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虫暮部さん
平均点: 6.20点 書評数: 2209件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.2189 6点 かめ探偵K- 北野勇作 2026/03/06 15:22
 最重要エピソードは “パン屋で耳を買う” くだりではないだろうか。パンはやっぱり耳だよね。あそこから直接は話が広がらず残念なんだけど、アレがアリだからバラバラ事件もアリ、と考えると実は伏線になっているのである。因みに私、バラバラ事件のトリックは一瞬で見抜いたと言うかあんな感じかな~と連想したのであった。

No.2188 6点 ノウイットオール  あなただけが知っている- 森バジル 2026/03/06 15:22
 一編ごとに多少ジャンルが変わっても、作風としては一貫している。あの程度のリンクは “気が利いているね” と言う程度。連作の主題ではなく、オマケ。
 真ん中にドン、ではなく器用さをアピールしている感じが若干しゃらくさい。良く出来てはいるけれども。

No.2187 6点 消える魔術師の冒険- エラリイ・クイーン 2026/03/06 15:21
 「見えない足跡の冒険」はスッキリしないな。真相が推理の通りならば、犯人はアリバイ(と言うか “自分は母屋から出ていない” 証明)を用意する必要があった。
 但し、密室であり、自殺や事故ではない状況だから、どうせ何かトリックが必須。アリバイがあってもトリックの一環と疑われて、犯人も安全圏にはいられないかも。
 そもそもコレは、他者に邪魔されずに殺す為のトリックであって、密室は寧ろ犯人にとって不都合。雪が無ければ外部犯の可能性も考えられたのに。
 ――と言った、犯人の狙いと現実との齟齬をもっと強調した方が良いと思う。
 「赤い箱と緑の箱の冒険」。色盲がネタだと、“色盲について作者は適切に理解しているか” が気になってストーリーが頭に入って来ない。

No.2186 6点 犯罪コーポレーションの冒険- エラリイ・クイーン 2026/03/06 15:21
 全体的なレヴェルは高い。エラリーの知名度のせいで隠密捜査が上手く行かないエピソードが複数あって苦笑。EQにとっては重要な要素だよね。
 しかし「一歩足の男の冒険」。それでロジック全体が駄目になるわけではないが、ミスをしている。杖は基本的に健康な足の側に突くのだ。
 さて問題は表題作。これは失敗でしょ。真相があんななら、まずギャング達が現場に遭遇している筈。

No.2185 4点 聯愁殺- 西澤保彦 2026/03/06 15:20
 読み終えて明らかになった事件全体の構図は見事で唸らされたが、一方で作者はミスをしており、とても勿体無い。

 カムフラージュとしての連続殺人とは、例えば【①遺産目当て】で殺したい相手がいる場合、本当の動機を隠す為に【②誕生日が同じ人】を数人殺して紛れ込ませる(②は捜査陣に判るように提示する)、みたいなものだろう。
 しかし本作。①と②が重なっている。自ら正解を示しているのである。
 確かに、犯人の “被害者に対する悪意” は既に知られてしまっているので、疑われるのは避けられない。でもだからと言ってわざわざあの投稿に注目させるのは犯人の心情として納得しがたい。偽りのミッシング・リンクは別ジャンルにしないと、カムフラージュにならないではないか。“犯人は馬鹿であった” と解釈するしかないなぁ。

No.2184 8点 百年文通- 伴名練 2026/02/27 17:21
 おいおい無茶するな。タイム・パラドックスを歯牙にもかけず驀進する少女達が痛快極まりない。ここまでやるか。勝てば官軍座れば牡丹恐れ入谷の鬼子母神。
 静が美頼に啖呵を切る場面は何度読んでも笑えて泣ける。静の背後にちょっと出て来るだけの大正時代の女学生達のイメージも生き生きと感じられた。
 語り手の素性をちょっと叙述トリック的に扱ってたり、“箱” の伏線が最初から張られていたりと、ミステリ的文法も嬉しい。

No.2183 8点 かめくん- 北野勇作 2026/02/27 17:21
 “かめくんは自分がほんもののカメではないことを知っている。”

