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クリスティ再読さん
平均点: 6.39点 書評数: 1418件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.218 4点 心地よく秘密めいた場所- エラリイ・クイーン 2017/06/25 22:40
クイーン最終作品なのだが...何か読んでいて極めてよそよそしい。あれ、どうしたんだろう?と気になる小説だ。この事件にエラリイが引きずり込まれることになる父親との問答も、何か異化演劇風で「これはすべて架空のことなのだ!」と示そうとしているかのようだ。
最終的な被害者となる億万長者も何かそらぞらしいキャラだし、そのオブセッションである「9」でさえ、最終的にすべて意図的な「レッド・へリング」であることが示される....舞台装置の裏側はベニヤ板でしかないのだ。欺瞞に包囲されたエラリイは、9の象徴の飽和攻撃に押しつぶされるかのような惨めな失敗をする。後期エラリイはたびだび推理に失敗するのだが、その中でもおよそキャリアで最低のカッコ悪さでだ。作者クイーンがパズラーというもの、ミステリというものに、疑いを持ってしまったかのように。
本作はおそらく「最後の一撃」の書き直しみたいな面を持つのだろう。作者が設定する「謎」というもののこれ見よがしで不自然な部分だけが肥大し、探偵は解釈の多重性の中で途方に暮れるしかない。謎だけがそこにあって、真相は仮のものでしかないのかもしれない。もうちょっとズレたら、本作は前衛ミステリになるのかもしれないけど、そこまでの意義は残念ながら認めがたい。ヒロインの次のセリフは、エラリイへの慰謝か、それともクイーンのかなわぬ約束だったのか。

あなたはきっと、そのうちにほんとうの答えを考え出しなさるわ。

No.217 4点 最後の一撃- エラリイ・クイーン 2017/06/19 23:35
評者のクイーン読み順は結構ネラってこういう順にしているわけだけど、「ローマ帽子」直後に起きた設定のこの事件が、執筆リアルタイムの27年後に解決するというタイムスパンの長さが特徴の作品である。本作でクイーン合作は一旦引退となり、5年後の再開後もしばらくリーが執筆できないという状況を見ると、本作で「ローマ帽子」を回顧するのも、クイーンのキャリア全体に対するグランフィナーレめいた狙いがあったわけである。そういう大きな仕掛で見たときに、それなりに傑作とはいかなくても、クリスティで言えば「カーテン」みたいな問題作、みたいなものになって欲しかったんだろうな...しかし本作の知名度から分かるように、完全に外してしまっている。
後期らしく固執的なテーマがあるんだが、それが「12」というのがそもそも外す原因。12日間かけての12回の不吉な贈り物...というだけで、プロットが相当間延びしたものにならざるを得ない(6回くらいにしておけばイイのに)。読んでいて妙に弛緩した雰囲気が漂う。これがクイーンの同世代のアメリカ人だったら、作品の中で言及される出来事とか小説とかでノスタルジアに浸るとかあるんだろうけども、さすがに評者もそれはムリだ。(レックス・スタウトの処女小説は何か前衛小説みたいなものらしいね...)
真相もミステリとしてちょっと微妙。というのは「贈り物の秘密のメッセージが指し示す犯人像が、あまりに注文通りなので、エラリイはそれが自分に仕掛けられた罠なのか疑心暗鬼になって公表しなかった」という推理の経緯を、1930年篇でうまく示すのができていないから、1957年にそうだと言われても斜め上に滑った感じで...どうにも困る。で、そういう贈り物のメッセージなら「分かって分からない」ような絶妙なものでないとハマらないけども、実際はちょっと専門知識が要るようなものだからムリ筋としか言いようがない(そりゃ日本のやり方と共通した記号こそあるけどね)。
ホント言うとね....身元不明な被害者なんていうと、「これはJ.J.マック殺人事件かしら?」なんて評者は妙な期待をしてしまったのだ。グランフィナーレなんだから、何かメタなネタを仕込むとかしてもよかったのかもね(作者=犯人をしようとした、という説がEQFCに載ってる)。評者は(探偵)エラリイと(筆者)クイーンの違いと混同に関心があるから、本作で(探偵)エラリイが小説「ローマ帽子」を無邪気に書いたことになっていると、「何か仕掛けが?」とか勘ぐってしまうのだ...
あと時系列だと「ギリシャ棺」が「ローマ帽子」以前のエラリイ探偵譚だけど、本作では忘れてるみたいだ。やれやれ。

