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ミステリ初心者さん
平均点: 6.20点 書評数: 377件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.177 6点 黒い白鳥- 鮎川哲也 2019/07/18 02:35
ネタバレをしています。

 犯人の緻密な計画や、アクシデントを利用しそれを計画に組み込む機転に感服しました。また、私が今までに読んだ鮎川作品よりも今作のほうがより犯人について細かく書かれており、小説としての厚みを感じました。

 しかしながら、鬼貫警部が登場するまで、個人的に好みではない展開でした。そのため、なかなかページが進みまず、読みづらさを感じました。社長の死~動機探し~犯人候補のアリバイ検証→候補から外れるという繰り返しは苦手です(笑)。労働組合と会社側の対立、宗教団体との対立も面白さは感しませんでした(宗教団体のほうは、非常に怖かったです)。
 さらに、犯人にやや都合が良い証言者や、予期せぬ偶然の要素はどちらも好みではなく、その点では期待はずれでした。

No.176 5点 高原のフーダニット- 有栖川有栖 2019/07/09 19:07
ネタバレをしています。

 短編2つ、ショートショート1つが収録されていました。

・オノゴロ島のラプソティ
 作中のアリスの"叙述トリック"への思い(?)が面白かったです。メイントリックはまったく見当もつきませんでした。三毛猫ホームズはヒントなのか(笑)。主観のアリスも読者も同時に驚き、なおかつ文に嘘は書かれていません。がメイントリックが若干のバカミス的?な大掛かりなものでした。

・ミステリ夢十夜
 夢の国の人形の中に入っていてアリバイが言えない容疑者や、迷路すぎる館がおもしろかったです。味覚障害者のあつまる毒殺は、なにやら長編に使っても面白そうな話でした。第六夜は、私のパープリンな脳ではいまいち理解できませんでした。

・高原のフーダニット
 殺しあった双子のうち、どちらがどちらか見分けられたものが犯人ということはわかったのですが、バードウォッチングの機材の性能やどの程度遠くをみられるのか(雨上がりなら湿度が高くあまり遠くまで見られないのでは?)が想像できませんでした。フーダニットは好きですが、この作品はいまいち。
 ※今調べたら、雨上がりのほうが良く見えるらしいです(笑)。失礼しました。

No.175 7点 首無館の殺人- 月原渉 2019/06/28 19:17
ネタバレをしています。

 昔ながらの、コッテコテの推理小説要素満載で、満足しました(笑)。孤島、記憶喪失の主人公、首無し死体、空飛ぶ首の怪奇、謎の幽閉された人…最高ですね…。これだけの要素を詰め込んだにもかかわらず、どれもしつこくなく、非常にテンポ良く読めました。横溝作品のような雰囲気がありましたがどうでしょう。
 首無し死体というと、その死体と犯人が入れ替わっていて、死んだとみられた人が犯人…という展開はよくありますが、この作品はそれを逆手に取り(?)、さらにその前に全員入れ替わっているという構成が面白かったです。
 私は、空飛ぶ首の怪奇の正体がなんとな~く予想できたので、大体の展開は読めました。ただ、フーダニットや、アリバイトリックと楽しむ類の作品ではないので、当てたことよりかはそれが好きかどうかだと思いますが。

 好みで無い点をあえて挙げるとすれば、この作品ならではの強い個性はなかったように思えます。昔ながらの展開は大好物なのですが、それにプラス大トリックの個性が加われば8~9点でした(笑)。
 今見たら、シリーズものなのですね! シズカさん探偵物の

 ※追記 他の方も書かれていますが、絶対館図がほしいですよね(笑)。 無いから、用意できないトリックがあるのかと思いましたが、あっても困りませんよね?

No.174 7点 緑のカプセルの謎- ジョン・ディクスン・カー 2019/06/24 21:10
ネタバレをしています。

 新訳版を買いました。中学生ぐらいの時分、訳の古いカー作品を読むのを断念した記憶があります。しかし、最近は読みやすい日本語に訳された新訳版が発売されていて、非常に助かります!

