皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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斎藤警部さん |
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| 平均点: 6.69点 | 書評数: 1433件 |
| No.1033 | 7点 | 死人はスキーをしない- パトリシア・モイーズ | 2021/03/05 11:58 |
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| 「訂正しましょう。あの方はあなたを、自分のいのちよりも愛していたのです」
題名に違わず、山とスキーこそが様々な鍵を握っている華やかさ。正統の英国本格推理。怪しい偽証タペストリーがもたらした味わいのアラベスク。この、◯◯◯二段底は。。それは、冷たく温かい、未必の故意なのか。。二つ目の殺人のアリバイ偽装を露骨にしといて、、って事か。。あの時点で真犯人をいかにも分かり易く見せたのも、その際どいバランスが結局は物語の感動に繋がった。 そっかぁあーー ある意味、逆仕事ミステリともいえるかなーー イタリア人とドイツ人がやたら出て来ると思ったら、日本人も真っ青の細か過ぎる超アリバイ時間管理が登場したのは、ちょっと笑った。 ■■の物理的心理トリックも良し。 結末直前のコージー過ぎる緩さから、真相暴露&モアの急斜面の熱さへと雪崩れ込む所は、センチメンタルなスリルがあったな。 いろいろ思う爽やかなエピローグ。 しかし、クリスチャニアと来たか!(古い翻訳) 「鉄面うどんすき」こと「DEAD MEN DON’T SKI」こと「死人はスキーをしない」。近頃の若者はスキーをしない様だから、この「死人」というのも現在の閉塞した状況に置かれた若者の事を譬えているのかと思いましたが、違うようです。 「なんでもありません、 (中略) 嬉し涙です」 |
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| No.1032 | 7点 | 猫の舌に釘をうて- 都筑道夫 | 2021/03/02 17:07 |
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| 単語もフレーズも、文章も小説構成も、無駄にと言いたいほど勿体ぶって解りづらい要素が多く、短い割には読破に時間を要するかも知れないが、そこんとこアタイは好き。 前代未聞?の「読者への挑戦」の趣深さがアッと言わない間に捲られるのは歯痒さメランコリーだが、その忙しなさも独特の味。 やはり、完成品として締まっていると思います。 「三重露出」がもんじゃ焼きずっころびだったアタイも、本作にはジルバを踊るコツを教えてほしいです。 予告一人三役自体は、面白いアイディアだけど、さほど決まっちゃいませんよね。。でもそこは捨て石ながらアシスト一点ゲットしてますよね。。 虫暮部さん仰る様に、猫舌ホットコーヒーのアレは、アイラテ一本のアタイには盲点返しの伏線引き倒しも上等で、硬くて噛めない白い恋人を巡っての宮大工アクションシーンin札幌もある意味究極の逆アリバイトリックとして珍重します。 前期ZOOファンだったアタイとしては、後期ZOOとEXILEに足りないのは本作のような余裕ある遊びだよなー、と切に唇を噛む。いや噛まん。 最後に、これはマジネタバレですけど、 「そっくりさん」ってのが実は本格ミステリの核心を突いていたってのはね、わかりませんでした! 目眩まし大成功! | |||
| No.1031 | 6点 | 大穴- ディック・フランシス | 2021/02/28 11:14 |
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| 「オザケン」こと「ODDS AGAINST」こと「大穴」。原題は「見込み薄」って意味合いに賭博用語を絡めてるんでしょうが、邦題はちょっと厳しいですね。それでも競馬用語に落ち着かせたあたり苦心が伺えましょう。
序盤~中盤にこんだけやっといて最後の最後にこそ圧縮されたミステリ妙味が噴射するニクい構成。お蔭で期待を持たせた格闘スペクタクルは犠牲になりましたが、冒険小説として失ったものは少ないでしょう。ラストカンバセーションも最高に締まります。(だったらもうちょっと全般的にミステリミステリしてよい気もするが、、面白いから良し。) 写真に写った何がそんなにヤバいのかというホワッツホワットが謎解(ほぐ)しのベクトルへ牽引。 冒頭近くの「石を並べる」シーンも謎めいたまま有無を言わせぬ謀略推進で読者興味をはじけさす。 善悪の区別はスッキリしたもんだが、悪役側のメンバー構成にちょっとした味な所もある。 主人公はいい友人達(異性含む)に恵まれている。忘れ難き会話やお別れのシーン等いっぱい。チコが、病床のシドに或るパンフレットを置いていくシーン、泣けました。 非ハードボイルド文体の影響もあると思いますが、主人公がマーロウの様な無名タフガイとは真逆の、弱さの目立つ人間臭い有名人って造形が、少しばかり面白い。 |
