皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
蟷螂の斧さん |
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平均点: 6.09点 | 書評数: 1668件 |
No.788 | 6点 | 蒼ざめた馬- アガサ・クリスティー | 2015/08/10 20:50 |
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裏表紙より~『霧の夜、神父が撲殺され、その靴の中に九人の名が記された紙片が隠されていた。そのうち数人が死んでいる事実を知った学者マークは調査を始め、奇妙な情報を得る。古い館にすむ三人の女が魔法で人を呪い殺すというのだ。神父の死との関係を探るべくマークは館へ赴くが…』~
本格色は薄いが、ミスリード・伏線はさすがですね。ポアロ・マープルが登場しないかわりに、主人公の恋物語が花を添えている感じです。 |
No.787 | 5点 | 犬はまだ吠えている- パトリック・クェンティン | 2015/08/07 17:32 |
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裏表紙より~『その日のキツネ狩りの「獲物」は頭部のない若い女の死体だった。悲劇は連鎖する。狩猟用の愛馬が殺され、「何か」を知ってしまったらしい女性も命を奪われてしまう。陰惨な事件の解決のために乗りだしたドクター・ウェストレイク。小さな町の複雑な男女関係と資産問題が真相を遠ざけてしまうのだが…。』~
ピーター・ダルース夫妻シリーズとは全くタイプの違った猟奇的な雰囲気の作品でした。物語の展開がやや遅いことと、動機の後出し的なところがマイナスポイントですね。名馬殺害の理由は印象に残ります。 |
No.786 | 7点 | 死への疾走- パトリック・クェンティン | 2015/08/06 14:04 |
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パズル・シリーズの主人公ピーターが登場するも、「女郎蜘蛛」と同様「~・パズル」となっていません。出版社が相違するので仕方ないか・・・。このシリーズは色々なパターンがあり楽しめますね。今回は軽めの冒険活劇的な要素が含まれています。ラストの反転も好みなので+1点。 |
No.785 | 4点 | おかけになった犯行は- エレイン・ヴィエッツ | 2015/07/31 18:57 |
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裏表紙より~『崖っぷち生活継続中のヘレン、目下の仕事は電話セールス。拒絶や罵倒にひたすら耐えて売りこみをかけるある日の業務中、電話越しに“殺人”が起きるところを聞いてしまう。ところが、警察は事件のあった痕跡を発見できず、勘違いとして処理される。納得のいかないヘレンはみたび探偵活動を始めるが、成り行きでトンデモない相棒と組むことになり…。大好評転職ミステリ第三弾。』~
コージー・ミステリーというものは初めてでした。読み物としてはスラスラ読めるのですが、やはり謎らしきものがないと面白みがないというのが実感でした。 |
No.784 | 4点 | これ誘拐だよね?- カール・ハイアセン | 2015/07/29 09:29 |
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ユーモア・ミステリーとのふれこみですが、ミステリー度はほとんどありません。どちらかといえば下ネタ調のドタバタ劇か?。登場人物も、漫画・劇画風です。それを個性があると言ってよいのか?・・・よくわかりません。物語の展開もいまいちだった。 |
No.783 | 5点 | くたばれ健康法!- アラン・グリーン | 2015/07/27 21:05 |
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ユーモアミステリーで、馬鹿笑いを望むほうが無理なのか?。なかなかぶち当たりませんね。出だしでは壺にはまるユーモア表現があり期待したのですが尻すぼみでした。しかし、トリックは楽しめました。警部が、事件解明より恋に現を抜かすという構造があるので、それを前面に出せばもっと楽しめたのではという気がします。 |
No.782 | 5点 | ぼくの好色天使たち- 梶龍雄 | 2015/07/24 20:50 |
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戦後の闇市。主人公(浪人生)と住人(闇商人や娼婦)との交流、殺人事件を描いた青春ミステリー。トリックは面白いと思いましたが、現場に関する一つの証言にやや納得できない点があり減点としました。 |
No.781 | 6点 | 深い疵- ネレ・ノイハウス | 2015/07/21 21:08 |
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裏表紙より~『ドイツ、2007年春。ホロコーストを生き残り、アメリカで大統領顧問をつとめた著名なユダヤ人の老人が射殺された。凶器は第二次世界大戦期の拳銃で、現場には「16145」という数字が残されていた。しかし司法解剖の結果、遺体の刺青から、被害者がナチスの武装親衛隊員だったという驚愕の事実が判明する。そして第二、第三の殺人が発生。被害者らの隠された過去を探り、犯行に及んだのは何者なのか。刑事オリヴァーとピアは幾多の難局に直面しつつも、凄絶な連続殺人の真相を追い続ける。』~