 消える犯人、録画したビデオと食い違う証言…という魅力たっぷりな謎があり、この作者特有の安定して面白い不可能犯罪を楽しむことができ、満足しました。

 このトリックと、マーカスによる観察力を試す実験を絡めたところが、この作者の頭のいいところですね! 犯人以外の人間が、無意識に犯人に協力してしまっているのですが、それをほのめかすヒントがちりばめられており、好感が持てました(というか、ヒント過剰気味であり、普段さっぱり当てが外れる私でさえ察してしまうほど)。

 最後はハッピーエンド?で読後感がよかったです。こういうパターン多い気がしますね(笑)。

 この本を購入したときについていた帯のあおり文には、"毒殺ミステリの最高峰"ということが書いてあったのですが、毒殺ミステリっぽくなくてびっくりしました(笑) たしかに毒殺ではあるんですが…。なんか毒殺というと、いかにして特定の人物だけに毒をもることができたのか~みたいなものだと思っていたので。

 好みでない点を挙げるとすれば、フェル博士の紛らわしい発言と、後半の銃暴発事故です。いらないと思いました(笑)。

No.173 6点 本格推理①新しい挑戦者たち- アンソロジー(国内編集者) 2019/06/19 00:02
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 柳之介の推理:密室講義的なものがあったにしてはいまいち。
 鳥:マジシャンで嫌な予感がしたが、当たってしまった。絶対成功するかわからないが面白かった。
 藤田先生と人間消失:実際にやるとバレる気もするが、面白かった。他作品も読みたい。
 信州推理紀行:ちょっとバレバレだった。
 愛と殺意の山形新幹線:あまり印象に残らなかった。
 砧未発表の事件:叙述トリック?のような書かれ方をしているので、話が前後しているのはすぐにわかった。どうやって死体を運んだのかが面白かった。
 仮面の遺書:この手のミステリは初めて。登場人物が少ないので、ラストが読めたが、短編なのでしょうがない。
 静かな夜:やっぱり、多すぎる共犯者は好みではない。
 氷点下7度Cのブリザード:倒叙形式。この本でベストだった。アリバイトリックとしても面白かったが、どこをミスしたのかも面白かった。料金所・被害者の死因・被害者の死ぬ直前の抵抗、全て予想外だった(笑)。
 桑港の幻:最後に大きな驚きがあった。
 牙を持つ霧:ドライアイスしかわからなかった;; 偶然が強く好みではなかった。
 赤死荘の殺人:鮎川氏の言う通り、カー先生の短編を翻訳したといっても通用しそう。1ページ目から伏線があって面白かった。殺人ではなかったけど・・・

No.172 6点 黒白の囮- 高木彬光 2019/06/15 01:17
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 男女関係・会社内の権力争いから動機を探す物語の序盤が好みの展開ではなかったため、やや読みづらかったです。しかし、捜査する側が主観の小説にありがちな仮説→新事実による否定の連続する展開がミスリードになっており(私だけそう思っているだけかもしれないが)、犯人が警察をだましたように読者もだまされます。タイトルの"囮"もいいですね。

 自分は、犯行現場で目撃された友子のブルーバードが怪しかったので、まず島岡を疑いました(犯人の偽装としても、確実に目撃者がいないと無意味)。その車は、老人の証言が曖昧なせいもあって解釈が微妙だったのですが、老人が実際見たとすると2台あることになります。さらに、島岡にはアリバイがあったので、友子と共犯を予想しました。しかし、前に"一度わざと疑われておいて裁判で無罪を勝ち取る"という行動をどった犯人の小説を読んだ事があったため、友子犯人説をふわっと思いつきました。なので、当てたとは言えません。

 物語の構成もトリックも面白かったのですが、沢本が犯人のおもう通りに動いてくれるかはちょっと疑問。あと、共犯は好みではありませんでした。

 新装版のため、短編が2つ付いていました。殺意の審判の、胃に残った寿司の話は非常に面白かったです。

No.171 5点 魔術の殺人- アガサ・クリスティー 2019/06/08 15:50
ネタバレをしています。

 少々、読むのに苦労しました(笑)。登場人物の名前がカタカナなのは、いまいち記憶しづらいんですよね。さらに、頭の中で家系図が想像しづらかったです。
 事件が起こったシーンでは、読んだ瞬間嫌な予感がしたんですが、あたってしまいました(笑)。メイントリックはちょっと物足りないと感じますが、アガサ・クリスティーというビッグネームのせいでハードルが上がってしまった感じもあるかもわかりません。
 この作品に限ったことではありませんが、犯人と共犯者以外にもアリバイが無さそうな人物もいました。また、犯人に物的証拠もなさそう(私が理解していないだけならごめんなさい)。

