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[ サスペンス ] 悪魔のようなあなた |
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ルイ・C・トーマ | 出版月: 1968年01月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 1968年01月 |
No.1 | 6点 | クリスティ再読 | 2024/10/29 21:14 |
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中学生時分、ボア&ナルの名作「悪魔のような女」と混同していた思い出があるよ(苦笑)改めて読み直し「タイトル似てるのダテじゃない」。
主人公ジョルジュは自動車事故で九死に一生を得たが、記憶を失っていた。付き添うのは「妻」を名乗るクリスチアーヌ。妻は自分をジョルジュ・ロムリーだと主張するが、自分にはジョルジュ・カンポとしての記憶が不鮮明ながらある...退院して南仏の広大な屋敷で、妻と友人のフレッド、ベトナム人の召使のキエムらに囲まれて療養生活を送る。しかし、妻が主張する自分の過去がどうにも自分のものだとは思えずに、ジョルジュは苦悩する。そして、続けて起きる不思議な事故。ジョルジュは妻と通じたフレッドが自分を殺すなり精神病院に入れて、財産を乗っ取る陰謀を企んでいると考え始める.... こんな話。いやはや、まさにボア&ナル調。「影の顔」とか「牝狼」とか「砕けちった泡」とか、似たような...とすぐに連想が働く作品が目白押し。でもタッチが意外なくらいに軽妙。心理描写よりも会話の方が多く、ボア&ナルの類作の重苦しさがない。アイデンティティの崩壊とかそういうネタなんだけども、さほど深刻にならずに自分が誰か分からなくなってオカしくなる人の話としてまとめられている。 いかにもボア&ナルな訳題だが、実は原題は「迫害マニア」だそうだ。こっちの方が適切だと思うよ(苦笑、だけど本当は「迫害偏執症」くらいが正確かも) |