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| No.1030 | 7点 | 共犯マジック- 北森鴻 | 2021/02/22 18:52 |
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| 長篇じゃん、って思ったりもするが、各話で完結する登場人物や各話ならではの味わいも充分あるから、やはり連作短篇集なのか(この微妙な構造、いいねえ)。それにしては最終話。。よくも繋げきったなあ(連城「暗色コメディ」を彷彿とさせた)。だけどちょっと大袈裟空回りかなあ、、ファンタジーの力を借りたとは言え。。無理筋の行動もあるし。。エンドも特に怖い拡がりがあるわけでは。。でもやっぱよくよく緻密に構築されてる話だわ。 それぞれの短篇があからさまな結末積み残し感を見せつけて終わる分、全体結末への期待値は高まる。 一方でそれぞれの短篇も実に面白い。
フォーチュンブックなるキーガジェットが放つ何やらの平成的安っぽさも手伝い、最初は軽い軽い連作短篇かと思ったけど、どっこいだぜ。。問題のブックが悪の主役として前面で立ち回るのでなく、悪意の傍観者的狂言回しの役に徹するのも良い感じ。連城を思わせる細かな、或いは大きな真相意外性もたっぷりだ。横須賀線爆弾の件、未完成彫像の件、贋作トリックの件、偽500円硬貨の件、通りがかりの親切な人の件、或るものの入手動機の件、それらの、より大きな事件との繋がり方がそれぞれレベル違いの複雑怪奇っぷりで実に面白い。時系列のアレもねえ。。。。中小叙述トリック的なものもあるけれど、それより大叙述ギミックの爆発が見得切りまくりですよね。 戦後昭和犯罪史をストーリーの背景と見せつつ、実は。。 あと一つ、強烈なクサビを打ち込んでほのかに漂う何気なチープさと残留違和感をぶっ飛ばしてくれてたら8点行ったなあ。。 再読じゃなくて、すぐ読み返したくなるよなあ。。 |
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| No.1029 | 8点 | ペスト- アルベール・カミュ | 2021/02/19 17:00 |
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| 或る人物の書いた手記が時折、別の人物の書いた手記を引用しながら進むという構成の本作は、ささやかな叙述トリック的なものを含んでいるのですが、書評サイト等を見るとそこんとこ普通に(ほとんど無意識で)ネタバラシされてますね。。いくら狭義のミステリ小説じゃないからと言って、そこは伏せておいた方が感動もより大きいと思うのですよ。。小説なんだからよ。。
コロナ環境でよく売れている様ですが、実際読んでみると、今の状況と(時系列込みで)符合する箇所のあまり遍在っぶりに舌を巻いてしまいます。本作では疫病の一旦終息までが語られます。これから終息の時を迎えんとする(かも知れない)現実世界でも果たして本作で描かれたような現象が今後起きるのか、優しく見守って行きたいものです。 本作でペストが時ならぬ蔓延を見せるのは第二次大戦後アルジェリアの中都市一つだけですけど、COVID-19の方は地球の全陸地を跋扈、その大部分はネットで繋がった高度IT化社会(言い方が古いw)。そういった違いも少し念頭に置いてアナロジーを脳内拡大させながら読むとまた一段と興味深いかも知れません。 確かに理解しづらい箇所には出くわします。それをハイジャンプで上回る面白さがあります。印象的なプレーズや台詞も頻発。広義のミステリにギリギリ含まれる(この時代に不謹慎ですが)エンタテインメント書として読んでみてはいかがでしょうか。と言っても冒険小説でもサスペンスでも政治スリラーでもなく、感触はやはりハードボイルドです。(チャンドラーを思わす夜の海のシーンは本当にアンフォゲッタブル。)友情の喜び、愛の苦しみ、生きる迷い、有難み等々を一歩引いた観測点から冷静に叙述している、実はそこに、前述した叙述トリック的なものが絶妙に機能しているわけですが。。 |
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| No.1028 | 6点 | 世界の終わり、あるいは始まり- 歌野晶午 | 2021/02/15 10:54 |
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| “私はやはり自分がかわいい”