No.216 3点 帝王死す- エラリイ・クイーン 2017/06/12 00:14
市民ケーンかハワード・ヒューズか、それともドクター・ノオか、というような超権力者「キング」の島の、超堅牢密室の事件なんだけど...こりゃ、ダメだ。SFかファンタジーか007かという事件の舞台、ライツヴィルでの過去の因縁、3兄弟の確執、密室謎解きが、てんでバラバラの方向を向いてる作品で、すべてにおいて中途半端。そもそもリーの小説スタイルはリアルな方に向いてるから、こういうファンタジーはダメだよ。
ま評者密室殺人嫌いを公言してるわけだけど、要するに手品はネタをバラさないからファンタジーが成立するのであって、密室のトリックをばらしてドラマがうまく動く長編作品なんてまずないと思うよ。
最後バタバタと死と脱出でオチが付くけど、苦し紛れにしかみえないや。とにかく小説としてこれはクイーン最低の部類。取り柄は密室のハッタリの見せ方がイイことと、密室トリックは小粒でも実行可能なことくらい。この人も国際政治ネタをリアルに描くことが無理な資質なんだね....(クリスティだと「死への旅」みたいなものか)

No.215 7点 ローマ帽子の秘密- エラリイ・クイーン 2017/06/11 23:52
あれ、皆さん評判悪いな...どっちかいうと評者本作は楽しんで読んだけどね。そういえば小学生高学年くらいのときに、人に借りて読んだ本だよ。内容は完全に忘れてたけど、エラリーの推理ほぼそのままに今回読んでて推理は的中。アンフェアというイメージはないよ。
「帽子を回収できた人が犯人だ」という命題自体は結構最初から明示されているわけで、誰ができるのか、マジメに考えれば結構明白だと思うんだがねぇ。まあ人の出し入れとかそう上手じゃないとかあるし、エラリーのキャラがあまり魅力的でないとか、特に前書きが後の作品との一貫性がないとか、いろいろろツッコミどころはあるんだけど...実は本作、クイーン警視の描き方の方に力が入っていて、パパ実に素敵。実質ダブル名探偵だと思うよ...そんなクイーン警視のカッコよさだけでも十分楽しんで読めた(評者オヤジ萌え傾向がある、あれ目が腐ってるのかな?)。なのでその分エラリーがイカスケない若僧だ。今読むとエラリーの書痴ぶり&ペダントリが身の丈に合ってなさすぎるのがわかる。

No.214 9点 愚者(あほ)が出てくる、城塞(おしろ)が見える- ジャン=パトリック・マンシェット 2017/06/11 23:34
「地下組織ナーダ」が良かったので、現行で手に入る本作を読みたくて読んだ。さすがに「狼が来た、城へ逃げろ」は読んでないんだよ。
精神病院に入院していたヒロイン・ジュリーは、大企業の経営者にその甥である少年の世話係に雇われた。しかしジュリーと少年はギャング4人組に誘拐されて...という話である。おもちゃ箱をブチまけたような死と破壊がジュリーと少年の後に残される、血なまぐさい童話のような作品だ。
まあヒロインが精神病院から直接雇われて...というあたりからして尋常じゃない(反精神医学とかそういうあたりの背景があるようだ)。本当に周囲からしたら大迷惑な破壊(逃亡するために積極的な人殺しさえしちゃう)の限りを尽くすことになるのだから、陰惨な話なのか...というとまったくそうじゃない。カーニヴァルめいた陽気さで派手な逃走劇を繰り広げるのだ!
だから追う側のギャングたちが胃潰瘍に苦しんでたりするのにもバカバカしいような納得感がある。本作、ホント読んでいて昂揚する...ちょっと評者も野性の血が騒いじゃったようだ。

空気が澄みきって、すごくいい天気だ。撃ちあいのせいで家に帰るのが遅れたことを喜んでいた。耳に触るとひどく痛かったが、アルコールで消毒されるのはご免だ。それでまた、インディアンごっこに出発した。

本作は光文社古典新訳文庫なんてところから、1972年の作品だけど出ている。それにふさわしい、新しい古典の名に恥じない傑作である。邦訳全作読みたくなったなぁ。評者もインディアンごっこにレッツゴー。

No.213 6点 メグレ夫人の恋人- ジョルジュ・シムノン 2017/06/08 23:44
メグレ親父は機嫌が悪いな...困ったものだ。
メグレ式ってのは考えない、というか考えていることを見せない。その代りに事件の感情的な理解の方にポイントのある捜査法だから、短編の場合にはそこまでの余裕がなくて...になりがちなんだけど、その代わりにメグレの感情自体がメインになるような書き方だってアリだ。「メグレの失敗」なんて事件の中心人物に対する感情的な反撥が小説の中心になってるくらいのものだ。また珍しくトリックのある「開いた窓」とか、やはり長編とは少々組み立てや小説としての発想が違うのが、短編集としてのバラエティになっている。
出来としては中編の「メグレ夫人の恋人」と「殺し屋スタン」が世評通り読み応えあり。個人的にはメグレ夫人のキュートさにちょっとヤられている。

