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kanamoriさん
平均点: 5.88点 書評数: 2475件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.935 7点 兄の殺人者- D・M・ディヴァイン 2010/08/03 21:03
とてもデビュー作とは思えない完成度の高い本格ミステリ。
殺された兄と主人公で探偵役の弟、ふたりそれぞれの人間関係が序盤から丁寧に描写されていて、単なる本格パズラーとして読むと冗長と感じる部分にもキッチリ伏線を張ってあり、なかなか巧妙なプロットになっています。
アリバイに古典的アイテムが使われている点は時代を感じますが、心情描写などによるミスディレクションに優れており、現代ミステリと比べて遜色ない内容だと思います。

No.934 6点 エヴァ・ライカーの記憶- ドナルド・A・スタンウッド 2010/08/03 18:55
50年前のタイタニック号沈没事故を主題にした壮大な謀略サスペンス。
「東西ミステリーベスト100」には海外部門だけ、ランク外の101位から200位の作品がリストアップされていて、本書はその101位に入っています。先年30年ぶりに復刊されました。
前半は、タイタニック引揚げのルポを依頼された主人公が幾つかの謎と謀略に気付く探求の物語で、若干冗長な感じもありますが、後半、沈没事故の生き残りエヴァを巡る謎ときが延々と続き、本格ミステリ趣向充分です。
多少、B級めいた面もありますが、総合エンタテイメント小説としてまずまずの出来だと思います。

No.933 5点 この国。- 石持浅海 2010/08/03 18:28
一党独裁国家の治安警察・番匠中佐を狂言回しにした連作ミステリ。
ちょっと前に出た「撹乱者」を、逆に体制側から描いたような謀略系の作品集ですが、特殊なパラレル世界をいかしきっていない中途半端なミステリという印象です。

No.932 5点 ママ、手紙を書く- ジェームズ・ヤッフェ 2010/08/03 18:13
あの”ブロンクスのママ”シリーズが長編で復活!!と喜び勇んで読みましたが、初期の連作短編集ほどのカタルシスは得られずちょっと残念。
パズラーの標準作ではありますが、ミステリ部分以外のほんわかした温かみのある雰囲気が減少ぎみ、息子デイヴの妻シャーリイをシリーズから退場させたのは失敗だと思います。

No.931 7点 ママは何でも知っている- ジェームズ・ヤッフェ 2010/08/03 17:52
”ブロンクスのママ”シリーズの連作短編集。
刑事の息子が週末に母親のもとを訪れて、未解決事件の話をすると、ママが経験に裏打ちされた予想外のロジックで真相を突きとめる・・・都筑道夫の「退職刑事」に影響を与えたと思われる安楽椅子探偵ものの名作ですね。
息子の妻で大学で心理学を学んだシャーリイと無学のママとの、嫁姑の微妙なライバル関係が隠し味的な可笑しみを醸し出していて、非常に読み心地のいい連作ミステリだった。

No.930 6点 不可能犯罪課の事件簿- ジェームズ・ヤッフェ 2010/08/02 21:11
DIC(不可能犯罪課)ポール・ドーンものの連作ミステリ6編を含む未発表作品集。
ある日、エラリー・クイーン責任編集のEQMMに15歳の少年からミステリの原稿が送られてきた。その不可能トリックものの短編がヤッフェのデビュー作で、DICシリーズの第1作です。
シリーズ初期作はいずれもバラエテイに富む密室トリックながら、オリジナリティと物語性が弱いのが欠点ですが、安楽椅子探偵の形式で古代ローマ時代の謎を解く歴史ミステリ「皇帝のキノコの秘密」は、真相解明後の二段落ちの構成が優れていて余韻が残る作品。とてもティーンエイジャーの作家が書いたミステリとは思えない。
ノンシリーズ短編では、「家族の一人」がヒッチコック風サスペンスの佳作でした。

また、収録作品以上に(?)素晴らしいのは、全作にエラリー・クイーンのコメントが載っていること。「ブロンクスのママ」シリーズ全作品に関するコメントも載っているのが嬉しい。

No.929 6点 ひげのある男たち- 結城昌治 2010/08/02 20:49
四谷署のひげの郷原部長シリーズ第1作。
著者初期のスマートなユーモア本格ミステリで、あやしい容疑者がみんな髭のある男たちというシチュエーションの面白味で読ませますが、本格ミステリとしての出来はいまいち。
なお、郷原部長刑事は別の軽ハードボイルド・シリーズにも登場しますが、そこでもやはり引き立て役です。

No.928 6点 殺しへの招待- 天藤真 2010/08/02 20:37
謎の殺人予告状を扱ったサスペンスですが、作者の持ち味の牧歌的で軽妙なテイストが発揮されていて、発信人はどの妻かというサスペンスはあまり感じられない。むしろ、予告をうけた5人の男たちのそれぞれの対応がシニカルなユーモアを醸し出しています。終盤の展開はある程度見え易くなっていると思いますが、緻密でよく考えられたプロットは今読んでも充分面白い。

No.927 6点 五十万年の死角- 伴野朗 2010/08/02 20:14
当時の乱歩賞作品では珍しい冒険・謀略もののサスペンス小説。
太平洋戦争下の北京を舞台に、消えた北京原人の化石を巡って、日本軍属通訳の主人公を始め、国民党、共産党、日本の特務機関などがスリリングな活劇を繰り広げる。
結末に大きなサプライズはないが、発表当時の国内ミステリにあまりない作風で楽しめた覚えがあります。

