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虫暮部さん
平均点: 6.20点 書評数: 2344件

プロフィール | 高評価と近い人 | 書評 | おすすめ

No.2324 7点 終着駅で待ち合わせ- 真門浩平 2026/09/15 15:10
 「悲運の死」は、せっかく母と妹の推理まではぶっとんでたのに、変にまともなところに収斂してしまった。まぁそりゃそうか。
 ミステリは悪意を含む方が好ましい。本書はちょっといい話過ぎる。
 と思ったら「夢落ち」で貯めておいたものがドロッと出て来た感じ。殺人事件の部分も良いが、そこに至るまでの “明晰夢に嵌まって行く過程” に引き込まれた。

No.2323 6点 呪詛遊戯- 市川憂人 2026/09/15 15:09
 ホラーの皮を被ったSFミステリ。
 いやぁ細かい。ややこしい。メモを取りながら読んでもきつい。呪詛の種類だけでなく時間軸のチェックも必要だったか。うにゃー、やっとれんわ!
 と疲れた心の隙間に忍び込む大ネタ! 内側に向かって進んでいたのに外側にもう一つ大きな殻があって、そのおかげで世界の色が変わってしまった。見事な反転だ。これにはやられた。

 この両者のアンバランスさ、リズムのズレ、によって最終的に或る種の効果があった気はする。
 でもやはり(事件の展開・内容を考慮するとチマチマしちゃうのは判るが)もう少し楽しく読める方策は無いものか。“状況確認の為に一々メモを参照する必要があった” と言うだけで、実のところ呪詛云々と事件の関わり方が物凄く面白いわけじゃないんだよねぇ。

No.2322 6点 虎の牙- 江戸川乱歩 2026/09/15 15:08
 黄色と黒のだんだらぞめの髪に、ピンとはねた口ひげ、まっかな唇。このヴィジュアルはなかなか強烈なのである。
 しかし、ではこの博士が何をしたかと言うと、子供を誘拐はしているものの、基本的には “怪人対名探偵の角逐に警察が巻き込まれた” と言う側面が強い。
 資金はかかっていそう(洋館を買ったり)なのに、何も盗んでいないから、今回は赤字確定? 実は手品師として稼いでいたのかも?
 “フーン、じつに、手数のかかるいたずらをやったものですね。”、それを言っちゃあオシマイよ警部補。

No.2321 5点 ネタバレあり 双紋島の殺人- 下村敦史 2026/09/15 15:08
 作中のテキストをいじくる構造は好きなんだけど、本作はあまりそれが生きていないと思う。論じる部分がダラダラしていて面倒。事件そのものの成り行きは悪くないので(断絶しちゃうところとか、驚いた)、それプラスちょっとした叙述トリック、と言った程度で済ませた方が面白くなったのでは。
 しかし、“○○は存在しない” はアンフェアだと思う。

 最大の名場面は “地底湖でアレと遭遇”。ダイビングの臨場感そして脱出劇のスリル。
 ミステリ要素そのものとは大して関係無いが、これまでに冒険物なども物している作者だけに流石の表現力である。

No.2320 4点 犯人は現場に首だけ戻る- 倉知淳 2026/09/15 15:07
 真相のアイデア、切断のホワイ、等はまぁ良いかも知れないが、動きに欠ける坦々とした書き方が面白さを損なっている。
 書き下ろしの最終話に至っては、関係者との面談すら端折ってしまった。
 “何だか日下部刑事が面倒くさいから、これ以上の段取りを組んでいないようにも思えたけれど” って、面倒がっているのは作者では? 登場人物のせいにするなっちゅーの。

No.2319 6点 青銅の魔人- 江戸川乱歩 2026/09/08 13:27
 さしもの二十面相も戦時下では活動出来なかったか。明智小五郎が暴いた真相にも戦争が影を落とす。
 “青銅の魔人” は『オズの魔法使い』の “ブリキのきこり” を思わせる。心が無いんだよね。PTSDに苦しむ帰還兵を投影したのかも知れない。冒頭の時計泥棒は二十面相らしくない乱暴な手口だし(あれじゃ昨今のトクリュウ案件だよ……)。
 世間を騒がすのは前半だけで、後半は私怨による個人狙いの事件なのが残念。このキャラクターでもっと暴れ回って欲しかった。諸々のトリックにはノー・コメント(笑)。でもラスト、二十面相の手に汗握る脱出劇は圧巻で御座います。

 現在冷静に読むと、明智さえも “良い家の子” と “チンピラ少年” を別扱いしていて、それは荒事に慣れているチンピラの適材適所と言う側面はあるかも知れないが、先生ちょっと待ってと言いたくなった。