No.212 7点 読者よ欺かるるなかれ- カーター・ディクスン 2017/06/03 21:42
パズラーらしいタイトルで、しかも不可能興味を前面に押し出した作品...なんだけど、どっちか言うと「パズラーマニアっぽい視点」でない見方をした方が面白いように感じた。
というのも、検屍法廷の皮肉な展開も楽しいが、真相自体のアイロニーを楽しむような読み方があるように評者は感じるのだ。で、HMによる締めの一言がやはり人を喰っている。

もっぱら国民に、健全な良識を植えつけてやるためさ...いまに戦争がもっと烈しくなってみい。あわてものは、街中を駆けまわって、やれ、敵の爆撃機の空襲だ、ロンドン中は火の海に化けそう..なんてことを言い触らして歩くじゃろう。

HM、政治家だなぁ(苦笑)。オカルトを利用したがる人々/それにダマされたがる人々というのはいつの世も尽きることはないわけで、そういう騒ぎの描写も本作の魅力の一つだろうと思う。犯行手段の医学的な真相はまあ、それしかないよね、というものだし、状況についてはこんなのわかんないだろ、というものなので、本作は「謎の提示」はハッタリ十分で非常に魅力があるけども、狭い意味のパズラーとしては若干ムリ感があるように感じる。それを補ってあまりあるアイロニカルな味の良さからこういう評価。

No.211 7点 ヘラクレスの冒険- アガサ・クリスティー 2017/05/28 23:11
ヘラクレスの12の難行になぞらえたポアロ短編集なんだけど、実際にはパズラーありの、ロマンチックな恋愛ありの、ファンタジーな政治ものありの、冒険スリラー風のものありの、人情ものありの、バラエティ豊かな作品集という感じ。なので、本格、という感じでもない気もする。
けど、パズラーとしては「レルネーのヒドラ」がいい。ちょっとした会話から真相をポアロが気づくわけだが、初期の短編のようにネタだけな感じではなくて、いろいろと芸が細かいのを気づかさせる。短いのにうまく凝縮していてお手本級の短編。
あとは...そうだね、人情ものとして「ヘスペリスたちのりんご」がきれいにまとまっていて、小説として結構。ポアロもご宗旨はカソリックだった(「満潮に乗って」でカソリックの礼拝に行く描写があったね)。
最後の「ケルベロスの捕獲」も風俗描写を含め小説として実に楽しい。短編「二重の手掛かり」や「ビッグ4」に登場したヴェラ・ロスコフ伯爵夫人が再登場して、ヌケヌケとしたキャラの良さを発揮する。冒頭の地下鉄エスカレーターでの邂逅とかうまく内容にマッチしていていいな。ナイトクラブ「地獄」って遊びに行ってみたいよ。
というわけで、あまり本格本格してないキャラ小説として十分読んで楽しめる内容である。多少は出来不出来があるのはご愛敬(麻薬が便利グッズ過ぎるよ...)。

No.210 8点 シルマー家の遺産- エリック・アンブラー 2017/05/28 22:39
評者、カッコイイことは苦手だ...だからアンブラーに共感するのかもね。
というのも、本作って例の名作「ディミトリオスの棺」の書き直し、といった雰囲気があるからだ。「ディミトリオス」は結局、動乱の裏に蠢く悪の天才の姿を描いちゃったことになって、ある意味とてもカッコイイのだ。で、本作はそれを反省した感じで、同じく一人の男をヨーロッパを駆け巡って足跡を追う小説でありながら、その男、フランツ・シルマー軍曹は特異な状況にはあるが、悪の天才でも英雄でもない。
話はアメリカで身よりなく亡くなった老女の遺産の受取人を探すべく、法律事務所の若き社員ケアリは、ヨーロッパの従弟の行方を追うところから始まる。この従弟は既に亡くなっていたが、その子孫に受取資格があることが判明する。しかし第二次世界大戦がドイツ人の運命を大きくシャッフルした時期に重なっていて、唯一の生きている子孫と思われたフランツ・シルマー軍曹はギリシャからドイツ軍が撤退する際の混乱の中で行方不明になっていた....

(以降ネタバレ)
でまあ、フランツは生き延びて、ギリシャの左翼パルチザンの側についてゲリラとして山中に潜伏していたわけだ。要するに旧日本兵が敗戦後にインドネシアやベトナムの独立運動に協力したのと似たようなものなんだが、シルマー軍曹は負け組の左翼ゲリラだから、負けが見えてほぼ山賊みたいなものに成り下がってきている状況だった。こんな状況でケアリと直接会談することになる。
本作の一番イイところは、冒頭に述べられるシルマー家初代のフランツ・シルマー軍曹の話が、玄孫のナチからギリシャ左翼ゲリラに鞍替えしたフランツ・シルマー軍曹の話と何となく重なるあたりである。初代はナポレオン戦争の敗戦の中で軍隊を脱走し、彼を匿った農婦と結婚して子孫をドイツとアメリカに残すことになるのだが、こういうエピソードがヨーロッパの庶民の実像を捉えていて非常に印象深い。でやはり現代のシルマー軍曹も決してカッコいい存在ではなく、ましてやうまく勝ち馬に乗ることができたわけでもないが、それでもしたたかに生き抜くことには長けている。なので、現代のシルマー軍曹はケアリが提供したナポレオン時代の高祖父の話に感銘を受ける。