これは間違い無く、真っ当な平成の新本格ミステリなんだよな。。違うのか。。と疑いが芽生えたのは物語進行のどのあたりだったか。途中から、妙にこの小説に不似合いな気がする、格好よくないユーモアが頻出。この親父何やってんだよーー いろんな意味で。。だがしかし、物語の半分にも遠い地点でギラつきすぎるスーパークライマックスらしきものが露出。これによる、物語後半というか全体像への期待感の勃興ったらない!ハードル上げまくったもんだなあぁ、やけに、と感心する。これは間違い無く、真っ当な平成の新本格誘拐ミステリなんだよな。。気付けば、何なんだこの章立ての。。おい、どういう展開のハンドル切りなんだ。。徐々に、これはもしや、アガサ流の真犯人隠匿術を真相隠匿に拡大応用しているのではないかとの疑いが。。最後の最後近くに、推理クイズというか鮎川さんの緩い倒叙短篇みたいなの、の更に多重解決版みたいなのが出て来ちゃったよ。。まさかそこで。。エンド、唐突に気分が変わるなあ、これでいいのかなあ。拳銃の件もあるだけに。。(アレの確認とかどうするつもりだろ)。。何より、このエンディングで受け止め切れてないでしょ、それまでの物語の圧力を。恐るべきリーダビリティを持ってはいましたし、読んでてとても愉しかったですよ。文庫解説にもありましたが、その後の歌野さん快進撃を想うと、実験敢行した甲斐は充分あったのではないでしょうか。 これを言うとネタバレになると思いますが、途中から西澤保彦「七回死んだ男」を読んでるような気分にもなりました。多重解決ひとひねりは若干うるさかった、的な。 |
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| No.1027 | 8点 | 五匹の子豚- アガサ・クリスティー | 2021/02/12 18:09 |
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| くっきり魅力的な目次構成は、見立て容疑者の趣向自体まさかの欺瞞じゃなかろうかと、愉しい疑義も唆しました。 十五年前の殺人事件(?)、死んだ父と、犯人とされた母の間に生まれた娘。。事件当時は幼い子供で今は成人。。が、その真相を改めて究明して欲しいとポワロに依頼、ポワロは容疑者を五人に絞って直接に話を聞きに赴き、また後日には文書に纏めて送らせます。文書を読み再検討した上で、も一度、各人に最後の質問を投げかける。。締めには依頼者を含め一同六人集めて大団円。。。。。。 無駄なく厚みある中盤を惜しみながら読み進み、なかなか顔を見せない終盤へゆっくりと入るにつれ、いっそいつまでも物語よ終わらないでくれと、人生最終読のミステリはこれくらい趣深い謎を残して読書中絶のまま死んでしまったらそれも良いなどとあらぬことを考えてみたり。 終わってみれば、向く方向が全く異なる二人の「永遠の■■」が生成された物語、だったというわけですか。。。 嘘を吐き通した筈の真犯人が実は漏らしていた心情吐露の部分、振り返るとディープ過ぎて泣けて来ます。真犯人は勘で薄っすら疑ってた人物で正解でしたが、真相全体像は、まさかの想像範囲外でしたね。。。。(「●●い」が鍵になってるんだろうな、というのはその通りだったけど、まさかここまで深く爪刺す要因だったとはね。。) 味覚と嗅覚がポイントとなる話でもありました。 tider-tigerさんもご指摘ですが、人情ドラマを隠れ蓑に(?)パズル性で押した凄みがある一篇ですね。 最後にポワロが指摘した「それ」の怖さ、連城の某短篇が頭をよぎりました。 | |||
| No.1026 | 6点 | 七回死んだ男- 西澤保彦 | 2021/02/09 18:33 |
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| ご都合特殊設定ハピネス最高!品の無いドタバタ最悪(笑)!何が因果律だよ。。笑 日程だの抑止力だの伏兵だとか何だとか。とは言えしかしまあ、よくここまでバターン考えたものですね。殺人を防ぐための ”アレ” の範囲が泥縄式に際限なく拡がって行くのが何とも滑稽!本筋とは何だか違うような?本筋そのもののような?気になる謎や違和感もしっかり道連れにするからミステリ興味も充分キープ。本格ミステリにおける「真犯人像」のパロディという趣向が見えなくもない。重い社会問題である⚫️⚫️をこれ幸いと?ミステリ核心へ軽妙に引っ掛けるとは、何たる!!w ロジックの多重解決とは非なる、問題の多重解決というか回避、なかなか斬新。文庫あとがきの北上次郎氏もおっしゃる通り探偵役の在り方としても画期的なのかも。何気にショッキングな筈のメイントリックその2(?)もこの終始パープーなムードの中で一瞬しか響かなかったwもったいない!(でも後から結構じわじわ来ないこともない) 逆叙述トリックとも違う、半叙述トリック?? んだどもエンディングのイヤコメディぶりは後味最悪!!w ことはさん、語り口の件、同感です。もうちょっと最低限のシリアスな緊張感というのが無いものかと。。 それと、これはネタバレ案件と思いますが、、、、Dマンさんご指摘の通り、、、 弁護士の扱い、惜しいよなァ。。。 | |||
| No.1025 | 6点 | バルコニーの男- マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー | 2021/02/05 14:38 |