 この一文だけであまりに多くのことを想像させられて切なくなってしまう。そしてそれは一文だけでなく、物語全体に亘ってそんなエピソードが積み重なっているのである。
 かめくんの好きなことを並べるうちにいつの間にか世界のありようが語られている不思議。無口なかめくんを代弁しているような擬音語擬態語がラヴリー。かめくんの向こうに茫洋とした大海のような宇宙のような広がりが見える。

No.2182 7点 火蛾- 古泉迦十 2026/02/27 17:20
 ここで語られる謎を享受するには頭の中の価値観を組み直す必要があり、導入部は立派にその役目を果たしている。しかし、読み進むにつれミステリである意義が解体されて、目的であった筈の “謎” よりも “価値観組み直し作業” の方が面白くなってしまった。それなら無理にミステリであり続ける必要は無いのである。
 と言う点で、あくまでミステリにしがみついたEQ『第八の日』に比べると、愛着を抱きづらい。“神秘小説だけど読み方によってはミステリとも取れる” くらいのワン・クッション挿んだスタンスで挑めば良かったかも。

No.2181 7点 教室が、ひとりになるまで- 浅倉秋成 2026/02/27 17:20
 私はこの犯人サイドだ。気持は判る。でも学生時代は自覚無しに被害者側へ加担していた気もする。なので動機を巡る論争は辛辣に響いた。
 この展開の落としどころは難しい。殺した者が殺されても文句は言えない。しかし私刑も罪である。罪はシェアせずに、独りでやるべきだったと思う。だから止められちゃうんだよ。

No.2180 6点 密室蒐集家- 大山誠一郎 2026/02/27 17:19
 そんなにあっさり解いちゃって良いの? 小説的な膨らみを出せない筆力を自ら見切って、途中経過を飛ばしちゃったんだろうか。
 トリック自体はどれも面白い。しかし偶然が多すぎる。もっとキチンと設定を詰めれば減らせる偶然もありそうで勿体無い。

 と言いつつ最も気になったのはソコではなく三話目、恐喝している側がされている側を何故殺す?

No.2179 7点 火星の女王- 小川哲 2026/02/20 15:58
 火星‐地球間の政治的不均衡を背景にしたアレコレ。事態の大きな動きと個人の事情が普通に並んでいるところが良い。話が逸れているようでいつの間にか繫がっているこの作者独特の文脈作りも大きな推進力。タイトルからの連想ではないがハインライン『月は無慈悲な夜の女王』のアップデート版?
 一方で、誘拐のくだりとか、試料盗難事件の周辺とか、なかなかミステリしている。ロジックの種類がSF的な飛躍ではなく、舞台を未来にした “だけ” のミステリと言った感じで(所謂 “特殊設定” ですらない)、伏線もちゃんと示されている。
 但しそのせいで(?)、既成のスタイルに収束してしまい、オンリー・ワン感はやや弱い。

No.2178 6点 あなたが選ぶ結末は- 水生大海 2026/02/20 15:58
 基本コンセプトは『最後のページをめくるまで』と同様。技術的には水準を維持しているが、インパクトは若干落ちる。
 まぁ二冊目だから、そういう心構えが出来ちゃってたから、読み方が厳しくなってるのはあるだろう。起承転の起伏も充分読ませる力があるので、結のどんでん返しばかりに注目すべきではないと思う(でも作者が “結末” に注目させたがっているんだよね……)。

No.2177 6点 火葬国風景- 海野十三 2026/02/20 15:57
 このトンデモっぽい科学ネタはアリ? でも、まぁアリかな~と思わせてしまう妙な愛嬌があって魅力的。と言う感想はSF系作品でも変わらない。「生きている腸」はグロテスクでラヴリー。「十八時の音楽浴」は奇妙な独裁国の話ながら話題があっちこっちに飛ぶ。自分で手術って……。天然物の脱力系の底力を見た。

No.2176 4点 愛しいチグサ- 島田荘司 2026/02/20 15:57
 外見の良さで相手の全てを知った気になる俗物的な主人公。島田荘司が良くやる “ステレオタイプをデフォルメして笑いや文明批評に用いる” 手法か。私は否応無しに、主人公に寄り添うのではなくメタ的視点から見下ろすことになる。状況はかなり早いうちに見当が付くので、その上でどのような落としどころに導かれるのかが焦点。ところが真相はまるで一世紀前のSFである。これでいいのか?