わたしの本当の遺産とは、あなたがわたしにお示しくださった、わたしの血統とわたし自身に関する知識です。多くのことは変りはて、エイラウの戦いも遠い昔のことですが、長年月にわたって、手と手は結び合い、わたしたちは一体なのです。人間の不滅性はその子供たちのなかに存在しているのです。

20世紀的であるのと同時に、ヨーロッパ庶民の精神史みたいなものを覗かせるこのフランツ・シルマー軍曹の姿が実に秀逸。すばらしい。

No.209 5点 法の悲劇- シリル・ヘアー 2017/05/28 21:52
本作、およそ日本人向きじゃない。
イギリスの巡回裁判というなじみのない制度が舞台の上に、イギリスの慣習法ベースの法体系もよくわからないしね...さらに言えば、英米の法曹界というものの歴史と伝統感みたいなものが、一番の読みどころ、楽しみどころだと思われるのだが、ここら法律とかあまりマジメに捉えなくて、法へのリスペクトを欠いた日本人だと、楽しみづらいだろうなぁ。だから本作のアイロニーやウイットはまず日本の読者には伝わらないと思ったほうがいいです。
その上、話の焦点となる判事とその妻に好感を持ちづらいんだよね。もちろん巡回裁判が一種の大名行列みたいなもので、これに対する批判めいた視点が作者にあるようだ。判事の判決もかなり気まぐれでヤナ奴感がかなり高い...そういうわけで460ページ中400ページになるまで殺人が起きず、巡回裁判中に判事が起こした交通事故と判事への脅迫・嫌がらせめいた襲撃などが、結構地味に続くので、ここらを少々我慢して読む必要がある人が多いだろう。
それでも最終4章の殺人から真相解明に至る怒涛の流れは迫力あるし、真相がしっかりと、かつトリッキーに小説のテーマになっているあたり、小説技術として見習うべきところがある。

No.208 6点 ゆがんだ罠- ウィリアム・P・マッギヴァーン 2017/05/28 21:30
本作だと「殺人のためのバッジ」の翌年の作品なので、そろそろ脂がのりだした頃のマッギヴァーンである。まだいろいろと試行錯誤している感もあるが、本作だとハードボイルドに入れるのはかなり無理がある(まそもそもこの人の文章はハードボイルド文でもないし)。評者は本作のカテを「本格」にしちゃったけど、許してもらえるのではないかと思う。そういう作品。
本作の舞台は50年代のアメコミの舞台裏である。これだけでも読む気がかなり起きる舞台設定だが、日本の漫画と違って、映画並みの分業体制で、全員組織の歯車として作っているあたりが非常に興味深い。漫画部門の編集長として新たに異動させられた主人公が、所属の人気女性漫画家殺しの濡れ衣を着せられかけて、その真相を探る、とまとめればその通り。でだけど、いろいろとフックが利いている。主人公の編集長は戦争中に「自分が上官をわざと撃ったのでは?」というトラウマとなって重度のアル中で、泥酔から醒めると手が血だらけで....とひょっとして女性漫画家殺しも自分がやったのでは?とかなりかねない。冒頭がこの「醒めてみれば血だらけ」で、話は過去に戻って漫画編集部の人間模様を丁寧に描写していくことになるので、実際に殺人が起きるのはほぼ真ん中あたりになる。
タイトルの「ゆがんだ罠」はやはりそのトラウマを利用して主人公に罪を被せようとする罠と、主人公と真犯人の心理的対決、というあたりから来ているのだが、こういう心理主義が今読むととても古臭くなっているな。そのかわり、本作はパズラーとして結構フェアプレイだ。本作とマクロイの「幽霊の2/3」が結構似てるんだが、「幽霊の2/3」がパズラーファンに人気だったら、本作でもパズラーで問題ないように感じる。本作だと美点も欠点もそれぞれ...なんだが、もう少しするとこの人一枚皮が剥けた感じになるので、そう悪くはない模索中の一品、といった感じである。

