじゃないの。評者はニヤリニヤリしながら読んでたよ。シェイクスピア当時の舞台の構造とか、そういうあたりもトリビア的に興味深い。

単体ミステリとしては、日本マニア受けはしづらいタイプ。HOWとかWHYじゃなくて、すべてがミスディレクションみたいな小説だからね。「ある詩人への挽歌」ほどじゃないが、真相も二転三転、で最後くらいはちょっとスリラー。

「ミステリにおけるイギリス」を満喫するための本。
(「殺人・陰謀劇としてのハムレット」という演出方針って、反ロマン主義な良さがあるなぁ)

No.1118 8点 女魔術師- ボアロー&ナルスジャック 2023/03/05 14:17
評判のいい作品だから期待してたけど、大満足。ボア&ナルが自分たちの手の内を明かした、メタな小説でもあるあたりが面白い。

評者一時必要に迫られて、マジック関連書をいろいろ読んだことがあるんだけど、マジック書の中で強調されているのは「タネ以上に、演出と演技が大切」ということなんだよね。ミステリにこれを当てはめるのならば、トリック以上に、そのトリックを生かすためのシチュエーションやキャラ設定に力を注がなければいけない、ということにもなる。日本では乱歩以来の「トリック至上主義」がマニアの間で幅を効かせて、不毛な「オリジナリティ詮議」がされることが多いわけでね...ボア&ナルの「トリック」って実はたいしたものじゃないから、今一つパズラーマニアにウケが悪いけども、トリックをプロットに融合させること、という視点では素晴らしいものが多い。そうするとカー以上にマジメに「手品趣味」をミステリに応用したのが、ボア&ナルだ、ということにならないだろうか?

主人公の母オデットが、ロマンチックなミステリ劇の中にうまくマジックを融合させるプランで成功させるとか、主人公ピエールが最終的に到達したキャラ設定とスライハンドの妙技の悪夢的な(ディス)コンビネーションの世界であるとか、本書はそういうあたりにボア&ナルの「理想」を反映したマニュフェストだ、と読んでいたよ。

もちろん芸道小説としての迫力は素晴らしい。こっちに目を奪われて、ボア&ナルらしい双子を巡る幻想がやや説明不足になりがちなんだが、やはり本書の価値というのはこういった「ミステリ論」的な部分にあるように思われる。

No.1117 4点 五つの箱の死- カーター・ディクスン 2023/02/24 12:34
西田政治訳カーの唯一の生き残り。「ワイルダー一家の失踪」やって気になっていた。いや「ワイルダー」悪くないじゃん?で訳者のあの評判が気になる...1989年の重版だから、そうそう入手困難なものでもなし。

結論を言えば、大変読みづらい。カーって原文も持って回ったようなところがあるようだが、訳文も持って回ってぱっと見で頭に入りづらい。悪評はなるほど。カーは腕のある訳者が必須だろう。

作品自体は、不可能興味とフーダニットを両立させようとしているんだが、この欲張った狙いのために、過度に技巧的な犯行計画にならざるを得なくなって、納得感がないのが問題。いやね、ホントはアリバイ物だと思うんだよ。素直にアリバイ物で再構築したら悪くなかったんだと思うんだけどもね....

あともう一点。評者はこのトリック、ありえないと思う。理由を述べるから、以下はネタバレごめん。

だってさ、ホワイトレディ。ジンとコアントローとレモンジュースで、白濁した見た目とスッキリが身上のショートカクテル。シェイクの技術練習台にもよく使われる。白濁はコアントローのオレンジ精油が冷えて出てくるのと、シェイクで空気を含ませるのと両方...だから手っ取り早くシェイクして冷やすのが肝要。それをさあ、3分間シェイカーに入れたまま「赤ん坊の泣き声の真似」とかで放置! ありえんよ。ショビショビの水っぽいのが飲みたいのかしら?
(あと、ウィスキーのジンジャエール割を「ハイボール」と呼ぶのは、昔風らしい)

No.1116 5点 フェルショー家の兄- ジョルジュ・シムノン 2023/02/21 16:48
筑摩書房世界ロマン文庫のシムノン。このシリーズ、「紅はこべ」「ソロモン王の宝窟」「恐怖省」といった古典的なスパイ・冒険小説をコレクションしたものだけども、そこにシムノン。意外と言えば意外なんだが、国際的な広がりが珍しくある小説だから、というような理由だろうか。

事件は、ある。サスペンス色はわりと感じられるのだけども、その事件というのが植民地経営者として「コンゴの王者」のような立場にあったフェルショー兄弟が、植民地での原住民殺害事件をほじくり出されて窮地に陥り、フランスからパナマに逃亡する話。それをフェルショー兄の秘書となった青年ミシェル・モーデの眼から描き、さらにパナマでの亡命生活とその破局に至る経緯を描く。というわけでコンゴでの事件は背景にあるだけで、それ自体がどうこう、という小説ではない。実際主人公は野心的な青年モーデの方で、偏屈な変人、だが植民地で荒っぽく稼いだ伝説の男に魅了されて秘書となるが、自身の野心に苛まれつつ、パナマでの死んだような亡命生活からの脱出を狙う..

