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虫暮部さん
平均点: 6.20点 書評数: 2179件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.2159 7点 わざわざゾンビを殺す人間なんていない。- 小林泰三 2026/01/25 14:02
 ミステリのような何か。
 まぁ小林泰三作品は超常現象の有無にかかわらず第一義的には “気持悪いキャラクターの会話小説” なので、殺人事件の調査から話が逸れてもそれはそれで一貫して “本領” の内なのである。その観点で言えば決してジャンルが拡散などしていないのである。ただ、背広のロジックは判りにくかったな。
 イーターには面食らった。流石の描写力であるが、人肉ならともかくゾンビの肉を食うと言うセンスは私の共感を超えている。あ、活性化遺体、ね。

No.2158 6点 森栄莞爾と十二人の父を知らない子供たち- 逸木裕 2026/01/25 14:02
 正直、個人的にそこまで乗れる題材ではない。にもかかわらず意外な程楽しめた。作者がしっかり調べているのは判るし、それを子供たち個々の物語に組み込む手際も巧み。
 更に、“この展開だと結末のパターンは限られている” と思ったら、全然想像しない方向だったので驚いた。
 私は “もっと適当に考えてればいいのに” と言う神原に一番近いかな。

No.2157 6点 ふしぎとぼくらはなにをしたらよいかの殺人事件- 橋本治 2026/01/25 14:02
 なんじゃこりゃ……と思いつつ読み進めたが、読み終わると印象が(少し)変わる。これはミステリの形を借りた社会評論。或る種の空虚さを表すのにこれ程のページを費やすのはどうかと思うが、橋本治はミステリ作家ではないし、読みにくくはないのが救い。
 ミステリ的な薄さは否めず、ミステリに慣れていない読者のほうがその点に引っ掛からずに作者の意図を汲めるかもしれないが、そういう読者にミステリとはこういうものだと思われるのは嫌だなぁ。

No.2156 6点 私たちはどこで間違ってしまったんだろう- 美輪和音 2026/01/25 14:01
 プロローグであんな風に “監獄実験” を持ち出したら、それだけで全体の構成は決まったようなもの。“冤罪かと思ったら本当に犯人だった” と言う意外な展開はせず、予想通りにああなってそうなってこうなった。その範囲内に於いてはしっかり読ませる書きっぷりである。
 ただ、事件そのものが何かのニュースで読んだような内容なので、作品に対する向き合い方に迷うのである。これは小説形式による異議申し立てなのだろうか?

No.2155 5点 月面にアームストロングの足跡は存在しない- 穂波了 2026/01/25 14:01
 再度宇宙を舞台にして、これはデビュー作への “甘過ぎる” との批判に対するリヴェンジを意図したのではなかろうか。自分は冒瀆も理不尽も冷静に呑み込めるぞ、と。
 或る程度名誉挽回は叶ったけど、インフォーマーの “動機” とか、まだまだ色々甘い。でもそれを恥ずかしげも無く書けるのは、それはそれで貴重かも。 

No.2154 4点 千年ゲーム- 山田彩人 2026/01/18 14:55
 VWのゲームがどうのこうの。具体的にどれと似ているということではないが、同系統の先行作が色々ありそうだし、物語として展開があまり面白くない。まるでこういう題材で書かれた最初の小説であるかのような無邪気さ。作者はちょっと考えが甘い。

No.2153 6点 百年の時効- 伏尾美紀 2026/01/18 14:55
 この事件、解くのに長大な時間を必要とする類の謎だとは、“必要” の定義は置いとくとして、あまり思えない。そこだけ見ればスッキリとしたパズラーにしても良かったくらい。
 解決に五十年もかかったのは、人員配置やら何やらの警察サイドの事情が大きい。なかなかアイロニックである。

 あと、私は “元号とは計算が面倒なだけの無意味なシステムである” と思っているクチなので、本作に限らず “(改元で)一つの時代が終わりを迎えた” とか大仰かつ感傷的な記述を見ると笑ってしまう。
 章題にも元号を掲げているが、日本人だけがそこに変な色分けを幻視してしまうのだ。“法律や価値観、それに慣習も異なる” のは確かだが、キー・ワードに元号を使ってしまうと客観性が乏しくなると思う。

