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虫暮部さん
平均点: 6.20点 書評数: 2244件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.2224 7点 アルファベット・パズラーズ- 大山誠一郎 2026/04/28 13:05
 これはなかなか良いんじゃないだろうか。
 と感じたのは曲がりなりにも物語としての膨らみがあるから。(逆に言うと、この程度は書ける作家なわけで、ならば色々殺ぎ落としたような『密室蒐集家』は意図的にああいう風に書いたと言うことになる。その志向性には共感しがたいなぁ。)

 良いと言っても指摘しておきたい欠点はあって、「Pの妄想」の被害者、車椅子でその生活は無謀。
 「Fの告発」は無理にパズラーの型に嵌めたよう。死体を運び出せば良かったのでは。
 「Cの遺言」、あんな偶然成立しちゃいそうな合言葉はリスキーで意味が無い。

No.2223 6点 雨音- 久永実木彦 2026/04/28 13:04
 ドキュメンタリー映画云々は、事件当事者にしてみれば本当に低俗で不謹慎。結果的に “貴重な記録” とやらになったとしても、その為に二次被害を受ける義理は無い。前半を読む上で、語り手の意識の甘さがどこまでも付き纏った。
 ところが後半、ベニのアンバランスな魅力(浴衣は起伏のないスタイルの方が似合うと言うので、さぞかし……)や、突き落とされたような喪失感が、別の話みたいに感じられた。これは果たして作者の狙いなのか。
 気持の真ん中にある微妙な部分をガシッと容赦無く摑み出す手管には長けているが、見るとそこにはヌラヌラ動く心臓が何故か二つあるのだ。それは違和感が大きくて、あまり効果的だとは思えなかった。

No.2222 6点 『クロック城』殺人事件- 北山猛邦 2026/04/28 13:03
 トリックもホワイも面白い。一方で、ミステリ要素以外の部分を思わせ振りに膨らませ過ぎ。
 ディストピア・バトルSF? と思ったけど、SEEKと十一人委員会は全面対決しないの?〈ゲシュタルトの欠片〉って何? 等々色々曖昧なままで、まぁそういう手法もアリだけど、ここでは効果的ではない。風呂敷は責任を持って畳んで欲しかった。

No.2221 6点 黄金仮面の王(河出文庫版)- マルセル・シュオッブ 2026/04/28 13:03
 全体的にグロテスクだけどユーモラス。文章の修飾で膨れ上がっているのは “そういう手法” だと判ってはいるが、ストーリー性がこんなに乏しくて良いのかと困惑すること多し。
 象徴主義だそうです。判らない事物を恣意的にこじつけて自由に曲解出来る便利なシステム。なのでまぁ気楽に読もう。
 「未来のテロ」は、文脈抜きで一枚の絵としては鮮烈。「バーク、ヘアー両氏」「顔無し」、チェスタトンみたいで面白い。「木の星」の、無邪気な少年性に対比してブラック・ユーモアなオチが明確で良い。「擬曲」の “船乗り” は、ミステリ風に水中に死体が沈んでいた話にも読める。

 同題の短編集が国書刊行会とコーベブックスから既に出ているが収録内容は別。知っていながらそういう紛らわしいことはしないで欲しいな。

No.2220 6点 猫に蹂躙されたい人に贈る25のショートホラー- アンソロジー(出版社編) 2026/04/28 13:02
 概ねタイトル通りの内容。各作者の “ホラー” に対する解釈が、“恐怖” 寄りか “怪異” 寄りかでヴァリエーションが生まれるんだな。
 猫は、賢いようで間抜けなようで、居るようで居ないようで、曖昧な領域に立たせ易い気がする。故に化け猫は少なからず見かけるが化け犬は珍しい。
 特に印象的だったのは岩井志麻子「いたかもしれない猫」、柏てん「あんこさん」、高橋由太「ジュンヤと虎鉄」。
 あまりピンと来なかったのは斜線堂有紀「愛らしい猫を迎える際の大切な心得」、香坂鮪「鮪嫌い」、澤村伊智「りこしゃん」。