事実上「悪の教養小説(ビルドゥングスロマン)」と見るのがいいんじゃないかな。ダイナマイトを投げつけて原住民を三人殺害したフェルショー兄の「伝説」と、現在の偏屈さ、さらにはパナマで生気を失ったような生活を送るみじめな老人を見つめる、モーデの視線のなかに「自分はフェルショーのような『何者か』になれるのだろうか?」という、焦りの気持ちと不安感というものが含まれないわけはない。この憧憬と自尊心と倨傲にさいなまれるモーデの姿が本作の焦点であり、このためにモーデもいろいろなものを犠牲に捧げることにもなる。
だからある意味、「男の首」のラディックを脱ロマン化してずっと小物にしたようなキャラだ、ということにもなるのだ。

一般にシムノンの「ロマン」はすっきりしない話が多いのだけども、本作はとくにすっきりしない話。雰囲気とかグレアム・グリーンとの共通性みたいなものを感じるんだがなあ....シムノンのロマンではわりと長めで、翻訳がやや分かりづらい。大したことないがやや難航、でこんなくらいの評価。

No.1115 5点 ソロモン王の洞窟- H・R・ハガード 2023/02/16 11:01
子供の頃ジュブナイルを読んだんだったっけな....冒険小説の定番作品で記憶がごっちゃだが、改めて大人向けでは読み直してはいない。そんなのが普通だと思う。

「宝島」に刺激を受けて書いてベストセラー、それにドイルが刺激を受けてホームズ譚を書き始め...という伝説の冒険小説。「宝島」が子供主人公のクセにしっかり対立陣営の駆け引きを描く大人向けだったのと比較すると、本作は大人三人組が主人公なのにわりと他愛がなくて、シンプルにピンチ~助かるの連続の話。それでもククアナ国での戦争話は当時のイギリス人の軍事常識が反映されていて迫力がある。ドイルの「失われた世界」後半のインディオの国の戦争話は本作の構図をしっかり借用したのだろう。

ファンタジックな味わいもあまり感じないが、グッド大佐の洒落者っぷりにユーモアがある。確かにモノクルって西洋人の彫りの深い顔だからこそ、嵌って落ちないんだよね(苦笑)

どっちかいうと評者は本作よりも「洞窟の女王」の方にロマン色を期待している。そっちも入手済み。まあ順番だからね。

No.1114 7点 世界短編傑作集3- アンソロジー(国内編集者) 2023/02/13 11:53
3巻目は1925~29年の作品。一応長編黄金期に入るのだけども、短編はホームズ様式(というかソーンダイク博士風?)がまだ盛ん。2巻で顕著な科学トリック傾向も「キプロスの蜂」や「茶の葉」に覗われるが、バカトリック風の「密室の行者」「イギリス製濾過機」も登場...とこれをやや拡散傾向、と捉えるがいいんじゃなかろうか。

そうすると、ホームズ形式のクセに実話のリアリティを備えた「堕天使の冒険」に注目した方がいいし、あるいは名探偵をパロった皮肉な話の「完全犯罪」にそろそろ「名探偵小説」を相対化する視点が芽生えてきていると思うんだ。その相対化の総仕上げが実のところ「偶然の審判」を長編化した「毒チョコ」だった、というのはいかかなものだろう?

あ、作品的には「ボーダー・ライン事件」がモダン・ディテクティヴな佳作。「二壜のソース」が形式的には意外なくらいに「名探偵小説」なんだけども、ワトソンの妙が光って「名探偵小説」から逸走。こんな芸がすばらしい。

No.1113 6点 八百万の死にざま- ローレンス・ブロック 2023/02/13 11:31
なぜか未読だった作品、読んでみようか。

いややっぱり思うのは、1982年の本作でも、やはり60年代末~70年代のヒーロー性があるネオハードボイルドからのシフトチェンジみたいなものを感じるんだ。
マット・スカダーのアル中設定(と死に関連するウツ)が中心課題なんだが、同じアル中のカート・キャノンと比較してみれば「ヒーロー性」が大きく欠如している、というのが嫌でも目に付くことになる。モノガタリの主人公である以上、どこかしら「貴種流離譚」な部分、言いかえれば「街と馴染んで馴染まない」部分が、そもそものハードボイルドの「固ゆで」要素だったんだと思うんだが、マット・スカダーは「街のありふれた暴力とその結果の不条理な死」に馴染み過ぎている。ついつい強盗に反撃してしまうわけだし、最後の囮だって内心では消極的な自殺になっても仕方ない?くらいだったのではないのだろうか?

もはやニューヨークにはヒーローは棲むことができない。だからこそか、黒人の「黄金のヒモ」であるチャンスの「成功譚」な部分が、やたらなリアリティと魅力を発している。街を描けば描くほど、風俗小説に近づいてくるのが、80年代以降のハードボイルドの宿命みたいなものなのだろうか?

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クリスティ再読さん
ひとこと
大人になってからは、母に「あんたの買ってくる本は難しくて..」となかなか一緒に楽しめる本がなかったのですが、クリスティだけは例外でした。その母も先年亡くなりました。

母の記憶のために...

...
好きな作家
クリスティ、チャンドラー、J=P.マンシェット、ライオネル・デヴィッドスン、小栗虫...
採点傾向
平均点: 6.43点   採点数: 1252件
採点の多い作家(TOP10)
アガサ・クリスティー(97)
ジョルジュ・シムノン(89)
エラリイ・クイーン(45)
ジョン・ディクスン・カー(30)
ロス・マクドナルド(26)
ボアロー&ナルスジャック(18)
エリック・アンブラー(17)
ウィリアム・P・マッギヴァーン(17)
アーサー・コナン・ドイル(16)
ダシール・ハメット(15)