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kanamoriさん
平均点: 5.89点 書評数: 2460件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.860 7点 リプレイ- ケン・グリムウッド 2010/07/27 19:09
北村薫「リセット」、乾くるみ「リピート」など、幾つかの国内作家のSFミステリを連想させる時間移動・反復人生もの。これらの作品はタイトルもまぎらわしいほど似ている。
しかし、タイム・パラドックスの意外な解消方法とかのミステリ要素は希薄で、「夏への扉」のテイストに近いSFの分類に入る物語でした。ラストはなかなか感動的で、まあ印象に残るシーンではあります。

No.859 7点 招かれざる客たちのビュッフェ- クリスチアナ・ブランド 2010/07/27 19:09
作者の短編ミステリのフルコースが用意されていますが、このディナーはどの料理にも毒が入っているので要注意。
コックリル警部ものでは、冒頭からの伏線が見事な「婚姻飛翔」と、倒叙もので最後の一撃が光る「カップの中の毒」が印象に残る逸品でした。
個人的ベストは、やはり「ジェミニー・クリケット事件」。凝った構成と意外な結末で、名作の名に値すると思います。

No.858 6点 ミザリー- スティーヴン・キング 2010/07/27 19:08
自動車事故で半身不随になった人気作家が、熱狂的な女性愛読者に監禁される恐怖を描いたモダン・ホラーサスペンス。
超常現象などが出てこない、人間の狂気を主題にしたホラーですが、克明な心理描写がなかなか読ませます。
主人公の人気作家「ポール・シェルダン」って、ひょっとして・・・・(笑)。

No.857 7点 ブラック・ダリア- ジェイムズ・エルロイ 2010/07/27 19:08
「このミス’91年版」海外部門の第3位は、40~60年代のロサンジェルスの暗黒史を活写した”LA四部作”の第1作。
エルロイはこれが初読み。ノワールものはあまり好きではなく、各書評でさんざん過激な暴力描写に触れられていたので、読む前は若干腰が引けていたが、圧倒的なリーダビリテイの高さを感じたものの、文体も描写内容も普通に許容範囲内で、ミステリ的な興味が前面に出ているのも意外だった。
「ホワイト・ジャズ」から入る人はまずいないと思うが、本書がエルロイ入門に最適だと思います。

No.856 6点 このミステリーがすごい!’91年版- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 2010/07/26 21:46
創刊第3号の本書からタイトルの年次が”翌年度表示”に改められた。欠版があったわけではないので、対象作品は従来どうりで、直前1年間(89年11月~90年10月出版)です。

企画としては前号と大きな変化はないが、巻末に対象期間に出版された作品リストがついたのはありがたい。

ランキングを見ると、海外部門の盛況ぶりがすごく、話題作が目白押しで、ベスト3の「薔薇の名前」「ブルー・ベル」「ブラック・ダリア」の”花タイトル3作”は、通常だといずれもベスト1ではと思うほど。「薔薇の名前」は20年間積ん読状態で未読なんですが(笑)。
国内部門は、第1位の大沢のブレイク作「新宿鮫」を始め、ハードボイルド・冒険小説がこの年も元気だった。

No.855 7点 写楽 閉じた国の幻- 島田荘司 2010/07/26 21:06
著者初の本格的な歴史ミステリ。
「成吉思汗の秘密」や「時の娘」は、始めに仮説がありそれを証明するアリバイ崩し的な歴史ミステリと言えると思いますが、写楽の謎(=写楽は何者だったのかという謎に収斂する)は、一種のフーダニットものに通じる魅力があり、本書の「真犯人」も島荘らしい奇想天外さで楽しめた。
現代編は主人公の家庭環境の話題など冗長と思える点とか、本作で解明されない事象が残ったりで不満ですが、蔦屋重三郎視点で描かれる江戸編のエピソードはなかなか軽妙で、その中にさりげなく写楽のアリバイ崩しの伏線である暦の話題を入れるなど、巧妙な構成になっていると思います。

