皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
斎藤警部さん |
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平均点: 6.69点 | 書評数: 1409件 |
No.609 | 8点 | 数学の国のミステリー- マーカス・デュ・ソートイ | 2016/09/21 23:07 |
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ソートイの本は相当いいね! 数学者と物理学者のぶつかり合う場所は。。コッホ雪片をランダムに散らせた結果の図形とか、泣け過ぎて不気味だぜ!!!!!、、
パーフェクトシャッフルの魅惑よ(そこに素数か素数でないかが掛ってくるとは)。。。懐かしのまやかしのマーチンゲール!四面サイコロと六面サイコロの決定的違いってあるんですか??! いやいやそれどころの拡がりっぷりじゃないよギャーアーァー 双対か!! アシンメトリーにして公平なサイコロの深淵地獄はいまだ覗き切れず、ですって!!! もし地球が球体でなくドーナツ型だったら。。。。 やっぱりね、「まさか!」と「納得!」の切実過ぎる甘いマリアージュがね、一瞬で目の前に辿り着きやがるショック感覚がね、ミステリのソコのソレそのものだよねえ~ って思うわけですよ。 SF叙述ミステリの様なセンス・オヴ・ワンダーでいっぱいの素敵な素人向け数学本です。題名の通り頗(すこぶ)る推理小説心をくすぐるヤヴァい一冊! ISBNミスタイプの自浄トリック、それはコンピュータのエラー修正コードに繋がるってか。。慣性モーメントなる鉄壁のアリバイ。歳差運動の叙述トリックよ。規則的だった動きが閾値を越えると一気にカオスに雪崩れ込む悪魔の運動方程式!! 何度も何度も目が眩む。これほどブラウン神父に近い素人数学本はなかなか無い、かも。 いや他にも色々ある。 済みません、反則技でした。 |
No.608 | 7点 | メグストン計画- アンドリュウ・ガーヴ | 2016/09/20 09:56 |
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“それは、私にとっても、空前絶後のモノローグだった。”
ちょいワルのクロフツみたいな。。海洋(近海)をマタにかけた、悪女に唆されての名誉毀損詐欺サスペンス。昔「ロス疑惑(三浦和義事件)」が世間を賑わせ始めた頃、この作品(粗筋だけ知ってた)が脳裏を掠めたものである。。。 読後振り返りゃ色んな所が随分甘いんだけど、読んでる間、特に主人公が無人島で過ごす一つのハイライトシーン(孤独な営為の描写はなかなか)の間は、読者にも見えない「対岸側」の経緯がふんだんに溢れている様に思えてしまうが故に、主人公を待ち受けるありとあらゆる陥穽の可能性が妄想花吹雪ファストクルージング状態、なわけで中盤のサスペンスは充分。だからこそ面白い。「ヒルダ」と違ってこれは好みだ。 エンディングは意外や意外ですね。。。ミステリ的にグッと来る類のとはちょっと違いますが、飽くまで小説として、なかなか。 【ちょいとネタバレ】 タイトル”THE MEGSTONE PLOT”は見え見えのダブル・ミーニング(それ以上の深い踏み込みはこの作家には無さそう)に違いない、とずっと思っていたら、、まさかそこすら行かないまんまのシングル・ミーニングだったとは!あらためてガーヴさんの心地よい甘さを実感。しかしサスペンスは充分だったから文句は無い。 関係ないけどMEGって歌手かなり好きだったなあ懐かしや、、 というか中田ヤスタカの楽曲が良かったんだけど。ガーヴの作風じゃないけど「甘い贅沢」なんてのが代表曲。 |
No.607 | 7点 | 妖魔の森の家- ジョン・ディクスン・カー | 2016/09/16 23:51 |
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妖魔の森の家/軽率だった夜盗/ある密室/赤いカツラの手がかり/第三の銃弾
