皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
ミステリ初心者さん |
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平均点: 6.20点 | 書評数: 388件 |
No.14 | 6点 | 忌名の如き贄るもの- 三津田信三 | 2022/02/24 18:42 |
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ネタバレをしています。
待ちに待った刀城言耶シリーズ新作長編です! 相変わらず戦後の時代と民俗学の合わさった良い雰囲気です。ただ、今回はいろいろな難しい用語が多く、刀城言耶シリーズにしては意外なほどページが進まず、読了まですこし時間がかかりました。特に、場所を表す言葉がおおく、位置関係を頭の中で想像するのが大変でした。そのため、地図が欲しかったところです。 推理小説的要素について。 解決編前まで読み、既読の方からヒントをもらいながらあれこれ妄想しつつ推理しました。ヒントがなければとても真相にたどり着けないような、ものすごい数の伏線とミスリードでしたね(笑)。それを存分に活かした意外な犯人は、シリーズ屈指とも言えます。 今作一番の良い点といえば、犯人のその意外な動機です。なぜ市糸郎はころされたのか? 葬式がしたかったからだとは、なかなかに狂っていますね。それを推理するためには、尼耳家が村八分にあっていることを理解しなければならないのですが、ここには読者・探偵共に与えられていない情報が隠されていましたね。すこしだけ叙述トリックのような香りのする仕掛けですね。 村八分・葬式といった、本シリーズと相性の良い要素を、動機に絡めたところが、本作で一番気に入っております。 以下、難癖部分。 トリックは遠隔殺人。ヒントは出ておりましたが、尼耳家の人間がほぼ全員アリバイがないため、推理は難しいものになるでしょう(笑)。このトリック、遠隔殺人系で超有名作品にほぼ同様のものがあり、オリジナリティーという点では評価できません。凶器の処理について滝を利用するアイディアは見事でしたが、有名作品には他にも遠隔殺人があり厚みでは全く敵っていません。 また、これは本シリーズでもお決まりのパターンですが、証言者がかなり信頼できません。今回は視力が悪いとのことなので、ある程度は予想した居ましたが。証言者がミスリードにしかならないのは、カーも一緒ですね(笑)。 総じて。 アリバイトリックや論理的な犯人当てを期待すると、すこし期待外れな感じがあります。刀城言耶シリーズは多重解決が売りの一つでもありますので、論理的な犯人当てができないことを許容するとしても、犯人のトリックが小粒すぎるのはいただけません。 しかし、ガチガチの本格推理小説ではない、一冊の本としてみるならば、非常に面白い本であることは確かです。私はアリバイトリックと犯人当てが好きなので点数は低めですが、良い作品なことは確かです。 |
No.13 | 6点 | 魔偶の如き齎すもの- 三津田信三 | 2021/06/20 18:55 |
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ネタバレをしています。
全て刀城言耶シリーズの中短編です。これまでのシリーズ同様、妖怪や宗教や民俗的(?)なホラーと、多重解決が楽しめる本格推理小説です。シリーズのファンなら楽しめると思います。 ・妖服の~ どうやって凶器を運んだか?ということが焦点になっています。 電話線を使ったり、花火を使ったりする推理は楽しめました。郵便局員のコスプレをした推理が一番現実的に感じました。 私は、回覧板を使ったのではないかと一瞬だけ考えましたが、まさかあの時点ですでに殺し終えてるとは思いませんでした(笑)。 ・巫死の~ いかにして不二生は消えたか?が問題です。 設定が面白く、話に引き込まれました。しかし、最終的な推理は私の好みではありませんでした…。 ・獣家の~ 2人の獣家についての不思議な証言と、インチキ宗教に騙された男の証言から合理的な解決をする話です。 大学生の証言が坂を下っていることはわかりましたが、歩荷の証言を照らし合わせるのが面倒で、真相には気づけませんでした(笑)。ドラマのトリック的な、大がかりな真相でしたが、面白さは普通ていど…。 ・魔偶の~ 密室に近い事件です。不可能犯罪というわけではなく、4人の中から誰が犯人であるかとうのが問題です。