No.170 4点 黄金色の祈り- 西澤保彦 2019/06/01 06:23
ネタバレをしています。

 ちょっと好みではない作品でした(笑)。
 主人公の半生が書かれていますが、少々嫌な奴で、興味を持てませんでした… ここいる??っていうページも多かったです。教子さんにしても、何がしたかったのかよくわからず…(性格のいい奴しかみとめないというわけではありません)。
 自分は、音楽の知識がまるでなく、楽器の名称が出るたびにyoutubeで見てみました。が、意味がなかったような気もしました(笑)

 推理小説としてみた場合も、あまり好みではありません。読み始めから、"僕"の主観がなにか隠しているが、文として嘘を書いていないような、叙述特有の臭いがぷんぷんしていました。さらに、そういう類の小説にありがちな、"部分的な要素は隠してはいるが、主観(犯人)自身も事件の全体像を把握していない"や"偶然が絡む"のはパターンとしてよく見るし、マンネリしています。最初に"僕"が盗んだアルトサキソフォン?の事柄ははっきりとは書かず、"僕"のトランペット盗難は犯人以外の仕業、殺人は偶然(ほぼ事故死)と、私が好みではない要素がてんこ盛りでした。似た作品を見たことがありますが、そちらのほうがハイレベルだったことも、この小説がイマイチに感じてしまう一因かもしれません。

 もしかしたら、私の頭がパープリンのせいで、この小説特有の大トリックを見逃していたら大変申し訳ありません。

No.169 6点 孤島の鬼- 江戸川乱歩 2019/05/30 20:54
ネタバレをしています。

 いろいろな要素が入った力作だと思いました。純粋な推理小説ではないため、評価点をつけるのが難しいです。
 最初の展開は、本格色の強いミステリ。密室殺人や、逆に大衆がいる中での殺人など不可能犯罪系です。私の日本家屋?に対する知識が浅かったためか、すべてはわかりませんでしたが、まあ大体のところは予想できました。しかし、推理小説としての出来は微妙かとおもいます(笑)。
 中盤からホラーになっていき、スリリングな冒険があり、最後には意外(?)にもハッピーエンドで、一気に読んでしまいました。ある意味今では販売できなような内容でしたね。唯一、道雄だけはかわいそうな最後でした。

 以下は好みの話です。
 一冊の小説としてはそれほど不満はないですが、読者の思考の裏を突く要素や、意味深な伏線とその回収、ミスリードなどがあればもっと好みの作品でした。殺人前に現れていた老怪人について、いろいろ妄想したのですが、いまいち拍子抜けしました。
 深山木があっさり死亡したんですが、花瓶の謎に気づいておきながらなぜ子供に警戒しなかったんでしょうかね? それとも、それ自体には気づいていなかったんでしょうか?

No.168 5点 聯愁殺- 西澤保彦 2019/05/26 01:04
ネタバレをしています。

 過去の連続殺人事件の生き残った被害者と、担当刑事、ミステリ作家や警察OBや心理学者などが集まる恋謎会でディスカッションして解明しよ~! 的な内容です。毒入りチョコレート事件を思い出しました。
 各人の披露する新事実と推理によって、物語が少しずつ分かっていきます。みな、どこかで否定されてしまうのですが、それぞれ面白い推理でした。
 真相はどんでん返しがあり、楽しめました。被害者が返り討ちにする→その後、被害者が犯人の計画を沿う…の構成を効果的に魅せ、隠すためにうまく叙述トリックを取り入れられています。梢絵が知らない、知りたいのは襲ってきた男の動機であり、嘘は書いてありません。
 物語が進むにつれ、梢絵はかなり怪しくなっていきます(笑)。そのため、まあ梢絵が犯人なんだろうと高を括っていたのですが、襲われた順番が大きな問題であり、頭を悩ませていました。最後まで読んでみて、なぜこの叙述トリックに気づかないのだろうと、あらためて自分の頭のパープリンさに絶望しました(笑)。私は叙述トリックに一生ひっかかり続けるでしょう。