No.2175 4点 消失村の殺戮理論- 森晶麿 2026/02/20 15:56
 ネタバレあり。
 何しろシリーズ前作が前作だから、最早ミステリとしては読めないのである。今回はどういう反則をするのかと、そればかり気になって。
 それを踏まえた上で、ミステリ的緻密さは欠けるが反則ゆえの大技もあって楽しめた。プロローグはそういうことか。ほう。

 しかし設定の詰めが甘く、見過ごせない瑕疵もある。
 いくら七倍速と言っても、内面はそうは行かないだろう。どうしても成熟に必要な実時間と言うものがある。人格データをインストールするわけじゃないんだから。生まれて六年未満で人間的な社会性を学んで村を運営するのは流石に無理だ。
 脳の働きも物凄く速い? だったら部外者とコミュニケーションする場面で明確な差が見られる筈。
 猛スピードで老けるから、一般人と交流すれば数年でバレる。作中の説明に従うなら、アレは “内面がどうにか育った頃には身体にもうガタが来る使い勝手の悪い使い魔” である。それを、ストーリー上都合の良い部分だけピックアップして使っているように思う。

No.2174 8点 老ヴォールの惑星- 小川一水 2026/02/13 17:09
 「ギャルナフカの迷宮」「幸せになる箱庭」は、或る種の社会実験の新たなシミュレーション、と言う感じ。
 対して、見たことのない景色を描こうとした二編。表題作は異質な知性体の構築度が見事。だが、厳しく言えばあれは “設定” を書いただけ。
 そこから一歩も二歩も進んだのが「漂った男」。深刻なのに笑ってしまう状況設定も秀逸だが、その上で “何も無さ” をあれだけ書けることに感服。
 でもまぁ収録作四編どれもスグレモノである。

No.2173 7点 最後のページをめくるまで- 水生大海 2026/02/13 17:09
 粒揃いの短編集。ライトな作風より、こういう一般向けミステリ(と言う呼び方もナンだが)の方が明らかに上手いのではないだろうか。あっちの作品でイメージ的に損してないか。自己プロデュースに難アリ?
 うざったいキャラクターを見事にうざったく描くので読んでいてウガーッとなる。しかしそれはそう書くからこそ意義があるのである。グッジョブ。

No.2172 6点 獏鸚(ばくおう) 名探偵帆村荘六の事件簿- 海野十三 2026/02/13 17:09
 作者は科学畑の出だそうだけど、このトンデモっぽいネタはアリ? でも、まぁアリかな~と思わせてしまう妙な愛嬌があって魅力的。
 てことで「振動魔」「爬虫館事件」「点眼器殺人事件」のトリックも捨てがたいが、小説全体で評価するなら他とは違う手法で書かれダークな色合いの「俘囚」が素晴らしい。

No.2171 5点 なぜ、そのウイスキーが死を招いたのか- 三沢陽一 2026/02/13 17:08
 タイトル通りホワイにポイントを絞り、必要な情報だけ書いた態度は潔い(と言って良いのかどうか……)。
 ウイスキーの薀蓄は、特に興味は無いので、却って知らないフィールドが面白かった。そこまでマニアックなことはどうでもいいよ、と思わせる前にスッと引く塩梅が上手い?
 アナログ・レコードに関する記述は少々言葉が足りず不正確だと思う。

 四話目が良く判らない。被害者がコレクションを譲りたいだけなら、なぜ、わざわざそんな、不本意な結果に終わる可能性もある会を開いたのか。

No.2170 7点 ツミデミック- 一穂ミチ 2026/02/13 17:08
 普通に良く出来たミステリ(風)作品集。この捻りはミステリ的反転に馴染みが薄い人にこそ刺さるのかも。このさりげなさは意外と貴重なものかも。
 表題の造語は少々子供っぽいし、全編がそこまでコロナ禍ならではのプロットではない。そのへんは “あの時期を背景にした作品” と言う看板で新規読者を上手く(あざとく?)誘導したんだな、と言った感じ。
 “ちょっといい話” に落ち着くものより、はっきり悪意が前面に出た「憐光」が良かった。

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虫暮部さん
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