(創元推理文庫) 何と言っても美しきおぞましき重みと反転の表題作が圧巻(単体で8.4点)。他の作品もみな締まり良く魅力的。物語もカラフルで読みやすい面白い。 全体的にチマチマカサカサした「不可能犯罪捜査課」よりずぅ~っと好きよ。 |
No.606 | 7点 | 暗色コメディ- 連城三紀彦 | 2016/09/15 00:01 |
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よくもまァ。。。。。ァクションペインティングされた巨大な壁紙をランダムに切り崩しているのかと思ったらしっかりジグソーパズルが構成されていた!(ピースのサイズはまちまちだ!!) そこまでして連城君は一体何を爆発させたかったんだ!!! 短い最終章の前、見えない「読書への挑戦」を手渡されたのはゾクゾク来たゼ。
きちがい幻想タペストリーの取っ散らかりに現実的トリックや伏線がいちいち嵌ったりして凄く面白いし感心もするんダけド、、 終盤追い上げのドタバタがちょっとなあ、美しさを微妙に損なうよ。惜しくモ7.4八。 しかし本作に「本格/新本格」のジャンルを一票投じる事になるなんてね、読み始めのあたりじゃまさかまったく思いも寄らなかったわけでね、落とし前なら俺に任せろってか、やっぱり凄い作者ですよね。 |
No.605 | 4点 | サム・ホーソーンの事件簿Ⅱ- エドワード・D・ホック | 2016/09/12 11:52 |
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べつに不可能興味でズドンと来るわけじゃない。むしろ最初の何作かはなかなかの犯人意外性で押してる感じ。でも緊張は長続きしないね。。ちょっとした構成ギミックやちょっとした活劇やらで目を引くバラエティ趣向も有るが、、全体通しゃちょっと退屈。若き日のサム爺さんの人柄に絆(ほだ)されても、まぁこの点数。
最後のレオポルド警部もんのごく短い一篇、サドゥンエンドが意外過ぎて。。「あいつが真犯人」なんてありきたりのショート・ショートにはしたくなかったのだろうか、的な?(てっきり犯人はあいつしか無いと思ったよ) |
No.604 | 8点 | 白く重い血- 佐野洋 | 2016/09/12 09:57 |
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こりゃ隠れた快作。ジャンルはサスペンス。現在(’70年代初頭)と過去(終戦後)のカットバック(章立て等に工夫あり)で進む真相追及は「ゼロの証明」だったか「焦点の人間」だったかそのへんをあからさまに連想させる、が、、清張が凄みで圧倒すれば、或いは森誠が思い込みの熱さで驀進すれば『そこ一点突破』でも充分読ませるわけだが、しかしそういった重々しい武器を敢えて持たない佐野チンの場合は『そこ』に更に何かかぶせて来るはずだ。。とカラフルな期待が増殖するってもんだ。。 嗚呼、違和感最高!! 二つの時代が重なる最終章、ラス前シークエンスの摩訶不思議な一対一対一(三人)の対話構造!!! 思った通りに、しかし思わぬ方向からの意外性かぶせにクラクラしているうち最後はちょっとした人情の深淵を覗かせて〆。
登場人物の伏線性とか、とっ散らかったままで終わる要素も結構多いから本格主義の読者なら最後ちょっとがっくり来るかも知れん。しかしこれは実に良く出来たサスペンス小説。やっぱこういう、形式に企画性の強い、構成の妙で勝負みたいなのは大の得意だね、佐野チンは。 |
No.603 | 7点 | 火と汐- 松本清張 | 2016/09/11 12:52 |
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火と汐/証言の森/種族同盟/山
(文春文庫) ライト社会派、ではないが清張にしては軽い、しかしながら質は相当に高い本格ミステリ短篇集社会派寄り。 本格色の強い表題作の海上アリバイ工作は西村京太郎「赤い帆船」の中で微に入り細に入りネタバレというか解説され倒しています(但し必然性は有る)ので、そちらを読まれる際は御注意を。というより「火と汐」を先に読まれるのがベストかと。鮎川ファンの方にも薦めたい。 |
No.602 | 7点 | 鷗外の婢- 松本清張 | 2016/09/11 09:51 |