登場人物が多く、人物表以外での重要人物もかなりいるので相関図は必要か?(苦笑)。カットバック方式はいいのですが、1単位の文章が短すぎるのと、視点が多く変わりすぎるのが難点でした。家族関係他も複雑化し過ぎているように感じました。話の内容はドイツらしいものです。 |
No.780 | 6点 | 刑事くずれ/ヒッピー殺し- タッカー・コウ | 2015/07/17 12:26 |
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”落伍刑事の汚名を浴びながら困難な密室殺人に挑むミッチ・トビン。ハードボイルド第2弾”とありますが、本格要素の強い作品でした。心理的密室を扱った作品で楽しめました。欲を言えば、容疑者ロビン(記憶喪失)の絡みがもっとあったらなあと思いました。 |
No.779 | 5点 | 仮面舞踏会- ウォルター・サタスウェイト | 2015/07/14 13:29 |
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裏表紙より~『1923年、パリ。ピンカートン探偵社のフィルはまたも怪事件の渦中に。新米探偵ジェーンも、家庭教師に扮して初仕事。パリの探偵ルドックとともに調査するうち二人が出会うのは、イギリスから来た女流ミステリ作家、パイプをくわえた敏腕警視、ヘミングウェイ、スタイン、サティにピカソ……怪しいやつが多すぎる! おまけにドイツ新政党も暗躍か? 華の都に名探偵たちが再登場。「名探偵登場」に続く、痛快ユーモア時代ミステリ !』~
ハードボイルド系、ユーモア系、本格系の要素を含んでいるのですが、核となるものがないので、ミステリーとしては中途半端な作品になってしまったという感じです。時代設定が1923年であり、その後有名となった作家等が実名で登場したり、パリのグルメ紹介(かなりの件数)があったり、性風俗(意識)が描かれたり、そういう点では500P超は退屈ではありませんでしたが・・・。 |
No.778 | 7点 | 三人の名探偵のための事件- レオ・ブルース | 2015/07/11 21:24 |
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3人の名探偵対田舎巡査部長の構図です。多重解決より、構図そのものを楽しむ作品のような気がしますね。巡査部長は最初から犯人は解かっていると3人に対し公言してはばからないところが面白い。密室(窓は開いている)の推理は幾通りも示され、夫々楽しめた。真相は後出し的な面もあるが、それがどうしたとでも言わんばかりである(笑)。 |
No.777 | 8点 | 清里高原殺人別荘- 梶龍雄 | 2015/07/08 14:05 |
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777冊目。7.7には1日遅れの書評となりました。以前から読みたいと思っていたのですが、絶版で中々手に入らなかった。ようやく図書館で見つけ拝読。一部のファン?の評判通りの作品で楽しめました。著者の初期作品の雰囲気とは一味違って、エンタメに徹した作品といえますね。雪の山荘、連続殺人ものです。1988年の作品で、「十角館の殺人」(1987)の新本格ブームに刺激されたのかもしれません。著者の言葉として「作者としては、特上の意外な真相と結末を用意したつもりでいるが・・・」と自信をうかがわせています。発行元や題名のイメージがマイナーだったのか?、もっとメジャー扱いされてもいい作品ではないかと思います。 |
No.776 | 6点 | 七人のおば- パット・マガー | 2015/07/07 22:05 |
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「おばが夫を毒殺し自殺した」との手紙を受け取り、サリーは自分には殺人者の血が流れているのでは?と疑心暗鬼になる。サリーには母方のおば1名(母の姉=直系)と母の義姉妹となるおば6名がいる。義姉妹方の母の血であれば流れていないことになる。おばの名前は、翌日に新聞で確認することは可能なので、その疑心暗鬼が本物語の取っ掛かりとなっている。疑心暗鬼になる必要性はあまりないのでは?とつまらないことが頭にこびりついてしまった(苦笑)。全体的にはメロドラマであり、ミステリーとしてはワンポイントのみの評価となってしまう。 |
No.775 | 6点 | 人形が死んだ夜- 土屋隆夫 | 2015/07/07 11:48 |
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著者が米寿の記念に執筆を思い立ち、90才に脱稿した作品。長編の第1作「天狗の面」(1958)に登場した土田巡査の息子が、本作では土田警部として登場。その間50年です。これだけでもすごいことですね。内容は、探偵役が、犯人役へ転換するというどちらかといえば倒叙的な作品です。よってフーダニットやハウダニットを期待すると面白味はないかも。土田警部が沈黙した理由は?それを確認する術は?・・・。余韻は人生の無常。 |
No.774 | 5点 | 模倣密室- 折原一 | 2015/07/05 14:20 |