No.2318 5点 片翼のイカロス- 野島夕照 2026/09/08 13:27
 ヘリコプターに衝突! の件は凄いアイデアだ。
 でもなぁ。普通あんな “三階の窓から飛び立った” 偽装工作を施しても、真に受ける人はいないだろう。
 てっきり “犯行現場に残ってしまった何かを誤魔化すには、無理を承知でそうするしかなかった” と言う、“結果的に” 不可解な状況になったパターンだと思っていた。
 しかしどうもそうではない。“意図的に” 不可解にしている。警察はともかく、一族に対しては “被害者が空を飛んだ” 話が通用すると期待していたようだ。彼等のああいう発言は本気なのだろうか。怖いよ。まぁ世の中には突拍子の無いことを信じている人が結構いるけども。
 逆に、彼に合わせて信じるフリをしているうちに、牽制し合って引っ込みが付かなくなったのかも知れない。全員が “信じているわけないでしょ” と語り手にこっそり打ち明ける、なんて展開もちょっと予想していた。

 エピローグのアレは要らないと思う。

No.2317 5点 鬼葛島の殺人- 三日市零 2026/09/08 13:26
 まぁ普通の孤島連続殺人事件。パターンを上手くこなしてはいる。ロジックは細かいが、ページを行きつ戻りつしてどうにか付いて行けたぞ、と思う。
 犯人が或るものを “念のため写真に撮った” と言う説明が納得出来ない。自分の目で見たんだからいいじゃん。探偵および読者に手掛かりを提供する為に不自然な行動をさせた、としか思えん。

 ところで、このツアーって配信企画として面白いのだろうか。遺物探しにせよ、謎解きゲームにせよ、余計なことに余力を割かず一つに集中した方が充実した内容になるのでは。

No.2316 5点 陀吉尼の紡ぐ糸- 藤木稟 2026/09/08 13:26
 或る種の美意識に則ったキャラクター造形、博覧強記のオカルティズムや時代風俗描写で、次々にページを繰らせる筆力はあると思う。
 しかし、物語が非常に錯綜しており、一体何が起きているのか、そんな事件だったっけ、と真相から逆方向に出来事を読み直すはめになった。
 “怪奇小説としての材料は揃っているが……支離滅裂で話がまとまらんなぁ……”、
 作中人物の口を借りて言い訳するなっちゅーの。

No.2315 5点 一角獣殺人事件- カーター・ディクスン 2026/09/08 13:25
 誰が誰やら。何が何やら。
 そういう書き方をしがちな作家だと踏まえた上で歩み寄ったものの、その混沌が “作者の狙い” だと解説されては手も足も出ない。単に整理が下手だっただけじゃないの?
 でも一番受け入れがたかったのは、名探偵との対決が話題になるような “怪盗” が盗みの為に平気で人を殺すと言うこと。線引きの基準がバグっているようで、あまりにも浪漫に欠けるなぁ。

No.2314 7点 刑事総務課は眠らない- 矢樹純 2026/09/01 13:58
 主人公の苗字 “月代(つきしろ)”。この漢字は “さかやき” とも読むので気になってしょうがない。名前の選択として良くないと思う。実在の苗字だったら茶化すようで申し訳ないが。

 第一話の心中事件の “手掛かり” は何だったのか。“エアコン” だけからあそこまで推理するとは、あまりにも出来過ぎ・飛躍し過ぎじゃなかろうか。

 作中の大きな “偶然” を突き詰めると、某事件の犯人が別の事件の犯人と直接の知り合いだった、と言うこと。一つだけならまぁいいか。
 ただ、ミステリで “偶然” が読者をガッカリさせる要因になるのは如何ともしがたい。この部分を必然的展開に出来たら総合評価が更に上がったのに。

No.2313 7点 後宮の呪術妃- 白川尚史 2026/09/01 13:58
 前作はまぐれじゃなかったんだな~。
 後漢(東漢)の後宮を舞台に、人々が時代や場所に即した価値観(特に、死の受け入れ方)で動いているのが良い。漢字や語彙による雰囲気作りと読み易さのバランスも上手く拮抗している。
 面白いじゃないか……と夢中でページを繰っていたら、中盤で想像を裏切る展開が連続して度肝を抜かれた。おいこら。しかし “中華” のカラーが強過ぎて、その前と後で世界観があまり変わらないのも凄い。笙で癒す場面が良かった。
 惜しまれるのは、発端である “死者の首すげかえ事件” の内幕が、判ってみるとさほど必然性を感じさせないこと。

No.2312 7点 完全密室のマトリョーシカ ミステリ・イン・ザ・ミステリ - 黒田研二 2026/09/01 13:57
 おっと吃驚した。これは全然気付かなかったわ。
 ただ、ラストに辿り着くまでは、うねうねと低空飛行な感覚である。
 語り手が俎上のプロットを低評価しているので、ついその気分に引っ張られてしまう。いや、それはそれで構成上必然的なイマイチさなんだけれど、イマイチのプロットをイマイチだと指摘されつつ読んで物凄く楽しいかと言えばそうではない。こうやれば没トリックも使える、と言う点では歌野晶午のアレみたいなものか。

No.2311 6点 妖怪博士- 江戸川乱歩 2026/09/01 13:56
 “その頃、東京じゅうの町々で、人々は寄るとさわると「妖怪博士蛭田」の、「笑う大コウモリ団」の、噂をしているのでした。”

 と言う場面は無い。
 指摘しておきたいのだが、薄気味の悪い蛭田博士も、恐ろしい人間大の化け物コウモリも、少年探偵団と明智小五郎および極少数の大人の前にしか姿を晒していない。なかなか凝ったヴィジュアルなんだけどな。
 つまりこれは、世間を巻き込む大スペクタクル・ショーではなく、少年探偵団に向けたクロース・アップ・マジックなのである。あまりにも贅沢。なんと大人気無い復讐心。しかし国宝の掛け軸はしっかり手にしている。天晴れ天晴れ。

 そして、またもやラストの “ばんざーい” は、海野十三『蠅男』への返答だろうか?