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鷗外の婢/書道教授 .. の二篇 (新潮文庫)
薄昏い魅力。燻した薫り。時折の激しい動き。 しかし清張作というだけで『書道教授』なるごく普通の四文字表題にとてつもなく深い悪行の謎と暴露への妄想が掻き立てられてしまいます。 唯一無二の魂気(オーラ)畏るべし。 |
No.601 | 6点 | 姑獲鳥の夏- 京極夏彦 | 2016/09/10 00:57 |
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明快な書きっぷりで読みやすいこと読みやすいこと。長さは全く苦にならず。薀蓄も余分の領域まで入らず空回り完全回避。しかし分量の割に小説としての情報量は意外と少なく、文章が(質は高いが)どこかで相当の冗長回路を走り回っているのではないかドストエフスキーじゃあるまいし、と疑いの苦笑も漏れる。それでも読みやすい面白い。ストーリーも意外とシンプル、というより話が交錯していないように見せるのが上手いのか。NAPさんの仰る「あんまなにも考えず、読みごたえのある長編」、これだと思います。かなりの昔、何かで「さいきん京極夏彦の作品が人気なのは、読者に(登場人物や設定などの)細かい前提を新しく記憶するだけの力が下がっているからではないのか?その点、京極の長大な作品なら一度前提(ゲームのルール)を憶えてしまえば延々と同一前提の同じ物語に浸り続けられるから楽だ」みたいな主旨の論評を見ましたが、前半の「読者がバカになった(?)」はともかく後半の「楽に読み続けられる」には同意。しかしながら無闇に話が長いだけではなく、Mohicantさん書かれている通りこの文章量があるからこそ火を噴きそうにドラスティックなこの突貫型真相を(少なくとも一部の読者には)納得させ得る、質だけでなく量も重要なファクターであるのでしょう。大泉耕作さんの言及された「解決の章におよそ百ページ費やされた分、非常に丁寧な解決」というのも、トリックを(少なくとも一部の読者には)無理筋に見せず腹落ち納得させるための手段の一つではないでしょうか。『ギリシア棺』の「長さで勝負」要素にも通ずる。でも意外と普通の面白さだった、私には。絶賛とも罵倒とも行かないわ。 どことなく山田風太郎を思わせる疾風怒涛のうねりまくる大結末だったけど、風太郎の底無しの業の深さは感じなかったわ。
↑ 私のコメントも作品に似て、短い主旨を長々と書いちまいました。フラクタル構造か! ワトソン役があからさまに信用出来ないのはなかなかだね。「密室自体がより大きな密室を構成」みたいなとこはちょっとシビれた。登場シーンで如何にもおどろおどろし気だったある人物が最後には妙に明るく滑稽な役回りに落ち着いたのは微笑ましかった。男にはまだ堪えられる悲惨事だった、って事の象徴か。 うっすらと「向日葵の咲かない夏」を思い出させる一作。夏が過ちを誘発する季節だからでしょうか。 |
No.600 | 5点 | 不可能犯罪捜査課- ジョン・ディクスン・カー | 2016/09/09 01:52 |
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題名がものものしい割に小粒な物理トリック短篇集。足跡無いとか人が消えたとかチャンチャカチャンのオンパレードだが、意外と渋い歴史ミステリ系も混じってたりする。私はカー贔屓な方なので4点には落とせません。 |
No.599 | 8点 | ゼロの迎撃- 安生正 | 2016/09/07 00:47 |
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光文社文庫表紙のタッチと表題のイメージからてっきり、読了直後「なかなか、ノリのいいロックを聴かせてくれるじゃないか。。?」と深い溜息をつく類のファッキン痛快作(6点は堅い)かと思ったら、まるで違った。謎も人物群像も真相もすべからくファイン&ファットに構築されたA級社会派冒険ミステリではないですか! しかも、ある意味日常の謎とも言えます! ってのはブラックジョークです! ぃや本気です!