 以下、好みではなかった部分
 読者が推理を楽しむ類の小説ではなかった。新事実→推理→新事実→否定の流れです。その形式の小説は多々あり、この作品特有のものではないのですが、自分は好みではありません(笑)。作者が勝手に推理をしてしまって、置いてけぼり感があります。
 場所・時間をあいまいに書き、その認識をずらす類の叙述トリック自体は目新しさはなかったと思います。しかし、自分はだまされたし、使い方がうまいな~とは感じました。
 偶然に偶然がからみ、読者が真相にたどり着くのはかなり難しいと思います。梢絵が襲われた後、架谷を殺すまでは動機も納得しましたが、それから何人も殺すのはよくわかりません(笑)。ラストシーンでは、狂ったようになっていたんで、もう半分狂ってたんでしょうね。

No.167 6点 ねじれた家- アガサ・クリスティー 2019/05/22 22:39
ネタバレをしています。

 自分にとって久々のアガサ・クリスティーです。やはり、非常に読みやすく、あまり時間がかからずに読み終えました。登場人物が個性的で、普段海外ものでは名前を覚えられない私でも読むのが苦になりません。
 ねじれた家の住民ではない、外部の人間である主人公が主観の物語で、主に動機の面で捜査しています。一見、関係がないような文章が読み返してみれば伏線であったり、思わせぶりなキャラクターの反応も真相をしるとまた印象が変わり面白いです。終わってみれば、無駄な点が非常に少ないという感想を持つのは、アガサ作品の共通したところだと思います。

 以下好みではなかった部分。
 他の方もさんざん指摘されていますが、この作品に似た本が存在します。にわかミステリファンの私も、さすがに読んでいました(笑) どうやら、某作品のほうが早く書かれているみたいですね? 同じタブーに挑戦していますが、それを小説として成立させ、より効果的に魅せているのは、某作品のほうが上だと感じました。家族がやや風変りなのも似ているかも?
 動機探しが主なストーリーですが、アリバイトリックや犯人当ての要素が好きなので、少しでも入っていたらもっと好きなのですが、犯人が犯人なので複雑なものはできないんでしょうね…。ブービー・トラップのヒントは面白かったです。

No.166 5点 推理小説- 秦建日子 2019/05/14 05:41
ネタバレをしています。

 ドラマ"アンフェア"の原作でしょうか? ドラマはほとんど知りませんが、1~2話みたことがあったような。"ユキヒラ"という名字が珍しいので、気が付きました。それでこの作品がドラマになったんだと知りました(もしくは逆?)。

 非常に魅力的なキャラクターが多く。すいすい読めました。また、叙述トリックについて説明されていて、普段ミステリを読まない人にも理解しやすいように書かれていて好感を持ちました。
 
 作中作の推理小説と同様の事件が起きていき、犯人から"続きを見たければ、小説を落札しろ"という要求がある物語の展開は魅力的でした。
 また、犯人自身が、雪平からの影響からか、これから起こす事件を変更することは面白いです。


 以下、好みではなかった部分。

 犯人の主観の文章に、たぶん嘘はなく、この小説内にある?叙述トリックのルールを破っていないとは思います。しかし、叙述トリックを使うのは、ほぼ=アリバイトリックや論理による犯人断定がない作品が多いです(例外あり)。叙述トリックを味付け程度に使い、メインに持ってこない作品はその限りではありませんが、この作品は叙述トリック一本釣りであり、また個性もいまいちありません。

 この小説の文章は、いつ・どこの・誰の主観か?が説明されてないことも多く、それでいてコロコロ場面が変わり混乱してしまう。さらに作中作文章も存在するため非常にややこしい…。ただ、それをわかりやすくしてしまうと、叙述トリックが成立しないので、仕方ない部分もありますが。叙述トリック自体が、ただ勘違いさせるだけの類なので(そうでないものもあるかもしれませんが(笑))


酷評されるほどでもないとは思います。かといって、心に残る名作でもなく、よくある叙述トリックものの一つでした。

No.165 5点 ドミノ倒し- 貫井徳郎 2019/05/10 01:30
ネタバレをしています。

 この作者の作品は初めて読みます。作風は全然知りませんでしたが、意外にもコメディ調でした(笑) ラストはホラー的?でしたが…
 主人公が聞き込みをし、徐々に事件が明らかになっていく形の小説は、たいてい後半まで退屈なことが多い印象があります。しかし、この作品は、主人公やその周りの人物だけでなく、すべての登場人物に魅力的なキャラクターがあり、退屈さを感じませんでした。