No.207 6点 メグレと死者の影- ジョルジュ・シムノン 2017/05/20 22:44
初期のメグレ物というと、創元で翻訳が出て、この中でラインナップに残ったものと残らなかったもの、残らなかかったものでも河出の50巻のシリーズに採用されたものとそうでないもの...とその後の運命がいろいろある。本作は創元で「影絵のように」のタイトルで出た後、河出で「メグレと死者の影」と改題して出ている。まあ河出は中期以降のタイトルに合わせて、全作「メグレ」という名前を入れたタイトルにしたためこういうタイトルになったわけだけど、本作の原題は「L'Ombre chinoise」、直訳すれば「中国の影」、実際にはこれは熟語で影絵遊びとか影絵劇のことを指すので、河出の訳題も創元のも意訳に近いが、創元の方が明らかに趣のある良いタイトルである。内容的にも、死者のシルエットが時間がたっても動かなかったので見たら殺されていた、ということと、呼ばれたメグレが目撃した被害者の元妻が再婚した夫を責めるシルエットの両方を指しているので、評者は「影絵のように」を強く推したいな。この2つの影絵がある冒頭の場面が本当に雰囲気があって、いい。
本作とか文庫で160pくらいのものなので、作品が「ある一つの感情」だけで構築されているようなものである。本作だと機会を逃した落胆と自責が他人に向かう後ろ向きでどうしようもない性格がテーマになっている。それに操られる人間の姿も、それ自体がもう過去の取り返しのつかないことなのだから、やはり「影絵のよう」だ...というわけで、本作もショートドリンクのような味わい。キュッと読んでシンプルな感情の悲劇を味わう。それも人生。

No.206 7点 悪の起源- エラリイ・クイーン 2017/05/17 22:47
冒頭から「ハリウッドを殺したのは誰か?」なんて洒落た仕掛けをしてることからも窺われるように、本作リキはいってる。文章もかなりこってりと凝っているし、後期だとかなりの力作になると思うよ。
で、だけど、早い話タイトルがかなりのバレなので、見立てというか犯人の狙う絵の意味は、わりと見えやすいと思う。しかし、どっちか言うとネタがバレているからこそ、本来の事件の狙いが何なのか読めなくなる...というのがミステリとしての狙いのような気がする。絵が何なのかわかれば、事件が解る、というものではないんだな。なので、絵が「狙いは×だろ?」という感じでシラけることなく、殺人らしい殺人がなくても、サスペンスをうまく持続することに成功しているように思う。全部目くらましなのでは?という疑惑を最初から捨てれないので、どう展開するかを注視しつづけなくれはいけないからね。
後期クイーンらしく、二枚腰の真相のひっくり返し方とか手慣れた感じでもある。評者この真相(というかオチ)は結構気に入っている。幕が閉じてから、が気になるようなタイプの作品である。ロジャー・プライアムの性格を念入りに描写しているからこそ、ありそうでなさそうな、こういう犯罪が「それでもありか?」と思わせる。派手じゃなく分かりづらいが、狙いが成功している作品だ。

No.205 8点 地下組織ナーダ- ジャン=パトリック・マンシェット 2017/05/13 18:29
本作は1975年出版のポケミスなんだけど、今は入手困難も手伝って伝説っぽくなってるらしいね。フランスのロマン・ノワールの第二世代って見ていい「政治の季節のノワール」筆頭、マンシェットの「狼が来た、城へ逃げろ」(というか「愚者が出てくる、城寨が見える」か..)によるフランスミステリ大賞受賞後第1作である。クロード・シャブロルによる映画化があるが、「中国女」とか「東風」を撮ってたころのゴダールだったら...という気がしないでもない。この人50ちょっとで死んだけど、フレンチ・ノワールを現代化した立役者みたいな人で、この後もイイ作品を書いているのが、伝説の所以のようだ。

今やってる生活ってのがどうにもこうにも鼻もちならなくなったのよ。何かぽこんとこう破裂させたかったんだな。

希望なんて持っていられやしねえ。そんな奴らのために俺は飲むんだよ。政治的に正しいとか下らねえとか、そんなことはかまっちゃいられねえ。

とかまあ、こういうアケスケでニヒルな衝動に突き動かされて、5人の男女によるアナキスト組織ナーダがアメリカ大使を誘拐する....がこれに対し、ゴエモン警部(Goemond警部。イイ名だねw)が指揮を執る警察側は、ナーダの潜伏場所を割り出して、投降も一切許さずガチンコの暴力で「殲滅」しようとする展開。極めて短い文が炸裂する、模範的なハードボイルド文でエゲツないヴァイオレンスが続く。国家というヤクザが、アナキストというヤクザにカチ込みにいく..という態。
まあ、冒頭の共和国保安隊(日本だと機動隊に相当するようだが、銃による武装が通常装備らしい)隊員の手紙で、ナーダが壊滅したのは最初にバラされているし、万が一にもうまく行きそうにもない誘拐計画(小説としてないない)だから、失敗は目に見えているのだが.....それでも一矢は報いている。