記録的荒天と歴史的侵略と同時に戦う状況に陥った東京。ところが想定内外の敵が他にも四方八方から。。。。戦いの主役は、北朝鮮から日本から、位階も任務も過去もスキルもまるで違う将校どうし。祖国にも中国にも日本にも怨念を抱く北朝鮮将校は、北京政府に反発する朝鮮族中心の中国人民軍軍閥から、ある取引を条件に「一夜で東京壊滅」をミッションに密航して来た様子だが。。 出だしはちょっと、社会派イヤミスの感触があった。奇襲されて関係者は一同集まるわけだ。イヤミスらしくドイツもコイツもオランダ靴もバカばっか。。。でもない。 誤字と、三時間と、職権なりの国防。 何故そこに余分の「迷わず」を挟んだかと訝しめば、暫くして憤りの係り結びが。しかしその直後に(!) だが永遠復讐のチャンスもあった。心に残る場面は遍在。寡黙なアイツが時折発する言葉で、たまらなく響いたの、二つばかり。。。。 戦場ないし○○になった街でなぎらさんが呑気に呑んでやしないかと心配もしたよ。 【以下、厳しく見ればネタバレに触れる】 それにしても、何故、最後まで「あの国」が登場しないのか。妻への思いは何処行った?屍体の山はどうした?錦糸町の三四郎(女将は棚橋さん)は無事だったのか? 何よりやんごとなきあのお方たちは。。。。疑問がいくつも残るが、それでも小説のリアリティは充分殺人的。意味不明の丸文字・・??ん? だって。。まさか露骨過ぎる伏線? しかし何への?? と思ったらそこは放ったらかしか。。マスコミとネットのファッキンファックを奴が予測しなかったってのは嘘臭いよ! そんな、穴という穴がいくら目についても、小説の面白さ、怖さに変わり無し。 死ぬ前に読め。 |
No.598 | 7点 | 未来世界から来た男- フレドリック・ブラウン | 2016/08/28 08:02 |
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ミステリファンへの訴求力極めて強いSFショート・ショート/短篇集。バタくさい星新一とでも思っていただければ。ややブラックめのブツが目立つが、飽くまで明るく爽やか。個性だね。
第1部 SFの巻 二十世紀発明奇譚~忍びの術-不死身-不老不死の妙薬/雪女/こだまが丘/ステーキ/猫泥棒/第二のチャンス/報復宇宙船隊/タイム・マシンのはかない幸福~その1-その2-その3/遠征隊/赤ひげ/ジェイシー/接触/身代わり/未来世界から来た男/不死身の独裁者/おれとロバと火星人/漫画家とスヌーク皇帝/おしまい 第2部 悪夢の巻 灰色の悪夢/緑色の悪夢/白色の悪夢/青色の悪夢/黄色の悪夢/ばあさまの誕生日/死信/忠臣/毒薬/魔法のパンツ/魔法の指輪/インド奇術/大失敗/熊の可能性/三羽のふくろう/人魚物語/最後の恐竜/殺人十課/いとしのラム/悪ふざけ/人形 いっぱい詰まったタイトル眺めてるだけで愉しそうでしょう。 |
No.597 | 7点 | 鬼畜の家- 深木章子 | 2016/08/25 11:20 |
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いっやー読めた読めた、速く愉しく読めた。 結局二人の勝負師が主人公だったって事か?
ある事が九年も続いたのか。。。ふぅん。 しかし恋ってやつの軌道狂わせパワーと来たら大(てぇ)したもんだ。 叙述欺瞞の肝ン所がある人物のこの上ない救いに直結してたとはなぁー !! こんだけの心理スプラッタ暴虐の末に、もはやある種のハッピーエンドかと目を疑う〆っぷり。 探偵役が媒介ぽくありながら要所で格好良いのはGood。 ところで、アレの数が違う事をそこで露骨に読者にバラさなくてもいいんでないか、とは思いましたけどのう。 文庫巻末の島荘檄文が濃いこと濃いこと。 |
No.596 | 7点 | 天使と宇宙船- フレドリック・ブラウン | 2016/08/24 10:44 |
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ミステリファンに受けの良さそなSF短篇集。
明るく優しく爽やかな、でも退屈とは無縁の佳品揃い。 悪魔と坊や/死刑宣告/気違い星プラセット/非常識/諸行無常の物語/フランス菊/ミミズ天使/大同小異/ユーディの原理/探索/不死鳥への手紙/回答/帽子の手品/唯我論者/ウァヴェリ地球を征服す/挨拶 |
No.595 | 6点 | まちがえた番号- ミシェル・ルブラン | 2016/08/23 11:42 |