No.2310 5点 さよなら、探偵- 綾崎隼 2026/09/01 13:56
 苦く切ない青春ミステリ。
 注意深く端正に書かれており、こういうコンセプトに求められるものを期待通りに上手く具現化している。一方で、それ故に既視感も強く先が読み易いとも言える。
 席替えバトルの発想は面白い。ただ、こういうのは、或る程度繰り返してルールを把握しないと駆け引きの妙は味わえないが、あまり長くすると飽きる、と言うジレンマがあると思う。
 第四話で明かされるアレについては、言及した時点でネタバレになるからノー・コメント。

No.2309 6点 少年探偵団- 江戸川乱歩 2026/08/25 14:33
 黒い魔物事件は、奇怪な演出に一応目的がある点に注目。この後どんどん愉快犯化する二十面相も未だ若かった。
 黄金の塔事件。赤外線防備装置にピストルまで仕掛けるとは大鳥氏も大概だ。うっかりそこで誰か死ぬんじゃないか、いや、うっかりに見せかけて誰かを殺す為の計画じゃないか、と心配したよ。

No.2308 6点 深夜の市長- 海野十三 2026/08/25 14:33
 表題作は、結局何の話だったの? と言う感じで、あやふやな物語を場面々々の口当たりの妙で読まされてしまった。魅力的な舞台の設定だけ、ガワだけ、なんだけどそのガワ自体は結構面白い。って困るなァ……。

 追加収録の短編群もその点は共通していて、しかも短いだけにガワだけでも成立し易い。タイム・マシンの冗談めかした使い方が流石はエンジニア作家(?)。
 ただ「雪山殺人譜」に限っては、何処がポイントだかさっぱり判らず。

No.2307 6点 非在- 鳥飼否宇 2026/08/25 14:32
 “EQの定義による本格ミステリ” を前提として遊んだ新本格、の蓄積された知見を巧みに活用した精緻な果実。
 ではあるが、その出来の良さが曲者で、更に二周三周したスレた読者の目で見ると、“此処で捻っているだろう” と言うポイントがかなり判ってしまう。
 そして、そのポイントの内容が、あまり親しみ易くはないのだ。島に関しては読者の推理する余地が少なく、地理のトリビア大会になってしまった。
 遺骨の件はかなり能動的に推理に参加しないと付いて行けないし、その労力の割に物凄く驚きの真相と言うわけではない(アレされたこと自体が驚きのピークで、具体的にどうやったかはさほど重要ではない)。“読者が楽しめる部分” と “作者が重視する部分” が幾らかズレているのではないか。
 ネコさんが温泉で悲鳴を上げたのは痛恨のミス。観察者シリーズと謳っても、対象に影響を与えまくりである。

 固いことを言うなら、このULTRA遠征隊はどの程度(どういう意味で、と言うべきか)本気なのか。
 例えばツチノコの存在を信じたからと言って、イコールUMA全般を信じる、と言うことにはならないだろう。こういうのは好きな人ほど認定基準が厳しくなるものだ。まして人魚なんて、生物学的に非常に苦しい造形である。
 伝承や文献を通じた民俗学的なアプローチなのか。誤認の元になった生物探しなのか。まんま信じている “体” で変な行動を取る遊びなのか。
 “本気で人魚の存在を信じる集団が大学にいる” なんて狂信的設定、何かの伏線かとずっと疑ってたよ。

No.2306 4点 先生、大事なものが盗まれました- 北山猛邦 2026/08/25 14:31
 青春のようなミステリのような与太話。ファジィな領域にフワフワと漂う世界観はまぁアリとしよう。しかしこの “怪盗” の行為は、その性質上必要以上に理屈っぽくなってしまうけれど、そこに “ふーん” 以上の感慨は得にくい。苦し紛れに出した企画が通っちゃって無理にでっちあげたような感じ。コノミのキャラは(好みが分かれそうだけど)良かった。

No.2305 6点 寝台特急(ブルートレイン)殺人事件- 西村京太郎 2026/08/25 14:30
 何処までが計画のうちで、どれが想定外なのか。想定外を想定して結果から逆算したような、歪な様相を呈している感が否めない。しかしその上で、どんどん話がエスカレートするので驚いたのも確かだ。
 これは旅情云々ではなく、『華麗なる誘拐』等の陰謀系作品に連なるもので、道具立てがたまたま列車だったと言うだけだと思う。つまり、トラベルミステリのブームとは或る種の誤解から始まったと言うこと?

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虫暮部さん
ひとこと
好きな作家
泡坂妻夫、山田正紀、西尾維新
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