ブエナベントゥーラは答えなかった。トルフェがふるえてる手で手錠の鍵を外す。ゴエモンの死骸をまたいでブエナベントゥーラのそばへ走り寄った。膝をついた。ブエナベントゥーラがわずかの間、トルフェを見つめていた。そして、死んだ。

くぅう、ノワール、だね。再版か新訳でもすればいいのに。「膝をついた」の入り方が大好き!
後記:やや本作評点が辛すぎたと反省。1点プラスします。

No.204 7点 リコ兄弟- ジョルジュ・シムノン 2017/05/08 22:42
偶然ながらちょっと前に書評した「ベルの死」と同年の非メグレ物。両方ともアメリカが舞台、しかも鬱小説...と妙にカブった感がある。ただしこっちはマフィアの内幕ものだが、アクション味はほぼ皆無で、「ベルの死」同様に主人公の中年男が心理的に追い詰められていくさまを丁寧に描いた作品である。だからノワールからはシムノン流にズレた印象だ。
主人公はマフィアの中ボスだが、地方の合法部門の責任者で「会計係」なんてあだ名がつくようなタイプ。家族ぐるみでマフィアと縁深い一家で、三人兄弟の長兄。その一番下の弟が堅気の女と結婚して足抜きをしようと考えたのか行方不明になる。裏切りの噂の立ったその弟の足跡を主人公の長兄が追うプロセスがほぼ小説のすべてを占める。
この情報をこっそり提供した次兄、老いた母、それから逃亡した弟..と見知った人々のはずながら、いざ向き合うと見知らぬ人のように長兄が疎外感を感じるあたりが、本作の一番らしいあたり。なので、マフィア物とかクライムノベルとか本作を見るとすると、本当にミニマムなマフィア物(実際ポケミスで150pほどで短い)ということになるだろう。
ある人生の断面を切り取ってそれを覗かせるが、結論もなければわかりやすい感動やドラマらしい予定調和もない。シムノンなので徹底して心理寄りなため、ハードボイルドとは呼べないのだが、心理がまるでモノであるかのようにごろりと転がっているような印象を受ける。

No.203 6点 フォックス家の殺人- エラリイ・クイーン 2017/05/06 13:46
皆さん言うように地味な良作なのは確かだ。エラリイのスタンスが「公正」なあたりに、本作は一番の魅力がある。
本作、ベトナム戦争以前の「ベトナム症候群」モノだったりする...「正義の戦争」だったとしてもコワれる人は壊れるわけだ。なので丁寧に書かれた「一家族を通してみる社会小説」としての印象は非常によく、フォックス家の家族に嫌な印象を受けるキャラがいない(悪役の薬剤師とかおせっかい老女とかも、単に卑小なだけだし)。
だから着地点は何となく想像がつくんだけども、その結果ミステリ+小説としての出来は肩透かし。結局「虚構のハッピーエンド」みたいなことになって、評者は「これでいいのかなぁ?」と生温かな結末に若干モヤモヤする。強いて比較すると、クリスティだと「無実はさいなむ」あたりに近い家族小説なんだけど、ここで比較したらクリスティの家族幻想の無さ加減がひどく過酷に感じられる...
証拠の後出しに見られるように、クイーンのパズラー性に対する関心というかコダワリみたいなものが、本作だと後退しちゃった気もする。タイトルは原題・訳題ともにちょっと反則だと思う。もう少しなんとかならないか(原題もちょっと訳しづらい...The Murderer is a fox 殺人者はキツネだ、じゃ締まらないし)。感覚的には7点つけたらヨイショ、というくらい。

No.202 10点 黒死館殺人事件- 小栗虫太郎 2017/05/06 10:24
中学の頃出会って以来、何度読み返したことか...評者にとって、ある意味目標であり理想の小説である。今回久々に通読(折に触れ途中から好きな個所を拾い読みしていたんだけどね)。
本作くらい、キャッチーなミステリはないように感じるよ。神秘の光に包まれる死体、「独りでに動いていく死者の船」テレーズ人形、鐘鳴器(カリルロン)が奏でる旧約詩篇の讃詠(アンセム)に表れた不可思議な倍音から死体のありかを透視する探偵、「犯人の名はリュッツェン戦役の戦没者の中に」など、など、など極めてキャッチーなネタがジェットコースターのように繰り広げられる。もう単にこの流れに身を任せていけば、めくるめく体験が得られる...という稀有の書である(まああくまで相性が合えば、ね)。
ミステリ的興味は...というと、本作はダブルミーニングの宝庫であり、一見そう見えた内容が全く別なものに転化するなんて、枚挙に暇なし(のっけからmass+acre=虐殺!をやるわけだし)。今回気が付いたことだが、意外に本作、流れの中断と再開が多いのだ。わかりやすいところで言えば、十二宮円華窓の暗号を解読して「behind stairs」を得たあと、大階段の裏でさらに似非創世記暗号を見つける一連の流れを中断してクリフォグ夫人狙撃が挟まり、真斎の尋問から始まる算哲の死と埋葬を巡る話も、死霊集会とか地下通路を通って算哲の墓に向かう場面などに分散して配置されている...というわけで、読んでいて有機的な展開じゃなくて、意図的に再配置されて絡み合った鎖の連鎖のような印象を受ける。
で、なんだけどこういう読み方はどうだろう?