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何しろ容疑者死に過ぎだよ。もしや筋書き後付けで書き飛ばしてないか?場面転換のスナッピィなことジェットコースタードラマ(トレンディドラマの一つ前に流行った)の如しヨ。しまいにゃ何人何役だかもう分からない疾風怒濤のどんでん返し連続技で最後はまさかの人生っぽい感動の。。。道尾秀介か! 劇作家アランとトゥーサン警部が対立も連携もする二人探偵趣向だが、ニューオーリンズの故アラン・トゥーサン音盤デビューの二年前、裕次郎銀幕デビュー年(1956)の作品だ。 旧い創元推理文庫では猫のマークだったが、ジャンル的にはスリラーでもビリージーンでもサスペンスでもなく、フランス風(新?)本格。 妻の旅行不在中、昔の恋人から「婚約者の家に電話を掛けたら知らない男の声で『間違い電話です』と言われた。。」と相談を持ちかけられ。。。ビストロでしょっちゅうビールを引っ掛けながら半分までは微妙に緩い展開、半分越えると尋常じゃない加速が。。。。終わり方は前述の如し。ちょっと変わったクラシック本格を読みたい人向け。 |
No.594 | 6点 | ミステリ十二か月- 事典・ガイド | 2016/08/22 18:15 |
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カワイクてタメになる愉しいエッセイ本。 入門したての人にも薦めたい。
ほんのこころもちカワイイだけじゃないカラーのイラストがまた絶妙。 |
No.593 | 7点 | 出雲伝説7/8の殺人- 島田荘司 | 2016/08/22 12:26 |
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バラバラ屍体のパーツは七つの駅に送られたが、頭部だけが見つからない。。。。「占星術」を連想させずにおかないトリックの数学的美しさへの予感も嬉しい、神話と怨念に裏打ちされた大殺人絵巻。トラベル・ミステリーの風情は期待しなくてよい。 |
No.592 | 5点 | 壷中美人- 横溝正史 | 2016/08/22 09:25 |
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犯人はちょっと意外。犯人露呈の伏線(!)も確かに意外。加えてもっと不気味なムゥドがあればなあぁ。。題名が暗示するある種のおぞましさは無く、何ともcozyな雰囲気で語られる中篇(二百頁超)。なんてことない蕎麦屋のくだりが忘れ難い。緩めに話が進む分、最後の惨殺屍体発見シーンはちょっと衝撃。しかし〆の「世界犯罪史上云々」はいくらなんでも言い過ぎだ。
角川文庫併録の短篇 「廃園の鬼」 密閉されない山地の館もの。高齢の学者と三度目の結婚をした元レコード歌手(素晴らしい死語)の新妻。彼女の元夫二人と金田一を交え数名の男女(大半は男性)が集い、その中の数名が同時に目撃する(折りしも元夫である映画監督のロケ撮影中)距離を隔てての新妻らしき女の謀殺シーン。。。。それは現実の事件か映画のリハーサルか? 事の真相はともかく動機の核心については、熱いものを内に込めたままのリドルストーリー。まソレについてはアレじゃあるまいかと想像もしたが、まさかそこまで徹底してたとは。。題名の「鬼」は、そういう意味か! ってやっぱりこっちの作品の方が熱く語っちゃうねえ。 |
No.591 | 5点 | ミステリーのおきて102条- 評論・エッセイ | 2016/08/19 13:51 |
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その昔、南武線は溝ノ口で古本を買って(新刊だったかも?)近くのラーメン屋でパラパラ見てすぐ売っちゃった、そんな状況が実に似合ってた軽~い一冊。目からウロコは落ちないがズレたメガネくらい直してくれる。かゆい所は掻かずにサラッと撫でてくれるようなライトエッセイ集。 但し、Tetchyさん仰るようにネタバレについては結構ヘヴィなので適宜ムニャムニャと流し読みも必要。第十四回吉川英治賞特別章受賞(←冗談です) |
No.590 | 9点 | 硝子の塔- 鮎川哲也 | 2016/08/19 10:10 |
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濃度高↑↑の名作撰ですね~~ 切ったらトマトジュースのドロッとしたやつだか血だかがドゥリュン!と飛び出そう。 『初めての鮎哲』には持って来いの一冊じゃないでしょうか!
※創元さんの北村薫セレクション#2と完全に被ってます(並び順までほぼ同じ)! 尚、「硝子の塔」という標題の作品は収録されておりません。がっかりしないでください。 赤い密室/碑文谷事件/達也が嗤う/誰の屍体か/金魚の寝言/他殺にしてくれ/暗い河 (光文社文庫) 【「達也が嗤う」に関してネタバレ考えオチ】 川崎フロンターレサポの私としては、「達也」はちょっと縁起でもない一品ですね、今年は特に! |