皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
ボンボンさん |
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平均点: 6.51点 | 書評数: 185件 |
No.25 | 6点 | その日まで 紅雲町珈琲屋こよみ- 吉永南央 | 2013/01/05 23:50 |
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シリーズ2作目。深刻さ、辛さ、重さが増してきて、かわいい表紙や楽しそうな設定とのギャップがますます大きくなる。
今回、お草さんは、不動産売買に絡む詐欺事件を追いかけるが、若い頃の出来事が現在の事件に絡み合ってきて、なかなかに奥深い。最後には、結構なアクションもあり、たっぷりしたドラマになっている。 厳しい話が続くが、店員の久美ちゃんや親友の由紀乃さんの人間らしい温かみに救われる。 |
No.24 | 6点 | ビブリア古書堂の事件手帖3- 三上延 | 2012/12/05 23:32 |
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古書業界情報が楽しくてしょうがない。
また、次々に登場するキャラクターがなかなかにいい。みんな意外な面を見せたりし、一面的でない奥深さがある。特に、若い(子ども?)人たちが、活き活きしている。 栞子さんの母親のことや妹のことが、個別の事件とは別の線で展開し、目が離せない。まだまだ続くみたいなので安心した。 |
No.23 | 6点 | ビブリア古書堂の事件手帖2- 三上延 | 2012/12/05 23:12 |
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事件としては、何と言うか、普通に面白い。栞子さんの洞察力が凄すぎる。
本に関する薀蓄は、大変興味深い。これなら、まだまだシリーズは続けられそう。落ち着いた、静かな恋愛小説でもあり、そちらも爽やかに楽しめる。 |
No.22 | 9点 | ぼんくら- 宮部みゆき | 2012/11/25 11:24 |
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江戸の人たちが本当にそこに居るようだ。実際に饅頭を食べようと開いた口や、ゴロンと寝っころがった畳が擦れているのや、向こうの角を急いで駆けていく人が上げた砂煙なんかを目の前に見ているようなリアルさは相変わらず。
大勢の人の人生が大きく動くわりには、その核になる原因が、ちょっと小さいような、アンバランスな感じを受けるが、続編を読み進めれば、それは解消されていく。 大作、傑作、ではあるけれど、多彩な登場人物の軽妙な掛け合いで、ぽんぽん進んでいき、宮部みゆきらしく、無理なく、楽しく読める。 |
No.21 | 6点 | ビブリア古書堂の事件手帖- 三上延 | 2012/11/25 10:50 |
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はじめ、栞子さんの極端なキャラクターがアニメっぽく感じられ、引き気味だったが、全体に登場人物が丁寧に描かれていて、次第に引き込まれた。
栞子さんが異常に名探偵過ぎることを不安視する見方や、実際に問題に発展するところなど、なかなか単純ではなくて好感が持てた。 ついでに、古書店が舞台ということで、いろいろな古本あるあるを知り、へー、そうなんだ、と感心することが多かった。 |
No.20 | 5点 | かめ探偵K- 北野勇作 | 2012/11/19 18:07 |
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今回もどっぷりSFだった。ips細胞より難しい科学をほんわかファンタジーで包んでいるので、一緒に謎解きしようとしても無理。この世界観を楽しむのが正しい鑑賞法でしょう。
しかし、それにしても、かめ探偵Kのお話は、この1冊でお終いなのだろうか。色々日常の説明がある中、事件は2件しか入っていない。わざわざ壮大な世界設定をしているのに、お話2つでは足りない、もったいない。 余談だが、文章の調子が何かちょっと違う、と思ったら、著者は落語作家でもあるらしい。自分突っ込みの語り口や「きゅおう、きゅおう(磨く音)」とか「どざあああああ、どざあああ(波)」などのリアルな擬音語が繰り返し出てくる。落語口調を頭に入れて読み直してみると、本当に落語みたいで面白い。 |
No.19 | 6点 | こいしり- 畠中恵 | 2012/11/12 22:49 |