No.854 6点 闇の奥へ- クレイグ・トーマス 2010/07/26 20:41
英国情報局長ケネス・オーブリーが登場する冒険スパイ活劇サーガの一冊。
同シリーズの作品では、映画化された「ファイアフォックス」が有名ですが、本書はミッチェル・ガントではなく、部下の工作員パトリック・ハイドが主役で、謀略と活劇が堪能できる。
しかし、時代の趨勢で現在ではもはや流行らないストーリーだという感は否めない。

ちなみに、本シリーズの原題にはほとんど動物の名前が入っていて、本書の場合は”The Bear's Tears"。

No.853 7点 誓約- ネルソン・デミル 2010/07/26 19:03
ベトナム戦争時の残虐行為疑惑で軍事裁判にかけられる元陸軍中尉を主人公にした法廷ものサスペンスの超大作。
シリアスな内容で重厚長大なうえに、テーマが日本人読者に馴染まないと思いますが、思いのほか物語に引き込まれました。
のちに「模倣犯」を書いた宮部みゆきが、本書を「このミス」で1位に挙げているのが分かるような気がします。
しかし、デミルは「ゴールド・コースト」や「プラムアイランド」などのエンタテイメント志向の作品のほうが好みだ。

No.852 6点 フリーキー・ディーキー- エルモア・レナード 2010/07/26 18:43
クライム小説といっても深刻さや暗欝さがないの作者の特徴でしょうか。
本書も、休職中の警官を始め、レイプを訴える女優、暇を持て余す大金持ち、ベトナム反戦の影を引きずる爆弾狂など、ちょっと常識を外した登場人物たちが、それぞれの欲望のままにオフビートな騒動を繰り広げます。
映像的でスタイリッシュなクライム小説という印象です。

No.851 6点 古い骨- アーロン・エルキンズ 2010/07/26 18:21
「このミス’89年版」海外部門の3位にランクインしたのはスケルトン探偵シリーズの邦訳第1作。
探偵役が、発見した白骨から生前の容貌はもとより性癖まで推理してしまうというのがユニーク。探偵の特異な設定によりプロットもパターン化されるから、シリーズがこれほど続くとは思わなかった。

No.850 6点 真夜中のデッド・リミット- スティーヴン・ハンター 2010/07/25 21:58
冒険小説の傑作「極大射程」などの”スワガー・サーガ”で大ブレイクする前に書かれた軍事サスペンス。
核ミサイル基地を占拠した武装集団と、その奪還に挑むデルタ・フォース部隊の戦闘アクションもので、作者の武器オタクぶりが全開ですが、後半の圧倒的サスペンスに比べ前半の冗長さがちょっときつい。
人間ドラマぽいシーンを挟んでいるのが、あまりに類型的に思えてしまいました。

No.849 8点 羊たちの沈黙- トマス・ハリス 2010/07/25 21:32
映画&原作本とも大ヒットした本書は、やはり”サイコ・サスペンス小説の傑作”で、その呼称は揺らがないと思います。
物語の本筋は、FBIの女性訓練生スターリングが、女性の皮をはぐ連続殺人鬼<バファロー・ビル>を追うというストーリーなんですが、脇役であるはずの精神科医”人喰いハンニバル”ことレクター博士の存在感があまりにも突出していて、その特異なキャラクターが物語全編を支配しています。
収監中のレクター博士がスターリングにアドバイスするシーンでは、彼が一種の安楽椅子探偵かと思えてきました(笑)。

No.848 6点 このミステリーがすごい!’89年版- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 2010/07/25 20:52
創刊第2号となる本書は、企画ものが増えてミステリ情報誌として体裁が整ってきたように思います。覆面座談会による一年の総括、わが社の隠し玉など興味を引く企画が増えた。
また、アンケート回答者も内外とも60~70人に増え、ランク付けもある程度客観性を持つようになった。海外部門の投票に、実作者の宮部みゆき、大沢在昌、山口雅也などが参加し彩りを加えていてコメントも楽しめる。