No.2219 7点 3分で読める!人を殺してしまった話- アンソロジー(出版社編) 2026/04/17 15:52
 “人を殺してしまった。” で始まる企画ショート・ショート集。講談社のメフィストリーダーズクラブよりも随分直球である。いかにも軽そうな佇まいに反して全体的に高品質。
 うーむ、人を殺す話ってやっぱりいいなぁ。
 特に印象的だったのは佐藤青南「贖罪のカクテル」、貴戸湊太「名探偵現る」、降田天「お悩み相談ラジオ」。
 あまりピンと来なかったのは三日市零「生成AIは人気作家の夢を見るか?」、桐山徹也「侵入者」、歌田年「ループ」。


 人を殺してしまった。
 どこに? って、死体をしまうのは棺桶の中に決まっている。

 ってのはどうだろう。苦しいか……。

No.2218 7点 それはそれはよく燃えた- アンソロジー(出版社編) 2026/04/17 15:51
 メフィストリーダーズクラブ企画第6弾。全体的に、最初の一文に関してはあまり捻らず、“何が燃えたか” で素直に話を広げている印象。高田崇史がここまで皆勤賞。

 ベストを挙げちゃうと似鳥鶏「全滅館の殺人」。ミステリ者として許せない(笑)。
 他にもほっこりしたオチが意外にも心地良い風森章羽「黄金の森の神様」。強烈な雑学、古泉迦十「マザー・ジン」。秋吉理香子「ファンの鑑」と五十嵐律人「不完全怨燃」はちょっと似てしまったが、いずれ菖蒲か杜若。
 かなり充実したショート・ショート集だと思う。しかし皆川博子のアレだけは、うーむ……判断不能。

No.2217 7点 妄想銀行- 星新一 2026/04/17 15:51
 本書を読むのは中学校以来。その時は図書館で借りるのではなく実家の蔵書だったから、何度か繰り返し読んだ筈。それが此度読み返して覚えていたのは僅かに「信念」「変な客」「博士と殿さま」。あと「人間的」は教科書に載っていたね。
 犯罪関係やミステリ的な謎を含む話が思ったより多く(三分の一くらい)、日本推理作家協会賞受賞も伊達ではない。
 印象的な作品は、世界の曖昧さを結構長々と描いた「陰謀団ミダス」、この真相には意表を突かれた「古風な愛」、星新一らしからぬダークな「敏感な動物」。
 「破滅」のオチは良く判らん。「鍵」はH・G・ウェルズ「塀についたドア」みたい。表題作は “妄想” の内容とその扱いに時代を感じる(ポリコレ的に……)。

No.2216 6点 悪魔はあくまで悪魔である- 都筑道夫 2026/04/17 15:50
 都筑道夫は雑学的でノスタルジックな脱線が面白い。本書収録作の多くは、オチよりも途中経過で読ませるショート・ショート、だと思った。しかしそれ故に、煙に巻かれた読後感なものも多く、ロジカルな語り口と整合しない嫌いがある――だからたまに “切れ味オチ” タイプの作品があると、もう効くったらない。
 「旅行ぎらい」「不老長寿」「超能力」あたりが良かった。

No.2215 6点 妖しいクレヨン箱- 阿刀田高 2026/04/17 15:50
 本書の中で更に「妖しいクレヨン箱」と題されたパートは、まず冒頭の「白い犬」が出色。オチよりも詩情で読ませる。
 驚いたのはコレ:“N子ってだれですか” “名前の頭文字にNのつく人ですよ……夏子、直子、浪子……” 登場人物をアルファベットで表しているのは表記上の便宜かと思っていたら、いきなり本当のイニシャル・トークになるんだもの。叙述トリック?
 十二編、色々なタイプで総じて高品質。“マダム” なる雑誌に連載されたもの。原稿料が良かったのかしらん。

 以降のパートには波があって、でもショート・ショートはそういうものだ。広告の為に書かれたスケッチ風のものも幾つか収録、あっさりし過ぎじゃないかと思ったが、そう説明されるとまぁ納得せざるを得ない。
 「田代湖殺人事件」。泡坂妻夫に頼めば “実物” を書いてくれただろうか?