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軽ーく、楽しく、それでもなかなかに、どうなるんだろう、続きは続きは?と読める気楽な時代物の第二巻。奉行所や岡っ引きが動くほどのことでもないけれど、解決が必要な町内の揉め事を裁定する町名主。その簡単スピーディーな謎解きが楽しめる。
特に百物語の席を使った怖い犯罪の話「百物語の後」が、何重にも仕掛けがあって面白い。 |
No.18 | 6点 | モダンタイムス- 伊坂幸太郎 | 2012/10/16 18:13 |
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いいこと言うなあ、勉強になる。青臭い、説教臭い、と言ってしまってはもったいない。全体の構成が、なんとなく、井上ひさしの「吉里吉里人」を思い出させる。 |
No.17 | 8点 | かめくん- 北野勇作 | 2012/10/13 21:48 |
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これはなんだろう。哲学書? のんびりとした日常から物凄いSF叙事詩が染み出してくる謎だらけのお話だった。かめくんのしんみりとした諦観が、胸に迫る。かわいいような悲しいような不思議な感覚。いろんなところから漏れ聞こえてくる話を総合すると、この世界はかなりめちゃくちゃな状況なのではないかと思われるが、どこまでがどうなのか不明。
主人公のかめくんがしゃべることができず、思うだけ、或いは書いた文章を人に見せてコミュニケーションするので、文面上、珍しい読み心地になっている。 |
No.16 | 7点 | 萩を揺らす雨 紅雲町珈琲屋こよみ- 吉永南央 | 2012/09/23 14:46 |
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紅雲町珈琲屋こよみ・・小粋なおばあちゃんが解き明かす「日常の謎」・・と帯にある。しかし、その実態は、かわいい表紙の「おばあちゃん探偵ほのぼの事件簿」的なイメージと違い、人間の人生や老いが誠実に丁寧に表現されている。地に足が着いた、とてもしっかりした作品。
扱われる事件も奇抜さはなく、日常、我々がニュースや身の回りで見るもので、現実的な分、リアルに問題だ。 日常よくあるように辛いことが次々と起こり、その都度、まっすぐにショックは受けるが、次には、また前向きに進んでいく。弱過ぎず、強過ぎず、珈琲の香りと愛すべき脇役キャラクターたちに囲まれて、てくてくと歩いて行く、理想の現実的おばあちゃん探偵だ。 事件性としては、やはり第一話「紅雲町のお草」が怖くて読み応えがあった。 続編があるそうなので、楽しみ。 |
No.15 | 4点 | 放課後- 東野圭吾 | 2012/09/16 21:48 |
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結構単純で、よくある感じの筋がいくつかあり、それらが絡み合った末、きちんと整理されて終わる。流れとしては巧くできているのだが、一つ一つの出来事が、どうも陳腐な感じ。
女子高生、女性教師、奥さんなど、いろいろな女性が出てくるが、表面的で、みな扱われ方がひどく、気分が悪くなった。 |
No.14 | 5点 | 聖女の救済- 東野圭吾 | 2012/08/19 15:22 |
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単純な事件に、少しずつ時間軸や人間関係で深みが出てくるが、その展開に無理やりな感じがなく、流石に上手だなあと思った。ただ、台所の一角でトリックの検討が行ったり来たりしているうちに、なんだか全体の印象が薄くなってしまって、読んだ後しばらく経ったら何だったのか忘れてしまいそう。
基本的に女性の心象表現にリアリティがない作者だが、今回は頑張ってみました、という感じか。内海が、他の刑事と全く違う視点で事件を見るのは面白いけど、”男と女は感覚が違う!”ということに神経使い過ぎでは? |
No.13 | 8点 | 終末のフール- 伊坂幸太郎 | 2012/08/11 23:16 |
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東日本大震災を経て、ある日突然、世界が一変して、めちゃくちゃになるということを実体験したので、リアルな気分で読みました。
一般人は大きな何かに飲み込まれて、それぞれ足掻いていくしかなく、そこに至って、”終末”が本当かウソかは、もはや関係ない、というところが、いかにも伊坂さんらしく面白い。 |