卍堂の見取り図を見ると、思わずワクワクしてしまいますね(笑)。 実は私は、祖父江偲が登場したとき、露骨に怪しんでしまいました(笑)。シリーズを読んでいる人にとっては、みんなそうだと思います。関西弁やうちなどの特徴がみられませんし、微妙にキャラクターが異なっていますもんね。 祖父江偲犯人説は置いておき、他に考えたのは、お里犯人説に近いものでした(笑)。 小間井犯人説は、連作短編特有の、それまでの話にヒントが隠されている感じで面白かったです。 魔偶の~全体として、動機や印象で犯人を決めつけている感じがあり、本格推理小説としては叙述トリックありきな印象でした。 もうすぐ、シリーズ長編新刊がでるようですね。たのしみです。 |
No.12 | 6点 | ホラー作家の棲む家- 三津田信三 | 2020/02/12 19:03 |
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ネタバレをしています。
すでに書評をしていたと思っていたのですが、どうやらしていなかったようです(笑)。刀城言耶シリーズで三津田さんのファンになり、購入しました。大分前に読んだので、ところどころ忘れてしまいました。かなり読みやすく、読み終わりまで時間がかからなかった印象があります。 作者と同名の主人公が書く本が作中に登場する、いわゆる作中作です。主人公が書くホラーと、主人公が体験するホラーが同時に進行します。リョウコ?の正体が明かされ、過去の事件の犯人が主人公だった?というような感じになります。そんな感じのストーリーだった気がします。主人公が作中作のようなこと実際にしていたら、つじつまが合う…的なラストだった気がしますが、はっきりとは解決しません。この辺りはミステリではなくホラーなので、こういうラストもありかと思います。 この作品はミステリというよりホラー感が強いです。私はホラーはあまり読んだことがありません。なので、点数をつけるのが難しかったです。6としてみました。 あと、関係ありませんが、私が読んだ三津田さんの本の中では一番表紙が怖いです。忌館のほうです。 |
No.11 | 6点 | シェルター終末の殺人- 三津田信三 | 2019/09/28 02:24 |
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ネタバレをしています。
この本を読む前に、海外作品を読んでいたのですが、あまりの読みづらさに三津田信三に浮気(笑)。さすが三津田さんの文は読み易い!終わりまで一瞬でした。 核ミサイルが落ちてきて急いでシェルターに入ったという、かなり特殊な状況のクローズドサークルですが、読み進めると王道クローズドサークルの流れを踏襲しています。出られないという状況での連続殺人。最後に残った一人は犯人ではない・・・ならだれが?という感じです。 殺人が多く起こりますが、密室が多いです。ほぼ全て物理トリックであり、私は好みではありませんが、案外楽しめました。密室であることの理由は良くわかりませんが、まああの結末なんでどうでもいいか(笑)。 割と初期の段階でこの本が三津田による記述であることが明かされます(というかこのシリーズはメタミステリだが今回はノートパソコン持参)。記述に嘘があるパターンもありますが、今回は記述者がひそかに代わるといった驚き要素もありました(主観を曖昧に書いてごまかす系叙述と似てますね)。 結末はかなり意外なものでした。それを構成させるために、結構無理をしていると思います。作中作にすることや、三津田が頭を打ったことなどでギリギリ成立しているような。しかし、仮面の探偵(これも三津田の妄想?)による指摘で、三津田が一人でないとおかしい点が伏線として残されており、その点は見事でした。星影に引き継がれた後、その最後の文はどうやって星影が書いたのか?という疑問以外はさっぱりわかりませんでした。 以下不満点。 ・ミステリやホラーの映像作品の衒学?が多めでした。何作品かはメモさせてももらいました(笑)。ただ、ちょっとだけしつこかったかもしれません。 ・この結末に近いような作品は結構あると思います。近くは無いけれど、主観の精神が不確かなものは、夢落ちや記述に嘘がある系と同じような系統だと思います。つまり、オリジナリティーは感じませんでした。 ・自分が犯人で無いことは自分でわかっているッ という文は作中作の時点で効力がないと思う。 |
No.10 | 6点 | 碆霊の如き祀るもの- 三津田信三 | 2018/11/03 18:04 |