黒死館はミステリのリミックスだ

ミステリの一番面白く、スペクタクルな部分だけを抜き出して、それを意図的に再構成したのが、黒死館なんだと...だからこそ、枠組みは極めて平凡でなくてはならない。法水=ホーミズ、支倉&熊城がマーカス&ヒースみたいなパロディな部分を含めて、枠組みだけは館モノのお約束でしかない(要するに四つ打ちで「踊れる」ことを最低限確保するのと同じ)のだけど、内容は過重なまでに独自だが、そこで働く力の射程が極めて短いミニマルなロジックで組み立てているのを、中断配置(カットアップ)によって長編らしいサスペンスと重量感を再構築しているのだと...

あと、今回気づいたこととしては、実に描写が「絵」である。スペクタクルなイメージがふんだんにあって、これほど「絵」なミステリはないと思う。奇異で日常から遠くかけ離れた、骨董的なものだらけなのに、映画を見ているかのように劇的な場面をイメージできるのである...確かに並みの小説を大幅に越える怒涛の情報量ではあるが、ちょっとこれ不思議である。それだけ、本作からはポエジーが噴出しているということだろうか。
というわけで、10点と言わず50点でも100点でもつけたいくらいの、評者にとっての最高のミステリである。

No.201 10点 殺人事件- 萩原朔太郎 2017/05/06 09:43
とほい空でぴすとるが鳴る。
またぴすとるが鳴る。
ああ私の探偵は玻璃の衣裳をきて、
こひびとの窓からしのびこむ、
床は晶玉、
ゆびとゆびとのあひだから、
まつさをの血がながれてゐる、
かなしい女の屍體のうへで、
つめたいきりぎりすが鳴いてゐる。

しもつき上旬(はじめ)のある朝、
探偵は玻璃の衣裳をきて、
街の十字巷路(よつつじ)を曲つた。
十字巷路に秋のふんすゐ、
はやひとり探偵はうれひをかんず。

みよ、遠いさびしい大理石の歩道を、
曲者(くせもの)はいつさんにすべつてゆく。

......評者書評200点を記念してネタをします。作品内容が上記に掲載可能なミステリです(苦笑)。タイトルが「殺人事件」でちゃんと殺人事件を描き、探偵も犯人もちゃんと登場していて、文学的価値も絶大です。
まあ冗談はそこまでとして、本作が本当に凄いのは発表年代である。この詩は朔太郎の出世作「月に吠える」所収なので出版年の1917年(大正6年)以前に書かれている。翻訳ミステリを看板とした雑誌「新青年」の創刊ですら1920年、乱歩の登場なんて1923年と、「日本ミステリ史」がちゃんと始まる前に、すでに海外ミステリの香気十分な詩が書かれちゃっている、ということである!
もちろん朔太郎というと、後に乱歩とは意気投合したようで、「人間椅子」を絶賛するとか、そもそもミステリファン体質なことは否定できないけど、ポーとかドイルとか読んで「海外ミステリらしさ」を抽出し、独自で詩として結晶したのが本作ということになる。なので、評者的には日本における「西欧モダンなミステリ」の消化と実作の嚆矢として、本作の意義を強調したい。
あと、評者が特にこの詩で面白いと思う点は「はやひとり探偵はうれひをかんず」の「探偵の愁い」である。ミステリって真相が意外だったらいい、というわけではないと評者とか感じるのだ。やはり、その真相から立ち上る香気、ポエジーといったものがないと、詩的な満足は得られない。あくまでもその詩的満足感は、探偵=読者の憂愁という感受性の中で評価されるべきものである....

(詩でいいなら、朔太郎の散文詩「死なない蛸」を密室物として読むとか、「ワタシハヒトヲコロシタノダガ...」と鸚鵡が叫ぶ三好達治の「鳥語」とか、ミステリ味の濃厚な作品もあるわけでね)