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先日、TVドラマ「黒星警部の密室捜査」(陣内孝則氏主演)を観て手に取りました。本作中の「交換密室」のドラマ化でした。ファンとしては、葉山虹子との絡みを期待したのですが・・・。さて、TVドラマはシリーズ化されるのかどうか?・・・。密室自体に期待するものは、現在ではあまりない。というか機械的密室・心理的密室を含めて、新しく面白いものはもうできないのではと思います。真面目な応用作品ではつまらないし、本作のようなパロディで読ませるしかないのでは?という印象ですね。作中で紹介されている密室もの(著者のベスト10?「三つの棺」「プレーグ・コートの殺人」「見えないグリーン」「くたばれ健康法!」「ビッグ・ボウの殺人」「アンクル・サイラス」「五十一番目の密室」「<引立て役倶楽部>の不快な事件」「密室の行者」「本陣殺人事件」)で未読のものは読んでみたいと思います。著者らしいのは表題作の「模倣密室」でした。 |
No.773 | 4点 | 道化の死- ナイオ・マーシュ | 2015/07/04 08:10 |
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黄金期の4代女流作家とのことで手に取りましたが、全体的に単調であり、読むのに時間がかかってしまいました。本作と似た「ジェゼベルの死」(評価4)と同様、舞台や道具が頭に入ってきませんでした(苦笑)。この手の作品は配置図や道具の絵がないと分かりにくい?。まあ、あったら逆にすぐトリックがばれてしまう恐れもあるが・・・。○○像が好みでないのでこの評価。 |
No.772 | 7点 | はなれわざ- クリスチアナ・ブランド | 2015/06/29 17:56 |
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裏表紙より~『休暇をすごすため、イタリア周遊ツアーに参加したスコットランド・ヤードの名警部コックリル。だが、事件が彼を放っておかなかった。景勝で知られる孤島で一行のひとりが何者かに殺された。地元警察の捜査に不安を感じたコックリルは自ら調査に乗り出すが、容疑者であるツアーの面々は、女性推理作家やデザイナー、隻腕の元ピアニストなど一癖ある連中ばかり…ミステリ史上に輝く大胆なトリックで名高い、著者の代表作』~
著者と相性があまり良くなかったのですが、本作は楽しめました。「緑は危険(5点)」「ジェゼベルの死(4点)」の2作とも、場面・人物がイメージしにくかったという印象が強いです。本作は”浜辺の図(事件発生時の各容疑者の位置)”が挿入され、人物像も個性豊かに描かれており頭に入ってきました。刑事が、容疑者全員のアリバイを証明している点がミソですね。恋愛が絡んだ物語には高得点をつける傾向があることに、自分自身気が付きました(笑)。真相にはかなりの無理があるのでは?と思わせないことが、著者にとっての「はなれわざ」なのでしょうか。物語自体は、クリスティ氏の「白昼の悪魔」(1941)を連想しました。 |
No.771 | 5点 | もう年はとれない- ダニエル・フリードマン | 2015/06/26 19:07 |
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主人公のキャラクターからして、もう少しドタバタ調でもよかったのでは?という思いです。つまり、ハードボイルド系の主人公がただ年をとってしまっだけの物語という印象しか残らなかった。残念。 |
No.770 | 7点 | 高木家の惨劇- 角田喜久雄 | 2015/06/24 15:21 |
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あらすじ~『青年が喫茶店で飲物に蜘蛛が入っていると騒ぎ出した。隣の席にいた男は、青年が蜘蛛を飲物に入れるところを目撃した。青年は何の目的で?・・・。 同時刻に高木家の当主・孝平が自宅で射殺された。容疑者は少数の人間に絞られた。誰もが強い動機を持っている。しかし、全員に確固としたアリバイが存在する・・・。』~
「本陣」「不連続」「獄門島」「刺青」(1946~1948)に並ぶ名作とのことで拝読。知名度は前記4作と比べると劣っているようですが、予想以上に楽しめました。心理的トリックと、被害者の生前の意図が本書の読みどころですね。 |
No.769 | 8点 | カラマーゾフの妹- 高野史緒 | 2015/06/23 13:32 |
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第58回江戸川乱歩賞受賞作。ドストエフスキー氏は「カラマーゾフの兄弟」の第2部(13年後の物語)を書くことなく、亡くなりました。その続編である第2部をミステリーとして著者が描いたものです。この大胆さに拍手(満点)を送りたいですね。原作(第1部)では、明確な犯人は描かれておらず、当然第2部で明かされるのでは?と予想されていたわけです。しかし、残されている資料は少なく、続編では兄弟の○男がテロリストになるという筋書きのみがあったようです。本作は、原作の伏線(現場情況、供述、アリバイ、言動など)を紐とき、真犯人を浮かびあがらせるというものです。その点は成功していると思います。原作のあらすじ(これが実に面白い)が挿入されていますので、読んでいなくても「本作」のみで十分楽しめます。乱歩賞選者の東野圭吾氏も「原典は読んでいない。」とのことでした。 |