 以下、好みではなかった点。
 本格好きとしては、論理やトリックが薄味でした。それでいて、独創的なアイディアがあるようにも思えません。村や町や多数の人間による共犯やら因習やらは、小説やドラマでちょくちょく見るものです。たしか海外古典作品にもあったような。テレビドラマ"トリック"シリーズを、さらに薄口にしたような作品でした。
 ラストがあいまいな終わり方が不満です。また、キャラクターが魅力的だっただけに、続編を期待しましたが、あの終わり方では無理でしょうね…。
 

No.164 6点 回廊亭の殺人- 東野圭吾 2019/05/04 18:35
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 クローズドサークル風味(?)で、読み易く楽しめました。主人公が過去事件の被害者で復讐者であり、過去事件の犯人探しと現在の発生した事件を追うといった、割と王道系です。資産家の死と遺言、相続問題、隠し子と昔ながらの展開でした。
 トリックも個性があって良かったです。性別を曖昧に書くことや、里中二郎が入れ替わっていた点、偽二郎・殺されていた人物の再登場自体はそれほど珍しくはないですが、主人公の"ジロー"がいわゆる里中二郎・鰺沢弘美でもない、恋人を演じていた鰺沢なところが面白いです(と、私が勝手に思っているだけかもしれないが)。小説上は矛盾していても、主観では矛盾していなくて面白いです(主人公は里中が偽者と気づいていないから、べつに矛盾していないが)。主観と客観でまるで違う事柄でも、感じ方などの差で矛盾でなくなる・・・といった作品が何作かありますね(叙述トリックと相性が良い気がします)。

 以下、好みではなかった点
 主人公が鰺沢と再会したときに、あまりリアクションがないのは不自然。そのため私は、主人公が里中の焼死した死体を見て偽里中の存在に気づいたのかとも思いましたが、その場合は過去事件の真相がバレバレであり、やはり里中鰺沢入れ替わりは知らなかったようですし(だよな・・・?)。
 過去事件、現在事件共に、推理小説としてはいまいち面白みに欠けていた印象でした。動機さがしが主な印象です。ある程度、犯人当てかアリバイトリックの要素があればもっと高得点でした。

No.163 6点 硝子のハンマー- 貴志祐介 2019/05/01 00:35
ネタバレをしています。

 始まって100pぐらいは、猿・ロボットが出てきて、なにやらバカミスの香りがしましたが、杞憂でした(笑)
 前半半分は、事件発生~探偵による検証と仮説→否定を繰り返す構成です。専門用語なども多かったですが、非常に読み易かったです。
 後半半分は、倒叙形式のような感じでした。犯人の半生~殺人のシーンまで、かなりのページ数があるにもかかわらず、前半と同じく一気読みできるほど読み易いです。凝った構成でした。

 以下、好みではなかった部分。
 これまでにない密室のパターンで、はっとさせられました。しかし、それを推理小説として成立させるために、多くの難題があります。介護ロボット、頭部を手術した被害者の存在でそれをクリアしていますが・・・。
 はめ込みの窓って、あんなに簡単にいじれるものなのでしょうか? 自分は窓ガラスに対する知識がまったくの無知なので、真相聞いたときはピンときませんでした。推理小説を問題としてみた場合、いまいちかもしれません。

 自分は、実は、純子によるとんでも推理"監視カメラの前に廊下の写真を置いた"や"秘書三人が入れ替わり時間を稼いだ"は結構好きです(笑) 無理がありますが。

No.162 5点 幻想即興曲- 西澤保彦 2019/04/24 01:53
ネタバレをしています。

 凝った構成の作品でした。手記のような作中作がメインですが、その筆記者が推理小説を書こうとして出来た文章だったり、他人の手が加えられているところに個性を感じました。
 とはいえ、真相自体はあまり驚愕するようなものでなく、犯人あてともアリバイトリック物でもありません。前に、"Aの手記を元にした推理小説(作者Bは真相を知らない)""途中で記述者がひそかに変わる"という、この作品とやや似ている作品を読みましたが、そちらの方がラストのどんでん返しにうまく使っていました。