No.2152 8点 輝きの七日間- 山本弘 2026/01/18 14:55
 A・C・クラーク『幼年期の終わり』の欠点を修正したような話。作者の祈りと、もっと言えば苛立ちと憤りを直球でこれでもかとぶん回し、それをアリにしてしまうのは、設定のおかげだけではなく、作者が本気だと伝わってくるから。作品そのものが突っ込み待ちのようでいて、しかしこの熱量では突っ込む隙が無い。“面倒なおっさん” の面目躍如と言えよう。
 
 つまり、“これはSFではありません。”――である。

No.2151 7点 第二警察- 吉田親司 2026/01/18 14:54
 基盤は謀略小説なんだけど、あれよあれよと言う間に世界の見え方が侵食され反転する。何とも剣呑なクロニクル。ディストピアの定義を問うようだ。アナザー真賀田四季か(笑)。
 最大の特異点かつブラック・ボックスである韋駄アキラ以外全員モブなのは構造的必然。しかし好きになれるキャラクターが皆無なのはちょっと困る……だがそうやって人間を “駒” に見せることこそ作品の狙いにも思えて……うーむ。

No.2150 5点 カウント・ゼロ- ウィリアム・ギブスン 2026/01/18 14:54
 うーむ。この作品、サイバーパンクの世界観の深化にストーリーテリングが巻き込まれて、尚且つ物語として三つの流れが平行するので、どうも判りづらい。しかも話の進め方は(パズラーではなく)ハード・ボイルド的な論理が強くて、スピード感はあるが納得感はさほどでもない。平行させずに(だって殆ど絡み合わないし)各々を纏めて順々に語った方が、まだ良かったのではないか。
 ありがちな展開をSFのガジェットでコーティング。方法論としては大いにアリだけど、私は本作、そこまで上手くは乗れなかった。

No.2149 7点 猫物語(白)- 西尾維新 2026/01/12 13:14
 委員長は阿良々木暦を過大評価してない? あんなことやこんなことをやらかす野郎を良い方に解釈し過ぎてない? まぁ再読なので、時系列的にはあれこれは未だ起きてないんだけどね。
 つまりこれは、一人称で過大評価をこれでもかとばかりに書き連ねることで、“私、本気ですよ” とか書く以上に記述者の本気っぷりを表しているのである。羽川さん目が曇っとるな~、熱に浮かされとるな~、と読者に実感させているのである。高等テクニックである。

No.2148 7点 猫物語(黒)- 西尾維新 2026/01/12 13:13
 つい “完璧な委員長” キャラを使ってしまい、シリーズを書き進むにつれて作者は困じ果てたのではないだろうか。
 この世に存在する筈がないものを、設定の主軸の一つに据えてしまったのだから。歪みが集まっても微笑んで際限なく飲み込んでしまう、そのこと自体が歪みなのである。忍野メメに “気持ち悪い” と言わせたのは、作者の本音が漏れたのだと思う。
 本作はシリーズを続ける為の荒療治。毒を垂らして麻痺を麻痺させるみたいに強引に切り替えた。でも羽川さん、やっぱり黒じゃなく清純な白でお願いします。

No.2147 7点 不可思議アイランド- 山田正紀 2026/01/12 13:12
 キャリア十年目、短編集に収録し損ねていたものをジャンル不問で集めた、文字通り “分類不能” な短編集。
 「自殺省」は、山田正紀の中でもああいう類のグレーな不条理さは異色なんだけれど、全キャリアの短編で見ても三本の指に入る傑作だと私は思う。
 一方で挫折の記録(中断したシリーズ)も残っちゃって、つわものどもが夢の跡、である。

No.2146 6点 ハンニバル・ライジング- トマス・ハリス 2026/01/12 13:12
 リトアニアの城に住んでいた伯爵家の聡明な少年は如何にして “怪物” と成りしか。
 シリーズ前作『ハンニバル』でチラ見せされていた過去のトラウマの詳細な完全版である。そして、言ってしまえば、それ以上のものではない。
 物凄く大雑把な見方だが、本書の内容は前作で示された大枠の通りであって、それを上回る驚き、捻り、と言ったものは感じられなかった。まぁそういう感じだよね、と普通に納得。勿論、新たな登場人物によってエピソードに膨らみが持たされてはいるけれど。
 寧ろ気になるのはこの部分より後、レクターが収監されるに至った成り行きだな~。彼も敗北したわけだから。ミッシング・リンクは未だ埋まっていないのだ。