No.12 | 6点 | 邪馬台国はどこですか?- 鯨統一郎 | 2012/07/26 16:39 |
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単純に面白かった。反論する知識も資料も無いので、なるほど!と感心してしまった。特にブッダは、本当にそうなんだろうな、と思える。信長や勝海舟は、考え方はいいけど、具体的ネタは奇をてらい過ぎか。
でも、出てくるキャラクターはちょっと辛い。あまりにも物を知らない“若き天才歴史家”と大学教授。女性のほうは言葉がきつくて嫌な気持ちになるし、教授は何のためにいるのか分からない。マスターは好き。 |
No.11 | 6点 | 完全なる首長竜の日- 乾緑郎 | 2012/05/02 22:56 |
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鮮明な描写で軽く面白いエピソードもありながら、途中から悪い夢を見たように、こちらまでだんだん気分がおかしくなってくる。結局、救われない悲しい話だった。
ガジュマルの木の下で、曾祖母がマブイ(生きている人の魂)に話しかけるシーンがあるが、この部分だけが、つじつまの合う現実な気がして、一番ホッとした。 ラストは、一応「えっ?」と驚きはしたが、なにか投げやりなような、ただ安易にオチを付けたいだけのような感じで、少し残念。 それでも全体に読みやすい文章で、しっかりと構成されている良い作品だと思う。 |
No.10 | 7点 | 幻夜- 東野圭吾 | 2012/04/13 23:56 |
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「白夜行」とほぼ同じ構造の話なのに、表現の趣向が正反対なので、またまた楽しめる。本作は、本人たちの内面が分かるので、人物に魅力を感じられる。
(自分としては、「白夜行」を読んでからかなり時間がたっていて細かいところを忘れていたので、話が繋がっていることにぱっと気付けなかった。残念。) あの分厚さを難なく読み進められる面白さだが、ラストだけは、映画の「模倣犯」(宮部みゆき)の中居君の最期並みに漫画っぽかった。「白夜行」の終わり方のほうがよく出来ている。 |
No.9 | 5点 | 犯人のいない殺人の夜- 東野圭吾 | 2012/03/10 23:28 |
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何とも悲しく嫌なことばかり起こる短編集。どれも話がぐるんとひっくり返るような意外な展開でよくできている。しかし、表題作の”名前の件”だけは、何それ・・・と脱力、こんなことでいいのかと納得いかなかった。 |
No.8 | 8点 | プリズン・トリック- 遠藤武文 | 2012/03/08 23:45 |
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読んでから月日が経っても何故か忘れられない、後を引く面白さ。小説の出来としては、本当にめちゃくちゃだが、別々の本を3冊読んだような満足感がある。いろいろ詰め込んで、3冊分バラバラに感じるところが悪いところなんだとは思うが。 |
No.7 | 7点 | 傍聞き(かたえぎき)- 長岡弘樹 | 2012/02/26 10:12 |
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消防士や刑事など社会的に役割を持つ人々を主人公に、その業務に絡む人生の一場面を切り取った短編集。どれもそれぞれの課題は残されたまま、何かが大転換するわけではないが、その人の心に転機になるような変化が起き、じんわりと温かい読後感を残す。一つ一つちょっとした謎が仕掛けられている。その部分だけ、少し不自然な作り物っぽい感じがしてしまったが、それでも全体的には、滑らかな展開で上手い。 |
No.6 | 10点 | 星を継ぐもの- ジェイムズ・P・ホーガン | 2012/02/19 17:58 |
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面白過ぎて読むのに凄く時間がかかってしまった。謎の解明のために、仮説を立て、論証し、矛盾を見つけて、また別の仮説を立て、論証して・・・と、大勢の科学者が根気強く資料に当たり議論し続ける。ただただ、それだけで最後まで突き進む。その過程が、まさにサイエンスそのものだ。もう、結果なんて二の次かも。続編を読めばもっと色々分かるのだろうが、とりあえずここまで丁寧に説明してもらっただけで充分満足。
宇宙服の赤い色が印象に残る。 |