No.200 7点 汚辱と怒り- エリック・アンブラー 2017/05/06 09:00
評者の書評No.200を記念して、ポケミスのNo.1000 キリ番作品である(周知のように、スタートはNo.101なので900点目である)。なので解説にもその旨のご挨拶があり、No.1000の記念だからこそ、アンブラーの新作を選んだと書かれている。当時そのくらいにアンブラーの評価は高かった。ハヤカワの世界ミステリ全集でも一人1巻になったわけで、この扱いはクリスティ、クイーン、ガードナー、チャンドラー、ロスマク、マクベイン、アイリッシュと同格だったわけである。
本サイトだと現在、8作品に17件の書評が付いて、合計120点、平均7.06点で作者別批評10点以上で14位になるかなりの優秀作者である。しかも誰も5点以下の点をつけていない、というハズレのなさがちょっと驚異的でもある。アンブラーの名義だと生涯18作(合作のエリオット・リード名義でも+5作)しか長編がないわけで、クオリティ・コントロールという面で理想的な作者と言える。じゃあ、内容のバラエティが少ないか、というとそんなことはなくて、広い意味でのスパイ/スリラーのジャンルに実に多彩な展開をしているわけで、1作ごとにテイストがかなり違う。
....キリ番記念に新作を予定しても、本当に安全牌な作者だということになるね。逆にスパイ小説というジャンルで言えば、70年代にル・カレがこれほど人気を集めることになる、というのはハヤカワとしても読み切れなかったところであるし、イギリス人らしいアイロニーが特徴的である意味わかりづらいアンブラーよりも、ユーモアを欠いたル・カレの方が実は大衆的で解りやすいというのが、70年代以降にアンブラーが古典定着に失敗した原因のように感じる。まあだから本当はアンブラーの作品自体に問題があったわけじゃないんだよね。今読んでも意外なくらいに古臭くなってはいない。
で本作だけど、背景はクルド人問題。本作1964年度作品だよ~凄い国際政治センスだ。クルド人だが革命に功績を立てたために任命された、イラクの警察長官がクルド人独立の陰謀に加わったことで、国際会議の場からスイスに亡命。その元警察長官が何者かに拷問されて殺された...現場から逃亡するのを目撃された愛人を探せ、と命じられた雑誌記者はその愛人に苦労してコンタクトを取るが...というのが発端。この愛人というのがビキニ美女なんだけども、実に頭が切れて利害計算がちゃんとできるキャラである。アタマのイイ女性ってとくに男性作家だとうまく描くのが難しいことが多いのだけど、さすがにアンブラー、小説的実力は確か。
(以降少しバレ)
で、主人公はその愛人の逃亡の目的が、元警察長官が持っているクルド人独立運動に関する秘密書類を、高く売りつけるためであることを察する。主人公は意に染まぬ雇われ仕事に対する「怒り」から、仕事を放棄して、積極的に愛人と組んで秘密を売る共犯者になる..という話。本作の本当にイイところというのは、「おれ」一人称の小説であるにもかかわらず、ハードボイルド流に「おれ」の心理描写をせずに、すべて他人のセリフによって「おれ」の描写をするあたりである。他人の評価によって「おれ」の「怒り」を解き明かす、というのが実にクールで作り物ではないリアリティを付与している。まあアンブラーなんで、そもそもどのキャラも実に地に足の着いたキャラではあるんだけどね。
で自分の身の安全をちゃんと確保しながら「秘密を売る」プロセスを、手堅くリアルに描けば、スリルとサスペンスなんて後からでもちゃんと着いてくる。売り手側描写なんだから、当然「情報の二重売り」だってやってやろうじゃないの。というわけで、成り行きを追っていくだけでスルスル読めて楽しめる作品(「メグストン計画」に近いか)。客観的には理想的なエンタメなんだけど、これさえもアンブラーの代表作というにはまだまだ凄いのが別にある。「インターコムの陰謀」は本作の着眼点を構成しなおしたようにも感じるよ。

No.199 4点 メルトン先生の犯罪学演習- ヘンリー・セシル 2017/05/06 07:56
初読。軽い話だろうな..と思って読んだけど、どっちか言えば講義内容は短編小説の域までは達しない、小話みたいなものの連続。読んでいてミステリ短編というよりも、一つ一つが今昔物語とか耳袋とか、そういう小説未満な話という雰囲気がある。まあだから軽く流して読むくらいで十分な感じではないだろうか。

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クリスティ再読さん
ひとこと
大人になってからは、母に「あんたの買ってくる本は難しくて..」となかなか一緒に楽しめる本がなかったのですが、クリスティだけは例外でした。その母も先年亡くなりました。

母の記憶のために...

...
好きな作家
クリスティ、チャンドラー、J=P.マンシェット、ライオネル・デヴィッドスン、小栗虫...
採点傾向
平均点: 6.39点   採点数: 1418件
採点の多い作家(TOP10)
ジョルジュ・シムノン(105)
アガサ・クリスティー(97)
エラリイ・クイーン(48)
ジョン・ディクスン・カー(32)
ロス・マクドナルド(26)
ボアロー&ナルスジャック(26)
アンドリュウ・ガーヴ(21)
エリック・アンブラー(17)
アーサー・コナン・ドイル(17)
ウィリアム・P・マッギヴァーン(17)