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ネタバレをしています。
このシリーズは好きです。雰囲気がとても良く、すいすいページが進みます。また、今回は密室4連発であり、豪華です! いつもの多重解決→どんでん返しもあり、いままでの流れが踏襲されています。 竹林宮の密室による餓死は好きです。偲との会話でヒント(もはや答え?)で気づきましたが、面白いですね。しかし、腕に縛り後など残らないものでしょうか? 物見櫓のトリックも、自分は好きでした。人形的なものを使ったとばかり思っていたのですが、死後硬直は盲点でした。過去に、死後硬直を利用した作品を見ていたのに・・・ 死体が無いのもミスリードですかね。 以下、好みで無かった部分 ・結局、四つの怪談に、何かしらの解決がなかったのは少し残念。竹林は途中会話にあった狼か何かかと思いましたw ・リレーの様な殺人で、笹舟の理由も納得ですが、一人による犯行のほうが好み。 ・絶海洞のトリックはいまいち・・・。 ・他殺に見せかけた自殺→密室は嫌い。 ・ラストのお決まりのホラー要素は、なぜか怖さを感じなかった。ラストの展開によって、ゲンヤの推理が破綻するようなものを期待していた。過去作品のように。 同シリーズの過去作品に比べ、ホラー要素や意外な犯人や大どんでん返しの面でスケールダウン感は否めません。ただ、大掛かりな仕掛けがないため、逆に本格度が上がっている気もします。 |
No.9 | 5点 | ついてくるもの- 三津田信三 | 2014/03/01 11:01 |
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ネタバレがあります。
そこそこ面白かったです 推理小説が、最後にひとつついています。ゲンヤさんシリーズです。これ、自分は結構好きなんですが、誰もが想像する展開かもしれませんね。どちらかっていうと、クロさんと偲さんと、言耶さんのトリオ漫才のような雰囲気を楽しむものかも。 |
No.8 | 5点 | 幽女の如き怨むもの- 三津田信三 | 2012/09/02 00:50 |
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ネタバレをしています。
シリーズの新作で、長編で、なにやらそそられる設定だったので、期待していました。面白かったのですが、少し期待はずれでした。本格度は低めです。かといって、ホラー要素もそう多くありません(遊郭の世界が一番怖かった)。 一番大きな謎が、あまりよくないというか、びっくりしない。長編では、最も意外度が低かったです。 あと、犯人の行動は成功するように思えません。 ヒサクラもヒザクラも似てるでしょう。萩原と荻原ぐらい似てます。 このシリーズのファンなので、若干辛めの点かもしれません。 |
No.7 | 8点 | 水魑の如き沈むもの- 三津田信三 | 2012/05/28 16:14 |
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ネタバレあります。
個人的には、はじめにの使い方が、このシリーズ中一番好き。途中で気づいたときにはニヤリとします。ヒントでもトリックでもなくミスリードです。これだけでもかなり評価が上がっています。 探偵の仮説と否定の部分がヒントになっているところも面白いです。 容疑者の選び方にロジックが多く入っているため、その点では首無より好きです。犯人の凶器の選び方、殺意が芽生えたのはいつか、潜水服?周辺の状態なと最高です。 ラストはさわやかでいいんじゃないでしょうか。そうでなくてもいいけど。 嫌いな点は、犯人にそれができたか? 特殊訓練を受けているように見えます。偶然も味方しているような気がします。 ホラーでみると、明らかに他の長編に劣ります。ややギャグよりになってます。人間の気持ち悪さは楽しめると思います。 全体的に好みな作品なので、甘目かもしれません。 |
No.6 | 7点 | 密室の如き籠るもの- 三津田信三 | 2012/05/28 16:00 |
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ネタバレあります。