No.2214 7点 くらのかみ- 小野不由美 2026/04/10 13:10
 かねがね気になっていたことがある。
 ――座敷童子は、自らが座敷童子であることを認識しているのだろうか?
 私は、どちらかと言えば “認識していない” と、つまりは “自分も普通の子供だと思っている → 意識的に子供達を騙しているわけではない” と思っていた。“思う” と言うより “期待” かな。
 だから本作のあの会話にはカルチャー・ショックを覚えた。えっ、そんな考えがあったの?
 または、見破られた瞬間に認識と記憶が生じたのかも。うーむ、柳田先生にでも訊ねるべきか……。

 もう一点。家系図を見ると三郎にいさんは子供達の従兄ではなく “おじ” なのである。まぁ年齢的なことは如何様にでも考えられる。遅くに出来た子なのだろう。
 でも、あの位置付けのキャラクターを敢えて代の違う “おじさん” に設定して、作者はどういう効果を狙っていたのか。アレッ? と微妙な違和感が残るだけで、何の意味も無い気がするんだけど……。

 人の動きがごちゃごちゃして判りにくいが、犯人当てのロジックにあの事象を絡ませるのは名案。

No.2213 5点 ら抜き言葉殺人事件- 島田荘司 2026/04/10 13:10
 “ら抜き言葉とはなんですか?” なんて言っているが、1991年の発表時には、もっと認知されていたと記憶している。作中で説明する便宜として大袈裟に書いたのだろう。
 そしてこの件は、未だ決着が付いているとは言いがたい。流石の先見の明(?)。

 でも殺人事件の真相がアレなら捜査が杜撰じゃない? 死体に残る痕が違うんでしょ。

 何より引っ掛かったのは、あの人が “ら抜き言葉肯定派” になりそうなものなのに “撲滅論者” に転向した、と言うくだり。
 そんな気持の捩れを認めたら、何が何に転向してもアリになってしまうじゃないか。だったら何故、真犯人は一夫多妻論者に転向しなかったのか(笑)。
 リアリティの有無ではなく、ミステリとしての美しさの問題である。自由が過ぎては却って白ける。しかも本作はその理由こそポイントなわけだから、心理の動きをあまりファジィに片付けるべきではなかったと思う。

No.2212 6点 のぞきめ- 三津田信三 2026/04/10 13:09
 普通に良く出来た、怖いホラー。しかし、私のホラー読者としての解像度は低いので、なかなかその先の機微が読み取れない。
 ミステリはどんなパターンを使うにせよその真相がキモであるのに対して、ホラーは怖がらせる過程がメインだと思う。その観点で見ると怖さの為のガジェットはありがちで、更に刀城言耶シリーズを踏まえてしまうと “オリジナリティがある” と言う程ではない。やっぱり作者が同じなんだなぁ、と言っては酷か。
 シマイは “仕舞い” である。“終” の字を宛てるのは違和感がある。

No.2211 7点 からくり東海道- 泡坂妻夫 2026/04/10 13:09
 大道芸の子供達から始まって、あっちへ飛びこっちへ飛び、一攫千金成るか成らぬか、なかなかにエンタテインしてくれる。それは、時代風俗や義理人情の描写より事件の展開を優先して書いてくれたおかげ。泡坂妻夫の時代物の中では一番面白いかも。
 地理を知らないので、真相の一部が説明的に感じられてしまったのが惜しまれる。風景の類似を文章だけで実感するのは難しいよなぁ。
 最後の場面には山田風太郎を思い出した。意図的なオマージュか否かはともかく。

