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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
飢えて狼
志水辰夫 出版月: 1981年08月 平均: 7.14点 書評数: 7件

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講談社
1981年08月

講談社
1983年08月

新潮社
2004年05月

No.7 7点 斎藤警部 2026/06/06 17:30
「片想いの解消に役立つことでしょうね」

4-3=1 .. 何から話そう。 ちょっと時間をください。 そうだ、この小説は言葉がいちいち良い。 最初の一文良し、つかみ良し。 良いフレーズ、面白い言い方いっぱい。 緊迫途切れず。
中身も濃いが、表層がまた強い。 いずれその二つは同じだ。

「言わずもがな」

順子のイントロデューシングが上手い。 しかしながら順子とは何だ。 いや、彼女に限らず新しい登場人物が何気なくふつふつと沸いてくるのを次から次へと捌くのが上手い小説だ。
味方だか敵だか決め打ち出来ないが妙に愛い(うい)相手との、いちいち意表を突いて面白い会話イコールストーリー推進など、大いに刺さった。

湘南でマリンスポーツ界末席の商売を細々と営む主人公は、元登山家。 過去それなりに名を馳せた彼の元に、疑惑まみれの男たちが来訪し、ツワモノ登山経験者ならではの或る仕事をオファーする。 彼は断る。 続いて彼や若い従業員に甚大なダメージが与えられた。 気付けば、国境を跨いでいるのか/いないのか、微妙な人間サルヴェージの冒険に勤しむ他ない状況に置かれている主人公。 更に二転三転の黄金陰謀進行。 こいつはエレキの様にシビレるぜ。 4-3=1 ..  

“わたしは狩りの獲物になった。”

故郷と祖国。 死者と生者。 嗚呼。。。 何しろ風景・情景描写の卓抜なこと! その描写が天一ラーメンのスープの如く濃厚であるため速泳で渡るわけにも行かないが、その旨味があるからこそゆっくりじっくり味読の領域となる。
回想の中に時系列の落とし前が付き、戸惑い解消でぐいぐい前に進むターンがあった。 渋かった。
全三部ある中の第二部も終盤となり、自暴自棄のキナ臭さ舞う心理のドタバタには愉しく眉を顰めた。 またしても命知らずの冒険だ。 陳腐なものは何も無い。

「××の心がおまえなんかにわかってたまるか」

“炙り出し” の二重構造はなかなかに熱かった。 これぞ本作の抱き込んだ主題的感情の白眉、或いはそこへと繋がる導火線ではあるまいか。
真犯人(?)に纏わるさりげない人間関係トリックと、そのリーチが長い有効性には オッ と思ったね。 
最後に明かされた ‘或る虚しさ’ は、ハードボイルド(と呼ぼうじゃないか)ミステリ小説として最高だ。

全てを語らぬラスト一文のドライな余韻には 頑張れよ と無言の声を掛けた。

「これから泣きます」


「飢えて狼」 1981年、「揺れて湘南」 1982年、「裂けて海峡」 1983年。
本作のベースとなる土地の一つが神奈川湘南であることを考えると、志水辰夫と石川秀美の間に同志的ヴァイブのキャッチボールがあったのは間違いないだろう。
なお’80年代のこの流れは 「背いて故郷」 1985年、「泣いてチンピラ」 1987年と、綿々と続いている。(後者は長渕剛 「ろくなもんじゃねえ」 の後続シングル)

おっと、秀美ちゃんのデビュー曲は正しくは 「ゆ・れ・て湘南」 だった。 すみません。

No.6 7点 ROM大臣 2021/06/14 15:14
日本でもその名を知られた元登山家が国際謀略の渦に巻き込まれ、北方領土の択捉島に潜入することになる。
ヒーロー造形を始め、濃密な自然描写、リアルな活劇演出、陰影に富む恋愛演出など、デビュー作とは思えぬ完成度。
権力に立ち向かうストイックなヒーローの再生譚に、複雑怪奇なエスピオナージの妙を絡めた独自の活劇世界は今もって古びていない。

No.5 4点 misty2 2011/06/05 00:09
拝読。
夏の三浦半島出張に備え購入。
しかし、小生には合わず。

No.4 8点 kanamori 2010/07/30 20:35
80年代・”冒険小説の時代”を牽引したシミタツのデビュー作。
択捉島潜入・ソ連兵からの逃避行とサバイバルなど緊迫したシーンの連続も読ませるが、流れるような文体とともに不屈ながら理知的ユーモアのある主人公がなかなか魅力的だ。
女性とのしゃれた会話など、ひねくれ気味の作者本来の持ち味は抑え気味だと思いますが、デビュー作らしい熱気に満ちた冒険小説の傑作だと思います。

No.3 6点 2009/09/09 12:11
冒険小説三部作の最初の作品で、デビュー作でもある。残りの2作は、「裂けて海峡」、「背いて故郷」。
ひさしぶりの一人称小説に冒頭から心がときめいた。文章はたしかに巧い。情景描写がとくに良い。体言止めを多用(濫用)することが、著者の文体の特徴なのだろうか。とにかくテクニックは抜群である。文章の歯切れ、テンポともに良く、一般のハードボイルド文体とちがって断然読みやすく感じた。文章が良いので、場面が流れるように映像として浮かんでくる。物語自体もスピード感のある部分と、じっくり読ませる部分との両方が適度に交じり合っていて、ぐいぐいと惹き込まれる。第二部の中ほどでの、択捉島の案内人・蛭間との別れのシーンでは、巧い文章表現があいまって、ジーンときた。この場面が本書の前半のクライマックスではないだろうか。しかし、蛭間と別れてからの主人公の単独サバイバル場面では、この種の冒険小説に不慣れなせいもあって、集中が途切れ、すこし停滞してしまった。本来なら、この場面こそが圧巻シーンなのかもしれないのだが。また、解決編である第三部は、序盤で真相を直感的に予想してしまったので、結末にはそれほど驚きはなく、活劇を文章で楽しむ程度だった。
初めての国内冒険小説に面食らった感もあるが、点数(6点)はともかくとして、既読の2作品「花ならアザミ」、「行きずりの街」にくらべ、これからも読んでいこうという気にさせてくれる作品であった。

No.2 8点 itokin 2009/07/23 13:29
デビュー作とは思えない作品。スケールが大きく、物語の展開、描写、スピードもあって最後まであきささない。終わり方も余韻があってこれで良し。主人公のキャラクターが好き。

No.1 10点 Tetchy 2007/12/29 18:50
デビュー作にしてこのクオリティ!!
特に択捉島への潜行場面は本当に手に汗握ってしまった。
あと、殺された相棒の父親と駅で別れるシーンが印象に残っている。


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