 後、好みの話で申し訳ありませんが、この作品のキャラクターはいまいち好みではありませんでした(笑)

No.161 6点 本格推理③迷宮の殺人者たち- アンソロジー(国内編集者) 2019/04/20 12:08
 ネタバレをしています

 ○葵荘事件・・・非常にフェアな作品ですが、少し地味かも。
 ○落ちて死んだ男・・・文章が読みやすくていいですが、謎はバレバレだしいまいち。
 ○狼どもの密室・・・珍しいパターンだし、変わっている凶器が良かったですが、確実に殺せるんでしょうか?
 ○イブ・ステップの殺人・・・犯人の行動が危ういかも。
 ○嵐の後の山荘・・・犯人に殺意が無かったり、偶然が絡んでいますが、これまでに見たことの無いパターンが見られて満足。
 ○嵐の山荘・・・これはいまいちはまりませんでした。
 ○霧の館・・・本格度は低いですが、さすがのクオリティ。詩的な表現がミスリード?だったり、どんでん返しがあったり、満足しました。
 ○密室の矢・・・被害者が犯人に協力するタイプの密室は嫌いです。
 ○欠けたサークル・・・ダイイングメッセージが日本語で、外国人教師が勘違いしたのはすぐわかりましたが、あまり印象には残りませんでした。
 ○酒亭『銀富士』の殺人・・・カニバっている話でグロいはずなのに、コミカル?で読みやすかったです。ただ、作者の言うように、トリック自体は簡単にばれます。
 ○死人に口あり・・・いまいちでした(笑)
 ○マグリットの幻影・・・盲点があるのは知っていましたが、予想できませんでした。が、私がミステリに求めるものとは違いました(笑)
 ○時空館の殺人・・・なかなか面白かったですが、ややありきたりな発想で、すぐにわかりました。あと、他作品のネタバレはやめてほしいです。

No.160 6点 異邦の騎士- 島田荘司 2019/04/17 19:08
 改訂版です。御手洗潔シリーズは、この作品から読まないほうが楽しめます。
 以下、ネタバレをしています。

 犯人当てやアリバイ崩しを楽しむ類の小説ではありませんが、物語の結末をあれこれと予想し、どんでん返しがあり、読み返すもの楽しい良い作品でした。また、最後にわかる大きな仕掛けがすばらしいです。
 この作者の作品で、"斜め屋敷"や"占星術"を持っていますが、斜めは個人的に好きではなく、占星術は文章の相性が悪いのか手記の段階で読むのを諦めました。しかし、この作品は読了まですぐでした。

 好みでは無かった部分。
 中盤ぐらいで、そこそこ物語の結末が読めてしまったため、驚きがありませんでした。鏡を見られない主人公。すぐに親しくなる怪しい良子。日記。そこまで来ると、免許証を頼りにたどり着いたアパートに住む中年女性の正体も読めてしまいます。本物の益子が兄だったのはわかりませんでしたが・・・。
 真の益子側の計画が成功するかは微妙じゃないでしょうか? ひょんなことで主人公の本当の記憶が戻ったら終わりです。日記をみた主人公が、日記に書いてあることを確かめようとすればすぐに嘘だとバレれます。
 主人公がベンチで起きるところから始まり、それ以前の記憶が一切無いのですが、たしか事故後は病室にいませんでした? ずっと昏睡状態なら、たか子が記憶障害と確かめるすべが無いのだし・・・。すると、病室での記憶はどうやって消したんでしょうか? (顔がメロンみたくなる描写があるので、薬物か?)
 この小説を成立するためには、主人公が自分の顔を確かめない→鏡を見ないことが必須で、ここが少々難しい点かもしれません。物語上では、主人公が鏡を見られないとわかってから、偽益子にすると計画修正したようですが。

 と、いろいろ難癖をつけていますが、作者あとがきでも"ミステリーではない"的なことが書いてあったため、的外れな意見かもしれません。

No.159 6点 - F・W・クロフツ 2019/04/11 15:34
 ネタバレをしています。

 鮎川・横溝の例の作品を読んだ後に、この作品を読みました。突発的な犯行だし、一つ一つのトリック自体はそれほど大トリックというわけではないのですが、考えてみるとなかなか難しく全然あたりませんでした(笑)