No.2145 5点 銃とチョコレート- 乙一 2026/01/12 13:11
 人も街も、単にどこか異国と言うだけでなく、薄い膜一枚で隔てられているような、もどかしい距離感。主な原因は平仮名と漢字の使い分け方だろうか。
 これは作中作設定みたいなメタな仕掛けがあるな――と確信したが考え過ぎだった。単にもどかしいだけ。
 物語の流れも伏線の張り方も、いつもの乙一作品と比べて遜色は無いのに、限定された枠組みの中の人形劇を観ているよう(ちょっと悪い意味で)。文体って重要だな~と思った。

No.2144 7点 神のロジック 人間のマジック- 西澤保彦 2026/01/04 11:26
 このトリックにはやっぱり某作品が立ち塞がってしまう。もしどちらか片方だけ読むように選び直せるなら、トリックの位置付け、反転の深さ、と言うことで本作を取るかなぁ。捻り過ぎる作者の悪癖が出ていない点も良し。

 “ワークショップ” の推理問題、あの文章から合理的に特定可能な模範解答があるんだろうか? いかようにでも解釈出来そうな印象しかなかったけど。

No.2143 6点 薔薇の家、晩夏の夢- 倉阪鬼一郎 2026/01/04 11:25
 こういうのは好きなんだけど、好き故の弊害で沢山読んでしまったので、ああそういう感じね~、とついパターンで認識してしまう。
 本作はトリック “だけ” で、あまりにもからっぽの世界。“これはあくまで粗筋で、これから物語の細部や人物像を細かく書き込むのだ” と言われたら “あっ、楽しみにしてます” と本気にしそう。まぁ作風なのは判るけれど……。
 暗号は結構なウェイトを占めているが “解きたくなる暗号” ではない。ただ単に “そういうもの” として目の前を流れて行ってしまった。ちょっと残念。

No.2142 5点 笑ってジグソー、殺してパズル- 平石貴樹 2026/01/04 11:25
 普通のミステリなら “成程、上手い手だ” と思ったかも知れない。
 しかし挑戦状を挿むような推理パズル小説となると話は別で、“ズルい” とまず思った。犯人当てを謳うなら、“読者に検証しようがない医学的データは無謬” がルールじゃないの?
 事件の仕掛けは面白い。しかし物語としてあまり面白くならない。余計な装飾を排して “読者との知恵比べ” 的側面に特化した書き方に原因があるのは明らか。作者は犯人当てについて、“読者が解けないものの方が優れている” と思っていたのではないか。
 変な話し方の秘書課長が良かった。もっとやって欲しかったな。

 密室の錠については、“ボタンを押してから部屋を出てドアを閉めても、ラッチが外枠に触れた際に固定が解除されてしまい、鍵はかからない。”と書かれていますので、トリックは必要ですね。

No.2141 5点 狂い壁 狂い窓- 竹本健治 2026/01/04 11:24
 どうも判りづらい。非常に濃厚な文章ではあるが、それが目的化していないか。言葉に事象が埋もれ、事象に人物が埋もれて、結局上手く読み分けられなかった。
 いや、目的化したって構わないが、濃い文章を繰り出しつつも圧倒的に判り易い作品だってあるわけで、本作はそのへんを “やり損なった” のだと思う。

No.2140 4点 聖女の論理、探偵の原罪- 紺野天龍 2026/01/04 11:24
 ネタをぼかして書けるかな? 設定のあざとさも含めて全体としては好きなんだけど、ミステリ的には失敗している。
 ステージ上の事件。予定と違う映像の操作を誰が行ったのか? また、本来なら不要なカメラ機能が何故ついているのか?
 アイスの件。数値化しづらい “冷え具合” を曖昧なまま進めており、あまり綺麗な論理ではないと思う。

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虫暮部さん
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