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| リアリティ磐石に落ち着いた書きっぷりで、被害に遭った少女とその親の悲惨さにも、証言する男児の可愛いさにも、殺人鬼の異常さにも強盗犯の兇悪ぶりにも焦点が偏らない、道の真ん中を往く不偏不党のストーリー。その所為かこんなバーッドな犯罪がテーマでも意外とあっさり風味。警察小説ならではの展開意外性も発揮。悪くない。
クリスティ再読さんの > 「偶然も絞られていって、蓋然的に必然に近づいていく」という風に読むといい に強く賛同です。実生活の仕事等でもその側面は大きいですよね。 |
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| No.1024 | 8点 | 他殺岬- 笹沢左保 | 2021/02/01 15:52 |
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| いいタイトルだ。この作品は薫る。素晴らしい導入部から書き下ろしの力作オーラが漂い尽くします。殺人犯人追究の動機があまりに特殊!!それに従い容疑絞り(選び?)の在り様も独特。タイムリミットの存在理由さえトリッキーそのもの。そして”もう一つの殺人”の、意表を突くほど素っ気無い置き方。何と言っても機動力ほとばしるプロットと各人の行動、そして最終解決への数歩の友情含む味わい深さ。父子の情愛はハードボイルド流儀で描写(ラストシーン。。)。社会派要素は煩過ぎず控え目過ぎず、くすぐる様にスリルを助長。板チョコ好きな探偵役(!)。最後の、謎を引き摺ったままの冒険行脚は頼もしい。心理面大いに含めて犯罪物語の構図がグラリガタリと大きく間を取って崩れ再構築される逞しい筋運び。最後まで緩む事無く走り切ったね。振り返れば、誘拐の”そこまでする”理由にかなりの数の疑問符も飛翔したが。。いや、よく考えたら、そこはそうか、分かった納得。 ところで天知と真知子が結婚したらアマチマチコ。。そのあたり、微妙なアレとして作者は扱っていたのかな。。 それにしても最初に自殺した男、IKKOさんとショーンKのイメージなんだけどどうしても両者が混じり合わなくて悩んだ(笑)。 | |||
| No.1023 | 8点 | トライ・ザ・ガール- レイモンド・チャンドラー | 2021/01/26 16:40 |
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| シラノの拳銃..夥しい登場人物と高速展開に翻弄された末、血流が戻ったようにじんわり来るエンディング。。
犬が好きだった男..引き摺り込む導入部と、やはりピカ一の終結部。 ヌーン街で拾ったもの..またしても最高の上に最高過ぎるエンディング。リドルのふりなんかしやがって。。 金魚..腐れ縁的友情の相手がノンケ同士の異性というのがいい。推理クイズもどきの小さなトリックも味がある。 カーテン..この真犯人、真相意外性をミステリとして成立させるだけのために、本格とは違うハードボイルドなるジャンルを発明したとしても悔いは無かった事だろう。 トライ・ザ・ガール..ストーリーの中で最も沁みるエンディング〜ラストシーンに尺たっぷり取ってくれてるのがありがたい。 翡翠..コミカルなドタバタ劇、ワイズクラックも心なしか喜劇的。お決まりとは言え噛み応えある真相を道連れにラブコメ調エンドへ。。 どれもこれもじんわり沁みる愛おしい作品たち。後の長篇に一部再構築して組み込まれたのも数篇あり、どこかで見たようなシーン、聞いたようなストーリーに時々遭遇するのが面白いが、どれも長篇とは違う独立した中短篇として、じゅうぶん愉しめましょう。 |
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| No.1022 | 7点 | 天に昇った男- 島田荘司 | 2021/01/21 18:40 |
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| 赤い公園の「108」曲想を彷彿とさせる、時系列行ったり来たりの複雑な一筆書きを一気に書き切ったような疾走作。短篇でなく、長~い長篇でもなく、中篇に近い短めの長篇だからこそ活きる、このエンドでしょう。しかしこんな渋い主題の作でも微妙にバカな偽装トリックを持って来るなど、流石はしまそうです。 こういう内容の●を●●って事は、つまり、主人公の心の奥底に。。。。 というもう一つのどんでん返しも含んでいるわけか。。残酷だ。。 しかし(作者本人も語る)死刑に関する問題提起方向の押しはさほど感じられなかったです。 | |||
| No.1021 | 6点 | われはロボット- アイザック・アシモフ | 2021/01/19 11:31 |
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| 超虚数キタア。。 回顧録インタビュー相手の肩書が何しろ「ロボット”心理”学者」!