 中盤までやや退屈で、読了まで時間がかかりました。警察が主観の小説は、事件の全貌が徐々に明らかになっていく展開が多く、少しだけ苦手です。もう少し、登場人物に個性があると良かったです。
 あと、証言が曖昧なことが多く、そこだけ気になりました。

No.158 8点 魔眼の匣の殺人- 今村昌弘 2019/03/31 03:35
 ネタバレをしています。

 絶対に当たる予言という実際にはありえない超常現象?を組み込んでの作品です。しかし、その予言の性質を丁寧に説明されていたり、共犯者の存在を探偵が明かしていたり、変則的な要素が入っていても本質は端正な本格推理小説でした。私は、時間をかけて読み返して、そこそこ真相を推理する事が出来ました(細かい多数の部分ははずしており、胸を張って当てたとはいえないが)。私は、普段当てられないことが多いため、難易度はやさしいかもしれません。
 サキミが、十色勤の日記のサキミとは別人だと予想していました(ねずみ関連で)。しかし、十色への復讐のための自殺とは予想できませんでした。話の流れ的に、女性であり、日記に登場する人物である、ダウジングのハルか誰かかと(笑)。岡町君がサキミとは思ってませんでした(笑)。思えば、十色勤の側近であり、女性の可能性がある岡町君以外にはありえないのですが、十色勤は鬼畜ですね・・・。十色勤の"サキミがこの子(久美)が死ぬ予言をしてしまったら・・・"という懸念ですが、結果的にサキミの孫に対して当たってしまったのが皮肉的で良い伏線でした。岡町=サキミが予想できたのなら、自殺未遂の意味やフェルト人形にも気づけたかもしれず、悔しいです。フェルト人形に関しては、論理的に当てられると解決編でわかり、より悔しいです。

 以下難癖。
 十色の絵を見た王寺は、葉村の部屋にねずみの屍骸をおき、より絵の状況に近づけ葉村を殺そうとした。絵は必ず当たる。しかし、このとき、ねずみの屍骸をすべての部屋から出してしまったらどうなのか? 矛盾してしまう。 どこからかねずみが現れて死ぬのか? ただ、小説内に十色の能力の前例は上げられていて、読者に説明がなされているため、フェアだと思います。
 サキミ毒殺事件について。毒を入れるチャンスや、扉の前の赤いエリカなど、はじめから自殺→別の人間が花を撒いたにおいがぷんぷんしました。しかし、"十色の絵の状態を、現実側が近づけることで間接的に殺せる"考えが頭にはなかったため、最後まで撒かれた花の解釈に困りました(笑)。
 ヒルコ自殺未遂により、朱鷺野は安全圏に入ったと思った。それにより、交換殺人を拒否し口論になったと思いますが、そのあとの王寺の行動がやや不可解。結局王寺は、朱鷺野が交換殺人に応じた形にしていますが、それだと朱鷺野のロッカーの鍵の件が嘘だとばれてしまい、交換殺人をやっていたこともバレると思います。また、朱鷺野が即死ではなく、気絶だったというこは、読者からしたら推測が難しいとは思います(私が鈍くさいだけ?)。

 個人的には、前作よりもさらに不満点が少ないです。絶賛された前作からの2作目のため、難しい面もあったかもしれませんが、今作も上質な本格推理小説であり、いよいよ作者の力量が本物だと確信しました。
※追記:う~ん、やはり素晴らしい作品なので、一点上げて8とします(笑)

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ミステリ初心者さん
ひとこと
 有名な作品をちょこちょこ読んだ程度のミステリ初心者です。ほとんど、犯人やどう殺したかを当てることができません。


 高評価・低評価の基準が、前とは少し変わってきました。
 犯人を一人に断定で...
好きな作家
三津田信三 我孫子武丸 綾辻行人 有栖川有栖 鮎川哲也
採点傾向
平均点: 6.20点   採点数: 377件
採点の多い作家(TOP10)
アガサ・クリスティー(16)
三津田信三(14)
歌野晶午(13)
綾辻行人(11)
エラリイ・クイーン(11)
東野圭吾(10)
東川篤哉(10)
鮎川哲也(10)
西澤保彦(9)
有栖川有栖(8)