No.2210 6点 みんなの怪盗ルパン- アンソロジー(国内編集者) 2026/04/10 13:08
 怪盗ルパンの、日本語訳・ジュヴナイル版が元ネタだから、表題に “みんなの” と付けたのは全く以て正しい。参加者は企画に期待されるものを十全に理解して肯定性の強い世界観の作品を寄稿している。が、それ故に度肝を抜くような展開には欠けるか。
 そんな中、小林泰三はあのロジカルかつ神経質な問答で自分流を貫いており偉い。と言うか、アレはアレで “(作家の個性に対して)期待されるもの” なんだよね。

No.2209 7点 きつねのつき- 北野勇作 2026/04/03 15:33
 本書を手に取ったのは一にも二にも『かめくん』の作者だと言う信頼感ゆえ。で、まぁ厳しく言えば不確定な世界を叙情的に綴った『かめくん』の焼き直し。と言うことは、期待通りではあるのだ。
 ただ、あっちはメカなのでカクッとしてパキッとした或る種のドライさを含んでいたが、こっちは肉なのでぬらりとした肉々しさでちょっとホラー。これが更に進むと酉島伝法あたりになる。
 しかし子役と動物には勝てぬ。コミュニケーションの不全を愛らしさに転化出来るから無敵だ。同じことを大人が言ってたら不気味だもんね。こんきゅらぽおん。

No.2208 6点 踊る男- 望月諒子 2026/04/03 15:33
 関連する事件が偶然上手くピックアップされている……のは大目に見よう。犯人サイドの心情にせよ行動にせよ解像度は高く、文章からも良い意味で作者の力の入った充実ぶりが伝わって来る。
 ただ “本作ならでは” の唯一性はあまり感じられなかった。“もう、そういう社会のあり方に疑問を持つというのは流行らない” って自分で言ってるよ(予防線、引いちゃってない?)。

No.2207 6点 難問の多い料理店- 結城真一郎 2026/04/03 15:32
 どの真相も、それなりなんだけど小粒と言うか、力をセーヴして短編サイズのネタに留めましたと言う感じ。犯罪と日常の謎っぽいものが混在するのは面白い。“住人不在の部屋に立て続けに置き配” の件は良かった。設定説明の繰り返しが多いのは単行本化の際に加筆(減筆?)訂正すべきだったのでは。

No.2206 6点 ワトソン力- 大山誠一郎 2026/04/03 15:32
 物語を膨らませる筆力が無いなら、推理合戦で膨らませれば良い。ミステリ愛好会でもないのに毎度毎度推理合戦をさせるには、ワトソン力なる触媒を導入すれば良い。
 と、自らのスペックを冷静に見極めた設定(?)で、概ね意図通りの機能を果たしていると思う。
 でも「雪の日の魔術」。トリックは面白いが、そこで力尽きたか、動機のみに頼って犯人特定しちゃっているのは残念。

No.2205 5点 失われた貌- 櫻田智也 2026/04/03 15:31
 うーむ。期待した感じとは違う。中盤までの展開は、良く出来てはいるが普通の警察小説。あの捻った真相は、“名探偵” 小説でこそ映えるんじゃないだろうか。ブールバードのマスターとのやりとりは良かった。
 あいつが “自首する前に” 電話なんてかけなければ、余計なことを知らずに済んだ。そして、電話しなくても、多分あいつらは自首せずに同じような隠蔽をしただろう。
 と考えると、毅然と対応しなかったのが悪いとは言え、ひどいトバッチリだ。

 ツッコミ:新聞(しかも週刊)への読者投稿は、確実に掲載されると言うものでは全くない。ああいう目的で投書する発想も、狙い通り採用される成り行きも、頷けないなぁ。

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虫暮部さん
ひとこと
好きな作家
泡坂妻夫、山田正紀、西尾維新
採点傾向
平均点: 6.20点   採点数: 2244件
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