クリスティ再読さんのおっしゃる「デバッグの面白さ」「パズルのよう」等々、本当にその通りと思います。 かの『ロボット三原則』その前提というか枠組みの中で展開されるミステリ興味であったり冒険であったり、問題解決であったり議論であったり、闘争であったり。 プログラマー的立場で、自ら提唱した三原則に穴が無いか再検証するため様々なテストケースを作って小説の形で実験してみたら(それにしてはファンタジー性が強く緻密さは敢えて避けてる感じだが)想定以上に穴だらけで、こりゃ小説として滅法面白いという事が判明したぞ、みたいな? ロボット進化史の大河小説的側面もぶつけて来てることを考えると、その大胆な構成は益々知的興味を唆ってくれますね。 SFならではの割り切ってしっくりはまる論理パズル、という性格もあるかも。 以下、創元の表記になりますが 「証拠」。。熱い! 「避けられた抗争」。。深い。。 「堂々めぐり」の数学的面白さ! 「嘘つき!」「迷子の小さなロボット」のロジックも面白い(それぞれ性質は違うが)。 「理性」「逃避!」の危険なドタバタクレイジーっぷり。 やさしい「ロビー」に、滑稽な「あの兎をつかまえろ」。 バッサリした全体エンディングも印象的です。 人間及び人間社会のダメなところを、三原則を高次元で遵守した上で巧みに補完してくれる存在、それは。。。。 しかし令和三年現在から見てもしばらく未来の話なのに、所々昭和三十年代を彷彿とさせるワードが出て来るとは。。青写真(比喩じゃない方)とか。。 |
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| No.1020 | 7点 | 君らの魂を悪魔に売りつけよ―新青年傑作選- アンソロジー(国内編集者) | 2021/01/13 19:13 |
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| 永遠の女囚 木々高太郎
心理の閃光。忘れ得ぬ名篇。暴風のホワイダニット。時系列がダイナミックに移動を重ね、回想が謎とスリルを焚き付ける前半。切なくも熱過ぎる真相吐露が押し寄せる後半。壮絶なエンディング。やばい。 家常茶飯 佐藤春夫 題名の通り、ちょっとした日常の知恵。行方不明の本を捜す。まるで実用エッセイのようだが、登場人物の●●がポイントとなっているあたり、やはり小説。 変化する陳述 石浜金作 はいはい(笑)。 奔放な新劇女優が前言を覆し続ける心理の動きは面白いが、結末はミステリ流儀の反転とは違うかな、医学随想を小説風に仕立てたみたいで。躍動する中盤と悲劇的真相は読ませる。(ただ、最後が。。) 月世界の女 高木彬光 抜群の書き出しから、、随分とギャフンな真相までユーモアたっぷりに快走。ドタバタ大道具に見えた◯◯にそんな意味がね。。 彼が殺したか 浜尾四郎 やっぱこのタイトルに凄いインパクト。いっけん真相明白にしか見えない夫婦惨殺事件に、辻褄の合わない点が多数存在。それどころか、考察してみれば或る種の不可能状況! 大山を翻す最後の告白と、寄り添う補足が、絶妙のバランスでどちらも熱い。 印度林檎 角田喜久雄 奇妙なだけの小噺かと思ったら。。この●●●●工作の奥深さ味わい深さは、なかなかだぜ。決まってるね。 蔵の中 横溝正史 耽美の深さと●●●トリックの咬み合わせに幻惑されて、騙されました。 オチがただの落とし穴とも見えるが、だとしてもこの落とし穴は、床いっぱいの大きさだよねえ。。。しかも深い。 烙印 大下宇陀児 こいつアしびれる! 引き締まって痛快な、倒叙サスペンス娯楽大作(短篇だけど)! 背任の疑惑を抹消せんと、ずぶずぶと犯罪の泥沼にはまって行く美貌の青年実業家。 最後にヒネリがもう一つ無いのと、残った謎がミステリ的に深くない恨みも、このギラギラした面白さにぶっ飛ばされました。 解説・「新青年」の歴史と編集者 中島河太郎 戦争を挟んだ雑誌の黎明~興隆~凋落を纏めた資料は濃密なる文章。社会風俗史にも言及。興味津々。 「ははア、小説家などというものは、どうせ皆片輪みたような半気違いばかりじゃわい。」 |