No.926 5点 北の夕鶴2/3の殺人- 島田荘司 2010/08/02 19:59
元妻を登場させることで主人公の人物造形に厚みを増し、北海道・釧路という舞台を得て、抒情的で読み応えのあるロマン・サスペンス小説になっているのに、場違いのバカトリックで雰囲気をぶちこわすところは島荘の面目躍如といえます。

No.925 5点 ホック氏の異郷の冒険- 加納一朗 2010/08/02 17:27
スイス・ライヘンバッハの滝に落ちて行方不明になったホームズが、その間、明治時代の日本を訪問していたという設定のパスティーシュ本格ミステリ。
設定は面白いが、明治時代の雰囲気・情景描写がいまいち。中身のミステリ部分もあまり出来がいいとはいえない。
これで協会賞というのはちょっと不思議。

No.924 5点 ぼくらの時代- 栗本薫 2010/08/02 17:27
青春ミステリ、”ぼくら”シリーズの第1作で乱歩賞受賞作。
ぼく(栗本薫)ら学生ロックバンド仲間が、テレビ局でアルバイト中に殺人事件に遭遇。
軽妙な若者言葉で進行する物語は、当時新鮮ではありましたが、本格ミステリとしてはあまり面白味のない内容でした。

No.923 6点 非合法員- 船戸与一 2010/08/02 17:26
米国情報局の非正規局員・暗殺専門家の日本人を主人公にした謀略サスペンスで、著者のデビュー作。
ユカタン半島の密林を舞台に、メキシコ反政府運動指導者の暗殺、仲間の裏切り、FBIの追跡、米国国防省からの抹殺指令など、追う者と追われる者が入り乱れる構図が面白いが、後の作品と比べると主人公をはじめ登場人物の造形の書き込みが不足しているように思いました。

No.922 5点 轢き逃げ- 佐野洋 2010/08/02 17:26
突出した傑作がないが駄作も少ない著者の、「一本の鉛」とともに代表作と言われる本書ですが、個人的にはあまりいい印象がない作品。
前半が轢き逃げ加害者視点のサスペンス、後半はその加害者が被害者となる謎とき本格編と構成に工夫がありますが、社会派に影響をうけたような前半部が冗長であまり楽しめなかった。

No.921 7点 幽霊列車- 赤川次郎 2010/08/02 17:26
警視庁捜査一課警部と女子大生の”幽霊コンビ”シリーズ、第1連作短編集。
表題作のデビュー短編は、山間部を走る列車から8人の乗客が消失するという謎。ほかにも、真夏の凍死体、晴天時の雨具着用死体など、解決編はともかく魅力的な謎の提示が印象的なミステリ短編集だった。

No.920 7点 暗い落日- 結城昌治 2010/08/01 21:06
私立探偵・真木シリーズの第1作。
当シリーズがロス・マクのリスペクト作品であることは周知の事実で、一人称ハードボイルドで、テーマが家系の悲劇であることもそうですが、本格ミステリに通じる意外性も共通しています。
真相が判明し、終盤に真木がある人物に言う、「それはご自分で考えることでしょう」。セリフだけで主人公の心情を表現する手法、まさにハードボイルドだなあ。

No.919 7点 マリオネットの罠- 赤川次郎 2010/08/01 20:35
森の中の英国風邸宅に住む姉妹、使用人と家庭教師、そして幽閉されたもう一人の女性、というふうにゴチック・ロマンの定型をとりながら、現代的なネタも加味しつつ、最後に大きなサプライズを用意した傑作サスペンス。
その後、シチュエーション・コメデイとかジュヴナイル小説の方に行ってしまったが、初期の赤川次郎はミステリ・マインドに溢れていましたね。

No.918 6点 大いなる幻影- 戸川昌子 2010/08/01 20:20
老朽化し取壊し寸前のアパートを舞台にしたサスペンス。
いわゆる集合住宅もののミステリで、アパートの住民たち(本書では老譲たち)の隠された秘密が暴かれていく過程が読みどころですが、女性作家らしく老譲たちの異常な心理・生態描写が巧く、フランス・ミステリのような味わいがあった。

No.917 5点 Wの悲劇- 夏樹静子 2010/08/01 20:05
社会性をテーマにした作品が多い印象の作者ですが、本書は倒叙形式からフーダニットに変転するプロットに工夫を凝らした本格ミステリ。しかし、F・ダネイが絶賛するほどの目新しいトリックはなく、ある法律ネタも感心するほどのものではなかった。

No.916 7点 伯林-一八八八年- 海渡英祐 2010/08/01 20:04
「東西ミステリーベスト100」国内編の76位は、乱歩賞の歴史ミステリ。
ドイツ留学中の森林太郎(鴎外)が雪の古城での密室殺人に遭遇し、鉄血宰相ビスマルクと推理を競うというプロットは、当時は斬新で非常に楽しんで読んだ記憶がある。
追随するような作品がその後いくつか出たが、歴史上の人物を探偵役に据えたハシリで、密室トリックもなかなか凝っていたように思う。

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