短編と中篇で構成されていますが、中篇の密室の如き~は長編にも劣らないと思います。 長編にはもっと大きなトリックやどんでん返しがあると思いますが、この密室は凶鳥を超えてます。 派手さは無いですが、ミステリには派手さはいらないと思います。密室の如き~は犯人が特別すごいことをしていませんが、個人的には犯人はごく普通に殺人するほうが好みです。 派手さが無くても、ルールの穴を着くミステリは大好物です。 嫌いな点は、犯人に協力者がいること、偶然が味方していることです。この辺は長編で無いので甘く見てます。 |
No.5 | 8点 | 山魔の如き嗤うもの- 三津田信三 | 2012/05/28 15:51 |
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ネタバレがあります。
厭魅と首無にも引けをとらないです。手記が作中作的な役割があり、ある作品を思い出します。が、そこに嘘が無く、まったく別です(たぶん)。手記を書く人間がそのあと何の犯罪も犯さないわけは無いですしフェアです。 厭魅と首無よりロジックが強化された印象で、蝦蟇油?らへんのロジックはぐっときます。厭魅と首無の唯一の欠点を補われた気がします。 ホラー部分も好きです。狂った人間は一番怖いですね。 嫌いな点は、犯人に協力してしまっている人間がいること。 |
No.4 | 8点 | 首無の如き祟るもの- 三津田信三 | 2012/05/28 15:37 |
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ネタバレあります。
厭魅の如き~にも劣らないと思います。個人的になってしまいますが、いろいろな要素を入れすぎてちょっとごちゃごちゃしてしまった印象です。あと、物語を通じて、犯行を行った人間が複数て嫌ですが、まあそんなにマイナスポイントでもないです。 主人公の扱いがおおきなトリックに使われていますが、こういう己で作ったかそれまで作られた法則をぶっ壊すトリックは大好物です。 間違いなく名作だと思います |
No.3 | 9点 | 厭魅の如き憑くもの - 三津田信三 | 2012/05/28 15:27 |
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ネタバレあります。
生霊の如く~まで読んだ中では一番好きな作品。自分のミステリに求めるものが全部ありました。読みやすさ、ダレない展開、どんでん返し、意外な犯人。犯人のばらし方も最高。 読むのが遅い自分が、ほとんどすぐに読み終わったぐらい引き込まれました。 唯一嫌いな点は、容疑者のはずし方に『動機が無いから』とかある点。言耶さんは自分の推理を否定するけど、その推理が正しくても別にいいということも嫌です。 犯人をより1人に断定できるなにかがあればいいと思いました。 あと、ある程度ミステリを知っている人向けだと思います。最大のトリックはある約束事の上に成り立ってるかも。 この作品は、ある意味、親父ギャグが理解できないと楽しめないと思います。 自分は完全にフェアだとおもいます。 |
No.2 | 4点 | 凶鳥の如き忌むもの - 三津田信三 | 2012/05/28 15:05 |
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厭魅の~を読んだ後だったので、ハードルが上がった状態で読んでしまったせいかも知れませんが、ちょっと期待はずれ。
密室系で、オリジナリティーは高いと思うけど、なんか好きになれないトリック?です。 ホラー部分は怖いところがあります。穴をみると目があるっていう部分は怖いですが、似たような話はあるし…。 今のところ刀城言耶シリーズ長編で唯一楽しめなかった作品。 |
No.1 | 6点 | 生霊の如き重るもの- 三津田信三 | 2012/05/28 14:09 |
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新書を読みました。好きなシリーズなのでちょっと厳しく6点。あと、密室の如き~のほうが好きというのもあるかも。
どの作品も読みやすく、雰囲気も最高でした。図をのせてくれるのもよかったです。短編には阿武隈川がもっと出てほしかったです。 ミステリでは犯人をほとんど当てることのできない自分ですが、この作品では2作品当たりました。なので難易度はやさしいかもしれません。ミステリ玄人の方では物足りない可能性が。 この作品中、一番おもしろかったのは顔無しの如き~でした。ホラーの怖さも顔無しが一番でした。真相も怖い。 動機に関しては強引というのも分かりますが、短編ですし、まあミステリに動機はおまけかなぁと |