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| No.1019 | 7点 | 蒼い描点- 松本清張 | 2021/01/08 17:05 |
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| “校了前の戦争のような多忙さと、そのあとの快い疲労とは、雑誌編集者だけが知る特殊な苦楽であろう。”
小出版社に勤める若い男女が、業務の合間を縫って(実はこの設定がちょっとしたミソ…)、或る人気女性作家の滞在先、箱根で起きた”スキャンダル売文家”の死亡事件を、編集長のサポートを得て調査開始! 控えめなユーモア、ささやかな旅情を道連れに .. 箱根だけじゃない、浜名湖のあたり、美濃国や、秋田までも行きます .. 爽やかな青春後期の躍動。 関係者が殺されたり失踪したり自殺したり実在しなかったり(?!)で次々と消えて行く、どこかに大きな盲点がありそうで大いに気を揉むストーリー。 「あっ」 典子は思わず声をあげた。 「あれが、あれが、そうだったの?」 ミステリ展開は、まるで初心者に見せつけるかの様な甘さを含んで始まり、前半にハードなサスペンスは漂わないがソフトロック的に心地よい律動がキープされ何とも快適。 中盤から謎が微妙な複雑性を振り撒きつつ増殖し始め、分厚いやや辛口にシフトチェンジする。着実に加速するスリル、更に拡がる疑惑対象が醸し出す、リーチの長いサスペンス。 実質的「読者への挑戦」のページも存在。 何気に本格ミステリ要素色々詰め込んだ仕事ミステリだねえ!(だが、この真犯人設定は.. ?? ←ん?)。 エモーショナルな真相クライマックスの後、理知的な会話の補足と爽やかなエンドで締めるのは素敵。 殺人トリックのヒントをくれた”国電に座り週刊誌の時代小説を読む自衛隊員”ってのも時代っぽくて良いな(S30年代前半)。 探偵役の男子、脳内でまたしても野田クリスタルが演じてくれた。 意外と、恋でもしちゃったか!?w そういやこの男子(竜夫君)、 「その理由は後で話す」 というパターンがやけに目立つんだよなあ、それも味。 当時創刊したばかりの『週刊明星』に連載されていたそうです。 全体的に若やいだ感じは読者層を意識したものでしょうね。 |
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| No.1018 | 5点 | 地層捜査- 佐々木譲 | 2020/12/31 09:05 |
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| 正味の話、事件そのものより、捜査に纏わる或る事のホワット及びホワイ(&少しハウ)ダニットが肝であり、その比重を物語の中に大きく感じられるほど感動も大きくなる事でしょう。私の場合は、まあこんなもん。いっそ、この 【次の一言はネタバレかも知れません】 “捜査妨害” がもっと強力なファクターとしてガッツリ根幹を貫いていたら、、 ちょっとヤバいくらいの作品になっていたかも。 【次の一文はネタバレかも知れません】 ただ、その上でシリーズ化するとなると、それなりのトリッキーな技倆と胆力が要りそうですが。。 そういう世界も見てみたい。
嘗ての花街、四谷は荒木町で起きた十五年前(地上げブームが収まった頃)の未解決殺人事件を再捜査する筈が、その途上で三十年前の失踪事件が露呈、それは地層の掘り起こし。。。事件が起きるのは現場だけじゃない、地域だ。。という物語。 だけどね、警察小説だからどうってんじゃなく、ミステリ的に微妙な捌きで、真犯人像も膨らみ切らずに終わるのが恨めしいが。。そもそもの言い出しっぺも放り出されっぱなしだが。。こんだけ登場人物出し散らかしといて。。ん~~ん、、とは思う。歳が離れているせいか、片方が退職警官のせいか、バディがバディになるまでの確執等ほぼ皆無でスルッとし過ぎかな。。でもまあ、読んでる間は面白かったですよ。水戸部が脳内でずっと野田クリスタルでした。 |
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| No.1017 | 7点 | 龍神の雨- 道尾秀介 | 2020/12/29 16:39 |