ベストテンを見ると、海外部門は予想通りというべきか、サイコサスペンス・ブームの火付け役となったあの傑作が1位。
国内部門は、ハードボイルドの新星「私が殺した少女」が1位というのは少々意外ですが、島田荘司、岡嶋二人、志水辰夫など妥当な顔ぶれ。新本格派は全滅。「8の殺人」(第18位)などはユニークだと思ったが、広い支持を得られなかったようだ。

No.847 6点 透明人間の告白- H・F・セイント 2010/07/25 18:20
サバイバル風の冒険小説、というより風刺小説かもしれません。
突如”透明人間”になってしまった男の、通常生活の中の苦難の数々を、馬鹿らしいほど丁寧に描いています。
SF風の異常な設定なのに、透明人間だとこういう点が困るだろうとか、リアル過ぎる考察は一種のユーモアを醸しだしますが、ミステリ趣向が弱いので物足りない気もする。

No.846 6点 男たちの絆- マイクル・Z・リューイン 2010/07/25 17:55
失踪人課のパウダー警部補シリーズの3作目。
モジュラー型の警察小説で、複数の事件を並行して描いていますが、核は父親が失踪した12歳の少年との交情で、なかなか読ませます。ただ、身障者である部下の女性刑事への対応など、前作の趣向の繰り返しが気になりました。
前作「刑事の誇り」でパウダーの魅力を書ききった感じで、それを超えることは出来なかったように思います。

No.845 6点 スリーパーにシグナルを送れ- ロバート・リテル 2010/07/25 17:29
内容紹介文を読んで、ソ連の元スパイ養成所教官の亡命を題材としたエピオナージュかと思っていたら、物語がどんどん変な方向にずれていく。登場人物も、主役級のCIA工作員2人組を始め、脇役までも変な性癖を持つユニークな人物ばかりで、シニカルなユーモアが漂い面白かった。
結末はかなり意外だと思いますが、ネタバレ気味の解説を先に読んだのでカタルシスは半減してしまった。

No.844 7点 赤毛のストレーガ- アンドリュー・ヴァクス 2010/07/24 21:29
やくざな私立探偵バークを主人公にしたバイオレンス風ハードボイルド、シリーズ第2弾。
毎回ニューヨークの暗部をテーマにしていますが、今回は未成年ポルノの世界に乗り込みます。
次作の傑作「ブルー・ベル」には及ばないものの、軟弱系ネオ・ハードボイルドへのアンチテーゼのような熱気と過激さで独特のテイストがあります。

No.843 7点 北壁の死闘- ボブ・ラングレー 2010/07/24 21:14
いま時、流行らないかもしれませんが、第二次大戦末期のナチス・ドイツの秘密計画を絡めた山岳冒険小説です。
邦訳された80年代後期は、こういうストレートな冒険小説の人気が下火になっていたので、遅れてきた冒険小説の傑作という感が強い。アイガー北壁の最難所”神々のトラヴァース”をめぐるリアルな登攀シーンや緊迫したアクションが読みどころ。

No.842 7点 死の味- P・D・ジェイムズ 2010/07/24 17:22
アダム・ダルグリッシュ警視(長)シリーズの8作目。
教会で浮浪者とともに死体で発見された元国務大臣の死の謎を追っていますが、従来にも増して長大かつ重厚な捜査小説で、内容的にも読み終えるとぐったりとなる。
新たに女性警部をメンバーに加えていますが、コーデリアのような役割ではなく、シリアスな人間ドラマを助長させるような感じを受けました。重すぎて続けて読むのはちょっときついシリーズ。

No.841 7点 推定無罪- スコット・トゥロー 2010/07/24 16:57
読み終えて事件の構図を整理すると、二時間ドラマ風の設定であったことが分かりますが、登場人物それぞれの思惑を錯綜させながら伏線を散りばめた前半部と、法廷テクニックを駆使した後半のスリリングな展開で、真相が見えにくい一級品のミステリに仕上がっていると思います。
美人検事補殺しの捜査を担当するはずの主席検事補サビッチが徐々に重要容疑者になっていく訳ですが、そのサビッチの一人称視点で語られる心情が物語に深みと重みを加えています。

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