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[ クライム/倒叙 ]
忘れゆく男
ルイス・トリロジー
ピーター・メイ 出版月: 2015年03月 平均: 8.00点 書評数: 1件

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早川書房
2015年03月

No.1 8点 斎藤警部 2016/09/27 01:33
スコットランド西方のへブリディーズ諸島(時に都エディンバラ)が舞台、陰鬱な情感たっぷりに、重度の認知症を患う主人公の混乱したモノローグを挟みながら、特殊保存状況下で発見された半世紀前の他殺屍体を巡る霧の向こうの残酷な過去を掘り起こす重厚なモダンミステリー(2011年もの)。 DNA鑑定の結果、前述屍体の主と主人公の認知症老夫は血縁関係にあることが判明。一瞬にして濃厚な疑惑がおそるおそる彼に向けられるが、痴呆老人センターに入所させられたばかりの主人公から事を聞き出すのは不可能。エディンバラ市警を早期退職してへブリディーズの故郷に戻ったばかりの元刑事は、やはり警察を引退した元上司や現職医務官、そして遥か遠い日の恋人だった主人公老人の娘等の協力を得て、少しずつ真実に近づくが。。。。過去と現在に跨り、フェリーで哀しみの海を渉る各シーンにはMUTE BEATの’DUB IN THE FOG’がよく似合う。映画化するなら使ってくれないか。暴かれる過去には予想外.. の反転ポイントが複数含まれ、内いくつかは早い段階に、いくつかは終結近くでやっと明かされる。それら真実たちの絡み合いに過去と現在のしがらみ合いが被さり、周りで何が起こっているのかまるで分からない主人公を中心に、大きな意外性と小さな希望の灯を抱きかかえて息を切らしながらのストーリーは終了します。。 こりゃぁ重い。

当初は(ミステリ上)個人的な事件に属するかと思えた出来事が、読みすすめるに連れ社会派めいた強い背景を見せつける、のだが、最後やはり個人的な出来事に収束して消えて行く。そんな苦しく愛おしい長篇小説。 ジャケ買い成功。
実は「ルイス・トリロジー(ルイス島三部作)」なる連作の第二作目ですが、単品としてこれを最初に読んでも充分楽しめます。


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ピーター・メイ
2021年01月
ロックダウン
平均:5.00 / 書評数:1
2015年03月
忘れゆく男
平均:8.00 / 書評数:1