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| ターニングポイントとなる”お墓参り”のシーンがやけに沁みます。
“ものの五分ほどで、椿の蕾はばらばらになった。魚の鱗のような、緑色の萼(がく)が作業台の上に散らばり、水っぽい、少しピンクに色づいた幼い花びらが、その真ん中で無惨に千切れていた。” ヒリヒリ来る攻めのカットバック(二家族それぞれの兄弟/妹愛と、義親との軋轢と..)は早期に点で交接。双ストーリーは一旦分離、ややあって再会、接面がじわりじわりとサスペンスフルに拡大。。。。まさかの方向からの参戦者と思い切りぶつかり合ってクタクタに萎れた最後、ダークグレイの雲間から淡い光が差している。。最後のラジオニュース連打。。(聞いている彼等には、その意味がまるで分からない)。。。大きな考えオチなのか、救い切らずに終えるのか。 スッキリ見せない匙加減が凄く良い。 “長いこと自分の周りにまとわりついていた重たいものが、手品のように消えるのを感じた。それが何だったのかはよくわからない。しかし、わからなくてもいいと思った。もう消えてしまったのだから。” 本作のミスディレクションは、道尾さんらしい読者側へのものと、かなりの意外性と衝撃孕む小説内部のものと、両方向に向けて強烈です。 “想像は人を喰らう。” 目次にも視覚的/意味的ギミックと魅力があります。 ご注目ください。 最後に、これを言うとネタバレっぽくなるわけですが。。。。。 翔子はどうなったんだ。。。。 |
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| No.1016 | 7点 | お前が犯人だ- エドガー・アラン・ポー | 2020/12/27 11:00 |
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| 容疑者一人、物語上は二人、いや本当は三人、だが実質的に二人(ただし後年の読者が最初からミステリと決め付けて読むならば)。 パニックホラーと見紛うクライマックスが熱い! 真犯人特定の決め手がいくら何でも緩すぎるんじゃないかと、訝しくも思うが。。 深夜、暗闇の中で読みたい佳品です。 | |||
| No.1015 | 8点 | 黄金虫- エドガー・アラン・ポー | 2020/12/27 10:43 |
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| 暗号解きも古いながら良いが、某人物が何故そこに(英語の)暗号があると気付いたかの機微が素晴らしい(ちょっとした叙述トリック?含む)。 理論と実践に跨る冒険の進行も爽やかで、これ言うとネタバレかも知れないが、陰に始まり陽に終わる物語の逆転感も興味深い。 だが陽なばかりにせず、ちょっと怖い考察で締めるのも流石。 | |||
| No.1014 | 6点 | 特急「あずさ」(アリバイ・トレイン)殺人事件- 西村京太郎 | 2020/12/25 10:49 |
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| タイトルに、こう見えてなかなかヒネリ有り。アリバイと言っても、目の前の事件より一つ奥の事件に絡む特殊過ぎる謎。。ううーむ、堂々のアリバイ剛腕変化球!しかもその奥の方の謎がふてぶてしくドオンと膨らみみやがるんだね。無駄なく味わいも失わず、推理小説として最適化された素晴らしい文章と展開。ただ、そのトレードオフで悪癖の思い込みズバズバ的中がちょっと目を覆う暴走レベルだったりするが。。旅情まで見事に素っ飛んでますが。。極限まで体を絞ったご都合ミステリもまた良し!ラストクォーターの冒険アクションでアンチクライマクスほぼ回避!不当なほど爽やかなラストシーンも、、されど優しい。馬鹿だなあ、俺。新井優子ってのが新木優子に思えて仕方ない。ちょっと過激な社会派要素は強烈なスパイス。仮に本作をガチ社会派と想定したらいくらなんでもリアリティがグラグラ過ぎる(だが小説より奇なるリアル世界では逆にありそう)。 何気に奇想が光る一冊。 忘れ難き読み捨て本、になりそうな予感。 | |||